おっさんは 勇者なんかにゃならねえよ‼

とめきち

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第十六話 レジオの復興

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「レビテーション!」
 女神にもらった新しい力は、なかなか便利でありがたい能力だった。
 腕力を使わないでもモノが持ち上がる、こんなん使いたおしてたら、ぜったい太る。
 俺は、ぶっ倒れた男爵邸の尖塔を持ち上げて、つなぎなおす作業をしている。
 表向きは魔物がぶっ壊したことになっているが、本当は俺のファイヤーボールでヘチ折れたんだよ。
 ナイショナイショ。
 俺が壊したものを俺が治す、当たり前っちゃあ当たり前だな。

 かなり重いものでも、悠々持ち上がるこの魔法は、かなり便利だ。
 フォークリフトや、クレーンを必要としない。
 魔法って、ホンマ便利だな。
 教会に陣取っていたゴルテス準男爵も、かなり不便を感じていたようなので、男爵邸を修理してやることにしたんだ。
 と言っても、ヘチ折れた尖塔を治す程度で、あとは自分とこでやると言う。

 行政を早く立て直さないと、まるきり無法の街になってしまう。
 まだマシなのは、西区域のヘルム爺さんがいてくれること。
 この村長がいるおかげで、ある程度の秩序が守られている。
 はやく秩序が戻らないと、安心して外も歩けないよ。
 ゴルテス配下の歩兵たちは、三人ひと組みで毎日市内を巡回している。
 やはり、けんかなどが絶えないからだ。
 警察機構もないので、かなり危険だ。


 東門付近にあった兵舎は、ブチ壊れて使えないし。
 毎日の飯にも不便をしている。

 男爵亭なら部屋数も多いし、まあ手間もかからんしな。
 男爵亭は、荒らされていると言っても、食い物だけなので、書類などは残っていた。
 しかし、この国には戸籍の概念がないんだよ。
 どうやって年貢を集めていたかと言うと、各名主の申告のし。
 どこそこの村で、こんだけ、取れました今年の歩がかりは五公五民なので、一〇石ですとか。
 そんな感じで、徴収される。
 むちゃくちゃ大雑把で、ドンブリ勘定だ。

 俺は、ティリスと商人の家に入っている。
 ラルも、一部屋取って、寝泊まりしている。
 ラルは自分の家があるんだが、そこからいろいろ持ってきて、ここに居座るつもりのようだ。
 そりゃしょうがねえな。
 まあ、あいつは俺の家族だな。
 西地区のヘルム爺さんは、うまく住民を逃がしたらしくて、二千人の住民はなんとか自宅に戻ることができた。
 ゴブリンなんかに食い荒らされた食料は、あきらめるしかないが、それでもほとんど手つかずで家は戻ってきた。
 悲惨なのは東地区で、まともに魔物の襲撃をくらって、あっという間に殲滅されたらしい。
 らしいって言うのは、みんな死んでいるので、詳しいことがわからんのだ。
 その上、戦闘のあおりを食らって、家屋は倒壊。
 大型の魔物がなだれ込んで、ぶつかるもんだからやっぱり家屋はボロボロ。

 南・北地区の住民は東に隣接していた者たちは、やはりやられてしまったようだが、それでも半数が生き残っているらしい。
 それだけでも救いだ。
 みんなが東地区の廃材を運びこんで、家の修復などに使っている。



 今日も、ヘルム爺さんが俺んちに来ている。
「それでカズマ殿、南地区の住民がもどったんですが、食べるものがないと言ってきたんですわ。」
「そりゃまあ、しょうがないわな。ヘルム爺さん、この袋にゴブリンが二千五百匹くらい入ってる、みんなで分けてやってくれ。」
「へあ?二千五百って…しかも、それはカズマ殿の稼ぎじゃないですか。」
 ギルドに持ち込めば、結構な金にはなるんだよ。
「こいつらは、レジオの民の恨みを買って、食い殺されるのがおにあいだ。」
 俺は、笑って見せた。
「それに、背に腹は代えられんよ、みんな腹空かしてるんだろ?使いなよ、足りなきゃまた獲ればいい。」
「カズマ殿が、命がけで獲った獲物です。みなによく言って聞かせます。そのうち、みんなに返させますから。」
 じいさんは、かなり気にしているみたいだ。
 ゴブリンでも、二五〇〇匹いたらひと財産だからな。
 そりゃあ気にする。
 
 俺は、かえってヘルム爺さんの感覚が、まともすぎてびっくりするわ。
 人が好いというかなんというか。
 きっちりしている。
「ああ、気にスンナって。それとさ、手間で悪いけど、人別帳を作りたいんだ。」
「にんべつちょう?」
「ああ、どこそこの家には誰がいるってやつだ、ヘルム爺さんの家には、息子夫婦と孫がいるだろ。」
「へえ。」
「そいつをちゃんと並べる。ヘルム、息子、ヨメ、孫。」
「ふうむ。」
「書くものがないから、木片でいい。木を削って、紙の代わりにしよう。女子供を集めて、そいつを作るところかはじめよう。」
「わかりました、南の代表とも話し合って、すぐに。」
「たのむ。」

 なんだかんだで、落ち着いてきた町だが、人の心が落ち着くには時間がかかる。
 ヘルム爺さんは、ゴルテス準男爵に相談を持っていかずに、すぐに俺の所にやってくる。
 これじゃ、いい顔してくれないぞ。
 人の好いゴルテスは、たいしたことでないような顔をして笑う。
「いや、それでよろしゅうござる、この町のことに関しては、カズマ殿の意向で進めましょう。」
「男爵、それじゃあんたの立場が。」
「ワシの立場より、カズマ殿のほうが大事でござる。」
 こんな感じで、取りつく島もない。

 また、ティリスは草原で薬草を採ってきて、ポーション作りに余念がない。
 孤児たちを連れて、日がな一日薬草を採っている。
 それを仕分けて、効能別に並べるのも、孤児の仕事だ。
「うまいこと考えたな。」
「孤児がスラム化しなくていいでしょ?」
「そのとおりだね。」
 孤児たちは、今日の仕事が終わって、教会に帰って行った。
 いきなり静かになる、商家の厨房。

 商人の家の厨房は広くて、いろいろな作業ができる。
 窓も広くて、明るいのも作業に向いてる。
 窓辺から、木漏れ日が差してきらきらしている。
 どうかすると、いい気分で昼寝したくなる。

 ティリスのヒールやヒーリングについては、俺から教えた。
 魔力の流れを、実践で見せるのが一番わかりやすい。
 ティリスは、キュアの初期技術を持っていたので、上達も早かった。
 彼女は、女神からもらったポーション生成の余波で、魔力もむっちゃ増えて、治癒師としてはかなり高度になっている。
「竜の涙があるので、超上級ポーションの生成ができます。ありがたいですよ。」
 ティリスは、明るく笑いながら言った。
「すごいな、こんなこともできたんだな。」
 俺は、すなおに感心する。
 こんな作業は始めてみるし、料理ではないからな。
「まあ、教会の収入に影響しますからね、ポーション作りは。」
 わざわざバケツで受け止めていたのはこのためか。
 竜の目からは、ぼったんぼったん落ちてたからな。
「へえ~、それはすごいな。」
 ティリスは、興奮して鼻息が荒い。
「最終段階で込める魔力で決まりますが、ジェシカさまのおかげで、その作業も余裕です。」


「なるほど。」
「だから、おっぱい揉むのやめません?」
 ティリスは、真っ赤になって言った。
 俺は、作業するティリスの後ろから、もみもみしてみた。
「まわりにゃ、だれもいないよ。」
「夜にしなさいってば~。」



 俺は、ティリスをからかうのをやめて、瓶作りを続ける。
 つまり、土魔法で、薬の瓶を作るのだ。
 親指くらいの量で、体力が戻ったり、傷が癒えたりする。
 しかし、なぜか俺が作ると、リポ●タンの瓶みたいになってしまう。
「まあ、容量が変わらなければ、どんな格好でも変わりありませんよ。」
 ティリスは、けっこうアバウトだ。
「街の人たちが、怪我などで動けなくなるほうが困りますから。」
 そりゃそうだ。
 ティリスは、淡々とポーション作りを進める。
 意外と手際もいいんだな。


