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第五話 最強ティッシュ女子
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周囲が詰襟のきちっとした学ランやセーラー服で入学式に臨む中、オレらはダボっとしたボンタンと風神雷神で中学生活のスタートを切った。小学校を卒業したばかりの青ミカンに変形学生服を着てくる様な度胸のあるヤツはおらず、先輩たちからもこの学ランの持つ意味を知っているので絡まれることは無かったが、何も知らない同級生や他の中学や高校の奴からは頻繁に絡まれた。中学の新入式早々に、何も知らねえヤンキーの呼び出しから何事もなく帰還した事で同年代からは色んな目で見られるようになったが、オレにはさして気にもせず、いつもみたいにレイのクラスに授業の合間遊びに行っていた。
レイのクラスの連中とばかりつるんでいたある日、いつもみたいに遊びに行こうとしたら知らない奴から名指しで呼ばれて手紙を渡された。ソイツは頼まれただけみたいで、押し付けるように手紙を渡して風のように去っていったんだけど、封筒の表には『果たし状』って書いてあるじゃん・・・果たし状?
(それってオレとケンカしたいって事だよな、こんな回りくどいことせずに直接言いにくりゃー良いのによ)
と封筒開けて読んでいくと、『放課後にコウビアオ公園にて待つ』って書いてあるじゃん。上等だよ、この風神様に果たし状ったあ、どんな面の奴か拝みに行ってやろうじゃないの。レイは
「母ちゃんと買い物行くから」
と言ってサッサと帰っちまったんで、コウビアオ公園に行くために正門から飛び出し、走り出す。
(風神雷神を知らねえヤツは結構減ったと思うんだけど、どんだけ心臓に毛の生えてるヤツだよ、それにしてもワクワクすんなあー・・・コウビアオ公園?ちょっと待て、どこよそれ?)
たばこ屋の爺ちゃんに訊いても
「コウビ?知らんなあ」
って言うし、酒屋のおっちゃんに訊いても
「コウビアオ・・・聞いた事ねえぞ?」
って言うし、全く想像もつかねえ。
(まあ、いいや!コウビアオなんて知らねえし。文句があるんなら明日、本人が直接言ってくるだろう)
諦めて家に帰ってシャワーを浴び、ウルフからツーブロックの金髪ポニテに変化した頭を乾かしながらチューブ式アイスをかじっているその時・・・夕闇に染まりつつある公園で一人寂しく肩を震わせながら、果たし状の主はいつまでも仁王立ちしていた。
翌朝、いつものようにレイのいる教室で
「ぶえーっくしょん!」
とデカイくしゃみを一発かますと、びっくりしながらも隣の席に座っている女子がティッシュをわけてくれた。
「わりい、あんがと。あっちゃこっちゃでウワサされてるんだわ」
とニコニコしていると、前の入口からマスクをしたヤロウがとんでもなく睨みを利かせながら入って来て、鼻を拭いているオレの横で立ち止まってイキナリでっかい声で怒鳴った。
「風神ともあろうものが、果たし状を無視するとは肝の小せえヤツだな!」
その言葉を聞いてピンと来た。
「お前かよ、あのメンドクセエ手紙よこしたの!コウビアオなんて公園、いっくら探しても見つからねえし、いろんな店に入って訊いてみたけど誰も知らねえじゃねえか!」
あろうことか、この風神様の胸ぐらを掴んでソイツは更に怒鳴りやがった。
「今朝まで・・・一晩中待ってたんだからな!テメエのせいで風邪ひいたじゃねーかよ!」
