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好きな人とエレベーターに閉じ込められたら、人はどうなりますか。

俺の誕生日を知っていますか?(拓海くんの場合)※

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エレベーターに閉じ込められる事だって一生に一度あるかないか…いや、ほぼ大半の人が経験せずに過ごしていくものだと思うのに。

俺と伊藤がここに閉じ込められた事は偶然とかじゃなく運命だったらいいなって思った。

これがなければきっと何も変わらなかった、俺達。

俺の名前を時々呼びながら可愛い声を漏らす伊藤は、感じやすくてエロくて最高に可愛い。

でも口内を掻き回して歯列をなぞる度に勃ち上がっていく伊藤の下半身や、首に回るぎこちないけど大胆に触れる腕の感触。

そして何より、時折薄目を開けて盗み見る伊藤の蕩けた表情が、何とも思ってない奴に見せる顔に思えなかった。

伊藤、……俺の事好きなんじゃないのか?
いつから?まさか、痴漢を追っ払った時からとか言わないよな…?

それなら俺達随分とすれ違ってた事になるけど。

「んんっ、はぁっなるせ…っ、も…」

快感で頰を染めた伊藤の顔はとにかく色っぽくてたまらなくて、俺は気を抜くとめちゃくちゃにしてしまいそうな欲求を抑えて唇を離した。

酸欠な伊藤が息を整えるのを待って、熱っぽい身体をゆっくりアルミシートの上に押し倒す。

「な、成瀬…?も、寝るの?」

「いや、俺全然眠くないから、エレベーター動くまでこうしてようかと…」

勃ってしまったアソコを隠そうと少し横になる伊藤の隣に寝転がって顔を覗き込んだ時、赤く染まる頬になんとなく確信が持てた。

俺はお前の事結構知ってるよ?
だって俺がお前を好きだから。

血液型がA型な事。
誕生日が10月13日な事。
部活はやってなくて塾に行ってる事。
彼女はいなくて、どっちかっていうと男から告られる事が多い事。
毎日お昼に購買のいちごオーレを飲んでる事。
よく俺がサッカーしてる時グラウンドを3階の窓から眺めてる事も。

俺の告白、ちゃんと聞こえてる?

「陸」

そう呼ぶと伊藤は涙を溜めて溢れそうになるのを我慢している。

俺はこの顔に弱い。
痴漢に遭ってるのを見た時助けてあげたいと思ったのは伊藤が泣きそうなのに必死に耐えてたから。

ムードも何もない俺の告白を、伊藤はどこまでも信じられないという顔をして聞いてる。

「お前も俺の事、好きだろ?」

少しの沈黙の後、なんか違うと思った俺は伊藤が返事をする前に止めた。

「あー、なんか調子こいた奴の告白みたいになった。やり直し…」

ごほん、と咳払いして、ちょっと考えて質問を変えてみる。

「俺の誕生日はいつでしょう?」

少しだけ迷った顔をしてた伊藤は、ちょっとの間の後小さな声で言ってくれた。

「……………4月18日…」

「ん、正解」

勘違いじゃなくて良かった、と心の中でガッツポーズをする。

隣のクラスのほとんど喋った事もない奴の誕生日なんて覚えてるわけがない。

俺が特別って事だろ?
つまり俺の事、好きって事だろ?
これからはお前の事、名前で呼んでいいんだよな?

「じゃあ俺達、両想いって事で……はい、おいで」

「…………は?」

きょとんとした顔をする陸を俺は抱きしめて、髪の毛に軽くキスをした。

「あっためてあげるから。な?」

「え?あ?や、いいよ、無理」

「なぁんでだよー。俺の事好きなんだろ?」

「す、好きだけどっ、何だよ、成瀬……態度変わり過ぎだろ!?」

「俺は元々こうだよ。裏表ないってよく褒められるし」

陸はちょっと困った顔をしてるけど、俺は少し起き上がって陸の顔を覗き込んで髪を撫ぜた。

相変わらず冷えピタがアンバランスで間抜けなんだけど、可愛いからこのままでいい。

「陸のココ、辛かったら出す…?」

これ以上ないくらい顔を真っ赤に染めて、何も言えず身体を強張らせる陸の耳元で囁いた。

「………!?な、なるせ…!?」

「何だよ、付き合ったんだから下の名前で呼ぶだろ?普通」

「は?いや、えっと、そこ?」

「はい、呼んで」

「た、くみ、くん」

「なんで片言なんだよ。しかもくん、いらねー」

「………拓海?」

「なんで疑問形なの?」

「あー、もう、面倒くさいなっ!拓海!」

少し怒った声を出す陸の頰に手を当てて、また聞いてみる。

「キスしてもいい?」

「それ、ずっと聞き続けるつもりかよ…」

「そうだなぁ、聞いた時の陸の反応が可愛いからしばらくは…」

「拓海」

急に真面目に名前を呼ばれて黙ると、陸は困ったような声色で続ける。

「エレベーターの中でそういう…なんていうか、淫らな行為をすると匂い篭るだろ?だから、その、ここから出られた時…何やってたか多分バレる」

それはそうだけど、俺が飲めばいいかな?とか思ったりしてる変態な俺。

でも俺のを陸に飲ませるわけにいかないしな…って思ってると思い出した。

「あー!俺いいもん持ってるんだった。姉ちゃんに頼まれたんだよなぁ」

コンビニの袋から取り出したのは頼まれてた無臭の消臭スプレーで、それを渡すと陸はあからさまに困った顔をした。

「や、これトイレ用じゃん。あ、でも無臭だからそんな変わんないか……えーと…」

俺の首に手を回した陸は、俺の身体を引き寄せながら呟いた。

「成瀬、俺ともう少し淫らな行為……する?」

「え?なんで成瀬に戻ってんの?」

「だって俺、『なるせ』って名前の響きがめちゃくちゃ好きで…ずっと呼んでみたかったんだ。だから、今日は成瀬がいい…」

俺が返事もしないで激しく陸の唇を塞いだのは、不可抗力だと思う。




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