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旅の始まり〜冒険者入門編〜
戦う覚悟
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ケイは平原部に着くと、早速魔法の準備をする。
イメージするんだ。魔力を周囲に展開し、それに触れてできた波を感じとるイメージ。
ケイから放たれた微細な魔力は平原を駆け回り、周囲の情報をケイに伝えてゆく。
【探索】と呼ばれるその魔法は魔力を伝い、様々な感情をケイの元へと届け続け、ケイは周辺の環境を把握した。
「人間の子供サイズのが3…9!」
ケイは声に出して自分に言い聞かせ、平原を駆け出す。途中で腰に下げた短剣を抜き、気配の主を目視で確認する。
やっぱりゴブリンか。ここらへんにいるのはこいつぐらいって言ってたしな。
腕試しには好都合だ。
ケイがそんなことを考えながらゴブリンに斬りかかる。まず一体の首を落とし、鮮血を周囲に撒き散らす。そしてその周りにいた他の2体があっけに取られている間に連続して首を落とした。
「まず3体!」
最高だ!この、確かに殺したものが糧となっていることを感じる瞬間!治らない高揚感!入り込んでくる気力を確かに感じる。
いつぶりだろうか、こんなに気分が良いのは。
ふとしたそんな思考につられ、過去の記憶が蘇ってくる。
暑い夏の日差し。無邪気に笑うその笑顔にどれだけ救われたことか。
ケイは決意を新たに、次の敵へと意識を向ける。
そうだ、見失うなよ、俺。
アオイを救うんだよ。今度は俺が救う番だから。
次の敵は気配からしてゴブリンがあと6体だ。
これだけ数がいれば、おそらく攻撃のチャンスを与えてしまう。
多分大丈夫だと思うが、準備するのに越したことはない。
そう考えたケイは短剣に向き合い奇跡を起こすための言葉を発する。
「万象に宿りし魂よ」
「万物に宿りし魂よ」
「我がスキルに呼応し」
「その力を宿せ」
「その力の名は【鋭利】」
これは例の決闘の時使われたスキルの一つで、武器の切れ味を上げることができる。
ギリギリ付与することができるものだ。
幾何学的で幻想的な青白い光の粒が短剣に吸い込まれ、定着していく。
何度見ても飽きない神秘的な光景に若干見惚れながらケイは準備万端と言わんばかりにまた駆け出した。
~
ゴブリンを狩り終わったので、ケイは少し奥にある森へと足を運ぶ。
森と言うよりは林と呼ぶべきなそこでまた【探索】をし、人よりも一回り大きな気配を察知する。オークだ。
オークは食用としてその肉は広く知られており、そこそこの値段で取引される。魔力や気力を多く持っている個体の方が美味らしい。
気配の感じ、これはあんまりな感じだ。
とりあえず殺すか。
ケイは気配の主に肉薄し、踊るようにオークの足の腱を切り裂き、移動手段を潰す。
オークはなまじ賢いことで有名なので、強敵から逃げる脳みそぐらいは持ち合わせている。
オークは逃げられないことを察したのか反撃に出ようとするがもう時すでに遅し、ケイの短剣はオークの首元を穿ち切り裂いていた。
流石に切り落とせないか。長さと斬撃の威力が足りないな。長剣を使うか?んー…別に短剣にこだわる理由もないな。よし、使おう。
そう考えたケイは短剣を鞘に収め、左側にさげた長剣に手をかざす。
そして奥に潜むオークに目線を向け、再び【探索】でその動向を探る。
先のオークが倒れたときの音に惹きつけられてこちらに向かっているようで、ケイは一言好都合、とだけ呟き剣を抜いた。
こちらに向かう二体の暴力の体現者。
その気配を感じ取りながらケイは木々に混じり好機を伺う。
できるだけ速く、鋭く、オークを殺すための刃を作るため気力を流し込み、準備を完了させた。
そしてついにきた好機。ケイは全力の踏み切りで勢いをつけて前にとび、そのままの勢いでオークの首を落とした。
