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好きな人とエレベーターに閉じ込められたら、人はどうなりますか。

実はこちらも割と我慢しています。(陸くんの場合)

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うっわ、俺、何やってんの?

自分から抱きつくなんて、子供じゃあるまいし恥ずかしい…成瀬に呆れられちゃう。

成瀬は涼しい顔…かどうかはよく見えないけど、声色は普通で、首筋から香る成瀬の汗の匂いが急に俺の身体を狂わせた。

嘘だろ…!?俺、こんなとこで何、勃っちゃってんの…!?外でこんな事今まで一度だってなかったのに!!

俺の下半身は、成瀬に借りたぶかぶかのパーカーで隠れてるから見えないけど、変態過ぎる。

俺は小柄で見た目は女の子に間違えられがちだし、自分ではそっち方面に関しては淡白だと思ってたけど、好きな人に触れてるとこんな風になってしまうんだと初めて知った。

成瀬とはさっきまでエレベーターの端から端まで距離があったのに、今はこんなに近くて息遣いまで感じられて…。

背中をぽんぽんされて頭を撫でられてる所を見ると完全にお子ちゃま扱いぽいのに、俺だけ欲情してるなんて変態だ。

ブランケットに隠れた下半身には熱が篭るけど、動かなければ気が付かれる心配もないだろうとタカを括って、俺はこの非日常を噛みしめる。

あんなに恋焦がれてた成瀬を抱きしめてるなんて、こんな事ありえないんだから。

……あわよくばこの熱を解放して欲しいなんて思ってる事がバレたら流石にドン引きされて終わりだ…怖い。

成瀬の首に縋っていつの間にかどんどん芯を持つ下半身が重くて、俺は目を閉じる。

ああ、ずっとくっついてたいけど危険過ぎる。
でもまだ離れたくない。

「落ち着いたか?ほら、そんなに泣くと水分無くなるから。そうだ、ミネラルウォーターひとつ開けよう。ちょっとでも飲めよ」

確かにさっきの恐怖で喉はカラカラで少しだけ飲もうとは思って頷くけど、俺はもう少しだけこうしてたくて葛藤する。

「もうちょっと…成瀬にくっついてたら落ち着くから、その、このままじゃだめ…?」

落ち着くなんて嘘ばっかりついてるけど、背中に回された手が心地良くてもう少しこのままでいたかった。

成瀬の身体は運動部に入ってるせいかガッシリしてて、俺みたいな華奢なタイプじゃないから筋肉も程よくついててすごく男らしい。

自分が女みたいな容姿のせいか、男を感じさせる体つきが羨ましくもあり、昔から憧れていたのかも知れないと思った。直接触りたい…。

しばらくそうしてると限界を感じたので胸を押して離れると、成瀬はほっとしたようにこっちを見て笑った。

邪な考えなんかなさそうな爽やかな微笑みに、純粋に心配してくれてそうな裏表のない性格の成瀬がめちゃくちゃ眩しすぎてへこんだ。

「心細いからその、手…繋いでてもいい?」

普通に考えて手を繋いでもらうなんて子供でしかないのに、離したくなくて思わずそう言ってた。

「…ん、わかった。じゃあ隣、座るぞー?」

しかも成瀬はウルトラスーパーポジティブで優しいから、特に嫌がる事なく手を繋いでてくれるんだから本当、いつか悪い女に手ひどく騙されるんじゃないかって余計な心配も生まれた。

俺だったらずっと、成瀬だけを好きでいるのになぁ…。俺が幸せにしてあげたい。

少しだけ離れて俺の右隣に座ってくれた成瀬は、本当に手を繋いだままでいてくれて、2人で1枚のブランケットを使ってドキドキした。

成瀬が片手で器用にミネラルウォーターを開けてくれて、俺はそれを受け取って一口だけ飲んだ。

やっぱりトイレが気になって一口しか飲まずに成瀬に返すと、成瀬はそれに口をつけないで器用に水を流し込んだ。

俺の口がついたペットボトルが嫌なのかと思って心配になると、成瀬はペットボトルの蓋をして俺に手渡そうとしてくれる。

成瀬は俺がショックそうな顔をしてるのに気がついて少し考えた後、気が付いたように言う。

「あ、違うんだ。人が口つけたの嫌だったりする人いるから、シェアする時はこうやって飲むの癖なんだよな。俺は伊藤が口つけてても気にならないんだけど、潔癖みたいで感じ悪かったよな、なんかごめん」

優し過ぎる……!!胸がきゅんて鳴る音が本気で俺には聞こえたような気がした。

「俺は、成瀬が口つけても全然平気…うん」

「そっか?じゃあ今度は口つけてもいい?俺、ちょっと喉渇いてるんだよなー」

お菓子食い過ぎなんだよな、なんて笑って口をつけて水を飲んだ後、ペットボトルの蓋をして俺のそばに置いてくれる。

手を繋ぎながら少しの沈黙と、離れてもまだ芯を持つ俺のブランケットの下。

こんな状況下でまだ抱きしめて欲しいって思ってる俺はやっぱりどこかおかしくなってる。

頭に血が上ったようになってる事に気が付いて絶望する。

なんでこんな時に、俺の悪いところばっかり露呈してしまうんだろう…。

「おい、ちょっといいか?」

「…え、な、何?」

「………手、なんでこんな熱いの?伊藤って平熱高い?」

真剣な目で俺を見る成瀬は、多分俺の異変に気付いてしまった。

「やっぱり寒かったんだろ?元から風邪引いてた?あー、体温計はないから測れないけど絶対お前熱あるぞ?まいったな…」

おでこに手を当てられて、熱があるのがバレてしまう。多分いつもなら37.5℃くらいの微熱だと思うけど、風邪なんかじゃなくて。

心因性のもので、ストレス性の熱なんだよね。
ストレス感じ過ぎるとぶあーって熱出しちゃう体質なんだ。

もう、さっきの停電でストレスMAXだったから…俺終わった…。カッコ悪過ぎる。

俺が泣きそうになってると具合悪くなったと思ったのか、ぐっと手を引っ張られて膝枕させられた。

「うぇ!?な、成瀬、何やってんの!?」

ため息をつきながら、もう一枚のアルミシートを俺に掛けてくれる。

「おい、もう横になって寝てろよ。喋らなくていいからさ。助けはちゃんと来るから、少しでも休んでろって」

こんな状況で好きな人の膝枕で寝ろって言われて寝れるはずなんてないし、もっと熱が上がっちゃいますけど!?



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