妹が寝たきりになったり、幼馴染が勇者になったり大変なので旅に出ます

ゆーごろー

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旅の始まり〜冒険者入門編〜

スキル

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師匠と戦ったあと、俺はそのまま寝てしまったようだ。気づけば師匠が泊まっていた部屋にいた。

机の上に置き手紙がある。

『ケイへ 今まで、どうもありがとう。初めは戸惑ったけれど、新しい発見も色々あって楽しかったわ。何もお別れなんてしてないけれど、そんなしみったれたもの、いらないわよね?今まで、本当にありがとう。また会えることを楽しみにしているわ。フレーミンより』

『ケイへ また会った時は、試合しよう。』

2人の暖かい言葉に、自然と目頭が熱くなるが、ぐっと堪える。次泣くのは、妹を助けてからと決めているのだ。

「…って、今日じゃん。授けの儀式。」
「ぐっもーにーん!起きてるー?ケイー?」

元気な声が聞こえる。幼馴染で、この宿を経営する(予定)のユイだ。

「起きてるよー!」
「ならばよし!今日だよ、覚えてるよね?もう9時!早く行こ!」

俺としたことが、若干寝坊気味だったようだ。
さっさと準備してユイと行こうかな。
ユイも今日が誕生日だ。

「わかった!すぐ行くから待ってろ!」







儀式の祠がある森に着いた。
15の誕生日を迎えるまで中には入れないが、昔父さんにどんなのか聞いたことがある。

『神聖な感じのする木の中には部屋があって、その部屋にはうっすらと光る薄い板が浮いてるんだ。で、それに触ったらパァっと光って、力が湧いてくるんだ。で、その板にスキル名が乗っててな?その文字が光の粒になってすぅっ…っと胸の中に吸い込まれて行くんだよ。そしたら、ステータスが出るんだ。』

との事だ。さぞかし神聖なものなのだろう。

俺たちは、道の途中でそれぞれ思いを馳せながら、祠へと向かった。







「へぇ。聞いてたとおり綺麗なとこだな」

祠に入って第1に思ったのがそれだ。
うっすらと光る薄い板。それが正面に浮いている。
これを作った人?は何を思って作ったんだろうか。
先生が言うには、この議題は大昔からずっと議論されているらしい。

「そうね、とっても綺麗だわ。どっちが先にする?」
「じゃあ、俺から」

そう言って俺は前に出る。

とてもドキドキする。これに触れれば、俺は…

光る板に触れる。
と、淡い光が部屋を包み込み、光る板に文字何かが表示される。

ーーー

職業 見習い付与師

スキル ✕✕✕✕ 乱魔 スキル付与

ーーー

なんだこれ…✕✕✕✕?なんのスキルだ?乱魔とスキル付与は分かる。
乱魔は自身の半径50センチ以内の魔法をかき消すスキルだ。発動してる時は自分も魔法が使えず、接近戦の場合に役立つだろう。
スキル付与、これは一般的な属性付与や魔法付与とは違い、スキルそのものを付与することが出来るというスキルだったはずだ。

魔剣はスキル付与のものが多い。

とは、師匠の言葉だ。

乱魔もスキル付与も、俺とは相性がいい。
俺は剣も魔法もしてるから、乱魔は戦闘に組み込めるし、スキル付与だって問題なく使える上付与師とも相性がいい。しっかし…✕✕✕✕てなんだ?

「どうだったの?ケイ。」

俺の胸に光の粒が吸い込まれるのを見計らい、ユイが聞いてくる。

「んー…なんて説明すりゃいいのか。職業は見習い付与師だったけど、スキルも3つ貰ったうちのひとつが✕✕✕✕って書いてて読めないんだよね…ほかは乱魔とスキル付与。」
「へぇ…✕✕✕✕は何かわからないけど、他二つはなかなかじゃない!」

ユイも時々先生の授業に参加していて、スキルの知識はあるようだ。

「じゃあ、次は私ね!」

そう言って、ユイは板に手を当てた。

「どうだったんだ?」

そう聞くとユイは…

「…勇者。」

そう、一言答えた。







勇者。そう、あの勇者だ。
勇者というのは戦うことに特化した職業で、様々な職業特典がある。
例えば、無限成長だ。
無限成長とは、その名の通り成長の限界が無い。

人の体は四つの要素で構築されている。
肉体を支える気力、精神を支える魔力、肉体の機能を支える聖力、未だに謎の多い神力、この四つだ。
そして、この四大要素はその四大要素を持っている者をすれば吸収できるのだが、限度がある。
勇者は、吸収するにつれて吸収率は減るのだが、決して0にはならないのだ。

閑話休題

「勇者…ってマジ、なのか?」
「…どうしよう…私、戦いたくない…」

勇者は、例外なく王都へと連れていかれる。
本人の意思なく、だ。
王都で学院に通い、力の使い方を学ぶ。
噂では、魔物と戦わされたりするらしい。

「…俺も、王都へ行くよ。」
「…え?」
「俺も王都に行ってやる。どっちみち、妹を治すためにも王都には行く予定だったしな。お前は独りじゃない。」
「…うん。」

俺たちは来た時のワクワクなど忘れ、家へと帰った。







家の扉を開けると、この3年ですっかり元気になった母さんが出迎えてくれた。

「おかえり、ケイ。どうだったの?」
「母さん、ただいま。その話は全員揃ってからで。」

母さんは3年前、家に押し入ってきた賊に足首から下を切り落とされた。
が、町医者の適切な処置によって魔法でくっついたようだ。三年経った今でも歩くのは少しおぼつかないが、ゲラールさんがいなければ母さんは今頃杖どころじゃ済まず、車椅子で生活する羽目になっていただろう。

「じゃあ、今から話すよ。」

俺は、今日起こった出来事を全て包み隠さず話した。

「…そうか。ユイちゃんが勇者に…」
「あぁ。俺はユイを独りには出来ない。俺も王都へ行く。」
「分かった。どのみち行くつもりだったんだろ?なら、それはいい。お前の実力も分かっている。」
「ありがとう。」

「でも、ひとつ話さなければならないことがある。」

なんだろうか。

「父さん達は元々《滅魔の剣》というパーティーに所属していて、元SSランク冒険者だ。」

…は?







SSランク冒険者。それはこの世に数える程しかいないパーティーだ。

「わかりやすく言うと、多分俺達はお前さんの師匠達よりも強い。」

師匠達より強い。
にわかには信じられない。それに…

「そんな父さん達が負ける賊って、なんだよ…」

そう、そこだ。
SSランク。俺が12の時に襲われたのだから、結婚、妊娠してから13、4年だとしても、それだけだ。
俺は父さんが毎朝トレーニングをしていたのも知っているし、母さんが時々無造作に水などを魔法で出していたのも知っている。
ブランク込にしたって、その賊は俺よりもはるかに強いだろうことは、容易に想像できる。

「まぁ、俺達も引退して10年以上だ。そりゃ衰えもしてるし、俺達より強いやつは5万といるだろう。でも、やつは格が違う。鼻歌歌いながらナイフを振り回して一瞬で俺達の足を綺麗に切り落としやがった。父さん達が気力を纏ってても、綺麗にな。しかも家にあった長年使ってない錆びたナイフで、だ。恐ろしく強い上に残忍な性格だった。」

「もし旅にでて、アオイを治したいのならもっと強くなれ。じゃないと、お前は死んじまうだろう。」

今まで黙っていた母さんも口を開く。

「私も、父さんの言う通りだと思うわ。危険すぎる旅になると思う。」
「…それでも、俺は行くよ。」

「決意は堅いんだな?」
「あぁ。アオイを治す。この思いは揺るがない。3年前のあの日、俺は何も出来なかった。肝心な時に家にいなかったし、医者を呼んだだけだ。だから…いや、だからって言うのも違うな。ただ、今度は俺が救いたい。弱虫だった俺を変えて救ってくれたアオイを。」

これは、恩返しだ。
俺を変えてくれたアオイに対する。
それで命を落としたって、どうせ今のこの命はアオイがくれた命だ。
俺は、決意を新たにその後を過ごした。







なかなか寝付けない。
これは緊張か、不安か。それとも、何か悪い予感か。
判別はつかないが、とにかく寝ることが出来なかった。
俺は特にすることも無いので、アオイがいる部屋へと出向く。

あの日から家の一室をアオイの部屋とし、使っているのだ。

「絶対、治してやるからな。」

アオイの頬を撫でながら1人、そう呟いた。

『残念ながら、このままだと難しいね。』
「っ!?」

俺はその声に驚き、振り向きざまに腰に手を当てる。
が、剣は無い。当たり前である。寝ようとしていた人間が剣を持っているはずもない。

「誰だ?」

声の主に問いかける。
そいつは浮いていた。

なんだこいつ、気配がなかった。
いや、何も無いところから現れたと言う方が正しいか?なんにせよものすごい力を感じる。

『僕は精霊。君に力を貸しに来たよ。』

その思わぬ言葉に、俺は唖然とするだけだった。
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