しかし、もう一体は黙ってはいない。
卑怯な手により奪われた同胞の仇をとるため、全力の大振りを繰り出す。
ケイはその攻撃を踊るようにしてギリギリのところで回避、そのままオークの手首を切り落とした。
フォーゲンタット流の極意はその動きだ。
踊るようにして最小の動きで相手を断つ。緩急のついたその動きは相手を翻弄し、なかなか攻撃を当てることはできない。
そして武技には防御や素早く相手の背後を取ろうとするものが多い。
オークは距離を取ろうと背を向けるが、ケイがその隙を逃すはずもなく即座に首が落とされた。
案外あっけなかったな。二匹でもわりと楽だ。
と、森の奥から地響きが鳴り起こる。
ケイは即座に【探索】を展開、周囲の状況を把握する。
そこにはものすごいプレッシャーを放つ化け物がいた。
情報にはない巨大な反応に困惑しながらも、このぐらいなら行けるか、とケイは長剣を抜刀し物陰に身を潜めた。
~
先ほどオークを狩った場所から少し行ったところにその化け物はいた。
赤黒い肌に真っ黒なツノ。
姿形から、ケイはハイオークだと判断した。
なんでこんなところにこんな化け物が…
マズいな、俺じゃ多分負ける。早くギルドに報告しなくちゃ、被害が出るぞ。
と、背後から複数の人の気配がすることに気づく。
気配や体運びからしてハイオークを殺せるほどの戦力であるとは到底思えないとケイは感じた。
ケイは急いで音を立てないようにその者たちのところへ向かい、事情を話そうとするが、その前にハイオークが彼らを見つけてしまったようだ。
ーーグオオォォォォォォォォォオオオ‼︎‼︎‼︎
ものすごい雄叫びをあげながらハイオークは彼らの元へと向かっていく。
ケイも気づかれぬようにしてハイオークを追った。
~
ハイオークが目視で見えた頃、彼らは慌てて陣形をとっていた。
「ルミア、早くバフを!もうくるぞ!」
「わかってる!【祝福】!」
そんなことをしている間にハイオークは急停止し、手に持ったハイオークから見ても巨大な包丁を振りかざし冒険者を襲った。
その一撃は先ほど強化してもらっていた人の右腕を引きちぎり、大地にヒビを入れる。
冒険者は起こったことを信じきれ無いような顔をし、自分の運命を呪いながら意識を失った。
他の4人も唖然としていて、これは戦いではなく、ただ自分が狩られていくショーなのだ、と気づきただ順番を待つかのように茫然と立ち尽くすだけだった。
~
クソッ!なんであいつあんな図体とでかい包丁持ってあんなに早く動けんだよ!
ケイは、チラッと状況を確認すると、すぐさま長剣を抜き、今まさに振り下ろされようとしている包丁を受け止めた。
いきなり現れた乱入者にハイオークも冒険者たちも驚いたようだが、ハイオークが対応するのは早かった。
受け止められた包丁を再び振り上げ、おそらく気力が込められたであろう一撃をケイに喰らわせようと動き出す。
対してケイは後ろにいる冒険者を庇っているので回避できない。
ハイオークは自分の膂力に自信があるのか、小細工も何もせずにただ振り下ろした。
が、ケイも負けてはおらず、両者の力は拮抗し少しの間包丁と長剣を挟んだ睨み合いが続く。
先に動いたのはケイだった。
刃を滑らせながら横に回避し、ハイオークが包丁を振り下ろした隙を狙って首を切りつけようとする。
が、ハイオークの首を斬ろうとした刃は硬い皮膚に阻まれ、少しの傷しかつけることができなかった。
クソッ、焦って首から斬りに行ったのが間違いだった。半端なく硬い。首の薄皮を斬ったぐらいだぞ。
倒すことを考えるのは最終手段だ。
まずは逃げろ。後ろのヤツら連れて逃げる方法をかんがえろ!
ケイが方針を決め、再びハイオークと向き合う。
と、ハイオークが口を開き、腹の底から震えるような声を出す。
ーオォォォオオオオオォォォォォオォォオオォォ‼︎‼︎‼︎‼︎
直後、体が硬直し動かなくなる。
くそっ、スキルか!マズいマズいマズい!