「こんなもの、派手なわけないでしょう?」
 ティリスは、手元を見ながらゆっくりかき回す。
 ポーションの仕上げには、若干の魔力を使うので、慎重になるのだ。
 それでも、ポーションでは欠損した手足などは治らない。
 欠損を治すには、竜の血やキモなどを使った、エリクサーと言う薬が必要になる。
 たまに、ダンジョンでも出るそうだが、国が買えるほど高い。
 ま、俺の最上級ヒーリングだと、目ん玉くらいは戻りますが~。
 だって、竜の欠損した奥歯が治ったもん。


 八千人の町なのに、住民は四千人に満たない程度しかいないので、夜など明かりがまばらでさみしい。
 ゴルテス準男爵の手下三百人は、東西の城門警備に交代で立っているので、兵隊宿舎を修理している。
 屋根が落ちてるところもあって、難航しているが。
 まあ、小なりと言えども男爵領だ、常駐の兵隊さんはかなりいたらしいし。

 俺は、ティリスと相談をした。
「大々的な慰霊祭をしようと思うが、王都から司祭は来てくれるかな?」
「そりゃまあ、ウチの司祭様が亡くなってしまったので、次の派遣をまっているところですが。」
 ティリスは、玉ねぎを剥きながら言う。

 すでにポーション生成は終わって、夕食の準備になっている。
「だいたい、あなたがオシリスさまの司祭として、この町を復興するよう言われたんでしょう?」
 面倒なこと言いやがって。
「そらそうだが、俺はシキタリとか知らないもん。葬儀のやりかたすらわからんわ。」
「それくらい、私にもわかりますよ。」
「だって、お前還俗するんだろうが?」
「ええまあ、でも、ジェシカ様見ちゃったし、聖職者は信用できないですけど、神様はそうじゃないでしょ?」
「うんまあ。」
 聖女なんて言われちゃったしなあ。


「あなたは、オシリスの使徒のひとりなんですし。」
「そうなのかな?」
「ジェシカがそうおっしゃったじゃないですか。」
「わからんしー。とにかく、慰霊祭をやって、住民の心に一区切りつけたいんだ。」
「そうですね、じゃあ男爵さまにお願いして、その辺をうまくつないでもらいましょう。」
 ティリスは、横目で台所に入ってきたゴルテスを見ている。
「聖女さま、男爵さまはいりませんぞ、さまは。」
 あら?
 ゴルテス準男爵は、すでに聖女って言ってるし。

「そうなんですか?」
「まあ、ワシは準男爵ですし、カズマ殿の家来で、どうかひとつ。」
「こんなおっさんの家来って、どないすんねん?」
「そうおっしゃらずに、それがしは役に立ちますぞ。」


 それを聞いて、ティリスはタマネギから顔をあげた。
「どこの馬の骨だかわかんねえヤローに、男爵さまが家来になんかなっちゃいけませんよ。」
 ティリスは、むっとした顔のまま、ゴルテス準男爵に言った。
「おまいも言うねー。」
「私も孤児でしたし、教会の孤児院の出で、なんとかシスターになりましたけど、やはり馬の骨その二ですからね。」
「あ・なるほど。」
「なるほど言うな!」
 ティリスは、おれをポカリとたたいてから、ゴルテスに言った。
「今回の暴走で孤児もうんと増えましたし、その保護も大事な仕事です。」
 ゴルテスは、うんうんとうなずいている。
「それは、兵隊さんたちが世話してくれてるじゃん。」
 俺が言うと、ティリスは膝を軽く折る。

「ありがたいことですが、いずれは教会で面倒を見なければなりません。」
「そういうことね、じゃあそれも支援するか。」
 金はないけど心配すんなって、主のいない商人の家には値打ちものがそろってるし。
「そうですね、教会が空きましたから、そちらで面倒見ましょう。」

「その人別も必要だな。」
「ですね、では、それはウチの兵士たちにやらせましょう。」
「お願いできるかな?」
「まかせてください。」
 ゴルテス準男爵は、うなずいて部屋を出て行った。
「まったく、これだけ人が住んでいて、戸籍の一つもないなんて、ばかげているわ。」
「戸籍って?」
「誰がどこでいつ生まれたか、誰の子供かわかる書類だ。」
「へ~、そんなめんどくさいもの作るんですか?」

