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好きな人とエレベーターに閉じ込められたら、人はどうなりますか。

色々と我慢を強いられています。(拓海くんの場合)

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うーん、これはまずい。

俺の首に頭を擦り付けて怯えてる猫みたいな伊藤に鼻血が出そうだ。

まず何がまずいって、この身体の柔らかさだ。

男なのにゴツゴツしてなくて女みたいに柔らかいってどういう事なんだよ。

痩せてるのに程よく肉がついてて、触り心地が良いのが俺の貸したパーカー越しでもわかった。

伊藤の髪が頰をくすぐるたび、スウェットの中のモノが緩く勃ち上がるのはまずい、変態だとバレる。いや、そこは否定しない、うん。

これはきっと、『停電して怖がって伊藤が俺に抱きつかないかな』なんて思った俺への神様からの罰なんだ。

…いや、罰なようで俺得なだけだけど。

エレベーターに閉じ込められた時、俺も伊藤も閉所恐怖症じゃないとは思ってた。

そうじゃなきゃ、こんな所に閉じ込められたら確実に発狂してる。

突然暗くなった時順応するまで鳥目になってしまって、目が慣れるまで周りが少しも見えなくて焦った。

ポケットのスマホに気がついて取り出してライトをつけても、到底伊藤が安心できるほどの明るさはなかったから、とっさにペットボトルを上に置くとペットボトル全体が光って明るくなった。

うずくまって泣いてる伊藤は可哀想に暗いのが怖いのに目を瞑ってて、俺を呼んで手を伸ばした。

「おい、ほら電気ついてるから目、開けてみろって、伊藤ー?」

聞こえてないのか青い顔をしてる伊藤の手をとっさに掴むと、汗ばんだ手で強く握り返してきた。

その泣いてる顔が、痴漢されて怖くて泣いてる時の顔とダブって、俺はあの時の事を思い出す。

あの時の痴漢、最初伊藤を女だと思ったのかも知れないけど、今思えば間違えても仕方ないくらい伊藤は女の子に見えたし、おまけに触りこごちも良かっただろう。

いや、あの時の痴漢は本気でフルボッコにしてやりたいくらい腹立ったけどな!

だってあのおっさん、伊藤が電車に乗って来た瞬間から目をつけてて、すぐ後ろにぴったり張り付いてたの最初から見てたからな、変態め。

あの日高校受験だったのにあんな目に遭って、降りる駅から多分、同じ高校を受けるんだとわかった。

出来れば試験会場まで一緒に行きたかったのに駅で見失ってしまって、でも高校の入学式で伊藤を見かけた時すごくほっとしたのを覚えてる。

見た目によらずメンタル強いじゃんって軽く感動したし。

「ごめん、本当、成瀬いて良かった…」

俺は伊藤のこの言葉にふっと笑みを零したけど、伊藤やっぱりちょっと世間知らずかも知れないって思う。

多分伊藤は俺の邪な感情に気付いてないし、俺が伊藤に欲情してるのも気付いてない。

それどころか、偶然一緒に閉じ込められただけの俺の事を『いて良かった』とまで思ってくれてる。

今の所、俺は失敗してないように思うけど、罪悪感は結構ある。

「落ち着いたか?ほら、そんなに泣くと水分無くなるから。そうだ、ミネラルウォーターひとつ開けよう。ちょっとでも飲めよ」

ああ、このままくっついてたら本当にまずい。

こんな狭いエレベーター内で何するかわからない。俺は性格に裏表がないとよく言われるけど、下心はかなりあるからな。

今の所、伊藤にとって俺の評価は爆上がりだと感じるのに全て台無しにしてしまいそうだ。

このままエレベーターで友達になって、ここを出たら少しずつ距離を詰めていって…最終的に好きになってもらう計画を頭で考えて気を逸らす。
そうだ。焦ってはだめだ。

「ちょっと待って、えと…」

俺の首から腕を離そうとしない伊藤の心臓が早鐘を打っているのは、未だ暗闇での恐怖が消えなくて不安定なせいだろう。

「もうちょっと…成瀬にくっついてたら落ち着くから、その、このままじゃだめ…?」

おーい、俺はぜんっぜん落ち着かないぞ!!
理性が飛びそうで、早く伊藤を落ち着かせてくださいって俺は神様に祈った。

それでもよしよしと頭を撫でて、スウェットの中が勃ち上がらないように他の事を考える。

しばらくそうしてると落ち着いたのか、やっと伊藤が胸を押して離れてくれた。

ぬくもりがなくなったのはちょっと寂しいけど、助かったと思って伊藤の顔を見た瞬間、やっぱ俺だめだって思った。

恥ずかしいのか赤くなった頰と、泣き腫らして赤くなった目と、何か言いたげな唇。

「心細いからその、手…繋いでてもいい?」

「…ん、わかった。じゃあ隣、座るぞー?」

何でもない振りってこんなに難しいの知らなかった…俺、基本単純だからなぁ。

落ち着け、俺。何かやらかしてもここから逃げられない伊藤がどうなるか考えて、自分を諌めるようにぴったりとはくっつかず少し離れて右隣に座る。

左手で伊藤の右手を繋ぐと、俺の手が汗ばんでるのか伊藤の手が汗ばんでるのかわからないけどしっとりしてて、それでも構わずしっかり握りしめた。

ああ、今俺、めちゃくちゃ伊藤にキスしたい。
スウェットの中のモノは少し萎えたけど、俺が淫らな妄想をしたせいでまた芯を持ち始めたからブランケットを半分借りて隠した。

やばい、俺って…思ったよりずっと変態だ。
思ったよりずっと伊藤の事を好き過ぎる。








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