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16.このまま、時間が止まってくれないだろうか
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「彼はあまり男のオメガには興がのらないようだったのだが。やはりバース性の理解はその性にしか出来ないものか」
「…何かアクションがありましたか」
眼鏡の奥の鋭い目が俺を見た。
「…いや、理央様の体調を気にかけて下さったようだ。確認したが、理央様は体調を理由に退席されたようだしね」
「伊関は本気のように見えましたが」
「まぁ、昨日の今日だ。昨日の様子から見るに、まだそういったアクションは無いだろう」
「…はい」
「理央様のような見目のオメガでも、アルファはその気になるものなのだね」
「…何が言いたいのですか」
「オメガ性は通常小さく愛らしい外見をしているだろう。それ故に同性でもバース性が違えばメスとして認識されやすい。全くの異性愛者でも理央様に惹かれるということは、そこではないのだな」
「本能ですから」
「…しかし人間は情報のほとんどを視覚からの情報に依存している。男性は視覚から性的興奮を促される。ヒート時以外、アルファ性の男性がオメガ性の男性にあまり興味を示さないのもこれが大きい。運命であればまた別なのかもしれないが」
「…オスが小さく愛らしい見目を好むのは人間くらいでしょう。自然界の生物は殆どがオスが美しく身を飾り、メスは大きく強く地味です」
そう告げたら、紫香楽は眼鏡の蔓を中指と人差し指で押し上げて「なるほど、一理ある」と呟き、肘掛けに頬杖をつく。
「…そうでなくとも、理央様は美しい。アルファでなくとも、欲しがるものは多いでしょう」
紫香楽の胡乱な視線が俺を射した。
「…それでも理央様がただのオメガなら、やはりあの外見はデメリットにしかならないと、私は思うのだがね。それでも惹かれる何かが暁にあるというなら、納得もできるが」
「それは、どういう――」
言いかけた俺の言葉を遮るように、紫香楽がソファから立ち上がる。
「理央様だが、明日からは通常通りに過ごされてかまわない。とはいえヒート予定が近い。君は十分注意するように」
「…はい」
妙な焦燥が、意識の裏側で燻っていた。
※
紫香楽は吉良を呼ばなかったようで、理央から『夕食後に部屋に来い』と命令を受けた。
後ろ暗い安堵を感じたことは言うまでもない。
俺は念入りにシャワーを浴びて匂いを落とし、主人の部屋を訪った。
ノックの返事を待つ間に遮断剤を噛む。
「…どうぞ」
疲弊した理央の声に思わず眉をひそめた。
「…理央、――」
「大和」
体調に問題ないか訊きたかったのだが。
「…、はい」
遮られ、リビングのソファに座る理央の傍らに片膝をつき、差し出された主人の手の甲に唇を落とした。
細い手首にも口付ける。
「…一緒に寝てくれ」
「…何かアクションがありましたか」
眼鏡の奥の鋭い目が俺を見た。
「…いや、理央様の体調を気にかけて下さったようだ。確認したが、理央様は体調を理由に退席されたようだしね」
「伊関は本気のように見えましたが」
「まぁ、昨日の今日だ。昨日の様子から見るに、まだそういったアクションは無いだろう」
「…はい」
「理央様のような見目のオメガでも、アルファはその気になるものなのだね」
「…何が言いたいのですか」
「オメガ性は通常小さく愛らしい外見をしているだろう。それ故に同性でもバース性が違えばメスとして認識されやすい。全くの異性愛者でも理央様に惹かれるということは、そこではないのだな」
「本能ですから」
「…しかし人間は情報のほとんどを視覚からの情報に依存している。男性は視覚から性的興奮を促される。ヒート時以外、アルファ性の男性がオメガ性の男性にあまり興味を示さないのもこれが大きい。運命であればまた別なのかもしれないが」
「…オスが小さく愛らしい見目を好むのは人間くらいでしょう。自然界の生物は殆どがオスが美しく身を飾り、メスは大きく強く地味です」
そう告げたら、紫香楽は眼鏡の蔓を中指と人差し指で押し上げて「なるほど、一理ある」と呟き、肘掛けに頬杖をつく。
「…そうでなくとも、理央様は美しい。アルファでなくとも、欲しがるものは多いでしょう」
紫香楽の胡乱な視線が俺を射した。
「…それでも理央様がただのオメガなら、やはりあの外見はデメリットにしかならないと、私は思うのだがね。それでも惹かれる何かが暁にあるというなら、納得もできるが」
「それは、どういう――」
言いかけた俺の言葉を遮るように、紫香楽がソファから立ち上がる。
「理央様だが、明日からは通常通りに過ごされてかまわない。とはいえヒート予定が近い。君は十分注意するように」
「…はい」
妙な焦燥が、意識の裏側で燻っていた。
※
紫香楽は吉良を呼ばなかったようで、理央から『夕食後に部屋に来い』と命令を受けた。
後ろ暗い安堵を感じたことは言うまでもない。
俺は念入りにシャワーを浴びて匂いを落とし、主人の部屋を訪った。
ノックの返事を待つ間に遮断剤を噛む。
「…どうぞ」
疲弊した理央の声に思わず眉をひそめた。
「…理央、――」
「大和」
体調に問題ないか訊きたかったのだが。
「…、はい」
遮られ、リビングのソファに座る理央の傍らに片膝をつき、差し出された主人の手の甲に唇を落とした。
細い手首にも口付ける。
「…一緒に寝てくれ」
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