21 / 74
鑑定眼
しおりを挟む刀身のような、少し青みがかった銀色の髪。
人とは思えぬ金色の瞳。
そしてまた、人とは思えぬ、絶世と付けても惜しくはない美貌。
洞窟内にこんな美少女はいなかった。
まるで、聖剣アズベインの代わりにこの世に現れたかのようなタイミングだ。
まさか、と思いつつ、私はそのメイド少女に問いかけた。
「……アズ?」
≪おや、さすがはマスター。ずいぶんと見た目が変わったのですが、一目で見抜かれるとは≫
このふてぶてしい感じ、聖剣アズベインっぽい。というか声音は一緒だし。
「変身できるの?」
≪はい。ロック解除のため、初回はマスターから魔力を融通していただく必要がありますが。いやぁ、マスターからいただく魔力の量によって解像度と言いますか美少女度が変わってくるのですが……さすがはマスター。我ながら文句なしの美少女です≫
いやあなたが勝手に抜き取っていったんでしょうが。私の同意なく。ギリギリまで。
「…………あー、ヤバ」
魔力を限界まで抜き取られた影響か、あるいは剣が人になった驚きのせいか。ちょっと意識が遠くなる私だった。
◇
私が貧血ならぬ貧魔力でダウンしてしまったので、今日は無理をせず洞窟で宿泊することになった。馬車ってかなり揺れるからね。体調不良の人が乗っていてはさらに悪化してしまうのだ。
最初は馬車の中で寝ようと思ったのだけど、それだと護衛騎士さんたちを野宿させることになってしまう。というわけで、山賊たちのアジトで夜を明かすことになった。
もちろん探知魔法で危険がないことは確認済みだ。
騎士さんたちは交代で見張りに立つというので洞窟の入り口付近に腰を据え。必然的に私たちは洞窟の奥で寝ることになった。
灯火の魔法で明かりを確保。すると、子供たちが興味深そうに宝物の山を見つめていた。
やっぱり子供ってキラキラしたものが好きなのかしらね? あるいは獣人の種族特性?
この宝の山は山賊被害の証拠品ということになるのだろうけど、ちょっとくらい触らせても平気だとは思う。どうせこの世界の常識では被害者への返還ではなく国庫に納められてしまうのだろうし。桃太郎的理屈である。力こそパワー。奪ったものは俺のもの。山賊のものも俺のもの。
でも、さっきゴーレムを錬成した水晶のような危険物もあるかもしれない。今触らせなくても、私たちが寝ているうちに起きてきてイタズラを――という可能性もある。
というわけで。アズに子供たちの相手をしてもらっている間、私とミアで危険物の撤去をすることになった。
「……お姉様。撤去と言いましても、これだけの数がありますと何が何だか……」
「んー、そんな細かい鑑定とかしないで、とりあえず特殊な効果があるものを空間収納に放り込んでしまえばいいから――」
左目に『力』を込めるイメージで、魔力を集中させる。すると、積み上げられた宝物の上部にそれぞれ名称と簡単な説明書きのようなものが浮かんできた。
「え~っと、大して危険なものはなさそうね。お、身につけると幸運値にマイナス補正の掛かる指輪が。これは回収しておきましょう。あとは……あら? これってもしかしてミーフィード侯爵家の家宝の首飾り? 何でこんなところに……?」
危険物以外にも貴重品も結構あったので、そちらもぽいぽいと空間収納に放り込んでいく。
「……あの、お姉様? もしかしてですが、鑑定眼を使えるのですか?」
「? うん、使えるわよ? 疲れるから普段は使ってないけれど」
「…………、……お姉様は優秀な御方ですわねぇ」
なぜか深々としたため息をつかれてしまう私であった。
50
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
叶えられた前世の願い
レクフル
ファンタジー
「私が貴女を愛することはない」初めて会った日にリュシアンにそう告げられたシオン。生まれる前からの婚約者であるリュシアンは、前世で支え合うようにして共に生きた人だった。しかしシオンは悪女と名高く、しかもリュシアンが憎む相手の娘として生まれ変わってしまったのだ。想う人を守る為に強くなったリュシアン。想う人を守る為に自らが代わりとなる事を望んだシオン。前世の願いは叶ったのに、思うようにいかない二人の想いはーーー
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
【完結】悪役令嬢は婚約破棄されたら自由になりました
きゅちゃん
ファンタジー
王子に婚約破棄されたセラフィーナは、前世の記憶を取り戻し、自分がゲーム世界の悪役令嬢になっていると気づく。破滅を避けるため辺境領地へ帰還すると、そこで待ち受けるのは財政難と魔物の脅威...。高純度の魔石を発見したセラフィーナは、商売で領地を立て直し始める。しかし王都から冤罪で訴えられる危機に陥るが...悪役令嬢が自由を手に入れ、新しい人生を切り開く物語。
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる