202 / 220
第三章 指切
第四十二話
しおりを挟む級友との懐古談。彼女が選んだのだろうフレンチのコース。大学時の友人だろう一大の友人のスピーチや会社上司の長丁場。花嫁のお色直しにキャンドルサービス。
どれもが夢のようで遥希には縁遠いものだ。それ以上にどうでもいいことばかりで、はやく帰って龍哉とまったりしたいと心でため息をつく。
さすがに一大も遥希に友人代表としてスピーチを頼む厚顔は持ち合わせていなかったようだ。けれど時折り届く視線に遥希は苛立ちを覚える。
どうしてそんな未練がましい眼で見てくるんだ、せっかく吹っ切ろうとしているのに俺の気持ちを乱すなよ。頬に刺さる一大の視線にうんざりし、遥希はグラスのワインを一気呑みする。
「おまえ大丈夫か? ンなさっきからガバガバ呑んで、ちょっとピッチ速くねえ?」
給仕スタッフにワインをボトルでテーブルにキープしてもらった遥希、憂さを晴らすようにグラスに注いでは腹に収めている。その様子を案じた太田がストップをかけてきた。
「ああ、平気だよ。いつもは呑まないけど、こう見えて俺つよいから」
太田が驚くのも無理はない。すでに遥希はボトルを二本空け、三本目のワインも半分以上を腹に収めている。けれど心配は無用と艶冶に微笑む遥希、表情にも態度にも酔いは見られない。
遥希は接客で酒を一切呑まないが、実のところ父親譲りの酒豪なのだ。もっとも実父の思い出など酒を呑んだくれていたくらいの憶えだが、酒でのトラブルを起こさずに済む点では感謝をしている。
高砂に背を向け酒盛りをする遥希に、「すげえな。俺すっげ酒弱いから羨ましい」と太田がこぼす。すると女性たちが「相楽くん格好いい」「酒弱い男ってダサいよね」「私が注いだげる」とつづき、最後に「くそおっ。俺も女にモテてえよっ」と太田が嘆いた。
そして話の渦中にいる遥希は微笑みを絶やさず、けれど心のなかがすっと冷たくなるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ふたなり治験棟 企画12月31公開
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる