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好きな人とエレベーターに閉じ込められたら、人はどうなりますか。

エレベーターから出れたら何をしますか?(拓海くんの場合)

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自分の名前なんて今まで特に好きではなかったし、当たり前みたいに何度も誰かが俺の名前を呼ぶのを聞いてきたけど。

陸に『成瀬』と呼ばれると、自分の名前がすごくいい苗字のような気がしてくる。

こんな所でする事じゃないとわかってるけど、俺とのキスだけで感じてくれる陸が可愛くて、つい直接触ってしまった。

下着やズボンを脱がしたのは、精液がついてしまわないようにと配慮したつもりだったけど、脱がしてって言ったのは陸の方からだからな。

可愛らしく射精した陸の後処理をさっと済ませて、くったりしてる陸の唇をまた塞いだ。

陸は多分俺みたいに考えなしではないから、この状態でエレベーターが動いた時の事を考えたらきっと…。

目を閉じてキスしていたのに、陸が身体をビクつかせて俺の身体を押しやった。

「なるせ…っ、今、電気…ッ」

え?と思って目を開けると、エレベーターの電気が少しチカチカ点滅して、また消えた。

ああ、これはまずい。
せっかくいい雰囲気だったのに、陸が我に返ってしまう。

「お、俺めっちゃ今嫌な事考えちゃった。このまま電気が通って、エレベーターが一番近くの階に止まってドアが…開いたら…?」

「あー、陸、不吉な事は言葉にすると現実になるんだぞ」

「だって俺、さっき全部の階のボタン押したんだって!俺、こんな所誰かに見られたら死ぬ!」

いやいや、死なれたら俺めっちゃ困る。

「大丈夫だって。まだ2、3時間かかるって言ってただろー?」

それに俺はここのマンションの住人だし、俺こそ恥ずかしくて引越しするしかなくなる案件だ。

「実は今、どっかの階の扉の近くに停まってて、俺の馬鹿みたいな声が誰かに聞かれてたら…?」

「いや、めっちゃ可愛いから大丈夫なのに」

「はぁ?そんなわけないだろ、成瀬の感覚おかしい!!」

こういう時、誰かに見られるかもとかそういうスリルを楽しめる性格じゃないのが陸らしいけど。

「あっ、成瀬!?なんで俺のズボン脱がしてんだよ、変態!」

「陸が脱がせって言ったんだけど」

「ちが、全部脱がせなんて言ってない!」

「わかったよ、ここまでな」

脱がしたズボンと下着を渡して、陸がしっかり履き終わるのを待って、壁際に座る。

「成瀬、さっき拭いたやつ、簡易トイレに入れて密封したら消臭されるかな…」

「わかったわかった、やってやるから。陸はこれな」

消臭スプレーを渡すと、陸はおもむろに空間にしつこく消臭スプレーをかける。

「成瀬、まだ匂いする?」

「よくわかんないな。なんかトイレに居る気分…」

「だってこれ、トイレ用だから仕方ないじゃん」

「これ、ライターとかつけたら、爆発するかもなぁ。そんな事件、どっかであったろ?」

未だ芯を持ってるアソコを隠してるのがちょっと辛いけど、陸の淫らな姿が見れたしいいかと他の事を考えようと努める。

身支度を整えた陸は所在なさげに座った。

「……あの、成瀬は、出さないの?」

あ、それ聞くんだ。
流石の俺もこの流れで俺も出したいとか言わないぞ?

「ここ出たらトイレ行くからいい。停電早く解消されてエレベーター速攻開いて見られたら困るんだろ?」

自分で言っておいて結局俺の心配をする陸は目が泳いでるけど、陸が俺を好きだとわかったから持ちこたえられそうだと思った。

「ごめん、俺ばっかり…」

しゅんとしてしまった陸がかわいそうで、笑いながら手を掴んで引っ張って隣に座らせた。

「寄っかかってていいよ。熱あるのに変な事して俺こそ鬼畜みたいでごめんな」

元々こんな所で陸とどうこうなろうなんて思ってないし、実を言うとゴムもローションもないから現実的に無理だったりする。

冷えピタの上からおでこにキスをすると、くすぐったそうに目を閉じて俺の左手をそっと握ってくれる。

「成瀬ともっとしたかったのにな…」

お、そういう事言う?
そういう事は出来れば黙ってて欲しいんだけど。

天井を見るとやっぱりまだ電気はつく気配はないけど、ランタンの灯りが天井に写ってなかなか綺麗だった。

「早くここ出たいな」

「…成瀬、俺といるの…嫌になった?」

「いや、早くここ出て、ちゃんとしたとこでお前の事抱きたいなぁって…」

つい本音が出てしまうけど、これくらいいいよな?

「…………あの、もっとオブラートに包んで言ってくれない?」

笑いながらブランケットを2人で掛けて、陸と目が合って繋いだ手の指を絡ませただけで、恥ずかしそうに頰を染める。

ん?と顔を覗き込む俺に、陸は手をぎゅっと握りながら囁いた。

「ここから出れたら送ってってくれるんだよね?」

「…そうだな、さっき約束したからな」

「あのさ、今日…家に誰もいないんだよね。うちの親、旅行中なんだ」

「ふーん、そうなの?」

「そしたら成瀬、帰るの面倒だろ…?家にその、泊まってく…?」

それはここを出たら、俺と最後までする覚悟で言ってるのか測りかねてちょっと返答に困る。

「………いいのか?」

ちょっと真面目な顔で聞くと、うんと頷いてくれる。

でも、ゴムもローションも俺の部屋にはあるけど陸の家にはないだろうと思って少し考える。

「俺の家に、ちゃんとその、あるから。最低限の物は」

「えぇ!?なんで持ってんの?」

食い気味に肩を掴むのは、まさかの陸が実は経験ありなのかと焦ったから。

これ以上ないくらい顔を真っ赤に染めて、陸は呟いた。

「え?だって、いつか成瀬としたいと思ってたから、通販で揃え……わ、ちょ、何!?」

可愛くて抱きしめると苦しそうに陸が呻いたけど、ずっと抱きしめてると背中に手を回してくれた。

「あーもう…お前なんでそんなに可愛いの?」

「え?どこに可愛い要素あったんだよ、成瀬、やっぱちょっと感覚変だよ…」

自分が辛くなるのはわかってるけどどうしてもくっついていたくて強く抱きしめる。

ここから出たくないと思っていた閉じ込められた当初の俺を殴りたい。

ここを出れたら陸を抱けると思うと、今度は一刻も早く停電が回復してくれる事を俺は神様に祈った。





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