魔物にもスキルを持つ存在は確認されている。
端的に言えば、魔物と人の違いなど無いのだ。
ただ人は、文明を築いているだけで、他にも文明を持つ魔物だっている。
ただ、魔物が使うスキルは謎が多く、発現する条件もまだわかっていない。
まれに知能を持ち、人と共生している者もいるが、その者達に聞いても皆口を揃えてこう言うのだ。
『ある日突然頭の中に浮かんできた』
と。
ケイの動きをとめたハイオークは、すかさずケイに包丁を振りかざす。
が、ケイは【乱魔】を展開。
硬直を解除し、ギリギリハイオークの攻撃を回避した。
危ない、さっきのが魔力を使った技で助かった。
しかし、厄介だ。多分だが、声を使ったスキルだろうから耳栓でもしない限り防げない。
一応予備動作があるっぽいから対処しようがないわけでも無いのが救いか。
どう逃げる。さっきの他にどんなスキルを持っているかわからないから、背を向けるのは危険だ。
と、ハイオークは徐にケイから視線を外し、冒険者の方を向く。
ケイが自分を殺そうとしていないことが判ったのだろう。
それを見てケイは考えを改める。
俺が殺意を向けず逃げようとすればハイオークはあの人達を殺す。
逆に言えば、おそらくこのまままともに逃げれば追いつかれて俺は死ぬだろう。
そして、俺が戦う覚悟を決めればハイオークは俺と戦い、冒険者は助かるかもしれない。
試しているんだ、あいつは。
俺が選ぶ選択を。そして、飢えている。
強者に。戦いに。そして、敵意に。
ケイは、ハイオークがニタリと笑っているような気がした。それは幻覚だったのかもしれないが、ケイの目にはある一つの言葉が浮かんでくる。
生き延びる策などない。
戦え。その命尽きるまで。
殺せ。目の前の命尽きるまで。
奪え。その命枯れ果てるまで。
ケイはその時、確かにカチリ、と言う音を聞いた。
イメージするんだ。魔力を周囲に展開し、それに触れてできた波を感じとるイメージ。
ケイから放たれた微細な魔力は平原を駆け回り、周囲の情報をケイに伝えてゆく。
【探索】と呼ばれるその魔法は魔力を伝い、様々な感情をケイの元へと届け続け、ケイは周辺の環境を把握した。
「人間の子供サイズのが3…9!」
ケイは声に出して自分に言い聞かせ、平原を駆け出す。途中で腰に下げた短剣を抜き、気配の主を目視で確認する。
やっぱりゴブリンか。ここらへんにいるのはこいつぐらいって言ってたしな。
腕試しには好都合だ。
ケイがそんなことを考えながらゴブリンに斬りかかる。まず一体の首を落とし、鮮血を周囲に撒き散らす。そしてその周りにいた他の2体があっけに取られている間に連続して首を落とした。
「まず3体!」
最高だ!この、確かに殺したものが糧となっていることを感じる瞬間!治らない高揚感!入り込んでくる気力を確かに感じる。
いつぶりだろうか、こんなに気分が良いのは。
ふとしたそんな思考につられ、過去の記憶が蘇ってくる。
暑い夏の日差し。無邪気に笑うその笑顔にどれだけ救われたことか。
ケイは決意を新たに、次の敵へと意識を向ける。
そうだ、見失うなよ、俺。
アオイを救うんだよ。今度は俺が救う番だから。
次の敵は気配からしてゴブリンがあと6体だ。
これだけ数がいれば、おそらく攻撃のチャンスを与えてしまう。
多分大丈夫だと思うが、準備するのに越したことはない。
そう考えたケイは短剣に向き合い奇跡を起こすための言葉を発する。
「万象に宿りし魂よ」
「万物に宿りし魂よ」
「我がスキルに呼応し」
「その力を宿せ」
「その力の名は【鋭利】」
これは例の決闘の時使われたスキルの一つで、武器の切れ味を上げることができる。
ギリギリ付与することができるものだ。
幾何学的で幻想的な青白い光の粒が短剣に吸い込まれ、定着していく。
何度見ても飽きない神秘的な光景に若干見惚れながらケイは準備万端と言わんばかりにまた駆け出した。
~
ゴブリンを狩り終わったので、ケイは少し奥にある森へと足を運ぶ。
