おっさんは 勇者なんかにゃならねえよ‼

とめきち

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第十九話 レジオの復興 ④

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「おい、起きろティリス。」
 毛布の中のちっこい塊に声をかけてゆすると、後ろの方から声がした。
「なんですか~カズマ、あたしはここですよ~。」
「へ?」
 自分の毛布をめくってみると、その中にはアリスティアが丸まっていた。
「なんでシスターがこんなとこにいるですか!つか、この国のシスターは、人の毛布に入れと言われているですか!」
「そんなことないですよぅ?」
 寝ぼけてティリスが答える。
「こら、シスター、起きないとそのでっかいチチ揉むぞ!」
「ひあ!」

 アリスティアは、頓狂な声を上げて目を覚ました。
「ああ、カズマさまおはようございます。」
「いいから、おれの毛布から出てくれ。いったいどうしたんだ?」
「いえあの、シスター=ティリスに聞いたので、真似してみたんですが…」
「そんなこと真似しなくてもけっこうです!あなたも還俗する気ですか!」
「そうではありませんが…」
「興味本位で変なことすると、あとが大変ですよ。」
「兄ちゃん、モテモテだな。」
「それみろ!」

 どちらにせよ、重荷を背負うのはまっぴらだ、今度こそお気楽人生を進むのだ。
 ただでさえ、しょ~もない聖痕(スティグマ)なんか背負わされて、使徒だのなんだの、その上司祭としてオシリスを祀れだの。
 それだけでもめんどくさいのに、レジオを復興しろだの、手に余るっちゅうのさ。
 できるところはやるけど、できないことはしない。
 どうしょうもなくなったら本気でにげちゃうからな!
 そんなことを考えながら、朝飯を腹に入れた。
 レジオからマゼランまでは、都合三日の行程なので、もいっかい野宿しなきゃならん。
 俺たちは、昼過ぎに先日作った土壁のあたりに着いた。
「まえは、ここで一泊したんだけど、もう少し進めそうだな。」
「そうですね、とりあえずお昼にしましょう。」
 ティリスは、急にしおらしくなってる、今朝のアリスティアの行動にびっくりしているからか?

 俺たちは、土壁の前で昼飯にした。
「この前獲った、バッファローのステーキだ、たくさんあるから遠慮するなよ。」
「うわ~、バッファローなんて、よく獲れましたね!」
 ウォルフは、いちいち驚くのでおもしろい。
「ああ、三十頭と少しいたので、全部獲ってレジオの難民に食わせたんだ。」
「す、すごい…領主様でもそこまでしてくれませんよ。」
「まったくだ、あのおじゃる伯爵なんざ、難民を追い払ってたからな。」
「そうだよ、出したの麦がゆ一杯だぜ。」
 ラルも憤慨している。
「ま、出しただけめっけもんさ、言ってみるもんだぜ。」

「オシリスの加護に感謝を…」
 アリスティアは、手を合わせてお祈りしている。
「ちぇ!オシリスなんざ、やっかいごとしか持ってこない。今度きやがったら、ぜったいケツ揉んでやるのに!」
『ひいい!』
 オシリスは、突然お尻を押さえて飛び上った。
『どうなさったんですか?オシリスさま。』
 ジェシカは、デスクの書類越しにオシリスに声をかけた。
『いえ、なぜだか突然、悪寒が…』
『最近多いですねー、エアコンの調子が悪いんじゃないですか?」
 今日のジェシカは、海老茶のスーツにメガネで、髪をアップにしている。
 ちょっとキャリアウーマン風。
 
 あいかわらずティリスは、よく食べる。ステーキもおかわりして、健啖なところを見せている。
「まあ、食い物だけは死ぬほど持ってるから、太らなきゃ喰えばいいさ。」
「そ、それはちょっと遠慮したいですね。」
「あ?太るの?」
「ふふふ太りませんよ!」
「かむなよ。」
「アリスティアさんみたいに、胸だけ太ればいいですけどね。」
「こ!これは太ったんじゃありません!」

