虚口の犬。alternative

HACCA

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4.抗う術

4

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「俺を打って理央の気が済むなら、それでかまいません」

濡れた頬の感触に理央が泣いていることに気付いて、堪えきれずに口付けた。

「……ん、」

「泣かないでください。……理央の望むようにできない俺の失態です。申し訳ありません」

「……つるぎ、」

「好きです、理央」


おそらくは。


アルファである俺が別のオメガやメスの匂いをさせていることを、理央の中のオメガ性が拒否するのだ。

これほど過剰に反応するのは暁でもあるからか。

一度汚してしまえばそれまでだと、理央のボトムを黒く染めた自分の血液を目の端で眺めた。

「……剱、……」

「着替えを。汚してしまいました。申し訳ありません」

「……いい、お前のせいじゃない、」

「いけません」

トラッシュボックスに眼帯を捨て、理央を抱える。

軽い。もっと食事を摂ってもらわなければ。

ただでさえ理央は朝食よりも睡眠を優先する。

寝室のソファに理央をおろし、クローゼットに向かおうとしたところで二の腕を掴まれて足を止めた。

「いいから、……剱」

「理央、?」

理央が立ち上がってソファからベッドへ移動する。

オートで点灯したルームライトを消し、間接照明だけを点けて「座れ」と俺の肩を押す。

「……はい」

ベッドに腰を下ろし、立ったままの理央を見上げたら薄い胸に抱き寄せられた。

「……ごめん」

傷口に口付けられて、痛みに肩が震える。

「理央の好きに扱っていただいてかまいません。理央の側に置いてくださるなら、俺はそれだけで十分です」

「欲がねーな、お前は」

「俺は理央の番になることは許されませんから……せめて、理央の剱のままでいたいのです」

「……俺は、……お前を二条に渡したくない」

俺の前髪を払う理央の白い手を掴んだ。

「俺は理央のものです。……この間もそうでしたが、こんな風に優しくされると、……、俺は、」

「……好きにしていい」

目の前の細い腰を抱き寄せる。

シャツの裾から手を忍ばせて背を撫でた。

二条とは違う微かな甘い匂いを感じて理央のシャツを噛む。

「……理央、」

理央のシャツの釦を歯で外しながらベルトに手をかけたら、理央が微かに「あ、」と吐息のような声を漏らした。

嫌ならばと止めた手を、理央が掴んだ。

「……していい」

その手を取って手首に口付け、理央のベルトを抜く。

フロントをくつろげてボトムを床に落としたらビク、と理央の身体が跳ねた。

「……いいですか、……理央」

細い腰を手のひらで撫で、臍に舌を挿し込む。

「っいい、いちいち訊くな、」

了承を得、薄い腹筋にキスして下着を下ろした。

普段さらされることのない内腿を手のひらで撫で、その感触に唾液を飲む。

「この間も思いましたが……痩せすぎですよ、理央。ヒートは体力を消耗するそうです。……もう少し食べて下さい」

シャツも床に落とし、裸の肢体を眺めた。

白い膚に浮く血管を見つめていたら、理央が俺の切れた口端にキスして「悪かった」と呟く。



嗚呼、この行為は、この傷の代償なのか。


そう気付いたとき、同時に他の何かに期待していた自分の愚かさにも気付かされた。

「……いえ。理央の気が済むなら、俺は、それだけで。こんなことを、俺にさせてくれなくても」

「……二条のほうがよかったか?」

「違います」

「二条と違って俺はどう見ても男だしな」

理央の手を引いてベッドに倒し、自分の身体の下に組み敷く。

「……貴方が手に入るなら他の雌なんてどうでもいい。この間もそうでした。貴方には素面でも勃ちますよ、余裕で」

「剱、」

白い首筋にチョーカーの上から歯をたて、鎖骨を舌で辿る。

屹立して膨れた乳首を指で圧し潰した。

「……っあ、」

声をあげた口を自分のそれで塞ぐ。

俺の首に腕をまわして吐息した理央の唇を舌先で舐めた。

「理央……」

「ン、」

膨れた乳首を吸って舌を絡ませる。

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