風の終着点

匠野ワカ

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ゲームの世界に召喚されたら

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 ゲームの世界に異世界転移。

 それは、大きな作品ジャンルの一つによくあるアレだ。もはや詳しい説明もいらないだろう。
 それでもそんな小説のネタみたいなことが、俺の、いや、正確には俺たち三人の身に降りかかるとは、夢にも思っていなかった。

 俺たちが夢中になっていたのは、勇者が魔王を倒すというシリーズで有名なネットゲームだった。
 とくにトップランカーでもない一般人。どんな基準で選ばれたのか不明だが、俺たちはある日突然、いつも使っていたアバター姿で異世界に召喚されてしまったのだ。

 薄暗い地下祭壇で、状況の分からない俺たち三人の前に現れたのは、不健康そうな神官と興奮した様子の王様。
 あいつらは俺たちの日常を一方的に奪っておきながら、横柄な態度で魔王を倒し世界を救えと命令をしたのだ。

 あまりのことに頭が真っ白になって言葉の出ない俺とは違い、神官や王様の前でも毅然とした態度で対話を重ね、様々な有益な情報を引き出してくれたのが、美しい回復職ヒーラーのアオイだった。
 ちなみに俺はアタッカー役の勇者で、ハンドルネームはソーマだ。本名は渡辺 颯真わたなべ そうま。しがない二十八歳のサラリーマン。そして最後の一人が、ゴリゴリの筋肉で盾役タンカーをこなす無口な前衛のゴウだった。
 欲を言えばサポーター役が一人足りないが、国中の神官の力を残らず集結しても、三人の召喚で限界だったらしい。もうそこは自分一人だけじゃなかっただけラッキーだと思うことにした。

 アオイが聞きだしてくれた情報によると、古い言い伝えには召喚者の願いを叶えること、つまり今回の場合であれば王様の「魔王を倒せ」という願いを叶えることで、自動的に元の世界に帰ることができるようになるらしい、ということだった。

 俺一人だったら聞き出せなかった情報だと思う。仲間がいて本当よかった。俺はアオイに全力で感謝しながら、仲間を大切にしようと心から思ったのだ。


 こうして俺たちは励まし支え合いながら、元の世界に帰るために、魔王討伐の旅に出ることになったのだった。

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