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第二章
第19話「涙」
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「……ここは……まさか」
「そうよ。私のずっとたどり着きたかった場所……」
「でも、神様なんか……」
「もうすぐ逢える……」
俺が面食らっていると、アキラはある一点を指差した。
そういえば、いつの間に明るくなったんだろうか?
満月は、西の方に消えかかっていた。
東の空が明るい……まさか……
「『おまえは天へのぼって高天原を治めよとおっしゃいました』……昔から日本で神様っていったら……」
「……太陽か!」
「そう。……神様は何もしない。ただそこにあるだけ。だけどこうやって、私にやる気を起こさせた」
陽が……昇る。
「あの夜からずっと、こうして皓平と朝日を見たいと思ってた。今度は背負われてじゃなくて、自分の足で……必ず」
「アキラ……」
「ずっと連絡しなかったのはね、そう親に頼んでたの。皓平に対抗出来るぐらいになって、ビックリさせてやろうと思って! ……こんなに元気になったんだって……」
アキラはいたずらっ子のように、はにかんだ。手を大きく広げて、逞しく大地に立っている。ほら、どうだと、言わんばかりに胸を張って……
二年前の、弱々しかったアキラはもういない――
「……ビックリしたよ……ホント、ビックリした……」
出会った時も、山道を登っていくお前の姿を追っていた時も、お前が倒れた時も、細い腕を見た時も、じいちゃんの家で再会して……そして、今も。
「皓平に逢えなかったら……死んでいたかもしれない……手術を受ける勇気も、出なかったかも……それにこの二年間、頑張れなかった……」
「頑張るって?」
「術後、すぐなんでもなかったように健康になるとでも思ってる? ここまで体力つけるために、どれほど私が頑張ったか!」
「……そうなんだ……確かに、一見だれだか分からないくらいには、変わったものな……お前」
「そうよ! 頑張ったんだから! 頑張ったん……だ……」
アキラの声が途切れて、俺はどうしたのかとアキラを見やった。
いつの間にか、アキラの瞳に涙が溢れてきていた。アキラは必死で抑えようとしていたが、次から次へと涙は溢れてくる。
遂にはアキラは手で口を押さえ、泣き出した。
つづく
「そうよ。私のずっとたどり着きたかった場所……」
「でも、神様なんか……」
「もうすぐ逢える……」
俺が面食らっていると、アキラはある一点を指差した。
そういえば、いつの間に明るくなったんだろうか?
満月は、西の方に消えかかっていた。
東の空が明るい……まさか……
「『おまえは天へのぼって高天原を治めよとおっしゃいました』……昔から日本で神様っていったら……」
「……太陽か!」
「そう。……神様は何もしない。ただそこにあるだけ。だけどこうやって、私にやる気を起こさせた」
陽が……昇る。
「あの夜からずっと、こうして皓平と朝日を見たいと思ってた。今度は背負われてじゃなくて、自分の足で……必ず」
「アキラ……」
「ずっと連絡しなかったのはね、そう親に頼んでたの。皓平に対抗出来るぐらいになって、ビックリさせてやろうと思って! ……こんなに元気になったんだって……」
アキラはいたずらっ子のように、はにかんだ。手を大きく広げて、逞しく大地に立っている。ほら、どうだと、言わんばかりに胸を張って……
二年前の、弱々しかったアキラはもういない――
「……ビックリしたよ……ホント、ビックリした……」
出会った時も、山道を登っていくお前の姿を追っていた時も、お前が倒れた時も、細い腕を見た時も、じいちゃんの家で再会して……そして、今も。
「皓平に逢えなかったら……死んでいたかもしれない……手術を受ける勇気も、出なかったかも……それにこの二年間、頑張れなかった……」
「頑張るって?」
「術後、すぐなんでもなかったように健康になるとでも思ってる? ここまで体力つけるために、どれほど私が頑張ったか!」
「……そうなんだ……確かに、一見だれだか分からないくらいには、変わったものな……お前」
「そうよ! 頑張ったんだから! 頑張ったん……だ……」
アキラの声が途切れて、俺はどうしたのかとアキラを見やった。
いつの間にか、アキラの瞳に涙が溢れてきていた。アキラは必死で抑えようとしていたが、次から次へと涙は溢れてくる。
遂にはアキラは手で口を押さえ、泣き出した。
つづく
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