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19.それがアルファで、そうさせるのがオメガ
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しおりを挟む本日は母が食事を用意する予定だったが、俺が戻ったと知って自室に籠ったと聞いた。
余程俺と顔を合わせたく無いらしい。
苦笑しつつ、父と弟にもデザートを出す。
「俺は相変わらず嫌われていますね」
「気にするな」
恐らくはこの左目のせいだろう。
「二条の方はどうです?」
「明日から三日、の予定だ。お前を呼んで五月蝿いらしい。愛らしいことだ」
「…ただの本能ですよ。出来ることなら二条ではなく理央様に呼んでいただきたいものです」
「贅沢なことを」と、母の部屋から戻って来た兄が皮肉らしく左の口端を上げた。
席についた兄にもデザートを出す。
「本当に」と、弟が一人言のように微かな声で呟くのが聞こえた。
「…失礼しました」
主人を持つ剱が生家に帰ることは滅多にあることではない。
そして生家の剱は主人を持たない。
持つ者と持たざる者では全ての感覚が違う。
「あまり虐めてやるな。お前達の気持ちも解るけどねぇ、大和のようにアルファの身でオメガの主人を持つのも辛いものだろう。自分以外のアルファメールと番う主人を間近で見ることになるんだからねぇ」
目を細め、口角を上げた父に目を伏せて見せた。
「…いえ、理央様にお仕えさせていただけるだけで十分です」
「ふぅん。お前はいい子だね、大和」
「…」
自分は違うとでも言うように皮肉気に笑って珈琲を飲む父は、専ら理聖様の剱ではないかと噂になっているが、誰も父本人に訊くことはしていないようだ。
「さて、各自仕度して出なさい」
「はい」と返事をして席を立った弟とは対照的に、兄は座ったまま。
珍しくスーツを着ている父に、「今日は出るのですか」と問う。
「理聖様直々の呼び出しでね」
「お気を付けて」
「はいはい。お前はくれぐれも此処(本家)から出ないように」
「はい」
「仁はどうするんだ」
「大和に理央様のお話を聞かせてもらうよ」
「…ほどほどにな」
「理央様とお会いする機会を無くしてしまったのは親父だろう」
「全く、…そんなところは(おれに)似なくてよかったんだけどねぇ。…まぁいい、では出てくる」
「はい」
「ああ、今日は非番だったけど明日からはまたメイドさんが居るんで。食事は各自頼むなり作るなり好きにして。今日は外で済ませるからおれの分は必要ない」
言いながら立ち上がる父に頭を下げ、自分の皿をトレイにのせたとき、兄に「ここで食べるといい」と声をかけられた。
「…はい」
弟の席の皿をシンクに片してカウンターの端に座る。
逆の端に座る兄はゆっくりと珈琲を飲んでいた。
父と弟の気配が家から消えるのを確認し、兄が横目に俺を見る。
「…理央様に命令をいただくというのはどんな感じだ」
「…考えるよりも先に身体が動きます」
「一族のデータベースからお写真を拝見した限りではオメガのようには見えないな」
「ええ。ですがオメガです。これ以上ないほどの」
「…そうか」
「ですが理央様はご自分の容姿が他のオメガよりも劣っていると考えていらっしゃるようで、…」
「どう見ても他のオメガよりも優れているだろう」
「…女性らしさに欠けるという点で劣っていると」
「その分美しい」
「そう、お伝えしてはいるのですが。なかなか伝わりません」
「…信じていただけないのか。暁に」
「…ッ、はい、」
これまで気付かぬフリをしてやり過ごしてきた事実を容赦なく兄に突き付けられ、息が詰まる。
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