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19.それがアルファで、そうさせるのがオメガ
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「それでも理央様は側においてくださるのか。お優しい。お前が気に入られているのか、アルファであるからか、どちらなのだろうな」
「…」
何も、言えなかった。
前者である筈がない。
だが後者であるとも、口に出したくはなかった。
(俺は理央を満たして差し上げられるほど上等なアルファではない)
「一度でいいから理央様にお会いしてみたいものだ。あの黒髪に触れてあの白い手に口付けてみたい」
「…兄さん」
「想うくらいいいだろう。どうせこの身はこの家に埋もれるのだから」
食事する気も失せ、椅子を引く。
「…主人に対して向けられる欲を語られるのは、あまりいい気がしません」
「一族全ての主(あるじ)でもある。『お前だけの理央様』ではないんだぞ」
「…失礼します」
席を立った。
「お前は飽くまでも従僕であって、理央様を独占出来るような立場にない。可愛いがられているのか知らんが、勘違いするな」
「貴方こそ。…理央様を貶めるような発言は控えていただきたい」
自分の声の低さにハッとする。
そんな俺を見て、兄はくすりと笑った。
「…食事は?」
「…後ほど、…一人でいただきます」
ダイニングを後にし、自室に戻った。
理央をあいしているのは自分だけではないし、自分の代わりならばいくらでもいる。
現に今は司が理央に付いている。
それでも理央は『戻ってこい』と言ってくれた。
ソファに座り、天井を仰ぐ。
午前六時三十分。
時計を確認し、自分の携帯端末を手に取って司に発信した。
『はい、司です』
「お早うございます」
『お早う御座います、大和様』
「その後問題は?」
『特に御座いません』
「…そうですか、ではまた明日、この時間に連絡します」
『かしこまりました、失礼致します』
通話を切り、一つ息を吐く。
まだ、たった一日。
たった一日、理央に会えないだけでこの有り様かと自分を笑った。
これからの数日で理央の気が変わる可能性だってある。
俺よりも司を選ばれたら、それで終わりだ。
期待などするなと自分に言い聞かせる。
主人の側に居られるだけで幸せなのだと思い知った。
姿が見えないくらいならば、理央が吉良を見ていてもこの目に理央を捉えられている方がいい。
(嫌われていても、殴られても蹴られても、側に居られるだけでいい)
顔を上げ、デスクのマシンを見た。
先日の申請結果が来ていないかを確認しようとマシンを起動し、珈琲を淹れようとダイニングに向かう。
兄の姿はなく、カウンターの端に自分の朝食の皿が先程のまま置かれていた。
手早く食事を済ませ、シンクに下げられている皿を洗う。
カウンターテーブルを拭き、珈琲を注いだカップと共に自室に戻り、デスクについた。
ディスプレイは既にスリープ状態に移行していた。
結果はまだ届いていない。
焦り過ぎている自覚はあったが、謹慎中に契約を済ませるなら急がなければならないのも事実。
この時、俺はただ焦っていて、そして無知故に愚かで、理央の優しさにも無表情で隠しがちな表情にも気付ける余裕などなく、ただただひたすら、自分の本能が理央を傷付けることを恐れていた。
「…」
何も、言えなかった。
前者である筈がない。
だが後者であるとも、口に出したくはなかった。
(俺は理央を満たして差し上げられるほど上等なアルファではない)
「一度でいいから理央様にお会いしてみたいものだ。あの黒髪に触れてあの白い手に口付けてみたい」
「…兄さん」
「想うくらいいいだろう。どうせこの身はこの家に埋もれるのだから」
食事する気も失せ、椅子を引く。
「…主人に対して向けられる欲を語られるのは、あまりいい気がしません」
「一族全ての主(あるじ)でもある。『お前だけの理央様』ではないんだぞ」
「…失礼します」
席を立った。
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「貴方こそ。…理央様を貶めるような発言は控えていただきたい」
自分の声の低さにハッとする。
そんな俺を見て、兄はくすりと笑った。
「…食事は?」
「…後ほど、…一人でいただきます」
ダイニングを後にし、自室に戻った。
理央をあいしているのは自分だけではないし、自分の代わりならばいくらでもいる。
現に今は司が理央に付いている。
それでも理央は『戻ってこい』と言ってくれた。
ソファに座り、天井を仰ぐ。
午前六時三十分。
時計を確認し、自分の携帯端末を手に取って司に発信した。
『はい、司です』
「お早うございます」
『お早う御座います、大和様』
「その後問題は?」
『特に御座いません』
「…そうですか、ではまた明日、この時間に連絡します」
『かしこまりました、失礼致します』
通話を切り、一つ息を吐く。
まだ、たった一日。
たった一日、理央に会えないだけでこの有り様かと自分を笑った。
これからの数日で理央の気が変わる可能性だってある。
俺よりも司を選ばれたら、それで終わりだ。
期待などするなと自分に言い聞かせる。
主人の側に居られるだけで幸せなのだと思い知った。
姿が見えないくらいならば、理央が吉良を見ていてもこの目に理央を捉えられている方がいい。
(嫌われていても、殴られても蹴られても、側に居られるだけでいい)
顔を上げ、デスクのマシンを見た。
先日の申請結果が来ていないかを確認しようとマシンを起動し、珈琲を淹れようとダイニングに向かう。
兄の姿はなく、カウンターの端に自分の朝食の皿が先程のまま置かれていた。
手早く食事を済ませ、シンクに下げられている皿を洗う。
カウンターテーブルを拭き、珈琲を注いだカップと共に自室に戻り、デスクについた。
ディスプレイは既にスリープ状態に移行していた。
結果はまだ届いていない。
焦り過ぎている自覚はあったが、謹慎中に契約を済ませるなら急がなければならないのも事実。
この時、俺はただ焦っていて、そして無知故に愚かで、理央の優しさにも無表情で隠しがちな表情にも気付ける余裕などなく、ただただひたすら、自分の本能が理央を傷付けることを恐れていた。
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