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ぼくの楽しいハネムーン
第二十八話
しおりを挟む「ちょっと! じゃあ、ぼくが怒られたのって……そもそもの原因は伊織さんじゃないですかっ!」
「まあ、そうなるかな」
「そんな……」
悪ぶれもなく認めると、にこやかに「まあ過ぎたことだよ」とひとつ。そしてぼくのひたいと口唇にキスをすると、「旅の恥はかき捨てと言うしね」と締めくくった。
「そんな……そんな……理不尽だ――っ!!」
悩み苦しみ嫉妬して、焦り落ち込んだ挙句こっぴどく怒られた結果がこのオチなんて、そんなのあんまりではないか。
ぼくが憤り叫ぶあいだ、伊織さんは「ドウドウ」とぼくをなだめるのだった。
未だ納得のいかない怒涛の夜が明け、三日目のビバリーヒルズはハネムーン日和。
朝から伊織さんは猫なで声でぼくを甘やかし、それが彼のせめてもの償いだと察したぼくは、へそを曲げるのをやめ彼の想いを酌んでやった。
これから毎日ひとつずつ、想い出とそれに連なる物を買おうと話し合い、残りの滞在期間をつかい方々を訪れた。
仕切り直しだとロデオ・ドライブを探索し、つぎの日またつぎの日とあらゆる観光地に向かう。ビバリーセンター、メルローズアベニュー、パームスプリングスの高級ショッピングストリートにも足を運び、洋服や雑貨それに小家具や貴金属も購入する。
もちろんグルメも大いに楽しむ。パームスプリングスの名産アーティチョークのグリルや、いかのフリッターなども絶品で頬が落ちそうなほど。
観光地めぐりにショッピングめぐり、グルメとスイーツめぐりに明け暮れたぼくら。
その間にも伊織さんは、衆人の目などお構いなしに愛をささやき手をだし足をだし、ところ構わず発情してはぼくを狼狽えさせた。
そんな楽しくて贅沢で破廉恥な十日間は、瞬く間に過ぎ去っていった。
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