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第七十四話 フロンティア‐Ⅶ(7)
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「つーかさ…」
「なんじゃ、藪から棒に。」
手綱をにぎるカズマの横で、プルミエは木の実をぽりぽり食べながら聞いた。
「ああうん、どこまで行っても樹海・樹海だな。」
「仕方なかろう、ここ一万年はだれも踏み入ったことのない土地じゃぞ。」
峡谷の向こうは、簡単に言って、オーストラリア丸ごと入っちゃう規模の樹海ですな。
「まあ、そうなんだが…」
「むしろ、木の太さが意外と細いと感じるのは、ワシの考えすぎかのう?」
確かに、木と木の隙間はかなり広い。
太い木と木の間は一〇メートルも離れている。
その隙間に、灌木や草が茂っている。
我々の山の植生から見ると、倍以上離れているのだ。
「まあ、あれだけ大きなマンモスがいるんだ、木だって折れるし、新陳代謝もするだろう。」
「そうだのう。」
あのマンモスが通れば、木々は簡単になぎ倒されて、横幅五メートル以上の道になる。
もはやけもの道とは言えまい。
馬車を止めて、森の入り口を眺めたカズマは、御者台から降りた。
話しながら、昨日作った道の反対側を開くことにした。
精霊が集まって、カズマの周りを虹色に染める。
膨大な塊となった精霊は、同時にその精霊力を集結して膨れ上がる。
それこそ直径三〇メートルのドーム型に精霊の塊が広がっている。
中心は、ぎゅうぎゅう詰めの状態だ。
「精霊よ、道を開け。樹木移動。」
静かな声と共に、道が進んで行く。
ドームから放たれた精霊たちが、まっすぐに前へ向けて飛び出すとともに、木々が横に移動して行く。
ピクミンがわちゃわちゃ走って行くところを想像してほしい。
それは、徐々にスピードを増して、はるか視点が消えても進んで行った。
ここは、峡谷の一番入り口で、向こうの端までは五〇キロメートルはある。
カズマの魔力と、精霊の魔力がシンクロした結果、最長六〇キロメートルは開設できるようになった。
たぶん峡谷の、向こうの端まで届いているのだろう。
めきめきと、樹木の根が顔を出し、ニョロニョロのように体をゆすりながら進んで行くさまは、一種気持ち悪いな。
しかも、場所によっては自分の根を埋めるところがなく、自然と森の奥に向かって進んで行く。
結果として、整地されたような、まっ平らな状態で道路が出来上がって行くのだ。
(一部、でかい木が抜けたところはクレーター状に穴があいているが。)
「見るのは二回目だけど、まるで十戒のようだよな。」
勇気が横に来てつぶやいた。
「なんだよ、見たことあるのか?」
一九五六年のアメリカ映画で、主演のモーセは、チャールトン=ヘストンである。
後のアニメシーンに、多大な影響をもたらした作品として、つとに有名。
「いや、あのシーンだけYOUTUBEで。」
「なるほど、モーセの出エジプト記だな。ラメセスに追い詰められたヘブライ人を神が助けて、紅海を割って脱出をさせる。」
「良く知ってますね。」
「あの映画は何度も見たからな。」
「それがイメージの素ですか。」
「まあな、ただあの神様は信用できないけどな。」
「どうして?」
「自分の信者以外に対する扱いが、過酷なんだよ。」
「そうなんですか~。」
「ま、ウチの神様も、たいがいだけどなあ。」
(ポンコツの度合いが、ほぼ差がないくらい。)
「?」
「まあいい。さて、これでいつもの三倍の道ができた。」
「名古屋の百メートル道路みたいですね。」
「そうか?お前、中京圏の人間か?」
「中村の生まれです。」
「なんとまあ、俺は飛騨高山だ。正確には、清見村だが。」
「ほえ~。」
そこへ、プルミエがやってきた。
「どれ、馬車道を作ろうかね。」
「プルミエさま、どうするんですか?」
「なに、このままでは道が柔らかくて、馬車が進めんのじゃ。見ておるがいい。」
プルミエの背中から、虹色のオーラが立ち上がり、精霊が集まってくる。
じょじょに、その色が濃くなり、精霊光が膨れ上がって行く。
「ビルド=ロード!」
にょにょにょという、妙な音が勇気の耳に聞こえて来て、その足元から一気に舗装が進んで行く。
「うわ!コンクリート舗装みたいだ。」
しかも、つるつるでは馬車の車輪がすすまないので、ある程度ざらざらしているのが、芸が細かい。
「うわ~、ボンネビルの最高速テストコースみてえ。」
カズマの声に、勇気は首を折った。
「ボンネビル?」
「なんだよ、いまどきの高校生は、ボンネビルも知らないのかよ。情報は生きもんだぞ。」
「そのボンネビルってのは?」
「アメリカのボンネビルだ。塩の湖があって、そこが一番平らなので、車やバイクの最高速テストが行われる。」
「ほえ~、なるほどお~。」
こいつバカだ。
カズマは思ったが、いやいや、いまどきの高校生なんて、こんなもんですよ。
貪欲に集めなくても、スマホですぐに情報が手に入るので、自分から覚えようとはしないんです。
「まあいい、しかしこうなると、ゴムのタイヤが欲しくなるな。」
「そうですね、どっかにゴムノキとかないですかね?」
「あっても、モノにするのに時間がかかる。」
カーボンや硫黄を混ぜないと、製品化できないんですよね。
その塩梅も知らないし。
「ま、落ち着いたら考えよう。」
初日に出たマンモスのおかげで、獲物を獲る必要もなく、一行は一日の休息を取って、すぐに出発することにした。
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「ちくしょう!こいつめ!」
ホルスト=ヒターチは、何度も襲い来る森オオカミに辟易としていた。
この旅は、できるかぎり安全に進めなければならない。
親兄弟とは、水杯を交わしてきた。
幼馴染は、この旅に着いてきた。
また、ヘルムじいさんや、ベスおばさんマリアさんなども、この旅には着いてきた。
同僚の、マルノ=マキタも同様だ。
親から縁を切られた。
当たり前だ、レジオ男爵の新領地は、広大と言えば聞こえはいいが未開のジャングルだ。
生きて二度と会えないかもしれない。
しかも、レジオ男爵は政治的にも、難しい立場にある。
マキタ男爵は、泣いて馬謖を切った。
(三国志より。
諸葛亮の弟子の馬謖が街亭の戦いで諸葛の指示に従わず敗戦を喫した。この責任により、馬謖は処刑される。
愛弟子に対して過酷な処置であるが、あえて軍律に照らして馬謖を処断する。)
ブロワの町までは、馬車に乗って快適に進んでいたし、シェルブール伯爵領を出る時も、特にトラブルはなかった。
しかし、森の中に一直線に伸びている道を見つけた時は、ホルストも呆れかえったものだ。
道幅は三〇メートルもあって、真ん中は完全に舗装されている。
水たまり一つない。
そのうえ、轍もへこんでない。
この道も、そこそこ安全に通れるくらいに、魔物・獣が減らされていて、道中を心配したカズマの気遣いがわかった。
だが、森の道に入って三日目、思いもよらず森オオカミに跡をつけられたようだ。
ホルストが、駅舎を見つけて休息に入ると同時に、仕掛けて来た。
森オオカミの数は、少なく見積もっても三〇匹。
かえって一人の方がありがたいくらいだ。
ヘルム爺さんの機転で、一行は駅舎の中に避難した。
だが、馬は中には入れなかったし、子供が一人、用足しに出ていて出遅れた。
「ちくしょう、どこだ!」
『うわー!』
木の陰で声がする。
ホルストが駆けだすと、オオカミも同時に飛びかかって来る。
畜生のあさましさ、空中で方向が変えられる訳もなく、ホルストの剣に真っ向から切り裂かれる。
「ぎゃん!」
「ばかやろうが。」
二度三度、切り込んでやっと止めを刺した。
