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5.許されない者
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「大和」
吉良に呼び止められ、階段を降りずに生徒会室へ向かった。
鍵を掛け、四限の授業は諦める。
「…ご用件は」
「理央の邸の使用人にアルファは居るのか」
部屋の中央のテーブルを挟んで置かれたソファに腰をおろし、天井を仰ぐ吉良の横顔を窓際で眺めた。
「うちは外部の使用人はベータしか採りません。アルファもオメガも他への影響が大きいので。理央のバース性が確定してからは素性に不明瞭な部分がある者は入れ替えました」
「…ならいい」
安堵するように吐息した目の前の男も、俺の主人を愛しているのだ。
「…先日理聖さまからチョーカーも届きました。少なくとも番うことはそうそうできません」
「そうか」
番うことが許される者は幸せだ。
他人事のようにそう思った。
「…俺に番がいれば、…アルファの俺でも理央の剱で居られるでしょうか」
「それは俺が決めることじゃない。それに番うといっても相手が必要だろう。まさか二条と番うつもりか」
最もな吉良の言葉に溜め息を吐く。
「…理央の剱でいられるのならそれでもかまわないと思っておりますが」
「本末転倒だな」
「…自分がアルファであることは、有利にはなれど、不利にはならないと思っていました。理央がオメガと診断されるまでは」
「オメガの枠外だ。稀代の資質を持つと言われた暁理聖よりもはるかに『暁』の資質を持ち、身体つきも男子平均を上回る。成績優秀、容姿端麗、」
「確かに暁としての資質は高いですがメリットだけではありません。故に理央はよく体調を崩します。他人よりも睡眠をとりすぎますし、そのせいで朝食は滅多に摂りません。身体も身長は平均を越えていますが華奢すぎて、」
得意気に並べる吉良の言葉を遮った。
「俺に喧嘩売ってんのか、大和」
今度は俺が低い吉良の声に遮られ、窓の外に視線を移す。
「理央のことなら貴方よりも知っているつもりです。…俺は番になることは許されませんが。剱として、…主人を愛しておりますので」
アルファとして番になれずとも。
せめて剱として側に居られるのならば、耐えてみせる。
たとえこの先、理央に愛されることなどないとしても。
俺を打った傷痕を気にしてくれる程度には、理央は俺を可愛がってくれる。
四限の終鈴が遠くに聞こえた。
「…大和」
躊躇うように俺を呼んだ吉良の罪悪感にまみれた表情にうんざりする。
「…昼食の支度をしましょう。一度教室に戻ります。理央と入れ違いになってしまったら、そう伝えてください」
「いいのか、お前は本当にそれで、…耐えられるのかよ」
これ以上吉良に同情されることに焦燥を感じ、生徒会室のドアを開ける。
「…そうするしか、俺は理央に仕えることはできません。俺は剱です。貴方のように多くの選択肢を持っているわけではありませんから」
振り返らずに背を向けたまま告げた。
ランチボックスを持参して再度生徒会室に向かった。
ドアを開けたら、予想通り理央と入れ違っていた。
窓際のデスクに座る吉良と理央の前にランチボックスを広げ、皿に取り分ける。
「チョーカー見せてみろよ、理央」
「嫌です」
理央の肩を抱く吉良の腕が視界の隅で俺の苛立ちを煽った。
理央の肩を抱き寄せ、ひそひそと何事かを囁いた吉良に溜め息を吐きながら「烏龍茶」と告げた理央に皿を渡し、簡易キッチンに向かう。
背を向けた瞬間聞こえた二人の言葉に唇を噛んだ。
吉良に呼び止められ、階段を降りずに生徒会室へ向かった。
鍵を掛け、四限の授業は諦める。
「…ご用件は」
「理央の邸の使用人にアルファは居るのか」
部屋の中央のテーブルを挟んで置かれたソファに腰をおろし、天井を仰ぐ吉良の横顔を窓際で眺めた。
「うちは外部の使用人はベータしか採りません。アルファもオメガも他への影響が大きいので。理央のバース性が確定してからは素性に不明瞭な部分がある者は入れ替えました」
「…ならいい」
安堵するように吐息した目の前の男も、俺の主人を愛しているのだ。
「…先日理聖さまからチョーカーも届きました。少なくとも番うことはそうそうできません」
「そうか」
番うことが許される者は幸せだ。
他人事のようにそう思った。
「…俺に番がいれば、…アルファの俺でも理央の剱で居られるでしょうか」
「それは俺が決めることじゃない。それに番うといっても相手が必要だろう。まさか二条と番うつもりか」
最もな吉良の言葉に溜め息を吐く。
「…理央の剱でいられるのならそれでもかまわないと思っておりますが」
「本末転倒だな」
「…自分がアルファであることは、有利にはなれど、不利にはならないと思っていました。理央がオメガと診断されるまでは」
「オメガの枠外だ。稀代の資質を持つと言われた暁理聖よりもはるかに『暁』の資質を持ち、身体つきも男子平均を上回る。成績優秀、容姿端麗、」
「確かに暁としての資質は高いですがメリットだけではありません。故に理央はよく体調を崩します。他人よりも睡眠をとりすぎますし、そのせいで朝食は滅多に摂りません。身体も身長は平均を越えていますが華奢すぎて、」
得意気に並べる吉良の言葉を遮った。
「俺に喧嘩売ってんのか、大和」
今度は俺が低い吉良の声に遮られ、窓の外に視線を移す。
「理央のことなら貴方よりも知っているつもりです。…俺は番になることは許されませんが。剱として、…主人を愛しておりますので」
アルファとして番になれずとも。
せめて剱として側に居られるのならば、耐えてみせる。
たとえこの先、理央に愛されることなどないとしても。
俺を打った傷痕を気にしてくれる程度には、理央は俺を可愛がってくれる。
四限の終鈴が遠くに聞こえた。
「…大和」
躊躇うように俺を呼んだ吉良の罪悪感にまみれた表情にうんざりする。
「…昼食の支度をしましょう。一度教室に戻ります。理央と入れ違いになってしまったら、そう伝えてください」
「いいのか、お前は本当にそれで、…耐えられるのかよ」
これ以上吉良に同情されることに焦燥を感じ、生徒会室のドアを開ける。
「…そうするしか、俺は理央に仕えることはできません。俺は剱です。貴方のように多くの選択肢を持っているわけではありませんから」
振り返らずに背を向けたまま告げた。
ランチボックスを持参して再度生徒会室に向かった。
ドアを開けたら、予想通り理央と入れ違っていた。
窓際のデスクに座る吉良と理央の前にランチボックスを広げ、皿に取り分ける。
「チョーカー見せてみろよ、理央」
「嫌です」
理央の肩を抱く吉良の腕が視界の隅で俺の苛立ちを煽った。
理央の肩を抱き寄せ、ひそひそと何事かを囁いた吉良に溜め息を吐きながら「烏龍茶」と告げた理央に皿を渡し、簡易キッチンに向かう。
背を向けた瞬間聞こえた二人の言葉に唇を噛んだ。
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