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20.まだ、誰のものでもないのだと
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しおりを挟むアルファなら恐らく、無条件で惹かれてしまうはずだ。
そのアルファも吉良や自分のように遮断剤を使用している可能性は高い。
そのアルファに似せられれば、理央も俺の言葉を信じてくださるかもしれない。
(調べなければ)
戻ることが許されたらそれを最優先事項にすることを決定し、シャワーを止めた。
浴室を出て、クローゼットから適当に着替えを選ぶ。
手のガーゼを替え、服を身に着けて時間を確認し、携帯端末を手に取った。
『はい、司です』
「お早うございます」
『お早う御座います、大和様』
「問題は?」
『…問題は特に御座いませんが…吉良令明の理央様に対する所作は自分の目には余ります』
「…吉良は理央様の番候補筆頭です。ある程度目を瞑るしかありません。…見逃して下さい」
『…かしこまりました』
「他には」
『…御座いません』
「…理央様のご様子はどうですか」
『酷く怠そうになさっているときもありますが、…他には目に見えて気になるところはありません』
「…そうですか。朝食は?」
『あまり気が進まないご様子ですが、なんとか毎日』
「何かあればすぐに自分にも連絡を」
『かしこまりました』
「よろしく頼みます。…では、また明日」
『はい、失礼致します』
通話を終了し、一つ息を吐く。
(仕方がない。吉良といる方が、オメガの理央には良い。ヒート中はアルファに触れている方が肉体的にも精神的にも楽になる)
マシンを立ち上げ、申請の返信を確認した。
(まだ届いていない)
通常、返信は二週間以内だが、俺は暁付きの剱で、別途調査を要するような人間ではないので返信も早いだろうと思っていたが、そうでもないのかもしれない。
ため息を吐き、席を立つ。
番を持てたとして、いつ、理央に報告すべきだろう。
事前に報告すれば、また苛立たせてしまうかもしれない。
これ以上、嫌われたくはない。
(契約が決まってから考えよう。まだ申請結果すら届いていない)
そう決めて、自分の朝食を用意しようとダイニングに向かった。
※
「理聖様が…?」
「ああ。理央チャンの邸に向かったらしい」
大広間にて父に告げられた言葉に、ゴクリと喉が鳴った。
(…決まったのか)
「番のアルファが、…決定されたのでしょうか」
「おれは何も聞かされてはいないけどねぇ」
「…そうですか」
目を伏せ、畳の目を眺める。
(理央の番)
理央が吉良の番になれば、もう俺の番は必要無い。
あの理央の甘い馨りも、俺には感じられなくなる。
「…辛いのか、大和」
「いえ、…少し、安心しました」
「そうか。まぁ実際、何の話かはわからん。番が決まったとも限らんのでね」
「理央様が健やかでおられるなら、それで十分です」
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