泣いて謝っても許してあげない

あおい 千隼

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第三章 指切

第四十二話

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 級友との懐古談。彼女が選んだのだろうフレンチのコース。大学時の友人だろう一大の友人のスピーチや会社上司の長丁場。花嫁のお色直しにキャンドルサービス。

 どれもが夢のようで遥希には縁遠いものだ。それ以上にどうでもいいことばかりで、はやく帰って龍哉とまったりしたいと心でため息をつく。

 さすがに一大も遥希に友人代表としてスピーチを頼む厚顔は持ち合わせていなかったようだ。けれど時折り届く視線に遥希は苛立ちを覚える。

 どうしてそんな未練がましい眼で見てくるんだ、せっかく吹っ切ろうとしているのに俺の気持ちを乱すなよ。頬に刺さる一大の視線にうんざりし、遥希はグラスのワインを一気呑みする。

「おまえ大丈夫か? ンなさっきからガバガバ呑んで、ちょっとピッチ速くねえ?」

 給仕スタッフにワインをボトルでテーブルにキープしてもらった遥希、憂さを晴らすようにグラスに注いでは腹に収めている。その様子を案じた太田がストップをかけてきた。

「ああ、平気だよ。いつもは呑まないけど、こう見えて俺つよいから」

 太田が驚くのも無理はない。すでに遥希はボトルを二本空け、三本目のワインも半分以上を腹に収めている。けれど心配は無用と艶冶に微笑む遥希、表情にも態度にも酔いは見られない。

 遥希は接客で酒を一切呑まないが、実のところ父親譲りの酒豪なのだ。もっとも実父の思い出など酒を呑んだくれていたくらいの憶えだが、酒でのトラブルを起こさずに済む点では感謝をしている。

 高砂に背を向け酒盛りをする遥希に、「すげえな。俺すっげ酒弱いから羨ましい」と太田がこぼす。すると女性たちが「相楽くん格好いい」「酒弱い男ってダサいよね」「私が注いだげる」とつづき、最後に「くそおっ。俺も女にモテてえよっ」と太田が嘆いた。

 そして話の渦中にいる遥希は微笑みを絶やさず、けれど心のなかがすっと冷たくなるのだった。
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