なかなかしぶとい奴だ。
森オオカミ五匹に囲まれて、子供は動けない。
「のやろう!」
後ろを振り返った一匹の首に切りつけて、輪の中に入り込む。
「大丈夫か!」
「はい!」
見れば、足を噛まれたのか、血を流して引きずっている。
このままでは、連れて帰れないので、オオカミをせん滅する方がいい。
変なバイキン持ってなければいいが。
振りかえって、もう一匹の頭を狙う、が、少しずらされて、鼻づらを浅く切り裂く。
まあ、痛みで動けなくはなるが、まだ三匹残っている。
うずくまっているオオカミの上から、縦に剣を刺すと、オオカミの動きが止まった。
「おおおお~~~!!!」
雄叫びと共に、飛びかかってきたもう一匹の腹を切り裂く。
ぐしゃりと、目の前に落ちた。
こいつも、二度三度切りつけて、後ろから攻撃されないようにした。
「ホルスト!」
マルノが、声をかけるが、向こうもすぐには動けない。
その間に、二人は同時に一匹ずつを切り伏せた。
剣がナマクラなのか、腕が悪いのか、一刀のもとに切り伏せることができない。
二度三度ときりつけて、刺して、やっと命脈を絶つことができる。
「マルノ、キャラバンはどうした。」
「向こうにはもう、オオカミはいない。」
「了解。じゃあ、残りはこいつだけだな。」
「おう!」
余裕の出た二人は、一気に距離をつめると、森狼を切り伏せた。
「ふう、助かったよ。」
「ああ、予想外に多かったな。」
「まったくだ。」
二人は、子供をつれて戻った。
子供は泣きじゃくっていて、なかなか骨が折れる。
「ヘルム爺さん、助かったぞ。」
「おお、ホルスト殿、マルノ殿、ご無事でなにより。」
「じいさんもおつかれ。みんな怪我はないか?」
「おお!マロ!良かったのう。」
「うう!じいちゃん!」
「なんだよ、爺さんとこの子か?」
「いや、ウチの地区の子供ですじゃ。みんな、家族みたいなもんです。」
「そりゃあ、確かにそうだな。」
避難していたキャラバンは、だいたい百人単位で移動している。
先行したカズマのキャラバンは、三十人なので、どうしても駅舎の大きさが間に合わない。
必然的に、体の大きい成人男子は、駅舎に入らず、外で野営している。
「お屋形さまの作った駅舎は、かなり頑丈だから助かるな。」
ホルストは、高い屋根を見上げて言うと、ヘルム爺さんも頷いた。
「さよう、これなら向こう十年は平気で建っておりますな。」
そこかしこで簡単なカマドを作り、煮炊きが始まった。
「忘れていたが、昼飯か。」
「そうですな、オオカミはあんまりうまくないですが、毛皮が使えますな、どれ…みんなずたずたで使えません。」
「すまん、どうも一発でやれなくてな。」
「修行が足りませんな、お屋形さまならメイスで一撃ですぞ。」
ホルストは、少々むっとしながら、ヘルム爺さんを見返した。
「とは言え、群れで来たものはどうしようもありますまい、これは燃やしてしまいましょう。」
キャラバンの中から、火魔法のできるものを集めて、積み上げたオオカミを灰にする。
そのまま放置すると、アンデッド化するかもしれないし、ほかの獣を呼んでしまうかもしれない。
オオカミのゾンビなんか、見たくもないからね。
村人たちも、手に手にこん棒なんかを持って、一匹や二匹は叩き伏せたようで、全身傷だらけのオオカミも居る。
ホルストは、手の開いた男衆を集めて、自分たちの天幕を張ることにした。
「やれやれ、ほとんどが荷馬車だからな、雨が降らないのがありがたいよ。」
ホルストの声に、マルノもうなずいた。
「そうだな~、とにかくお屋形さまに追いつけるかが、問題だなあ。」
「うん、オオカミなんかに手古摺ってるようじゃ、この先おぼつかないからなあ。」
「ああ、もっと修行しなきゃな。」
近衛隊や陸軍との演習で、けっこう力をつけたと思っていたが、いざ、荒野に出て実戦すると、自分の技量に絶望した。
ぜんぜん強くなってねえ!
