上 下
115 / 220
第二章 耽溺

第三十四話

しおりを挟む

「なあ音稀、キャンプにいかね?」

 なんの脈絡もなく言ってみる。つか前々から考えてはいた。それで予定を練ってみたりキャンプ地を探してみたり、いつ言おうかとタイミングを計っていたり、な。

 突然の誘いに音稀は目を丸くして答える。

「キャンプ、ですか? それってテント張ったり焚き木で飯盒炊爨して食事したりするやつですか」

「おう、そのキャンプ。けどテントは張らねえよ、飯盒炊爨もなし。コテージ借りてよ、飯は調理広場でバーベキュー。近くに川があってさ、そこで釣りしようぜ、釣り──」

 男のロマンを語ってみる。つか俺もともとはアウトドア大好きメン、元嫁と結婚するまでは夏になるとダチと集まりキャンプを楽しんでいた。

 そのほか海でサーフィンしてナンパに明け暮れ、春は花見でバカ騒ぎ上等呑んだくれだ。冬はスノボに秘湯めぐりとエンジョイしまくり。

 軽いつき合いしてた女も連れてくことはあったが、けどやっぱガチで遊ぶには野郎のほうがノリがいい。結婚してからはアウトドアとは無縁の枯れた暮らし、でもインドアに落ち着くにはまだ早え。

 身体が動くうちにもっと楽しみたい。その点パートナーの音稀は男だ、俺の気持ちは理解してくれるはず。見るからにインドア派な音稀だって、やってみりゃハマんじゃねえか。

 ンな期待を込めつつ虎視眈々と様子をうかがっていた俺は、がっちり立てたプランどおり資料を提示しながらプレゼンしてみた。

「ふーん、おもしろそうですね」

「だろっ!? やった、音稀ならそう言ってくれると思ったぜ」

 思わず俺ガッツポーズ。それ見て音稀は苦笑する。

「ふふ。なんだか一将さん子供みたい。けど、そうか。一将さんてアウトドアが好きなんですね、またひとつ趣味を知ることができて嬉しい。いいですよ、どこにでもおつき合いします」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

初恋の行方

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:81

Tea Time

BL / 完結 24h.ポイント:789pt お気に入り:1

異世界迷宮のスナイパー《転生弓士》アルファ版

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:584

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:62,282pt お気に入り:2,010

道ならぬ恋を

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:206

腹黒上司が実は激甘だった件について。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:505pt お気に入り:139

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:532pt お気に入り:3,012

イアン・ラッセルは婚約破棄したい

BL / 連載中 24h.ポイント:41,152pt お気に入り:1,281

処理中です...