「めんどくさいけど、これがないと税金の計算ができないじゃないか。」
「へえ、そんなもんですか。」
「いったいどうやって、税金の計算してたか、考えると空恐ろしいわ。」
「あんまりわからないわね。」
「そのへんのアバウトさって、どうなの?」
「男爵様~小麦が取れました~って、持ってくるのよ。」
「だれが?」
「名主さまって言うか、村長さん?」
「なんで疑問形なんだよ。」
「教会にはあんまり関係がない話ですからね。」
「そうか。」


 そうした中で、アルとテオが顔を出した。
「ユフラテさん、こっちで仕事できますかね?」
「ああ、どっちでも大丈夫さ。」
「こっちに家もあるからね、そのうちゼノも来るそうですよ。」
 アルが、帽子をもってかしこまっている。
「そうか~、家のこと任せたままで、悪かったなあ。」
「自分の町を守れなかったのは俺たちだ、文句をつけたりできないっしょ。」
「そんなことねえよ。」
 俺の声に、少し安心したように、そばのいすに腰掛ける。
 みんな、気にしているんだ。


「最初の魔物が五~六百って言ってたのに、なに?一万匹もいたって?」
 テオも、椅子を引き寄せて座りながら聞く。
「ああうん、後から増えたみたいだな、この先一キロのところにドラゴンが居座っていてさ、暴走の原因はそいつらしい。」
「ドラゴン…ユフラテさんが追い払ったんだって?」
「そういうことになってるらしいな。」
 おれは難しい顔をした。
「ちがうんで?」
「いや、違わないけど。」
 真実は語ることもないな、だって誰も信じないもん。
「オークキングが居座っていてさ、そのうえ単眼のトロールまでいやがった。そいつが四メートルもあるでかい奴で、ホンマに死ぬかと思った!」
 あれは、危なかった。

 俺は、最後の戦いを詳しく話した。
「ほえ~、よくもまあ。」
「ああ、チグリスの名刀がなかったら、危なかったな。なんせ、ほかの刀じゃ刃が通らなかったんだ。」
 しまいには石から剣を抜いたりしたし。
「ほえ~。」
「ああ、引き留めて悪い、お前たちも自分の家を見てこいよ。」
「そうします、行こうテオ。」
「ああ、じゃあまた。」
「なにかいるものがあれば、遠慮なく言ってくれ。」
 二人はうなずきながら西地区に向かった。

 ゴルテス準男爵は、王都に向かって早馬を走らせてくれた。
 なにより、合同葬儀をする司祭が来てほしい。
「現状を報告するためにも、何度も走らせてますよ。なにしろ、一つの町が消えるほどの惨事ですからね。」
「そうですか、まあ、報告は大事ですよね。」
 ホウレンソウは大事だよ、あとで言った言わないのケンカになるし。
 どうしても、情報はゆがみやすい。
 だから、この報告のせいで、あとでひどい目に会うんだけど。
「魔物が跋扈する無人の町に、単身乗り込んで、当たるを幸いちぎっては投げちぎっては投げ…」
 ゴルテスは、一人話し始めた。
「へ?」
「そのうえ、魔物を殲滅したと思ったら、遺跡に舞い降りたブルードラゴンを、これまた単身痛めつけて追い払った、ドラゴンスレイヤー!」
「おいおい!」
「主神オシリスの信任篤い、使徒ジェシカに導かれ、かくして、町は救われたのであった。」
 ゴルテスは、講釈師のように身振り手振りで話す。
「まてー!」


「別に嘘は書いてないですよ。」
「そんなこと書かれたら、俺何者なんですか!」
 ゴルテスは、身振りの手を止めて、こっちを見た。
「いやしかし、ワシも見たですもん、使徒ジェシカ。」
 ゴルテスはちっとも悪びれない。
「見たですもんって、そりゃあそうですが。」
「王都では大騒ぎになっていますぞ、勇者現るってなもんで。」
 そりゃあそんな書き方されたら、騒ぎにもなるわさ。
 かと言って、俺なんかぜんぜんたいした人間じゃないし、まだ発展途上なんだよ!
「アカン、おいティリス、隣の国までどのくらいかかる?」
「へ?まあ、一番近くて一〇日くらいですね。」

「よし、じゃあ今から出かけるぞ。」
「今からですか?」
「いやなら俺一人で行く。」
「いやとは言いませんよ!」
 ティリスは、立ち上がって言う。
「で?何を持って行くんですか?」
「簡単な着替えでいいよ、向こうで買えば済むだろう?」
「そりゃまあ、たいして荷物も持っていませんし。」
「お前だけいればいいよ。」
「あらまあ。」
 ティリスは、ほほを押さえて赤くなった。

