17 / 20
第二章
第17話「アキラの告白」
しおりを挟む
俺は疑問に思っていたことを、素直にアキラに投げかけた。
「……それじゃ、どうして、この山に?」
「暁生さんがこの山で、本当に神様に逢って願いが叶った……なんていうから……腹立たしかったの。どんな願いも叶うなんて……そんな都合のいいこと、あるわけないのに」
「アキラ……」
「私、延び延びになってた手術を受けることになってて……きっと暁生さん、私を励ますつもりだったんだろうけど……私の手術に対する不安を見透かされてるみたいで、すごく嫌だった……まあ、実際ビビってたんだけどね」
ハハ……とアキラは、乾いた微笑みを浮かべた。
俺は生まれてこのかた、病気らしい病気なんかしたことがなかったし、入院だの、手術だの……まるで別世界の話だった。
手術を受ける前の患者の気持ちなんて、到底、分かるわけもなかった。
ただ、あの気の強いアキラがビビるくらいだ……相当不安だったのだろう。
「大人たちはみんな……大丈夫だよって、私を慰めたけど……不安で……そんな言葉だけじゃ、信じられなかった。もし……手術が失敗して、今よりもっと面倒くさい体になったらどうしようって……今だって充分、普通の生活送れなくて、入院してるくらいなのにって……」
「そんなに体、悪かったのか?」
「まあね。ちょっとしたことでも、すぐ入院するくらいには」
「そうだったのか……」
今のアキラを見ただけでは想像もつかないが、あの日の夜の、アキラの痛々しいくらい細くてもろそうな腕を思い出せば、確かに肯ける。
小四の割に随分体が小さかったのは、体が悪かったせいなのかもしれない……
「……でも、健康な体も手に入れたかった。だから、試そうと思ったの」
「試すって、何を?」
「手術が成功するか……私がこの世界に、存在していてもいい人間なのか……自分の運を試したかった」
「それじゃ……」
「要はあの日、この山に願懸けしにきてたのよ」
「願懸け?」
「そう……もし、自分一人で、この山を登りきったら、手術は成功するって……」
今、分かった……
あの日、アキラが何故一人だったのか。
なぜ、あんなバカな真似をしていたのか……そのくらいの無茶を乗り越えないと、自分の可能性を信じられなかったんだ。
アキラのそんな気持ちを思うと、俺は急に胸が押しつぶされるように苦しくなった。
つづく
「……それじゃ、どうして、この山に?」
「暁生さんがこの山で、本当に神様に逢って願いが叶った……なんていうから……腹立たしかったの。どんな願いも叶うなんて……そんな都合のいいこと、あるわけないのに」
「アキラ……」
「私、延び延びになってた手術を受けることになってて……きっと暁生さん、私を励ますつもりだったんだろうけど……私の手術に対する不安を見透かされてるみたいで、すごく嫌だった……まあ、実際ビビってたんだけどね」
ハハ……とアキラは、乾いた微笑みを浮かべた。
俺は生まれてこのかた、病気らしい病気なんかしたことがなかったし、入院だの、手術だの……まるで別世界の話だった。
手術を受ける前の患者の気持ちなんて、到底、分かるわけもなかった。
ただ、あの気の強いアキラがビビるくらいだ……相当不安だったのだろう。
「大人たちはみんな……大丈夫だよって、私を慰めたけど……不安で……そんな言葉だけじゃ、信じられなかった。もし……手術が失敗して、今よりもっと面倒くさい体になったらどうしようって……今だって充分、普通の生活送れなくて、入院してるくらいなのにって……」
「そんなに体、悪かったのか?」
「まあね。ちょっとしたことでも、すぐ入院するくらいには」
「そうだったのか……」
今のアキラを見ただけでは想像もつかないが、あの日の夜の、アキラの痛々しいくらい細くてもろそうな腕を思い出せば、確かに肯ける。
小四の割に随分体が小さかったのは、体が悪かったせいなのかもしれない……
「……でも、健康な体も手に入れたかった。だから、試そうと思ったの」
「試すって、何を?」
「手術が成功するか……私がこの世界に、存在していてもいい人間なのか……自分の運を試したかった」
「それじゃ……」
「要はあの日、この山に願懸けしにきてたのよ」
「願懸け?」
「そう……もし、自分一人で、この山を登りきったら、手術は成功するって……」
今、分かった……
あの日、アキラが何故一人だったのか。
なぜ、あんなバカな真似をしていたのか……そのくらいの無茶を乗り越えないと、自分の可能性を信じられなかったんだ。
アキラのそんな気持ちを思うと、俺は急に胸が押しつぶされるように苦しくなった。
つづく
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる