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21.あるいはその全て
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しおりを挟む理聖様にも父にも神木にも、番を持てと勧められている。
だが申請は出してみたものの、俺は回答すら貰えないアルファだ。
理央を満たせるはずもない。
その上いつ箍が外れるかも分からない。
適当に処理出来るならいいが、それは理央の気に障る。
不意に理央の膚の感触と俺に奉仕するときの伏せられた目を縁取る睫毛の影、赤い唇の濡れて光る様子を思い出し、昂ぶった。
「…ッ、」
遮断剤のシートを取り出そうとして、ふとノックの音に気付く。
「…はい」
「入ってよろしいでしょうか」
瑞穂の欲を纏った声と、微かに香るオメガのフェロモンに思わずため息を吐き、そして忠告した。
個人差があるとはいえ、オメガのヒートは十日前後続く。
「かまいませんが…抑制剤を服用していても、オメガの自覚があるならヒート中にあまり…アルファに近付くものではありませんよ」
遠慮がちに細く開いたドアの向こうから、震える声が聞こえた。
「私でよければ…その、大和様のお相手を、…」
思わずため息を吐く。
「父に言われましたか」
「…っいえ、」
「俺は今正式な番を持つつもりはありません。それに貴女を優しく扱える余裕も無ければ、あまり上等なアルファでもありません。…それでもいいというのであればどうぞ」
「…」
立ち上がり、ドアを開けた。
初めて瑞穂を『視た』気がした。
幼い頃はオメガだとは気付かなかった。
俺の肩よりも低い身長に、肩までの柔く巻いた栗色の髪。
庇護欲を唆る、華奢な肩、細い四肢。
幼い頃の面影が濃く残る童顔に、女よりも女らしい身体つき。オスなら飛び付くメスだろう。
「どうされますか」
「…っ、入って、よろしければ、」
「…どうぞ」
瑞穂を招き入れ、施錠する。
受け入れたのは、冷静に理央の元へ戻る為に都合が良いということと、もう一つ、オメガを経験しておくべきだと思ったからだった。
理央に嫌がられないよう、もっと上手く触れる為には必要なことだ。
経験しておけば、理央を前にしてももう少し冷静でいられるようになるかもしれない。
瑞穂の手を引き、ベッドに座らせてその隣に腰を下ろす。
柔らかな髪に指を通し、赤い耳に口付けた。
「大和様、」
「…もしかして処女ですか」
「…っ、はい、」
「でしたらもっと、――」
「ですから、…大和様にお願いを、」
「光栄ですが…俺は主人を持つ剱です。責任を取れる人間ではありませんよ」
「いえ、…驚かれるかと思ったので、…お伝えしておきたかっただけです、」
「…分かりました」
愛らしい。
冷静にそう思う。
そう思っただけだった。
処女とはいえ、瑞穂の身体は比較的容易に俺を受け入れた。
抑制剤を服用していてもヒート中のせいか痛みを訴えることもなく。
オメガはアルファを受け入れるように出来ているのだろう、ベータのメイドを抱いていたときとは比較にならない快楽だった。
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