虚口の犬。alternative

HACCA

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4.抗う術

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早く、理央を迎えに、……

いや、いくら放課後といえど無人ではないし、このまま二条を置いていくわけにも、……



まとまらない思考を繰り返しながら遮断薬の効果をひたすら待った。

「……っ、二条、抑制剤は、……いや頓服はある?」

「ない、……っだって、まだ、先々週終わったばっかだし、」

「……取り敢えず保健室に、」

「やだ、剱、このまま番になろ?」

甘い匂いが喉を灼く。

とびそうになる思考を唇を噛んで耐えた。

流石に俺も頓服の持ち合わせは無い。

抑制剤では時間がかかるが無いよりはマシかと見上げてくる二条に差し出す。

「飲んで」

「……っ剱、ねぇ、」

二条に押されて椅子の脚に踵が当たり、派手な音をたてた。

俺の差し出す抑制剤を無視して、二条は制服の上着の釦を外す。

一際強くなった匂いに目眩がした。

「……二条、いい加減に、」

「噛んで、……剱」

二条がシャツの釦を外し、首筋をあらわにする。

薄く浮いた血管が匂いたつようだった。

「……ッ、どうして、チョーカーは、」

「ヒートの時だけしか、……してな、……っ」

「は、……っごめん、二条、」

目眩に耐えながら抑制剤のカプセルをシートから取り出して口に含む。

「……剱、なに、」

口付けてカプセルを二条の口内に舌で押し込み、喉を指先で撫でた。

こく、と飲み下すのを見届けて唇を離す。

追ってくる唇を手のひらで塞いで効果が出始めた遮断薬に安堵した。

「……保健医を呼んでくる。待ってて」

ようやくはっきりしてきた意識に溜め息を吐き、頭痛を耐える。

取り敢えず理央を車まで送ろうと教室を出た瞬間、吉良に出くわして安堵とも不安ともとれない感情を覚えた。

「大和、この匂い……」

「……吉良会長。……二条が突然ヒートに入りまして。抑制剤は飲ませましたが、このまま置いておくわけにもいかないので保健医を呼ぼうかと」

「なるほど、二条弟か。残念ながら兄は部活だな」

「……会長は」

「うち(剣道部)は今日休養日」

「でしたら……理央を車まで送っていただいてもよろしいですか」

「?、俺が二条弟を見てもいいが」

「いえ、俺では嫌がられますので」

特に今は。

理央は二条の匂いを嫌う。

「……ああ」と答えた吉良に会釈して、保健室に向かった。



二条を保健医に預け、そのまま学校を出て迎えの車に乗り込む。

「理央様は」

「お送りしました。自室で寛いでおいでです」

運転手の言葉にひとつ息を吐き、窓の外を眺めた。

「……機嫌は」

「よろしくはありません」

「……だろうな」



二条の匂いを落とそうと、一度自室に戻ってシャワーを浴びた。

頭頂から爪先へと流れて行く熱い湯が、排水口へ吸い込まれる様をぼんやりと眺めながら吉良の言葉を思い出す。


『理性と本能が裏返る』


遮断薬を寄越した吉良に感謝した。

あのまま二条の相手をしていたら。

番とまでいかなくとも、間違いがあったかもしれない。



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