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旅の始まり〜冒険者入門編〜
授けられた力とこれから
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精霊。
それは、謎多き存在だ。
フォーゲンアルタットに住まうとされ、聖力の扱いに長けると言われているが、その全貌は明らかにはなっていない。
よくスキルは精霊が授けていると言われてるけどな。
そんな存在が俺を助ける?
『そう警戒しないでおくれよ。僕は本当に君を助けに来たんだ。』
「信用出来ねぇな。」
『そうだなぁ…じゃあ、話だけでも聞いてくれないかい?』
話だけなら、いいかも知れん。それに何故だろう。こいつを見ていると警戒することが間違いであるかのように感じる。
理性は警戒するよう働いているが、本能がこいつに気を許してしまっている。
『じゃあ、話すよ?まず、君の妹ちゃん…アオイちゃんの事だ。彼女は今、《時喰い》という魔剣を刺されたんだ。これは、記憶や今まで過ごしてきた時間を食べちゃうんだ。』
「時喰い…」
初めて聞く魔剣だ。先生なら知っているだろうか?
『これを解除するには、刺された本人が強く抵抗するか、外部から取り除いてやるしかない。』
「どうやれば、取り除けるんだ?」
『君の《スキル付与》を使う。』
「《スキル付与》を?どうするんだ?」
『《スキル付与》を使って魔剣を作るんだ。魔法や魔術、それこそスキルの効果だって消し去ってしまう強力なスキルを付与して、ね。』
「それは…考えても無かったな。確かにそんなこと出来たら確実かもしれん」
『ただ、この方法を使うには少々時間がかかりすぎるからね。それを解決する力を僕は与えることができるよ。どうだい?君にこの他の手段は無いように見えるけど』
こいつの言う通りなら俺に選択肢は無い。ものすごく怪しく感じる。
が、どこかで正直こいつを疑う理由は無いような、そんな気がしている。
だが、恐らくそれは勘違いだろう。
怪しく、弱みに付け込み人を操る。
そんな人間は多々いることを先生からは教わった。
だが…
「…俺にそれ以外の手段が無い。」
『じゃあ…』
「あぁ、頼む。」
その言葉を皮切りに、俺は深い眠りについた。
~
目が覚める。
そこがベッドの上だったので、昨日のあれは夢だったのかと一瞬考えたが、それにしてはリアルだったと思い直し、手を握ったり開いたりしてみる。
うん。特に何か変わったことは無いな。
と、机の上に手紙があった。
『君に授けた力はその名も《勇者紋》だ。君だけのその力で、僕を楽しませてくれ。』
勇者紋…?
それって確か、勇者の職業スキルだったはずだ。
どんな能力だっけか…
そう思い、俺は先生に貰ったメモ帳を取り出す。
どれだけ使っても無くなることの無い便利なもので、今までの先生に教わったことはここにメモしている。
そこから、職業の欄を開き、勇者の職業スキルを見る。
勇者紋:勇者の職業スキル。個人個人で違う能力を持ち、魔力、気力、聖力、神力の最大値を引き上げる。危機に陥る時能力が解放されることが多いとされるが、詳しい条件などは分かっていない。
と書かれている。
それに、どうやら体の1部に紋章が浮かび上がるようだ。
自分の体を見渡してみると、肩の少し下あたりに紋章が浮かび上がっていた。
試しに気力を使ってみると、確かに増えている。
それに、質も上がっているようだ。
そんなことは聞いた事がないが、よく考えてみれば勇者紋が浮かびあがる…つまり、勇者の職業を得るのは15になった時だ。それまでに気の使い方を熟知し、その質までも理解してないと違いは分からないから、分かってないってことなんだろうな。
「勇者紋、か…どんな能力が解放されるんだろうな」
まぁ、それはおいおい分かるだろう。
今は、今ある力のことを考えよう。
まずは《スキル付与》についてだ。
こればっかりは実際に付与して魔剣を作ってみなければ分からないか。
それに、ユイの事もある。恐らく、ユイが勇者の職を得たと言うことは王都にはもうしれているだろう。先生に聞いたが、そういう魔道具があるらしいしな。
ここはそこまで王都から離れているということでも無い。
馬車で片道2日の距離のはずだから、明日あたりには遣いが来るはずだ。
それまでに俺も準備を進めなくちゃな。
そう、思っていたが、何やら外が騒がしい。
窓を覗いてみると、そこには全身を鎧で覆った騎士がいた。
~
外に出ると、騎士とユイの両親が何やら話し込んでいた。
「はい。では、出発は2日後ということで。」
「分かりました…ユイ、行こうか。」
どうやら、王都の遣いがもう来たらしい。
早すぎる気もしなくもないが…何か便利な道具でも出来たのだろうか?