いやいや、なってますって。
目標が高すぎるだけで、普通の人間なら、まず太刀打ちできませんよ。
普通じゃダメなんだよ、お屋形さまのそばに居て守れるくらいじゃないと。
そりゃまあ、そうですけど。
「あ~、また、修行のやり直しだ。」
「つきあうぜ。」
マルノ=マキタはにかっと笑った。
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「恵理子さんは丈夫そうね。」
「え?奥方さまが、それを言う?」
「でも、私、けっこう苦しかったし、顔色もあまり良くなかったわよ。」
「ああ、それはですね、育ってきた栄養状態の問題です。子供の時から、しっかり栄養を取ると骨なんかが丈夫になります。」
「そうなんですか?」
「母体がしっかりしていないと、子供の育つのに差が出ますからね。」
「そう言うものですか。」
「母体に栄養が足りないと、赤ちゃんがおなかの中で育つのに必要な素材が足りなくて、不健康な子供が生まれます。」
「はい…」
「イシュタール王国の、乳児死亡率の高さは、栄養改善がなされていない、衛生管理が悪いの二点です。」
栄養と言う概念は、恵理子が加わってから、休息に領内に広げた。
なんと言っても、えい児死亡率が五〇%くらいある世界だから。
産後の肥立ちも悪くて、産褥死亡率も四〇%くらいある。
子供を産むのも命がけの時代なのだ。
そんな中で、恵理子のおなかはすくすくと育っている。
峡谷の底に降りて三日目、やっと出発できた。
特になにもなかったのですが、マンモスのこともあるので十分に偵察をしてからと言うことになった。
みなが偵察する中、カズマとプルミエは、防護壁の強化を進める。
土魔法のできる子供たちも参加して、ゾウガ踏んでも壊れないようなものを作った。
マンモスが、いつ徘徊してくるかわからないから。
今日のところは、危なそうな気配もないので、ゆっくりと出立する。
「出るぞ~。」
プルミエの舗装は、地盤がしっかりしているので、本当に揺れが少なく、妊婦の恵理子にも優しくなっている。
馬車の横を歩きながら、勇気はカズマに聞いた。
「僕は、何をすればいいんでしょうか?」
「ああ?そんなものお前の女神に聞けよ。俺ができるのは、お前の能力を上げる手伝いくらいのものだ。」
「はあ…」
勇気は困惑していた。
ま、この世代で思考を放棄していると、なにも活動しない。
教えてもらってないからできませんと言うやつだ。
自分で調べて行動すると言う、基本動作ができない。
これが思考の放棄。
「お前には、一応、勇者補正で全属性魔法の適性があるんだろう?そう言うのは、基礎をしっかり練習することと、魔力の上昇をはかるんだ。」
「具体的には?」
だから勇気は、なんでも聞く。
自分で考えないからだ。
「ぶっ倒れるまで魔法を使う。」
「ほえ~?」
「魔力なんてものは、枯渇するまで使うと、その分伸びるんだ。
「しかし、魔力なんてどうしたらわかるんですか?」
「むずかしいな、どう説明したもんだか?プルミエに聞いてみろ。あいつはハイエルフだから何百年も生きてる。」
「へ?ネコ耳宇宙人にしか見えませんが。」
「アホ、そんなこと言ったら、ぶんなぐられるぞ。」
勇気は、しきりに首をひねっている。
「まあ、運動がてら、剣の訓練でもするか?勇者補正で、剣の要素もあるんだろう。」
ナイア女神の加護があるので、かなり高性能です。
「みろ、片手剣のレベルが5になってる。絶対防御 不屈 獲得経験値倍加なんてものがあるから、すぐレベルが上がる。」
勇気には、実感として良くわかっていないようだ。
「女神の加護って言うのはな、勇者にしかない。だから、毒なんかにやられることはないし、デスなんか受け付けない。」
