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第一部
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ダンジョン内の通路は地中にあるだけあって、かなり涼しい。そして、日が入らないので、どのくらいの時間歩いたのかわからない。わたし自身、足を怪我しているので、体感では長く歩いたように思うけれど、実際はそこまで歩いていないかも、という疑いがぬぐい切れない。
それでも、二十分くらい歩いたと思う。
ふと、アルベアちゃんとアビィさんが足を止めた。
「どうし――」
声をかけようとしたところで、アビィさんが口元に人差し指を添え、静かにしろ、というジェスチャーを取った。
「貴女の耳はポンコツなんですか? さっきは私より先に猫の声に気が付いたというのに……」
小声でアビィさんがそう言った。
何か変な音でもしたかな? と耳を澄ませてみると――なんだか、話し声のようなものが聞こえてくる。全然気が付かなかった。
細かい内容までは分からないものの、男の人の声が聞こえてくる。雰囲気的には独り言というよりは会話のように聞こえた。まぎれもなく話し声で、何かの鳴き声とかではないのはハッキリしている。
しばらくじっとして様子をうかがっていると、ただでさえ聞き取りにくかった声は、さらに小さくなっていき、すぐに何も聞こえなくなった。どこかへ行ってしまったようだ。
「トレジャーハンター、とかいうやつですか?」
会話は聞こえなくなったものの、大声を出すのはためらわれて、わたしは小声でアビィさんに問う。
「いてもおかしくはありませんが……どうでしょう。罠という可能性もあります。あるいは、このダンジョンを作った魔法使い本人かも」
……『魔法使いの家』とは言っていたけれど、実際に住んでるんだ? 過去に魔法使いが住んでいたもののすでに亡くなっているとか、あるいは別荘とか、そういうイメージだと勝手に思い込んでいたけれど、普段使いしている家と兼用するの?
アビィさんの言葉にわたしはあっけにとられてしまう。不法侵入されることを前提とした家に住むなんて、絶対に気が休まらないと思うんだけど。魔法使いの考えることって理解できないわ……。犬派みたいだし、余計に。……アビィさんが魔法使いの家に猫がいるのに驚いたのって、犬だったら納得するけど、ということなのだろうか?
久々の強いカルチャーショックに、なんてアビィさんに言葉を返していいか分からなくなる。
思考がどこかに飛んで行ったからだろうか。
わたしとしたことが、猫が近づいてきているのに気が付かず――わたしの足元に、猫がいることに最初に気が付いたのは、アルベアちゃんだった。
それでも、二十分くらい歩いたと思う。
ふと、アルベアちゃんとアビィさんが足を止めた。
「どうし――」
声をかけようとしたところで、アビィさんが口元に人差し指を添え、静かにしろ、というジェスチャーを取った。
「貴女の耳はポンコツなんですか? さっきは私より先に猫の声に気が付いたというのに……」
小声でアビィさんがそう言った。
何か変な音でもしたかな? と耳を澄ませてみると――なんだか、話し声のようなものが聞こえてくる。全然気が付かなかった。
細かい内容までは分からないものの、男の人の声が聞こえてくる。雰囲気的には独り言というよりは会話のように聞こえた。まぎれもなく話し声で、何かの鳴き声とかではないのはハッキリしている。
しばらくじっとして様子をうかがっていると、ただでさえ聞き取りにくかった声は、さらに小さくなっていき、すぐに何も聞こえなくなった。どこかへ行ってしまったようだ。
「トレジャーハンター、とかいうやつですか?」
会話は聞こえなくなったものの、大声を出すのはためらわれて、わたしは小声でアビィさんに問う。
「いてもおかしくはありませんが……どうでしょう。罠という可能性もあります。あるいは、このダンジョンを作った魔法使い本人かも」
……『魔法使いの家』とは言っていたけれど、実際に住んでるんだ? 過去に魔法使いが住んでいたもののすでに亡くなっているとか、あるいは別荘とか、そういうイメージだと勝手に思い込んでいたけれど、普段使いしている家と兼用するの?
アビィさんの言葉にわたしはあっけにとられてしまう。不法侵入されることを前提とした家に住むなんて、絶対に気が休まらないと思うんだけど。魔法使いの考えることって理解できないわ……。犬派みたいだし、余計に。……アビィさんが魔法使いの家に猫がいるのに驚いたのって、犬だったら納得するけど、ということなのだろうか?
久々の強いカルチャーショックに、なんてアビィさんに言葉を返していいか分からなくなる。
思考がどこかに飛んで行ったからだろうか。
わたしとしたことが、猫が近づいてきているのに気が付かず――わたしの足元に、猫がいることに最初に気が付いたのは、アルベアちゃんだった。
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