「どうしたんですか?」
ユイの母親…イルミさんに問う。
「ユイが勇者になった件について、騎士様が来たのよ。それにしても、早いわねぇ…」
「あと一日はかかるとおもってたんですがね…」
「あぁ、それはね。魔導馬車と言う物が開発されたんだ。」
騎士が言う。
「へぇ…なんですか?それは。えぇと…」
「私はグラミド。適当に、グラさんとでも呼びたまえ。まぁ、私に会う機会ももうないだろうがな。」
「じゃあ、グラさんで。魔導馬車ってなんなんですか?」
「あぁ、それはな。今までは馬に引かせていたのだが、動力を魔力に変えてな。馬は疲れたり餌が必要だったりと、色々経費も時間もかかっていたのだが、これは休まんし生き物でもないから道中魔物が出ても平気だ。必要なのも魔石だけだしな。」
そうやって見せてくれたのは、大きな丸い黒い物を4つ付けた、鉄の塊だった。
ほんとにこんなので動くのか…?
「私も初めて見た時はこんなもの、と思ったが、乗ってみると案外心地よいものだぞ。椅子はふかふかしているしな。」
俺の考えていたことが顔に出ていたのか、疑問に答えてくれる。ちゃんと動くらしい。しかも、なかなか速いんだろうな。馬で2日かかる所を一日で来たわけだし。
しかし、ユイの出発は2日後か。
どうにか、俺もこれに乗れたりはしないだろうか。
「グラさん、俺もこれに乗って王都に行くことは出来ませんかね?」
「…?定員数はあと1人分空いているが…なんでまた?」
「勇者学園に入学したいんです。」
勇者学園とは、スキルや職業を得た者が入学し、鍛えるという所だ。
勇者と言う職業が希少とはいえ、世界は広い。中央大陸中の勇者を集めると、だいたい毎年200人はいる。
王都は、その200人程を集めて学園で面倒を見るのだ。
しかし、それに入学できるのは勇者だけではない。
むしろ、勇者以外が主流と言っても良い。
勇者持ちは確実に勇者クラスに入学し、一般でも試験に受かれば一般クラスに入学できるのだ。
そこで卒業できれば、そのまま騎士になれたり、冒険者でもギルドの方で初めはGランクな所をDランクで始めることだってできるのだ。
優待遇である。
なので、一般を受ける生徒は沢山いる。
それはもう、沢山。
「ほう…失礼でなければ、職業を聞いてもいいかな?」
「見習い付与師です。」
「なら、生産クラスかな?」
「いえ、一般です。」
「相当難しいと思うが…まぁ、受けるぶんにはかまわない。だが、魔導馬車には乗せることは出来ないな。」
「なぜです?」
「道中、危険な魔物も多々出る。私が守りきれるのは1人だけだ。すまないな。」
「では、俺に自分の身を守れる力がある、と言うことを示せば乗せていただけるのですか?」
「まぁ、そうなるな。しかし、付与師では難しいだろう。」
「では、勝負しましょう。」
「…時々、いるんだ。こんな風に、スキルだかなんだかを貰い、増長する者が。まぁ、どの道一般クラスを受けるのであれば戦うことになるか」
「では」
「あぁ。そうだな…昼になったら、やるか。ただし、条件をいくつか。」
「それは?」
「私を納得させることが出来なければ、一般クラスの受験を諦めること。それと、もちろんだが魔導馬車も諦めてもらう。」
「はい…では、俺が勝ったらなんでも1つ言うことを聞いてください。」
「…まぁ、良いが。それだったら私も勝ったらそれが欲しいな。」
「え゛…何する気ですか?」
「それは秘密だ。」
ゾッとする話である。まぁ、俺は無難に剣でも教えて貰うかな。
~
「よし、じゃあ始めるか。」
約束の時間だ。準備はバンタン。天候良好。
よーし頑張るぞー。
審判はうちの父さんがすることになった。腐ってもSSランク冒険者である。
「初め!」
と、開始一言。
それと同時にグラさんは動き出し、剣先をこちらへ向け、斬りかかってくる。
殺気がのっているな。俺の心を折る気満々である。怖。
が、その剣を易々と躱し、剣に気力をこめる。
…なんか、流しやすくなってるな。勇者紋のおかげか?
