虚口の犬。alternative

HACCA

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16.このまま、時間が止まってくれないだろうか

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ベッドを降りて通話をタップし、シャツを羽織りながら理央の寝室を出る。

「…はい」

『理央様は?』

「先程お目覚めになられました」

『ご様子は』

「少し怠そうにしていらっしゃいますが、肉体的な問題というよりも精神的に不安定なご様子です。アルファに触れているほうが落ち着くようですが、やはり俺では役不足ですね。吉良の長男を呼んだほうがいいかもしれません」

昨夜は『嫌ってくれ』とまで、言われてしまった。

『そうか…』

「現在はどちらに?」

『移動中の車内だ。あと二十分程で到着する。理央様にお伝えしてくれ』

「かしこまりました」

『理央様の食事は』

「まだです」

『では済ませておいてくれ。場合によっては吉良の長男を召喚しよう』

「…はい」

通話を切り、不甲斐なさにため息を吐く。

主人を癒すことの出来ない剱。

オメガを満たすことの出来ないアルファ。

それが今の俺だった。衣服を整え、理央の寝室をノックし、返事を待つ。

「入れ」

「失礼します」

理央は怠そうにベッドに横になっていた。

ベッドサイドのチェストの上に置かれている眼帯を手に取り、耳にかける。

「…何だった」

「紫香楽からでした。あと…十五分程で到着するとのことです。食事を済ませておくよう言われました。何かメニューの希望はございますか」

「なんでもいい。お前に任せる」

「…かしこまりました」

「大和、」

自分に向けて伸ばされた白く細い腕。

手を取り、甲に唇を落とした。

美しい黒髪に指を通し、前髪を払って、まだ少し赤い目尻を指の腹で撫でる。

「疲れたでしょう。食事を用意する間、休んでいて下さい」

「…」

素直に目を閉じた理央の目蓋にもキスして、寝室を後にした。







到着した紫香楽を別室に通し、理央に昼食を出した。

食後に紅茶を出してから紫香楽を理央の部屋に通す。

「失礼します、理央様。どうですか、お加減は」

「大分いい」







理央の寝室から出てきた紫香楽が一つため息を吐き、ソファに腰をおろして腕を組む。

俺はただ彼が話すのを待った。

「…少々気が立っていらっしゃるようだ」

「はい」

「理央様は君に何か命令されたか?」

「いえ…、」

「アルファとして、理央様をどう思う?」

「それは理央様をオメガとして見ることになります。俺は剱ですから」

「…アルファとしてと言ったろう」

「…極上の蜜です」

「そうか」

「…はい」

紫香楽は眼鏡を外し、指の腹で何度か瞼をおさえてかけ直す。

「外部のアルファの反応はどうだった」

「…言葉をなくすほど目を奪われている様子でした」

「伊関利也がかね」

「はい」

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