「知ったこっちゃねえ、そりゃこっちのセリフだバカヤロウ!コウビアオなんて公園知らねーよ!」
「ふざっけんな、テメエいつもここに来るまでに前通ってんじゃねーか!」
「はあ?そんな公園見たことねえわ!異次元空間にでもあんのかよ、そこは!大体『コウビアオ』なんて、なんちゅうネーミングセンスだよ、表彰状もんだなそりゃ!」
「どこ見ていつも歩いてんだお前はよ!あんなに目立つ富士山の滑り台があるってのに見落とすわけねえだろ、すぐ近くだぞ!」
「雷神の顔しか見てませんー!ってかテメエにどうこう言われる筋合いじゃねーんだよ、タコが!」
そばで事の成り行きを見ていたレイが口を開く。
「コウビアオって、ひょっとして向日葵公園のことか?あっこなら富士山滑り台あるし、ここから近けーわな・・・」
「おー、それならわかるわ!だって果たし状に『コウビアオ公園』って書いてあんだよ、見てみ?」
雷神とオレにティッシュをわけてくれた女子も一緒に覗き込む。
「うん、これは『ヒマワリ公園』のことだと思う・・・ごめんなさい」
「だべ?いーよ、キミが謝らなくても。ティッシュも向日葵もサンキュ!」
マスクのヤロウは真っ赤になって掴んでいた手を放し、さらに怒鳴る。
「そ、そんなもん雰囲気でわかれや!」
教室中がその一言に凍り付いた。
(風神雷神の二人を前にして『雰囲気でわかれや!』って。自分で『コウビアオ公園』って書いといて・・・)
しばらくの沈黙後、ティッシュ女子が冷静にポツリと言う。
「雰囲気じゃわかんないです・・・ごめんなさい」
これに雷神の痛恨の一撃。
「いつの間にか、マスクヤロウが告白して振られた空気感になってんな」
これにはオレも雷神も腹を抱えてゲラゲラ大笑い。教室のあちこちからもクスクスとつられて笑う声が聞こえる始末に、再び大声で叫びだす。
「ヒマワリなんて漢字、ならっ・・・ぶへっくしょいん!」
マスク越しとはいえ、きっと中は大変なことになっているだろう。ティッシュ女子から優しく手渡された一枚のカミ、これが場の空気を優しく鎮めた。
「オマエさ、とりあえず保健室で風邪薬もらってこいや。逃げも隠れもせずちゃんと相手してやるからよ、とりあえず帰って寝ろ」
「う、うん。そうする・・・ティッシュ、ありがと」
鼻をすすりながら教室から出て行った様子を見て、
「台風一過ですね・・・」
今回の喧嘩は、終始『ティッシュ女子』の圧勝で幕を閉じた。
レイのクラスの連中とばかりつるんでいたある日、いつもみたいに遊びに行こうとしたら知らない奴から名指しで呼ばれて手紙を渡された。ソイツは頼まれただけみたいで、押し付けるように手紙を渡して風のように去っていったんだけど、封筒の表には『果たし状』って書いてあるじゃん・・・果たし状?
(それってオレとケンカしたいって事だよな、こんな回りくどいことせずに直接言いにくりゃー良いのによ)
と封筒開けて読んでいくと、『放課後にコウビアオ公園にて待つ』って書いてあるじゃん。上等だよ、この風神様に果たし状ったあ、どんな面の奴か拝みに行ってやろうじゃないの。レイは
「母ちゃんと買い物行くから」
と言ってサッサと帰っちまったんで、コウビアオ公園に行くために正門から飛び出し、走り出す。
(風神雷神を知らねえヤツは結構減ったと思うんだけど、どんだけ心臓に毛の生えてるヤツだよ、それにしてもワクワクすんなあー・・・コウビアオ公園?ちょっと待て、どこよそれ?)