そんなことは置いといて、切れ味の上がったその剣でグラさんに斬りかかる。
が、当然グラさんは防御し、剣と剣はぶつかり合い、キンッと甲高い音を上げる。
なんか、グラさんが驚いてるな。
まぁ、さっきの会話でグラさんが俺の事を舐めきってるのは分かってたし、俺は付与師だ。しかも見習いの。
素の身体能力でこうな事に、驚いている事もあるのだろう。
「…これは、気力か?いや、しかし…身体に流している様子は…隠している?いや、剣に流れているものは普通に…なら、素の身体能力なのか?…なるほど…なかなかどうして、強いじゃないか。」
ブツブツ言ってる。
「…私の予想を遥かに超えているな。君は。ただの増長したやつじゃ無かったってことだ。」
「なら…」
「まぁ、それは勝ち負けには関係の無いことだ。戯れはここまでにして、本当の勝負と行こうじゃないか。」
そう言って、グラさんは身体に気力を流す。
それを見た俺も気力を流し、剣を構える。
師匠、使わせていただきますよ…!
「ふぅ…武技・瞬撃」
一瞬で移動し、グラさんに斬りかかる。
グラさんは驚いた顔をしたが、剣でそれを防ぎ、距離をとった。
「まさか、君がフォーゲント流の人間だとはな…ちなみに、何級なんだい?」
「特級ですよ。」
「ふむ…なら、値踏みしている時間は無さそうだ。まずは、先程の非礼を詫びよう。すまなかった。」
急にどうしたんだ?
「そして、今から私が行う事に耐えきれたのなら、この勝負は君の勝ちでいい。」
そう言って、グラさんは手にはめた皮の手袋を外す。
そこには…
勇者紋がうかんでいた。
それは、謎多き存在だ。
フォーゲンアルタットに住まうとされ、聖力の扱いに長けると言われているが、その全貌は明らかにはなっていない。
よくスキルは精霊が授けていると言われてるけどな。
そんな存在が俺を助ける?
『そう警戒しないでおくれよ。僕は本当に君を助けに来たんだ。』
「信用出来ねぇな。」
『そうだなぁ…じゃあ、話だけでも聞いてくれないかい?』
話だけなら、いいかも知れん。それに何故だろう。こいつを見ていると警戒することが間違いであるかのように感じる。
理性は警戒するよう働いているが、本能がこいつに気を許してしまっている。
『じゃあ、話すよ?まず、君の妹ちゃん…アオイちゃんの事だ。彼女は今、《時喰い》という魔剣を刺されたんだ。これは、記憶や今まで過ごしてきた時間を食べちゃうんだ。』
「時喰い…」
初めて聞く魔剣だ。先生なら知っているだろうか?
『これを解除するには、刺された本人が強く抵抗するか、外部から取り除いてやるしかない。』
「どうやれば、取り除けるんだ?」
『君の《スキル付与》を使う。』
「《スキル付与》を?どうするんだ?」
『《スキル付与》を使って魔剣を作るんだ。魔法や魔術、それこそスキルの効果だって消し去ってしまう強力なスキルを付与して、ね。』
「それは…考えても無かったな。確かにそんなこと出来たら確実かもしれん」
『ただ、この方法を使うには少々時間がかかりすぎるからね。それを解決する力を僕は与えることができるよ。どうだい?君にこの他の手段は無いように見えるけど』
こいつの言う通りなら俺に選択肢は無い。ものすごく怪しく感じる。
が、どこかで正直こいつを疑う理由は無いような、そんな気がしている。
だが、恐らくそれは勘違いだろう。
怪しく、弱みに付け込み人を操る。
そんな人間は多々いることを先生からは教わった。
だが…
「…俺にそれ以外の手段が無い。」
『じゃあ…』
「あぁ、頼む。」
その言葉を皮切りに、俺は深い眠りについた。
~
目が覚める。
そこがベッドの上だったので、昨日のあれは夢だったのかと一瞬考えたが、それにしてはリアルだったと思い直し、手を握ったり開いたりしてみる。
うん。特に何か変わったことは無いな。
と、机の上に手紙があった。
『君に授けた力はその名も《勇者紋》だ。君だけのその力で、僕を楽しませてくれ。』
勇者紋…?
