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第二章

第17話「アキラの告白」

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 俺は疑問に思っていたことを、素直にアキラに投げかけた。

 「……それじゃ、どうして、この山に?」
 
「暁生さんがこの山で、本当に神様に逢って願いが叶った……なんていうから……腹立たしかったの。どんな願いも叶うなんて……そんな都合のいいこと、あるわけないのに」
 
「アキラ……」
 
「私、延び延びになってた手術を受けることになってて……きっと暁生さん、私を励ますつもりだったんだろうけど……私の手術に対する不安を見透かされてるみたいで、すごく嫌だった……まあ、実際ビビってたんだけどね」

 ハハ……とアキラは、乾いた微笑みを浮かべた。

 俺は生まれてこのかた、病気らしい病気なんかしたことがなかったし、入院だの、手術だの……まるで別世界の話だった。

 手術を受ける前の患者の気持ちなんて、到底、分かるわけもなかった。
 
 ただ、あの気の強いアキラがビビるくらいだ……相当不安だったのだろう。

「大人たちはみんな……大丈夫だよって、私を慰めたけど……不安で……そんな言葉だけじゃ、信じられなかった。もし……手術が失敗して、今よりもっと面倒くさい体になったらどうしようって……今だって充分、普通の生活送れなくて、入院してるくらいなのにって……」
 
「そんなに体、悪かったのか?」
 
「まあね。ちょっとしたことでも、すぐ入院するくらいには」
 
「そうだったのか……」

 今のアキラを見ただけでは想像もつかないが、あの日の夜の、アキラの痛々しいくらい細くてもろそうな腕を思い出せば、確かに肯ける。

 小四の割に随分体が小さかったのは、体が悪かったせいなのかもしれない……

「……でも、健康な体も手に入れたかった。だから、試そうと思ったの」
 
「試すって、何を?」
 
「手術が成功するか……私がこの世界に、存在していてもいい人間なのか……自分の運を試したかった」
 
「それじゃ……」
 
「要はあの日、この山に願懸けしにきてたのよ」
 
「願懸け?」
 
「そう……もし、自分一人で、この山を登りきったら、手術は成功するって……」


 今、分かった……

 あの日、アキラが何故一人だったのか。

 なぜ、あんなバカな真似をしていたのか……そのくらいの無茶を乗り越えないと、自分の可能性を信じられなかったんだ。

 アキラのそんな気持ちを思うと、俺は急に胸が押しつぶされるように苦しくなった。


つづく
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