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3rd round after
第66話「三周目〜朝〜」
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柔らかな光を感じて、心乃香は目覚めた。空気中の埃が、象牙色の天蓋の隙間から差し込む朝日に照らされて、キラキラと舞っている。
(……ここは、どこだっけ)
心乃香は寝ぼけまなこで、ゆっくりと辺りを見渡そうとした。
「おはよう。やっと起きたか」
すぐ近くで、少し低い穏やかな声がして、心乃香は心臓が止まり掛けた。恐る恐るその声が発せられた方へ、視線を遣る。肘をつき、頭を支えながらすぐ隣で、斗哉が横になり、呆れ顔でこちらを見ていた。
(なっ、どういう状況、これっ)
なんでコイツが隣に寝ているんだと、心乃香は呼吸するのを忘れそうになるくらい、ビックリした。
(夢だ――私、まだ夢を見ている)
心乃香がそう思い込もうとした時、斗哉は心乃香の心を読むように呟いた。
「夢じゃないよ」
「……あ、あの」
「まだ寝ぼけてるの? マジぐっすり寝てたんだな、人の気も知らないで」
はあっと溜め息を吐き、斗哉は心乃香に身を寄せると、心乃香の頭のすぐ上に手を伸ばした。心乃香はすぐ傍に斗哉の体温を感じて顔が熱くなった。心臓が早鐘を打つ。
(ちょ、ちょっと、待って、これどういう状態なのっ)
「ほら、眼鏡。窮屈そうだから外しといた。それ掛けたら少し頭も動くだろ」
斗哉はそう言うと、心乃香にそのまま眼鏡を掛けてやった。その時、部屋の外からゴーン、ゴーンと鐘の音がした。
「なんだろ。起きろって言う合図かな」
斗哉は天蓋の隙間から外を覗いた。そのままよっと起き上がり、「見て来る」と短く言い残し、天蓋の帳を上げると外に出て行った。心乃香は斗哉を呆然と見送ることしかできなかった。
(何、今の。……リア充、怖っ)
一夜を共にしたようなその斗哉の大人びた雰囲気に、心乃香はリア充の恐ろしさをマジマジと感じた。いや一夜は共にしたんだと、はっと心乃香は自分の体を見る。特に浴衣に激しく乱れたところはない。
(いや、何かされたら、流石に気が付くでしょっ。なに考えてるの、私っ。それに)
心乃香は、昨晩の斗哉の捨て台詞を思い出した。
『そんな心配しなくても、お前なんかに手、出さねーよ』
(そりゃ、そうだ……私、どうかしてた)
心乃香は急に現実を取り戻したように身を起こし、すくっと立ち上がった。心乃香が天蓋の外に出ると、漆塗りの衣装箱の中に、自分が着て来た服が綺麗に畳まれて置かれていた。
***
心乃香は自分の服に着替えると、部屋を後にした。外はすっかり晴れていて白木の廊下を進む。アイツはどこまで行ったのだろうと、周りを見渡しながら神殿に向かった。
しばらくすると、空腹をくすぐるいい香りが漂って来た。心乃香はその香りに誘われるように歩いて行った。
***
「うえええあええ……ぎもじ悪い」
「完全に、二日酔いですね」
「猫って、酒飲んで大丈夫なの?」
そんな会話が聞こえて来て、心乃香は足を早めた。ちょうど昨晩、夕餉を頂いた大広間に出た。
「あ、如月」
円座の上でへたり込んでいる黒猫を、斗哉と白が取り囲んでいる。斗哉の前とその隣の空席の円座の前に、お膳に乗せられた朝食が用意されていた。いい香りの原因はこれかと、心乃香は急にお腹が空いてきた。
つづく
(……ここは、どこだっけ)
心乃香は寝ぼけまなこで、ゆっくりと辺りを見渡そうとした。
「おはよう。やっと起きたか」
すぐ近くで、少し低い穏やかな声がして、心乃香は心臓が止まり掛けた。恐る恐るその声が発せられた方へ、視線を遣る。肘をつき、頭を支えながらすぐ隣で、斗哉が横になり、呆れ顔でこちらを見ていた。
(なっ、どういう状況、これっ)
なんでコイツが隣に寝ているんだと、心乃香は呼吸するのを忘れそうになるくらい、ビックリした。
(夢だ――私、まだ夢を見ている)
心乃香がそう思い込もうとした時、斗哉は心乃香の心を読むように呟いた。
「夢じゃないよ」
「……あ、あの」
「まだ寝ぼけてるの? マジぐっすり寝てたんだな、人の気も知らないで」
はあっと溜め息を吐き、斗哉は心乃香に身を寄せると、心乃香の頭のすぐ上に手を伸ばした。心乃香はすぐ傍に斗哉の体温を感じて顔が熱くなった。心臓が早鐘を打つ。
(ちょ、ちょっと、待って、これどういう状態なのっ)
「ほら、眼鏡。窮屈そうだから外しといた。それ掛けたら少し頭も動くだろ」
斗哉はそう言うと、心乃香にそのまま眼鏡を掛けてやった。その時、部屋の外からゴーン、ゴーンと鐘の音がした。
「なんだろ。起きろって言う合図かな」
斗哉は天蓋の隙間から外を覗いた。そのままよっと起き上がり、「見て来る」と短く言い残し、天蓋の帳を上げると外に出て行った。心乃香は斗哉を呆然と見送ることしかできなかった。
(何、今の。……リア充、怖っ)
一夜を共にしたようなその斗哉の大人びた雰囲気に、心乃香はリア充の恐ろしさをマジマジと感じた。いや一夜は共にしたんだと、はっと心乃香は自分の体を見る。特に浴衣に激しく乱れたところはない。
(いや、何かされたら、流石に気が付くでしょっ。なに考えてるの、私っ。それに)
心乃香は、昨晩の斗哉の捨て台詞を思い出した。
『そんな心配しなくても、お前なんかに手、出さねーよ』
(そりゃ、そうだ……私、どうかしてた)
心乃香は急に現実を取り戻したように身を起こし、すくっと立ち上がった。心乃香が天蓋の外に出ると、漆塗りの衣装箱の中に、自分が着て来た服が綺麗に畳まれて置かれていた。
***
心乃香は自分の服に着替えると、部屋を後にした。外はすっかり晴れていて白木の廊下を進む。アイツはどこまで行ったのだろうと、周りを見渡しながら神殿に向かった。
しばらくすると、空腹をくすぐるいい香りが漂って来た。心乃香はその香りに誘われるように歩いて行った。
***
「うえええあええ……ぎもじ悪い」
「完全に、二日酔いですね」
「猫って、酒飲んで大丈夫なの?」
そんな会話が聞こえて来て、心乃香は足を早めた。ちょうど昨晩、夕餉を頂いた大広間に出た。
「あ、如月」
円座の上でへたり込んでいる黒猫を、斗哉と白が取り囲んでいる。斗哉の前とその隣の空席の円座の前に、お膳に乗せられた朝食が用意されていた。いい香りの原因はこれかと、心乃香は急にお腹が空いてきた。
つづく
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