森と言うよりは林と呼ぶべきなそこでまた【探索】をし、人よりも一回り大きな気配を察知する。オークだ。
オークは食用としてその肉は広く知られており、そこそこの値段で取引される。魔力や気力を多く持っている個体の方が美味らしい。
気配の感じ、これはあんまりな感じだ。
とりあえず殺すか。
ケイは気配の主に肉薄し、踊るようにオークの足の腱を切り裂き、移動手段を潰す。
オークはなまじ賢いことで有名なので、強敵から逃げる脳みそぐらいは持ち合わせている。
オークは逃げられないことを察したのか反撃に出ようとするがもう時すでに遅し、ケイの短剣はオークの首元を穿ち切り裂いていた。
流石に切り落とせないか。長さと斬撃の威力が足りないな。長剣を使うか?んー…別に短剣にこだわる理由もないな。よし、使おう。
そう考えたケイは短剣を鞘に収め、左側にさげた長剣に手をかざす。
そして奥に潜むオークに目線を向け、再び【探索】でその動向を探る。
先のオークが倒れたときの音に惹きつけられてこちらに向かっているようで、ケイは一言好都合、とだけ呟き剣を抜いた。
こちらに向かう二体の暴力の体現者。
その気配を感じ取りながらケイは木々に混じり好機を伺う。
できるだけ速く、鋭く、オークを殺すための刃を作るため気力を流し込み、準備を完了させた。
そしてついにきた好機。ケイは全力の踏み切りで勢いをつけて前にとび、そのままの勢いでオークの首を落とした。
しかし、もう一体は黙ってはいない。
卑怯な手により奪われた同胞の仇をとるため、全力の大振りを繰り出す。
ケイはその攻撃を踊るようにしてギリギリのところで回避、そのままオークの手首を切り落とした。
フォーゲンタット流の極意はその動きだ。
踊るようにして最小の動きで相手を断つ。緩急のついたその動きは相手を翻弄し、なかなか攻撃を当てることはできない。
そして武技には防御や素早く相手の背後を取ろうとするものが多い。
オークは距離を取ろうと背を向けるが、ケイがその隙を逃すはずもなく即座に首が落とされた。
案外あっけなかったな。二匹でもわりと楽だ。
と、森の奥から地響きが鳴り起こる。
ケイは即座に【探索】を展開、周囲の状況を把握する。
そこにはものすごいプレッシャーを放つ化け物がいた。
情報にはない巨大な反応に困惑しながらも、このぐらいなら行けるか、とケイは長剣を抜刀し物陰に身を潜めた。
~
先ほどオークを狩った場所から少し行ったところにその化け物はいた。
赤黒い肌に真っ黒なツノ。
姿形から、ケイはハイオークだと判断した。
なんでこんなところにこんな化け物が…
マズいな、俺じゃ多分負ける。早くギルドに報告しなくちゃ、被害が出るぞ。
と、背後から複数の人の気配がすることに気づく。
気配や体運びからしてハイオークを殺せるほどの戦力であるとは到底思えないとケイは感じた。
ケイは急いで音を立てないようにその者たちのところへ向かい、事情を話そうとするが、その前にハイオークが彼らを見つけてしまったようだ。
ーーグオオォォォォォォォォォオオオ‼︎‼︎‼︎
ものすごい雄叫びをあげながらハイオークは彼らの元へと向かっていく。
ケイも気づかれぬようにしてハイオークを追った。
~
ハイオークが目視で見えた頃、彼らは慌てて陣形をとっていた。
「ルミア、早くバフを!もうくるぞ!」
「わかってる!【祝福】!」
そんなことをしている間にハイオークは急停止し、手に持ったハイオークから見ても巨大な包丁を振りかざし冒険者を襲った。
その一撃は先ほど強化してもらっていた人の右腕を引きちぎり、大地にヒビを入れる。
冒険者は起こったことを信じきれ無いような顔をし、自分の運命を呪いながら意識を失った。
他の4人も唖然としていて、これは戦いではなく、ただ自分が狩られていくショーなのだ、と気づきただ順番を待つかのように茫然と立ち尽くすだけだった。
~
クソッ!なんであいつあんな図体とでかい包丁持ってあんなに早く動けんだよ!