 和やかな中にも、ちょっと針を含んで、昼食は進む。
「しかし、カズマさんの袋はいろいろ入ってますね、どのくらい大きさがあるんですか?」
 ウォルフは、ウサギステーキを口に入れながら聞いた。
「これ?教会くらい入るよ。」
「す!すごい!」
「そうかなあ?こいつは魔法使い専用で、カギがかかるから安心なんだよね。」
「うわ~、じゃあ盗まれても、中身は出せないんですね。」
「そう、汎用品ならもっと簡単に作れるよ。」
「つくれるんですか!」
「かんたんだよ、作り方教えてもらったから。」
「うわ~、金貨がざくざくですね。」

「いや、あんま袋をたくさん作るのは、師匠から禁じられてる。」
「そうなんですか。」
「なんだ、ほしいのか?」
「ええまあ、今の袋ではそろそろ限界が…」
「なんだ、そんなことか、今の袋はどのくらいだ?」
「納屋一軒くらいです。」
「それでも大きいな、じゃあこれやるよ。納屋なら三つ分くらいは入る。」
 俺は、チコからもらった小さな袋を出した。
「い、いいんですか?」
「こんなもんで金取ろうとは思わんよ。ほら、もってけ。」
 俺は、ウォルフの掌に、袋を乗せた。

「うわ~!うれしい!」
 ウォルフは、小躍りして喜んでいる。
「そうだな、少し喰いもん入れてけ、ウサギ三匹くらいは持ってないと、飢え死にする。」
 おれは、ストレージからウサギを移動させてやった。
「ありがとうございます、助かります。」
「ウサギを捌くナイフと、フライパンと…」
 いろいろと移してやった。
「勉強するのはいいが、それをどう生かすかも重要なことだと思うぞ。知識は生かしてこその知識だ。」
 魚流布は、頭をかきながら苦笑した。
「あ~、カズマさんの言うとおりですねえ。いまのところ、勉強が生かされてないです。」

 ウォルフは、少し悔しそうな表情で、手元の皮袋を見つめた。
「まあいい、休んだし出発するか。」
「「「おう」」」
 手早く焚火に水をかけてから、丁寧に土をかけて消火をして、パリカールを進ませる。
 パリカールも、どうかすると根性がすわってきたのか、シャドウ=ウルフ程度ではあわててへまをするようなことがなくなった。
 動物も学習するし、進化するんだよ。
 まあ、ティリスの指示がわかりやすいって言うのもあるんだろうな。
 便利な魔法だよな。
 なんで、俺には使えないんだろう?

 まあない物ねだりをしていてもしかたがない、今度ジェシカが来たら聞いてみよう。
 ぽくぽくとのんびり進むロバの馬車は、ちんからりんとパンを売ることもなく、黙々と街道を進む。
 岐阜県では、ロバの引く屋台が蒸しパンを売って歩いていたんだ。
 ロバのパンで思い出したが、なんでここのパンが固いかって言うと、酵母が使ってないからだ。
 重曹みたいな、膨らし粉で膨らませた、固いビスケットみたいな感じ。
 ここはいっちょう、天然酵母を捕まえる作業が必要だな。
 この街道沿いの、鉱石の落ちている原っぱに、いっぱい果物があるのであれでいこう。
 帰ったらさっそくやるぞ。

 馬車の幌の中で、固く手を握りしめたのであった。

 距離的に、それほどでもない残りの旅程に、俺はパリカールの前にライトの魔法を浮かべて、薄暗い中も進むことにした。
 少なくとも三時間くらいでマゼランに着くはずだ。
 俺のライトは、持続時間が八時間くらいあるので、ぜんぜん消える様子はない。
 それに、位置固定が容易なので、数個出して前方が照らせる。
「でもさあ、門が閉まっていて入れないんじゃないか?」
 ラルは、自信無げに俺に言う。
「そんときはそんときだ、ワイロで開けてくれるならそれでよし、ダメなら門前で野宿すればいい。」
「そうか、それならまあいいか…」
 ラルは、ひとり納得顔だ。
 考えればわかるんだが、城門は対魔物用にかなり頑丈にできている。
 開け閉めには結構な時間がかかるし、労力も必要になる。
 おいそれと開け閉めできるようなもんじゃないんだよな。

