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第三章 指切
第四十八話
しおりを挟む一大が龍哉と逢うのは今日は初めて、彼にとって面識はなく存在すら知らなかった。けれども龍哉は違う。あの日、遥希を捨てた一大の心ない言葉と声を龍哉はとなりの部屋で聞いていた。
手酷く遥希を振り心を傷つけた一大に、龍哉は殺したいほどの憎悪しかない。すでにぐったりとする一大。顔をブロックする余力すらないのか、手は地にうな垂れている。
放心したまま遥希は立ち尽くし声を失っていたが、血みどろのタキシードが目に留まり正気に戻った。龍哉の背に抱きつくと、彼の腕を掴んで懇願する。
「やめてっ、お願いだから、龍哉もう……このままじゃ一大が死んじゃう」
遥希の言葉にくり出すこぶしがぴたりと止まった。静かに龍哉が問う。
「───おまえ、こいつを庇うのかよ。命乞いか? なあ、そうなのか? まだ未練があんのかよ」
「そうじゃない、そうじゃないけど……でも」
それ以上が返せない。遥希の想いと龍哉の考えが違えてしまった。
叫び殴り乱闘をすれば、さすがにひとが集まってくる。静かだった踊り場にひとりふたりと騒ぎを訊きつけた者が現れると、式場のスタッフを引き連れ後は野次馬が顔をだす。
無言で立ち上がる龍哉、駆けつけた警備員に連れられていく。遥希はその場から動けずにいる。血と涙でぐしゃぐしゃとなった一大は、けれど一心に遥希を見つめていた。
騒動を知らされた花嫁ならびに両家の面々が現れると、程なくして呼ばれた救急車に乗って一大は運ばれていく。警備室で拘留されていた龍哉は警察に引き渡され、関係者として遥希もパトカーに乗り署に連行されるのだった。
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