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「マキちゃ~ん。休憩しない?」
牛舎で牛床にあるバーンクリーナーと呼ばれる、床に埋め込まれたベルトコンベアのような機械に、古くなった敷料やふん尿をかき落としているとき、先輩に当たる猪口が牧田を休憩に誘った。「マキちゃん」などと、牧田のことをあだ名で呼んでいるが、聞けば、大学生になった牧田の長男とさほど変わらない年齢だった。ブリーチした髪をカラートリートメントで色をつけ、瞳にはカラコンを入れ、チャラい外見をしている。今日の髪色はファンタジーの世界にでもいるかのような青い髪色だ。
猪口と共に、従業員宿舎にあるエアーシャワーで細かな汚れを吹き飛ばし、手指の消毒を済ませると、一般の観光客も利用するカフェテリアへ向かう。しらぎぬ牧場には従業員専用の食堂は存在しない。カウボーイスタイルの従業員の食事風景もアトラクションの一つということだ。今日も今日とてカフェテリアへ牧田たちが一歩入ると黄色い声が上がる。猪口がにこにこと客へ手を振るものだから、さらに一層、客のボルテージは上がった。
「マキちゃ~ん。ちゃんとご挨拶しなきゃ~♪」
しらぎぬ牧場に来て、数ヶ月経ったというのに、未だにこの状況に慣れない牧田は引きつった顔で、小さく手を振った。すると、こころなしか猪口の時に上がった黄色い声のみならず、野太い声が上がる。
「相変わらずマキちゃんは男の人からの人気が高いねぇ」
「そったごどはね」
「……そして、口を開くと方言がすごいねぇ」
今日のまかないスイーツはレアケーキチーズタルトだった。さくさくのタルト生地に、とれたて生乳から作られたリコッタチーズを裏ごししてなめらかにしたチーズを使っているため、ヘルシーでもあった。普段は水抜きしたヨーグルトなどを使ったスイーツが多いので、いつもよりも一段手のかかったスイーツだ。猪口はホクホク顔でぱくりぱくりと口に運んでいる。
「わぁ。タルトかぁ。もうそんな時期なんだねぇ」
猪口が何故かしみじみと感慨に耽っている。
「知ってる? まかないスイーツに使われている牛乳は雪代一号のお乳を使っているんだよ」
雪代一号とは、白と黒のぶち模様が特徴的なホルスタイン種にあって、真っ白な体毛をしたアルビノの牛だった。性別は牡なのに、何故か大きく乳房が発達し、乳の量も雌牛と変わらない程とれる。乳牛として在るため、牡の放牧は積極的に行わないしらぎぬ牧場にあって、朝から晩まで雌牛と同じように放牧をされている。
牧田の顔を見ると広い放牧場でも遠くから駆け寄り、すりすりと鼻先を擦り付けて来るかわいい牛だった。毎日食べているスイーツが雪代一号のお乳から作られているのかと思うと、なお一層美味しく感じる牧田だった。
牛舎で牛床にあるバーンクリーナーと呼ばれる、床に埋め込まれたベルトコンベアのような機械に、古くなった敷料やふん尿をかき落としているとき、先輩に当たる猪口が牧田を休憩に誘った。「マキちゃん」などと、牧田のことをあだ名で呼んでいるが、聞けば、大学生になった牧田の長男とさほど変わらない年齢だった。ブリーチした髪をカラートリートメントで色をつけ、瞳にはカラコンを入れ、チャラい外見をしている。今日の髪色はファンタジーの世界にでもいるかのような青い髪色だ。
猪口と共に、従業員宿舎にあるエアーシャワーで細かな汚れを吹き飛ばし、手指の消毒を済ませると、一般の観光客も利用するカフェテリアへ向かう。しらぎぬ牧場には従業員専用の食堂は存在しない。カウボーイスタイルの従業員の食事風景もアトラクションの一つということだ。今日も今日とてカフェテリアへ牧田たちが一歩入ると黄色い声が上がる。猪口がにこにこと客へ手を振るものだから、さらに一層、客のボルテージは上がった。
「マキちゃ~ん。ちゃんとご挨拶しなきゃ~♪」
しらぎぬ牧場に来て、数ヶ月経ったというのに、未だにこの状況に慣れない牧田は引きつった顔で、小さく手を振った。すると、こころなしか猪口の時に上がった黄色い声のみならず、野太い声が上がる。
「相変わらずマキちゃんは男の人からの人気が高いねぇ」
「そったごどはね」
「……そして、口を開くと方言がすごいねぇ」
今日のまかないスイーツはレアケーキチーズタルトだった。さくさくのタルト生地に、とれたて生乳から作られたリコッタチーズを裏ごししてなめらかにしたチーズを使っているため、ヘルシーでもあった。普段は水抜きしたヨーグルトなどを使ったスイーツが多いので、いつもよりも一段手のかかったスイーツだ。猪口はホクホク顔でぱくりぱくりと口に運んでいる。
「わぁ。タルトかぁ。もうそんな時期なんだねぇ」
猪口が何故かしみじみと感慨に耽っている。
「知ってる? まかないスイーツに使われている牛乳は雪代一号のお乳を使っているんだよ」
雪代一号とは、白と黒のぶち模様が特徴的なホルスタイン種にあって、真っ白な体毛をしたアルビノの牛だった。性別は牡なのに、何故か大きく乳房が発達し、乳の量も雌牛と変わらない程とれる。乳牛として在るため、牡の放牧は積極的に行わないしらぎぬ牧場にあって、朝から晩まで雌牛と同じように放牧をされている。
牧田の顔を見ると広い放牧場でも遠くから駆け寄り、すりすりと鼻先を擦り付けて来るかわいい牛だった。毎日食べているスイーツが雪代一号のお乳から作られているのかと思うと、なお一層美味しく感じる牧田だった。
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