それって確か、勇者の職業スキルだったはずだ。
どんな能力だっけか…
そう思い、俺は先生に貰ったメモ帳を取り出す。
どれだけ使っても無くなることの無い便利なもので、今までの先生に教わったことはここにメモしている。
そこから、職業の欄を開き、勇者の職業スキルを見る。
勇者紋:勇者の職業スキル。個人個人で違う能力を持ち、魔力、気力、聖力、神力の最大値を引き上げる。危機に陥る時能力が解放されることが多いとされるが、詳しい条件などは分かっていない。
と書かれている。
それに、どうやら体の1部に紋章が浮かび上がるようだ。
自分の体を見渡してみると、肩の少し下あたりに紋章が浮かび上がっていた。
試しに気力を使ってみると、確かに増えている。
それに、質も上がっているようだ。
そんなことは聞いた事がないが、よく考えてみれば勇者紋が浮かびあがる…つまり、勇者の職業を得るのは15になった時だ。それまでに気の使い方を熟知し、その質までも理解してないと違いは分からないから、分かってないってことなんだろうな。
「勇者紋、か…どんな能力が解放されるんだろうな」
まぁ、それはおいおい分かるだろう。
今は、今ある力のことを考えよう。
まずは《スキル付与》についてだ。
こればっかりは実際に付与して魔剣を作ってみなければ分からないか。
それに、ユイの事もある。恐らく、ユイが勇者の職を得たと言うことは王都にはもうしれているだろう。先生に聞いたが、そういう魔道具があるらしいしな。
ここはそこまで王都から離れているということでも無い。
馬車で片道2日の距離のはずだから、明日あたりには遣いが来るはずだ。
それまでに俺も準備を進めなくちゃな。
そう、思っていたが、何やら外が騒がしい。
窓を覗いてみると、そこには全身を鎧で覆った騎士がいた。
~
外に出ると、騎士とユイの両親が何やら話し込んでいた。
「はい。では、出発は2日後ということで。」
「分かりました…ユイ、行こうか。」
どうやら、王都の遣いがもう来たらしい。
早すぎる気もしなくもないが…何か便利な道具でも出来たのだろうか?
「どうしたんですか?」
ユイの母親…イルミさんに問う。
「ユイが勇者になった件について、騎士様が来たのよ。それにしても、早いわねぇ…」
「あと一日はかかるとおもってたんですがね…」
「あぁ、それはね。魔導馬車と言う物が開発されたんだ。」
騎士が言う。
「へぇ…なんですか?それは。えぇと…」
「私はグラミド。適当に、グラさんとでも呼びたまえ。まぁ、私に会う機会ももうないだろうがな。」
「じゃあ、グラさんで。魔導馬車ってなんなんですか?」
「あぁ、それはな。今までは馬に引かせていたのだが、動力を魔力に変えてな。馬は疲れたり餌が必要だったりと、色々経費も時間もかかっていたのだが、これは休まんし生き物でもないから道中魔物が出ても平気だ。必要なのも魔石だけだしな。」
そうやって見せてくれたのは、大きな丸い黒い物を4つ付けた、鉄の塊だった。
ほんとにこんなので動くのか…?