たばこ屋の爺ちゃんに訊いても
「コウビ?知らんなあ」
って言うし、酒屋のおっちゃんに訊いても
「コウビアオ・・・聞いた事ねえぞ?」
って言うし、全く想像もつかねえ。
(まあ、いいや!コウビアオなんて知らねえし。文句があるんなら明日、本人が直接言ってくるだろう)
諦めて家に帰ってシャワーを浴び、ウルフからツーブロックの金髪ポニテに変化した頭を乾かしながらチューブ式アイスをかじっているその時・・・夕闇に染まりつつある公園で一人寂しく肩を震わせながら、果たし状の主はいつまでも仁王立ちしていた。
翌朝、いつものようにレイのいる教室で
「ぶえーっくしょん!」
とデカイくしゃみを一発かますと、びっくりしながらも隣の席に座っている女子がティッシュをわけてくれた。
「わりい、あんがと。あっちゃこっちゃでウワサされてるんだわ」
とニコニコしていると、前の入口からマスクをしたヤロウがとんでもなく睨みを利かせながら入って来て、鼻を拭いているオレの横で立ち止まってイキナリでっかい声で怒鳴った。
「風神ともあろうものが、果たし状を無視するとは肝の小せえヤツだな!」
その言葉を聞いてピンと来た。
「お前かよ、あのメンドクセエ手紙よこしたの!コウビアオなんて公園、いっくら探しても見つからねえし、いろんな店に入って訊いてみたけど誰も知らねえじゃねえか!」
あろうことか、この風神様の胸ぐらを掴んでソイツは更に怒鳴りやがった。
「今朝まで・・・一晩中待ってたんだからな!テメエのせいで風邪ひいたじゃねーかよ!」
「知ったこっちゃねえ、そりゃこっちのセリフだバカヤロウ!コウビアオなんて公園知らねーよ!」
「ふざっけんな、テメエいつもここに来るまでに前通ってんじゃねーか!」
「はあ?そんな公園見たことねえわ!異次元空間にでもあんのかよ、そこは!大体『コウビアオ』なんて、なんちゅうネーミングセンスだよ、表彰状もんだなそりゃ!」
「どこ見ていつも歩いてんだお前はよ!あんなに目立つ富士山の滑り台があるってのに見落とすわけねえだろ、すぐ近くだぞ!」
「雷神の顔しか見てませんー!ってかテメエにどうこう言われる筋合いじゃねーんだよ、タコが!」
そばで事の成り行きを見ていたレイが口を開く。
「コウビアオって、ひょっとして向日葵公園のことか?あっこなら富士山滑り台あるし、ここから近けーわな・・・」
「おー、それならわかるわ!だって果たし状に『コウビアオ公園』って書いてあんだよ、見てみ?」
雷神とオレにティッシュをわけてくれた女子も一緒に覗き込む。
「うん、これは『ヒマワリ公園』のことだと思う・・・ごめんなさい」
「だべ?いーよ、キミが謝らなくても。ティッシュも向日葵もサンキュ!」
マスクのヤロウは真っ赤になって掴んでいた手を放し、さらに怒鳴る。
「そ、そんなもん雰囲気でわかれや!」
教室中がその一言に凍り付いた。
(風神雷神の二人を前にして『雰囲気でわかれや!』って。自分で『コウビアオ公園』って書いといて・・・)
しばらくの沈黙後、ティッシュ女子が冷静にポツリと言う。
「雰囲気じゃわかんないです・・・ごめんなさい」
これに雷神の痛恨の一撃。
「いつの間にか、マスクヤロウが告白して振られた空気感になってんな」
これにはオレも雷神も腹を抱えてゲラゲラ大笑い。教室のあちこちからもクスクスとつられて笑う声が聞こえる始末に、再び大声で叫びだす。
「ヒマワリなんて漢字、ならっ・・・ぶへっくしょいん!」
マスク越しとはいえ、きっと中は大変なことになっているだろう。ティッシュ女子から優しく手渡された一枚のカミ、これが場の空気を優しく鎮めた。
「オマエさ、とりあえず保健室で風邪薬もらってこいや。逃げも隠れもせずちゃんと相手してやるからよ、とりあえず帰って寝ろ」
「う、うん。そうする・・・ティッシュ、ありがと」
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