 馬車のまわりは、だんだん暗くなってくる。
 夕闇がだんだん、真の闇になるころマゼランの城門が見えてきた。

「マゼランだ!帰って来たよ。」
 ラルが城門を指差して叫ぶ。
「なんだかずいぶん長いこと離れていたような気がするな。」
 俺は、高いマゼランの城門を見上げた。
「さて、中に入れてくれるかな?」
 幸いに、まだ城門は開いている。
「こんばんわー、まだ通れるかい?」
「ああ?だれだよこんな時間に、ユフラテじゃねえか!おい、こっちはすげえ騒ぎになってたぞ。」
「あんだよ、騒ぎって。」
「おまえが、ひとりでレジオを解放したってぇウワサだ!」
「ああ、それなら間違ってない。」
「ほんとかよ!」
 門番の兵士は、目をみはった。

「ああ、話すと長くなるから、また今度な。通っていいかい?」
「ああ、当分城門は閉まらないよ。領主さまん所に王都から早馬が来てな、まだ来るかもしれないから閉められないんだ。」
「へえ~え、おじゃるの伯爵(とのさま)んとこにねえ、何を言ったのやら。」
 ゴルテス準男爵の報告と重なっているのかな?
「わからんが、隊長様が青くなってたから、いい知らせじゃねえな。」
「おやまあ、クワバラクワバラ。」
「ちっげえねえ。」
 門番は、笑っているが、その話が本当ならお前たちの職にも影響のある話だぞ。

 馬車はメインストリートに入り、少し行ってから左に曲がる。
 職人街はいまだ、明かりがともって、ワーカーホリックのドワーフはとんてんかんと忙しい。

「チグリス!チコ!帰ったぞ!」
 玄関で大声で呼ぶと、二人は駆け出してきて、俺をつかまえた。
「このやろう、無事だったか!」
「ユフラテ!けがはない?」
「ああ、このとおりぴんぴんしてるよ。」
「なんでもいい!さあ中に入れ!」
 一行はぞろぞろと、チグリスの家に入った。

「びっくりしたぞ~、いきなりレジオの町の魔物を一掃して、解放したって聞かされた時は。」
 チグリスの乱暴な歓迎に、俺たちは明るく笑った。
「俺自身もどっちかって言うと、びっくりしてるんだけどな。」
「そうなの?」
 これはチコ。
「ああ、とにかく少しでも数を減らそうと、ワナ作ったり落とし穴掘ったり、大変だった。」
「へえ、それで、何匹ぐらいいたの?一〇〇匹?二〇〇匹?」
「ああうん、一万匹くらい。」
「「はえ?」」

「オークが二百匹くらいいて、ゴブリンが八千匹くらいいた。その他ハーピーやらホブゴブリンやらリザードマンなんかもいて、ワイバーンも二匹いた。」
「なんちゅうこったい!」
「仕方がないので、陰に隠れて少しずつ間引いて、がんがん袋に詰めたら、袋が四枚満杯になった。」
 二人は、ムンクの叫びみたいに、口を丸くして絶句してしまった。
「ユフラテさんが帰ったって?」
 チグリスの家の玄関に、ゼノが顔を出した。サリーとニコも一緒だ。
「おう、ゼノ心配かけたな。」
「なあに、心配なんかしてないさ。あんたなら、かならず無事に帰ると思ってたよ。」
「ちぇっ、おちおち怪我もできねぇな。」