ケイは、チラッと状況を確認すると、すぐさま長剣を抜き、今まさに振り下ろされようとしている包丁を受け止めた。
いきなり現れた乱入者にハイオークも冒険者たちも驚いたようだが、ハイオークが対応するのは早かった。
受け止められた包丁を再び振り上げ、おそらく気力が込められたであろう一撃をケイに喰らわせようと動き出す。
対してケイは後ろにいる冒険者を庇っているので回避できない。
ハイオークは自分の膂力に自信があるのか、小細工も何もせずにただ振り下ろした。
が、ケイも負けてはおらず、両者の力は拮抗し少しの間包丁と長剣を挟んだ睨み合いが続く。
先に動いたのはケイだった。
刃を滑らせながら横に回避し、ハイオークが包丁を振り下ろした隙を狙って首を切りつけようとする。
が、ハイオークの首を斬ろうとした刃は硬い皮膚に阻まれ、少しの傷しかつけることができなかった。
クソッ、焦って首から斬りに行ったのが間違いだった。半端なく硬い。首の薄皮を斬ったぐらいだぞ。
倒すことを考えるのは最終手段だ。
まずは逃げろ。後ろのヤツら連れて逃げる方法をかんがえろ!
ケイが方針を決め、再びハイオークと向き合う。
と、ハイオークが口を開き、腹の底から震えるような声を出す。
ーオォォォオオオオオォォォォォオォォオオォォ‼︎‼︎‼︎‼︎
直後、体が硬直し動かなくなる。
くそっ、スキルか!マズいマズいマズい!
魔物にもスキルを持つ存在は確認されている。
端的に言えば、魔物と人の違いなど無いのだ。
ただ人は、文明を築いているだけで、他にも文明を持つ魔物だっている。
ただ、魔物が使うスキルは謎が多く、発現する条件もまだわかっていない。
まれに知能を持ち、人と共生している者もいるが、その者達に聞いても皆口を揃えてこう言うのだ。
『ある日突然頭の中に浮かんできた』
と。
ケイの動きをとめたハイオークは、すかさずケイに包丁を振りかざす。
が、ケイは【乱魔】を展開。
硬直を解除し、ギリギリハイオークの攻撃を回避した。
危ない、さっきのが魔力を使った技で助かった。
しかし、厄介だ。多分だが、声を使ったスキルだろうから耳栓でもしない限り防げない。
一応予備動作があるっぽいから対処しようがないわけでも無いのが救いか。
どう逃げる。さっきの他にどんなスキルを持っているかわからないから、背を向けるのは危険だ。
と、ハイオークは徐にケイから視線を外し、冒険者の方を向く。
ケイが自分を殺そうとしていないことが判ったのだろう。
それを見てケイは考えを改める。
俺が殺意を向けず逃げようとすればハイオークはあの人達を殺す。
逆に言えば、おそらくこのまままともに逃げれば追いつかれて俺は死ぬだろう。
そして、俺が戦う覚悟を決めればハイオークは俺と戦い、冒険者は助かるかもしれない。
試しているんだ、あいつは。
俺が選ぶ選択を。そして、飢えている。
強者に。戦いに。そして、敵意に。
ケイは、ハイオークがニタリと笑っているような気がした。それは幻覚だったのかもしれないが、ケイの目にはある一つの言葉が浮かんでくる。
生き延びる策などない。
戦え。その命尽きるまで。
殺せ。目の前の命尽きるまで。
奪え。その命枯れ果てるまで。
ケイはその時、確かにカチリ、と言う音を聞いた。
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