虚口の犬。alternative

HACCA

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20.まだ、誰のものでもないのだと

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ベッドで目を閉じたが、眠気は訪れなかった。



何も、することがない。



天井を眺めながら、そんなことを思った。

学生の身としては勉学に励むべきだが、高校レベルの学業はとうに終えている。

大学は理央に合わせる予定だが、予想される大学は全て合格圏内だ。

どんな状況であろうと、結局俺が考えているのは理央のことばかりで、理央がいなければ俺には何もすることがないのだと思い知る。

「理央、様…」

あと何日待てばいいのかと考えて、直ぐに期待は禁物だと思い直す。

理央の気が変わればそれまでだ。

気紛れな主人のことだから、いくら言葉をもらったとはいえ安心は出来ない。

いつ、『やはりお前は要らない』と言われるかわからない。

理央に直接連絡するのは躊躇われた。

声を聞きたかったが、鬱陶しいと思われる可能性の方が高い。

携帯を手に取ってしばらくディスプレイで理央のIDを眺め、迷った末に手放した。

理央の甘い匂いを思い出し、息を吐く。

「…っ、」

駄目だと思いながらベルトのバックルに手をかけた。

「ッ、」

劣情を自覚してフロントをくつろげる。

やり場の無い欲に身を任せて自分の器官を握った。

駄目だとわかっていて止められないのは、この想いは絶対に叶うことがないと知っているからだ。

「…っ理央、」

俺などの言葉も好意も、理央の役には立たない。

「ッ、…っは、」



(誰にも渡したくない)



自分のものにならないのはわかっている。

俺のような出来損ないの剱で下等なアルファには、理央を望むべくもない。

ならせめて、誰のものにもならないで欲しかった。

「…ッ、」

達した瞬間、理央の細い首を思い出した。

「どうして、アルファじゃない、…」

アルファだと信じていた。

主人は美しく、高潔で、誰かを支配することはあれど、支配されることなどないと思っていた。

自らの欲に塗れた自分の手を眺めながら、その有り様を笑う。

「…屑だ、」

敬愛すべき主人に劣情を抱き、自慰の対象にするなど。

こんなことだから、どれだけ言葉を尽くしても理央に信用されないのだ。

優しい理央は、それでも側に置いてくれる。

時間を確認し、身体を起こした。

シーツを替え、浴室に向かう。

頭から水を浴びながら、理央の想い人について考えた。



(理央の反応から見て、アルファであることは確実だろう。だが吉良でもなく、伊関雅也でもない。俺が把握していないところで接触しているアルファが、他にいるということだ)



そのアルファはおそらく、伊関利也のように男性のオメガを敬遠するタイプなのだろう。

故に理央は自身の容姿に自信をもてず、そのアルファに拒まれることを恐れている。

想い人が分かれば、俺にもその仕草、言葉遣い、思考等、コピーが出来る。

そうすれば俺でも少しはそのアルファの代わりに理央を癒せるかもしれない。

「…理央様ほどのオメガなどいない…」







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