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「ニーナぁあ!私、まったやってしまったわ……」
その日、私はいつものように主であるエヴァ様のお帰りをお待ちしておりました。
エヴァ様は婚約者のアレク様とデートに行かれていたのです。
その帰り、本来なら久しぶりの婚約者との触れ合いに頬を薔薇色にしてはにかみながら帰ってくるところでしょうに、エヴァ様は涙を浮かべながら帰ってこられました。
またですか。
「今度はどうなさったのですか?」
私の問いにエヴァ様は可愛らしいお顔をクシャクシャにして涙を零しながら経緯を話してくださいました。
「私は久しぶりのデートで張り切っていたのよ?オシャレも頑張ったのに。それなのにアレク様ったら、何も仰ってくれなかったの。前から見たかった劇団のチケットを取り寄せて下さったのはいいけれど、劇も途中から見ておられなかったみたいだし『楽しかったです』って感想を言ってもダンマリ。挙句食事はさっさと終わらせてしまうし、私もうとっても頭にきて、つい言ってしまったのよ!」
「何を言われたのですか?」
だいたいこの時点で予想は出来ましたが、私が敢えて続きを促すと、エヴァ様は体を震わせながら何かに耐えるような表情で仰いました。
「アレク様、ちっとも私を見てくださいませんのね。婚約者にあるまじき態度てはなくて?デートはもう結構、不愉快です。アレク様なんて大っ嫌い……って」
エヴァ様はポロポロと涙を零されます。
やっぱり……と私は内心で溜息をつきました。
「私は今日、それでもとても楽しかったの。アレク様と一緒にいるだけで幸せなのになんとひどいことを言ってしまったのかしら……。きっと今アレク様は怒っていらっしゃるわ……婚約破棄されたらどうしましょう……私もう生きていけないわ、ニーナ……」
さめざめと泣き始めたエヴァ様に、私は頭を抱えました。
デートの時点で薄々こうなることは勘づいておりましたが、久しぶりだからと二人きりにしたのが悪かったのでしょうか。
エヴァ様はアレク様のことが大好きで大好きで堪らないのに、いざアレク様を前にするとツンツンして心にもないことを言ってしまうツンデレ令嬢なのです。しかも決してアレク様の前ではデレないのでございます。
私は即次の行動を決めると泣いているエヴァ様の両肩を包み込みます。
「大丈夫ですわ、エヴァ様。アレク様の態度はいつもの事でございましょう?それに、エヴァ様が何度嫌いと仰られても、毎回デートに誘ってくださるではないですか。ひどいことを言ったと反省しておられるなら謝ればいいのですわ。そうだ、今からお手紙を書きましょう?私がそのお手紙を従者のオディマの元まで持って行きますわ。直接言えないならば手紙にしてしまえばよいのです。それならエヴァ様もご自分の本当の気持ちを述べやすいのでは?」
私の提案に泣いておられたエヴァ様はピタリと泣き止み、ぱあっと表情を明るくされました。愛らしいそのお顔に美しい笑みを浮かべておられます。これでこそエヴァ様です。
その愛くるしいウェーブがかったふわふわな桜色の髪も、陽の光を受けると黄金に輝く丸い大きな眼も、薔薇色の頬も、ぽってりとした可愛らしい唇も、笑顔の時が一番美しいのです。
私は思わずぼおっとエヴァ様を見つめてしまいました。本当に美しいお方。
「わかったわニーナ!早速書いてみるわね。ニーナが私の侍女でいてくれてよかったわ。ありがとう!」
少し泣いたせいで腫れた目ではにかみながら告げるエヴァ様は本当に愛しくて私も思わず笑みがこぼれます。
「私もエヴァ様の侍女で嬉しゅうございます。さ、早速書きましょう。私が急いで届けますから!」
「ええ」
すっかり元気を取り戻したエヴァ様を急かすしたあと、私は紙とペンをお持ちするため一礼して退出しました。
(さて、明日も対策会議かしら)
その日、私はいつものように主であるエヴァ様のお帰りをお待ちしておりました。
エヴァ様は婚約者のアレク様とデートに行かれていたのです。
その帰り、本来なら久しぶりの婚約者との触れ合いに頬を薔薇色にしてはにかみながら帰ってくるところでしょうに、エヴァ様は涙を浮かべながら帰ってこられました。
またですか。
「今度はどうなさったのですか?」
私の問いにエヴァ様は可愛らしいお顔をクシャクシャにして涙を零しながら経緯を話してくださいました。
「私は久しぶりのデートで張り切っていたのよ?オシャレも頑張ったのに。それなのにアレク様ったら、何も仰ってくれなかったの。前から見たかった劇団のチケットを取り寄せて下さったのはいいけれど、劇も途中から見ておられなかったみたいだし『楽しかったです』って感想を言ってもダンマリ。挙句食事はさっさと終わらせてしまうし、私もうとっても頭にきて、つい言ってしまったのよ!」
「何を言われたのですか?」
だいたいこの時点で予想は出来ましたが、私が敢えて続きを促すと、エヴァ様は体を震わせながら何かに耐えるような表情で仰いました。
「アレク様、ちっとも私を見てくださいませんのね。婚約者にあるまじき態度てはなくて?デートはもう結構、不愉快です。アレク様なんて大っ嫌い……って」
エヴァ様はポロポロと涙を零されます。
やっぱり……と私は内心で溜息をつきました。
「私は今日、それでもとても楽しかったの。アレク様と一緒にいるだけで幸せなのになんとひどいことを言ってしまったのかしら……。きっと今アレク様は怒っていらっしゃるわ……婚約破棄されたらどうしましょう……私もう生きていけないわ、ニーナ……」
さめざめと泣き始めたエヴァ様に、私は頭を抱えました。
デートの時点で薄々こうなることは勘づいておりましたが、久しぶりだからと二人きりにしたのが悪かったのでしょうか。
エヴァ様はアレク様のことが大好きで大好きで堪らないのに、いざアレク様を前にするとツンツンして心にもないことを言ってしまうツンデレ令嬢なのです。しかも決してアレク様の前ではデレないのでございます。
私は即次の行動を決めると泣いているエヴァ様の両肩を包み込みます。
「大丈夫ですわ、エヴァ様。アレク様の態度はいつもの事でございましょう?それに、エヴァ様が何度嫌いと仰られても、毎回デートに誘ってくださるではないですか。ひどいことを言ったと反省しておられるなら謝ればいいのですわ。そうだ、今からお手紙を書きましょう?私がそのお手紙を従者のオディマの元まで持って行きますわ。直接言えないならば手紙にしてしまえばよいのです。それならエヴァ様もご自分の本当の気持ちを述べやすいのでは?」
私の提案に泣いておられたエヴァ様はピタリと泣き止み、ぱあっと表情を明るくされました。愛らしいそのお顔に美しい笑みを浮かべておられます。これでこそエヴァ様です。
その愛くるしいウェーブがかったふわふわな桜色の髪も、陽の光を受けると黄金に輝く丸い大きな眼も、薔薇色の頬も、ぽってりとした可愛らしい唇も、笑顔の時が一番美しいのです。
私は思わずぼおっとエヴァ様を見つめてしまいました。本当に美しいお方。
「わかったわニーナ!早速書いてみるわね。ニーナが私の侍女でいてくれてよかったわ。ありがとう!」
少し泣いたせいで腫れた目ではにかみながら告げるエヴァ様は本当に愛しくて私も思わず笑みがこぼれます。
「私もエヴァ様の侍女で嬉しゅうございます。さ、早速書きましょう。私が急いで届けますから!」
「ええ」
すっかり元気を取り戻したエヴァ様を急かすしたあと、私は紙とペンをお持ちするため一礼して退出しました。
(さて、明日も対策会議かしら)
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