「こらこら、オシリスさまからこの町を復興させろと言われたんだろう、どこへ行くんですよ。」
「いや、王都からへんな人がくるとこまるなあと…」
「そんな、変な人間ばっかり、いる訳がなかろう。」
「そうかなあ?」
 イマイチ、この国の常識とか、よくわからんし。

「まあ落ち着いてくださいよ。来るとしても、まずは教会の司祭ですし、慰霊祭が終わってからまた話を始めるもんですよ。」
「そうかなあ?なんか、エライ人とか着いてこない?」
「そりゃあわかりません。手紙の返事は、まだ来てないですから。」
「ほら~、言わんこっちゃない。」
「まあ、悪いようにはしませんから。」
「たいへんだ~!」
「どうした!」
「テオが階段から落ちました!」
「はあ?大工のくせに、なにやってるんだ。」

「階段板が悪くなっていたのか、踏み抜きまして。」
「ティリス!すぐに行って治療を。」
「あ、はい!」
「いやいい、やっぱ俺が行く。」
 結局は、連れだってテオの家に向かった。
 テオの家は、西地区の真ん中あたりにある、普通の二階建て住宅だ。


「いてえ~!」
 見ると、テオの右手は中ほどから、あさっての方向を向いている。
「あ~あ、こりゃまあ…」
「すぐに治療を。」
「そうだな、ティリス、ヒールかけておいてくれ。」
 その間に、俺はちょっと長い詠唱のヒーリングを準備する。
「ヒール!」
「あ~、痛くなくなった。」
「よし、いくぞヒーリング!」
 テオの右手はすぐに元の状態に戻った。
「あ!俺の怪我も治ってる!」
「あたしも!」
「おれの手が、元通りになった~。」

 テオの周りに集まっていた住民の、怪我や病気まで一気に治ってしまった。
「すごい、グローヒーリングですよ。いつの間に…?」
「いや、俺、ただのヒーリングかけたつもりなんだけど。」
「たぶん、ドラゴンのヒーリングをしたときに、魔力を込めすぎて進化したんですよ。」
「そういうことってアリなの?」
「ほかに、明確な答えがありませんから。」
「そんなもんかねえ?」
「だって、現実に周りの人まで、治癒しているじゃないですか。」
 そうなのかな?まあいいや。
「テオ、大丈夫か?」

「ええまあ、ユフラテさんには、助けられてばっかりだな。」
「なあに、俺はできることをしているだけだよ。」
 俺は、ティリスを連れて、町に出た。
 家をなおしたり、煮炊きをしたり、町の中は確実に生活のリズムが戻っているように見える。
 街の広場には、簡易ながら市場が立ち、なにがしかの食べ物などが並び始めた。
「畑の作物なんかは、あんま荒らされなかったんだな。」
「魔物って、基本肉食ですからね、野菜なんかにはあんまり興味ないんですよ。」
「へえ~、そうなんだ。」

「あと、人間は補食するのと、繁殖するのに利用されますからね。」
「うん…」
「私、昔見たんですよ、オークに繁殖された人間…」
「?」
「女の人は、気がふれてしまって、訳わからないと思いますけど、いきなりおなかを食い破って、オークの子供が出てくるんですよ。」
 ティリスは、青ざめた顔でまくしたてる。
「そんなものがおなかの中にいるとわかったら、私なら死にますよ。」
「そうか。」
「そうでなくても、どうやって殺すか考えます。」
「ティリス、もういい。」

 俺は、ティリスの腕をつかんで黙らせた。
 ティリスは、顔を蒼くして、自分の体を抱いた。
「もういいんだ。」
 女性として、おそろしいエイリアンの子供を植えつけられることに、恐怖を感じるのは当たり前だ。
「おちつけ、オーク鬼は退治した。」
「え、ええ、そうですね。」
 ティリスは、冷や汗を流しながらこっちを向いた。
「大丈夫だから、俺が守るから。」
「はい…」
 ん~、そこで目をつぶるな!
 まわりにいっぱい人がいるんだよ!



「あ!まってくださいよ~。」
 二十歳のくせに!オニかわいいことすんじゃねえよ。
 テレるじゃねえか。
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