 いきなり大声で笑いだした一行。
「なんにせよ、ご無事の帰還、おめでとうさんでござんす。」
 ゼノは手刀を切るように、腰に手を当てて仁義を切った。
「へい、ありがとうさんでござんす。」
「ぶっちゃけ苦しかったわ~。なかなか魔物は減らないし、後から後から出てくるし。」
「そりゃあ大変だったな。」
 チグリスは、早速エールを飲みながら話を聞いた。
「も~!ザコのゴブリンなんかは、城門前にでっかい落とし穴掘って、川の水引き込んで水攻めよ。」
「なんとまあ、それ、土魔法か?」
「ああ、最後にオークキングとトロール鬼が出てきてさ、キングは三メートル、トロールなんか四メートルだぞおい。」
「うへえ、それは…」
「トロールは、丸太みたいな手足を何べんも切りつけて、ぶった切ってやった。」
 チグリスの刀は役に立ったぜえ。
「最後は、クビに切りつけて止め刺した。」

「オークキングは、落とし穴に落として、ぶっとい槍で地面に串刺しにしてやった。」

 チコだけじゃない、ニコまでが目をきらきらさせて、俺の話を聞いている。
「ほんで、ナイショだけど、武器が亡くなったのでランドル抜いちゃって、騒ぎになる前に隠しちゃった。」
「ちょ!ランドル抜けたのか!本当に?」
「だってほら。」
 ストレージから出して、ゼノに持たせてやった。
「本物だ…」
 レジオの住民なら、朝な夕なに目に入るものだからな、よく知ってるだろう。
「こんなもんいらんのだけど、ジェシカが抜けって言うからさ。」
「ジェシカ?」
「ほら、教会の壁画なんかにいるじゃん、赤い衣着た黒髪の乙女。」
「「「「「えええ~~~!!!」」」」」
 期せずして、全員の声がハモる。」

「そんなこんなで、魔物しめて一万匹、皮袋四ッつにご案内さ。」
「い・いちまんびき?」
「うん、やっぱ一個では入りきらんかった。」
 全員の目が点になったのは、言うまでもない。
「二日三日あとに、レジオのヘルム爺さんが来たので、一袋くれてやって当座の飯にしたんだよ。」
「ほえ~、そりゃまあ、二〇〇〇人が食うには困らんな。」
「ああ、だけど、ヘルム爺さんの西地区は、かなりの住民が助かってるんだけど、ほかの地区・特に東門のあたりは即座に全滅したらしい。」
「…」
「北も、南の住民も、半数が戻ってこないし、女子供は少ない。」
 ゼノたちにしてみたら、聞くだけで気分のめいる話だ。

「マゼランからも、なにか救援物資が出せないか検討中だ。」
 チグリスが、方眉を上げながら言う。
「あのおじゃるが、そんなことするのか?」
「いや、伯爵じゃない、冒険者ギルドが音頭とってる。」
「かってにそんなことしたら、おじゃるが怒るでおじゃる。」
「そうも言っていられないらしいぞ、王都から伯爵に出頭命令が来たらしい。」
 俺は、エールを吹いた。
「はあ?出頭?おだやかじゃないな。」
「だって、避難民を追い払ったろう、あれが王都に伝えられたらしいぞ、そりゃあ王様もいい気持ちはしないだろう?」
「そりゃそうだ、俺は牛三〇頭食わしたけど、おじゃる伯爵は麦粥だけだもんな。」

「なんだよ、俺にも手伝わせればいいのに。」
 チグリスは、不満顔だ。
「まあ、急いでたからさ。」
「兄ちゃんすごかったぜえ!城門の上から男爵の館の塔を魔法でぶっとばして、魔物を殲滅してた。」
 ラルの説明に、チコとニコも目を丸くしている。
「まずは、城門の所にいたゴブリンをこっそりやっつけて、階段を確保してな、それから城壁の上のゴブリンを少しずつやっつけたんだ。」
 それにしても、よくあの丘の上から見えたもんだな。
「そのあとどっかんどっかん魔法ぶっぱなして、ゴブリン吹っ飛ばしてた。」
 ちくしょう、あれはやり方がまずかったな。
「広場にでっかい穴掘って、ゴブリン埋めてた。」



「だって、数が多いんだもん。まとめてやっつけるのに、アタマが回らんよ。」
「そうだな、しかしまあよくやったよ。特に、トロールなんか、よく一人でやっつけたな。」
 チグリスは、グラスを開けてため息をついた。
「実際、死ぬかと思った。俺も、足やられて、必死で逃げたもん。」
「へえ、そりゃまた…」
「あこで、ジェシカが来てくれなかったら、俺、確実にあの世行きだったな。」
 あれは、思い出すと、背筋が冷える。
「そのジェシカさまって、本当にジェシカさまなのか?」
「わからんよ、自分で言ってたんだし。まあ、オシリスさまも出てくるくらいだから、本物じゃないか?」
「すっげえなあ、ユフラテは神の使徒だったのか。」


「そんなもん、俺自身はたいしたことないよ。」
 俺は、肩をすくめた。
「たいしたもんだよ、魔物一万匹だぞ!それも単独で、A級冒険者でも、そんな無茶はやらんぞ。」
 チグリスが言うと、ティリスが同調した。
「そうだよ、無茶しすぎ。」
 それを聞いて、チグリスがティリスにたずねた。
「そう言えば、シスターたちは教会に行かないんで?」
「ああ、私はカズマと一緒にいます。」
 ティリスは、あっさりと口にする。
 ついでにお茶を飲む。
「私も、カズマさまのおそばにいます、いつジェシカが降臨するかわかりませんから。」
 アリスティアも、俺の横で静かに言った。
「か、カズマってなんだ?」
 アリスティアの言葉を拾って、チグリスが聞く。
「ああ、それ、俺の本当の名前。カズマ=タニ。オシリスに教えてもらった。」
「なんとまあ、びっくりすることばっかりだな。」

「で、最後にブルードラゴンをボコって、追い払っちまったんだ!」
 ラルが、悲鳴のように叫んだ。
「最初はボコったけど、最後は虫歯治してやったんだよ。お礼にこんなもんくれた。」
 俺は、青い鎧を出して見せた。
「なんだこれ!聖凱じゃないのか?」
「わからん、俺とティリスにくれたんだ。」
「シスターももらったんですか?」
「ええ、カズマとおそろいで。」
 ティリスは、アリスティアを牽制しているようだ。
 アリスティアに流し目をくれた。
「しばらく会わない間に、とんでもない奴になってるな。」


「とにかく、俺はしばらくレジオの町の復興を手伝わないといけないんだ、だからあの家はゼノにまかそうと思う。」
「俺に?」
「ああ、好きなように使ってくれ、俺はこっちの用事を済ませたら、すぐにレジオに戻らなきゃならん。」
「じゃあ、家の金は払うよ、すぐとは言えないが。」
「バカ言え、まあ家の管理もいっしょにやってくれ、それでチャラだ。俺とラルは、当面レジオで暮らすことになる。」
「それじゃ、悪いよ。」
「かと言って、せっかくなおしたのに、だれも住んでないとまた悪くなるじゃないか。」
「そうだな。」
「それとも、ゼノもレジオに帰るか?」
「いずれは帰るよ。」

「そうだな、家は壊れていても、金はないもんな。」
 俺も、あの惨状を思い出すと、なんとも言えん。
「そう言うことだな。」
 ゼノは、あれを見てないからな。
「じゃあ、やっぱ家の管理は頼むわ。サリー、いいかな?」
「ええ、いいわよ。旦那のケツ叩いておくわ。」
「よろしく。」
「ケツたたかれるのは決定なのかよ!」
 その晩は、ゼノと家に戻って泊まることにした。
 なんだかんだで、ティリスとアリスティアも着いてくる。


「あんたたちゃあ、教会に泊まるんでないかね?」
 チグリスが聞くが、ティリスは笑って言う。
「私は、こちらにはツテがありませんので、カズマの所に寄せてもらいます。」
 ティリスが言うと、アリスティアも食いつく。
「わ、私も一緒に…」
「あなたは、こちらの教会に宿舎があるじゃありませんか。」
「で・でも!」
「まあ、今夜くらいは我慢なさいませ、まだ教会に報告もしていないんでしょう?」
「そうでした…」
「じゃあ、教会まで送っていくよ。」

