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21.あるいはその全て
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しおりを挟む自室に戻り、理央の邸を出た時と同じ様に大して大きくもない鞄に大して多くもない荷物を詰めた。
ようやく、理央のもとに戻れる。
ふと、着替えを詰める手を止めた。
(…このまま戻って、いいのだろうか)
番も作れず、理央に醜い劣情を抱いたまま。
携帯デバイスを手に取り、理央のIDを表示する。
確認した方がいいと思った。
司とともにいる理央に、直接『要らない』と言われたら耐えきれないかもしれない。
俺も司もアルファであり、剱だ。暁のオメガを取り合えばエスカレートするのは目に見えている。
時計を確認した。
震える指で発信をタップする。
出て欲しいとも、出ないで欲しいとも思えた。
『…はい』
「理央様、大和です」
震える声を必死で耐え、携帯デバイスを握り締める。
『あぁ…様は止めろと言ってんだろ。…どうした』
「二条の解除が完了したと報告を受けました。間もなく謹慎も解かれるかと思いまして、連絡させていただきました」
『そうか』
「…」
『…どうした』
分かっているのだろうに。
そう思いながら、知らぬふりを決め込んでいる理央に問うた。
「俺は…戻って、良いのでしょうか」
『お前はどうしたい』
「あなたが…理央がそう望んで下さるなら、…俺は戻りたい。…ですが司がお気に召されたのなら、…、諦めます」
『…』
「…俺などにお気遣いは不要です。はっきりと仰って下さってかまいません」
沈黙した理央に、俺は目を閉じる。
(嗚呼、やはり――)
「…かしこまりました。司に引き継ぎます。…これまで自分のような出来損ないを側に置いてくださり――」
『お前がまだ、…』
「…はい」
『…俺に愛想が尽きてねーなら…戻れ。けど少しでも俺を哀れに思うなら、……もういい。そこにいろ』
唾液を飲み込んで、理央の言葉を何度か脳内で反芻した。
「許されるなら俺は――あなたのもとへ帰りたいです」
俺にはただただ祈る気持ちで理央の言葉を待つ事しか出来ない。
『…好きにしろ』
「はい。…有難う御座います」
通話が切れるのを待ち、安堵とともに一つ息を吐いた。
まだ、許されている。
ならば許されているうちに、これまでの失態を挽回しなければならない。
理央が好意を寄せているアルファを、何としても見つけ出さなければ。
司への確認を忘れてはならない。
これからやるべきことをチェックし、司に間もなく謹慎が解かれる旨をメールした。
マシンを立ち上げ、オメガデータベースから番の申請画面でステータスを確認する。
結局、回答は貰えなかった。
一つ息を吐き、申請取り消しのボタンをタップする。
安堵と焦燥が同時に去来する心持ちに不快感を覚えた。
理央の元へ戻る事が出来るのは嬉しい。
だが結局、俺は番を持てなかった。
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