「私も初めて見た時はこんなもの、と思ったが、乗ってみると案外心地よいものだぞ。椅子はふかふかしているしな。」
俺の考えていたことが顔に出ていたのか、疑問に答えてくれる。ちゃんと動くらしい。しかも、なかなか速いんだろうな。馬で2日かかる所を一日で来たわけだし。
しかし、ユイの出発は2日後か。
どうにか、俺もこれに乗れたりはしないだろうか。
「グラさん、俺もこれに乗って王都に行くことは出来ませんかね?」
「…?定員数はあと1人分空いているが…なんでまた?」
「勇者学園に入学したいんです。」
勇者学園とは、スキルや職業を得た者が入学し、鍛えるという所だ。
勇者と言う職業が希少とはいえ、世界は広い。中央大陸中の勇者を集めると、だいたい毎年200人はいる。
王都は、その200人程を集めて学園で面倒を見るのだ。
しかし、それに入学できるのは勇者だけではない。
むしろ、勇者以外が主流と言っても良い。
勇者持ちは確実に勇者クラスに入学し、一般でも試験に受かれば一般クラスに入学できるのだ。
そこで卒業できれば、そのまま騎士になれたり、冒険者でもギルドの方で初めはGランクな所をDランクで始めることだってできるのだ。
優待遇である。
なので、一般を受ける生徒は沢山いる。
それはもう、沢山。
「ほう…失礼でなければ、職業を聞いてもいいかな?」
「見習い付与師です。」
「なら、生産クラスかな?」
「いえ、一般です。」
「相当難しいと思うが…まぁ、受けるぶんにはかまわない。だが、魔導馬車には乗せることは出来ないな。」
「なぜです?」
「道中、危険な魔物も多々出る。私が守りきれるのは1人だけだ。すまないな。」
「では、俺に自分の身を守れる力がある、と言うことを示せば乗せていただけるのですか?」
「まぁ、そうなるな。しかし、付与師では難しいだろう。」
「では、勝負しましょう。」
「…時々、いるんだ。こんな風に、スキルだかなんだかを貰い、増長する者が。まぁ、どの道一般クラスを受けるのであれば戦うことになるか」
「では」
「あぁ。そうだな…昼になったら、やるか。ただし、条件をいくつか。」
「それは?」
「私を納得させることが出来なければ、一般クラスの受験を諦めること。それと、もちろんだが魔導馬車も諦めてもらう。」
「はい…では、俺が勝ったらなんでも1つ言うことを聞いてください。」
「…まぁ、良いが。それだったら私も勝ったらそれが欲しいな。」
「え゛…何する気ですか?」
「それは秘密だ。」
ゾッとする話である。まぁ、俺は無難に剣でも教えて貰うかな。
~
「よし、じゃあ始めるか。」
約束の時間だ。準備はバンタン。天候良好。
よーし頑張るぞー。
審判はうちの父さんがすることになった。腐ってもSSランク冒険者である。
「初め!」
と、開始一言。
それと同時にグラさんは動き出し、剣先をこちらへ向け、斬りかかってくる。
殺気がのっているな。俺の心を折る気満々である。怖。
が、その剣を易々と躱し、剣に気力をこめる。
…なんか、流しやすくなってるな。勇者紋のおかげか?
そんなことは置いといて、切れ味の上がったその剣でグラさんに斬りかかる。
が、当然グラさんは防御し、剣と剣はぶつかり合い、キンッと甲高い音を上げる。
なんか、グラさんが驚いてるな。
まぁ、さっきの会話でグラさんが俺の事を舐めきってるのは分かってたし、俺は付与師だ。しかも見習いの。
素の身体能力でこうな事に、驚いている事もあるのだろう。
「…これは、気力か?いや、しかし…身体に流している様子は…隠している?いや、剣に流れているものは普通に…なら、素の身体能力なのか?…なるほど…なかなかどうして、強いじゃないか。」
ブツブツ言ってる。
「…私の予想を遥かに超えているな。君は。ただの増長したやつじゃ無かったってことだ。」
「なら…」
「まぁ、それは勝ち負けには関係の無いことだ。戯れはここまでにして、本当の勝負と行こうじゃないか。」
そう言って、グラさんは身体に気力を流す。
それを見た俺も気力を流し、剣を構える。
師匠、使わせていただきますよ…!
「ふぅ…武技・瞬撃」
一瞬で移動し、グラさんに斬りかかる。
グラさんは驚いた顔をしたが、剣でそれを防ぎ、距離をとった。
「まさか、君がフォーゲント流の人間だとはな…ちなみに、何級なんだい?」
「特級ですよ。」
「ふむ…なら、値踏みしている時間は無さそうだ。まずは、先程の非礼を詫びよう。すまなかった。」
急にどうしたんだ?
「そして、今から私が行う事に耐えきれたのなら、この勝負は君の勝ちでいい。」
そう言って、グラさんは手にはめた皮の手袋を外す。
そこには…
勇者紋がうかんでいた。
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