 アリスティアは、ぱあっと顔を明るくした。
「じゃあ、あたしも一緒に送っていく。」
 途端に、黒酢五リットル一気飲みしたみたいな顔になった。
「お前が着いていくと、教会に泊まることになるがいいか?」
「その可能性は高いわね。やめた、ここにいる。」
「いえいえ、ぜひご一緒に教会にまいりましょう、司祭様にも報告しないと。」
「やだやだ~!ここにいる~。」


「ああ、本当にな。ティリス、こっちの司祭様にも報告しておいた方がいい。レジオがどんな様子だったかを。」
 ティリスは、急に真顔になった。
「そうですね、慰霊祭のことも相談しないと…わかりました、一緒に行きましょう。カズマは、来なくてもいいです。」
「そうはいかんだろう、女の子二人で夜に出歩くなんて。」
「あら、女の子って認めてくれるんだ、最近の扱いの雑さにあたしはいらない子かと…」
「イヤミ言うな!」
 チョップちょっぷ
「いたた、わかりましたよぅ。一緒に行ってください。」

「じゃあゼノ、ラルを頼む。俺は教会まで行ってくるよ。」
「わかった、こいつを洗濯しておけばいいんだな。」
「そゆこと。耳の後ろまで、徹底して洗ってくれ。」
「うぎゃ~!」
 俺たちは、チグリスの家を出て教会に向かった。
 なぜか、チコも着いてくる、まあいいんだが。





※ 天然酵母は、ネットでもかなりいろいろ作られているようですが、決定的なものは特に無いようです。
  でも、しっとりしたいいパンがつくれるので、大切なタネです。

材料は、りんご1個、500ccほど入るガラス瓶(蓋がスクリュー式のもの=2瓶)、水。 



りんごは、洗って8等分したものを、さらに半分にカットします。種も皮も芯も、そのまま使います。 




「1.瓶を煮沸消毒する。(蓋も)
2.りんごは、縦8等分し、さらにそれを2等分にする。皮や芯はそのままでOK。
3.煮沸消毒の終わった瓶に、りんごを半分づつ入れる。そこへ、水を溢れるように入れる。空気が出来るだけ入らないように蓋をして、仕込み終了です。
4.これを冷蔵庫に1週間保存。後は、ひたすら待つのみ。
5.1週間たったら常温に出し、さらに2日目に蓋を開ける。その後、1日1回蓋を開け様子をチェック。(このあたりから発酵が進んでくるので、一日1度蓋をあけないと気圧があがり、溢れてきたりします。)蓋開けの際は、雑菌がはいらないように気をつけて、閉めるときはしっかりと蓋をしましょう。
6.常温4,5日で完成。完成後は、冷蔵庫で保管し、出来るだけ早め、新鮮なうちに使うようにしましょう。」

煮沸し、乾燥させた瓶にりんごを入れます。水をひたひたにかぶせます。

冷蔵庫に1週間保存します。※水は瓶の6~8割くらいまでになるように。
冷蔵庫に1週間保存してから、常温に出し、1日1回、蓋を開けて瓶の中に酸素を補給してあげます。

冷蔵庫から出して3日目の様子。酵母の発酵がはじまっています。蓋を開けると、大きな泡が炭酸のように弾け、りんごジュースのような甘さとアルコールの混じったにおいが感じられます。
泡の発生がおとなしくなってくると同時に、りんごの皮の色が抜け、液が白濁してきました。

瓶の中のりんごを食べてみると、スカスカで綿のよう。菌がりんごの糖を食べたためだそうです。
泡が細かくなり、液の色がベージュになってきたら…♪

りんご酵母の誕生です! 




液を漉し、煮沸消毒して冷ました瓶に移しかえたら、酵母液の完成です♪冷蔵庫に保管してパン作りに備え、1カ月ほどで使い切りましょう。  

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