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第十二話 紫音さんとの春休み

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中学一年であるオレらは卒業生を贈る言葉で祝福し、沢山の感謝を先輩達に届け、先に大人になっていくお姉さま方の背を見て成長していくと約束した次の日・・・なぜか卒業した紫音さんからお茶に付き合うように言われた。

「今までにない開ー放ー感ー!」

っとのびのびする紫音さんを横目に

(オレめっちゃ場違いやん)

周囲の視点は大人の女性とヤンキー中学生、違和感しか無かった。

「学校に集合って呼ばれて来たのは良いんっすけど、今日は何の集まりっすか?」

もともと趣旨がよくわかっていなかったオレは素直に聞いてみた。

「風神、よく聞きな。これは重大なミッションなんだよ」

ゴクリとつばを飲む。

「風神の日常に戦いはつきものだ、そこで今日は風神のステータスアップに皆がこうして集まって協力してくれるのさ」

「マジっすか!先輩方よろしくお願いします!」

「そうと決まれば風神、戦う前のエネルギー補給は必須だよ、ほら残さず食べるんだよ」

「う、うっす!」

パンケーキやらクリームぜんざいやら、普段食べなれないものをハラいっぱい食べた後、お姉さま方御用達のお店巡りに連れまわされる。最初はオレも食いつくようなヤンキーショップに行き、だんだんお姉さま方のファッションショーへと移行していった。

(服のデザインがオレのステータスになんの意味があるんだ?)

と不思議に思いながらも、女子のいわゆる買い物の仕方に注視した。

(もしかして敵をあざむけるような、何か仕込みのある服なのか?)

紫音さんがさっきマジマジ手に取って見ていた服を取って見てみるも

(水玉模様のワンピース・・・どう見てもヒラヒラした布だよなあ?)

突然後ろから今度三年生になる雅さんに、ガシッと肩を鷲掴みにされる。

「風神ってばお目が高いじゃん、それ試着してみなよ。紫音さんに超特大ダメージ与えられるかもよ?」

(紫音さんに超特大ダメージ!)

オレにはその言葉の意味が分からなかったが、紫音さんが頭を継がせた雅さんの言葉だ。女ものの服だけに気は進まないが、断るに断れねえ・・・それに『紫音さんに超特大ダメージ』ってのがどんなのか気になるのは確かだ。言われた通り早速試着して、

「紫音さん、ちょっと着てみたんすけど・・・どうすか?」

振り向いた紫音さんは、持っていたカバンをポトリと落とす。

「風神、アンタそれ!」

いつもの紫音さんらしくない、うわずった悲鳴にも似た声が聞こえた。

「ヤッダー、かっわいい!もうコハクちゃんって呼んじゃおうかしら」

・・・ポカーンとしてしまった。雅さんや他のお姉さま方も

「ちょっと、マジかわいいじゃん!」

「学ラン着せとくの、もったいないかも」

なんてキャッキャとおだてあげられ、買ってもらう流れになってしまった。

(いやいや、どこでどのタイミングで着るよコレ・・・)

お姉さま方は満足したようで、

「次の場所に向かうから着いてきな」

と言われたので後ろを着いていく。

「こ、ここは・・・」

連れてこられたのはヤンキーのたまり場、ゲームセンター。

「ようやく本来の目的であるステータスアップをしに来たんすね、生意気なヤロウでも居るんすか?速攻ぶっ飛ばしますよ!」

「そうだよ、ほら風神。アイツをぶっ飛ばすんだよ?」

紫音さんが指をさす先にいる人だかりを見る。

(あいつらか?先手必勝ぶっ飛ばしてやるか!)

と慌て勇んだが、その人だかりはどう見ても親子連れやらの一般人。

(え、どゆこと?)

と困惑していたら

「風神こっちだよ、ちゃんと並ぶんだぞ」

(エ、ナニ?並ぶってナニ?)

女性らしい綺麗な手に繋がれて並ぶこと数分、目の前に現れたのはボクサーのポージングをしたゲーム機だった。

「コイツ私のことを『平凡だ』って言いやがったんだよ?悔しいから仇にぶっ飛ばしておくれよ!」

コインを入れるとマットが飛び出す。付属のグローブを付けさせられ、お姉さま方の応援を背に構えるしか無かった。

「おらー、やっちまえー!」

「風神の力を見せてやれー!」

後ろからヤイヤイ声援が飛んでくるわ、観客は増えるわで、もうやるっきゃねー。『バスン!』っと大きな音と共に数字が表示される・・・『平凡』の所で止まったゲージを見てオレのスイッチが入った。

「ちょっと納得いかないんで、もう一回やっていいっすか?」

ポケットから小銭のたんまり入った財布を取り出すと、

「あらー、コハクちゃん残念!後ろで待ってる人がいらっしゃるから、また今度ねー」

と紫音さんがニコニコしている。完全にしてやられた!

(風神背負ってるとはいえ、女の力はこんなもんだということか)

「あー、面白かったー!」

リベンジに失敗してちょっとふてくされ気味なオレを横目に、紫音さん達はめちゃくちゃご機嫌だった。考えてみりゃヤロウとばかりツルんでいたから、女性の買い物とか甘いもの食べるとか初めての経験だった。ゲームセンターも小学校の時にレイと暴れに行ったっきりだったから『ヤンキーばかりの遊び場じゃなくて一般の親子で遊びに来られる平和な場所だ』ってのも初めて知った。

「風神いや、コハクちゃんと今日は遊べて楽しかったよん」

振り向きざまに紫音さんが微笑みながらそう言う姿。どこか大人びていて、見惚れてしまう美しさがあった。なんだろうな、レイのお母ちゃんにしても紫音さんにしても『コハクちゃん』なんて言われても悪い気はしない。

「紫音さん、今日は色々ありがとうございました。いろんな経験ができて楽しかったっす!いつでも声掛けてください、オレは紫音さんの為なら飛んでいきますから!」

深々と頭を下げるオレに紫音さんが

「そうだね、春休みは始まったばっかりだからね。これからもアタイらが風神のステータスアップに連れまわすから、覚悟しておきなね」

「はい!」

こうしてオレの春休みは、紫音さん達のおかげで忘れる事の出来ない貴重な時間となった。
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