虚口の犬。alternative

HACCA

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24・苦しいだけだ

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その後の、普段無表情でいる理央が罪悪感に塗れた貌をするのを、俺は前髪の隙間から見上げた。

理央のそんな顔を、俺だけが知っている。

その事実が俺の中の何かを満たしてくれた。

そして打たれた後は、理央はその身体に触れされてくれる。



最初はショックだった。



理央が触れさせてくれるのは多少なりとも俺を好いてくれているからだと、勝手にそう思っていた。

理央はオメガで、俺はアルファ。

そんなはずがなかった。

最も身近にいるアルファは俺だ。

理央は俺にまで気を使うようになった。



本能的に庇護を求めるオメガである理央が、俺を無碍に出来るはずもない。

そのせいで自分の立場を忘れ、随分と理央に触れてしまった。

自分のものにできたらと、そればかりを考えていた。

今でも時々考えてしまうくらいには。

今はもう、理央を慰めるアルファは別にいて、理央は剱である俺よりも吉良を信頼している。

現状を鑑みれば、理央が吉良と番うと同時に俺は不要になる。

今ですら、理央の慈悲で剱でいさせてもらっているようなものだ。



ティーワゴンと共に理央の部屋に戻り、二人の前にソーサーを置く。

二人は何か話していたようだが、俺が戻ると直ぐに口を閉じた。

それぞれのティーカップに飴色を注ぎ、俺は部屋の端に立つ。



もはや自分が理央にとって厄介者でしかないことが辛かった。



だが優しい理央は俺を切り捨てずに側に置いている。

俺は今、出来るだけ目立たぬよう、邪魔にならぬよう努めていた。

それでも理央は毎日俺を寝室に喚ぶ。

理央が眠った後、理央に触れて欲を満たしている自分がいた。

俺を邸に置いて出掛けている間、知らないアルファの匂いをさせて帰る理央が何をしているのかなど、考えたくもない。

俺はただ、理央に触れたかった。

その膚の感触、唇の柔らかさ、粘膜の色。



甘い匂い。



それを知った今、触れずにいることはもはや拷問に近い。

日々俺にそんな風に思われていることも知らず、理央は眠っている。

何度チョーカーを外してその白い項に咬みついてしまおうと考えただろう。

紫香楽と話している理央の横顔を、目を伏せたまま盗み見た。

とてもオメガには見えない。

だが、理央は事実オメガだ。

俺のような下等なアルファには手が届かない、美しいオメガ。

「剱」

「…はい、」

呼ばれて我に返る。

「どうした、ぼうっとして」

「いえ、…失礼しました」

空いたティーカップに飴色を注ぐ。



(給仕すらまともに出来ないとは)



俺は自分に呆れるしかなかった。



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