勇気は、自分の両手のひらを見つめて、ぼそりと言った。
「そりゃすごい。」
「絶対防御があるから、魔法攻撃は通常の半分しかダメージがこないし、物理攻撃はほぼ防がれる。」
「ほいえ~。」
「不屈なんて言うのは、HPがゼロになっても、残り1で踏ん張って、気絶しないことだ。」
「どこまでチートなんだ。」
「勇者になるって言うのは、そのくらいすげえんだよ。」
「へ~、カズマさんは?勇者じゃないんですか?」
「あ?俺には、加護なんかないもんさ。」
「加護なくて、どうしてあんなに強いんですか?」
「そりゃ、努力だろう。」
まあ、カズマにはオシリス女神から、使徒認定されていますから、勇者よりは弱いけど加護補正があります。
「俺の師匠は、俺がぶったおれるまで、何度も魔法を使わせたさ。」
「うへ~~~。」
「とりあえず、お前は自分の能力に振りまわされないように、地力をつけることを考えろ。」
「はい。」
いい返事だが、どこまでやれるものだかわからない。
「まずは、魔力の流れを感じるところからだな。俺の魔力の動きを観察してみろ。」
そう言ってカズマは、土壁を立ち上げ始めた。
「ええ~まるでわかりません。」
「ばかもの、目の裏に魔力を集めるのじゃ。」
プルミエが、杖で勇気の頭を小突いた。
「いて~、だって魔力自体がよくわからないんですよ~。」
「それもそうかのう?」
プルミエが両手を出したので、カズマが止めに入った。
「だめだ、プルミエ。あんたの魔力が強すぎて、こいつでは耐えられん。」
「ほい、そうかのう?」
「ジャッキー、ジルバ。」
「「はい。」」
「悪いが、勇気の魔力循環を手伝ってくれ。」
ジャッキーは、少し顔をゆがめて言った。
「ええ~?婚約者でも恋人でもないのに、魔力交換するんですか?」
「あたしは、いいですよ。どうせ、すぐに居なくなる人ですし。」
ジルバは、気にしないようだ。
この世界では、魔力を共有するということは、多分にセクハラに近いのだ。
ジャッキーは、十一歳にしてはおませさんだし、ジルバは醒めている。
「お屋形さまとならいいですけど?」
ジャッキーは、ホンマにおませさんだな。
「悪い、じゃあジルバ、勇気の魔力を見てくれ。」
「はい。」
ジャッキーの言葉は、軽くスルーして、カズマはジルバを呼んだ。
「勇気、ジルバと両手を合わせてくれ。」
「はい。」
一〇歳の小娘と手をつなぐことに、抵抗はないようで、勇気もジルバの手を握った。
「よし、ジルバ、魔力をながしてくれ。」
「はい。」
みょみょみょみょみょ
「あう、くすぐったい。」
「我慢しろ、手を離すんじゃないぞ。」
「うひ~、背中がかゆい。」
ジルバの魔力は、ジルバの体を循環してから、右腕の先を通り勇気の体内に移動し、くるりと回って左手から戻って来る。
「あ…わかってきた、こう言うことかな?」
勇気は、感覚で読み取り、ジルバにもらった魔力を、くねくねとより合わせてみた。
「うにゃ!なんですか?」
「こう言うことなんじゃないかな…」
くねくね
「うにゃ、うにゃにゃ」
「おいおい、ジルバがトラみたいになってるぞ。」
「じゃあ、返すよジルバちゃん。」
勇気の体内で練った魔力は、左手を通してジルバに返された。
「にゃっ!」
が、ジルバの送った魔力の、数十倍の魔力が渦を巻いて帰ってきたため、ジルバの全身が脈打つように振動する。
「勇気!やりすぎだ!止めろ!」
カズマは、異常事態に慌てて、勇気の行為を止めさせた。
が、少し遅かったようで、大量の魔力を循環させたため、ジルバの顔は真っ赤になっていた。
ジルバのスカートから、ぽたぽたと粘液が滴り落ちる。
「やば!」
カズマもプルミエも、以前に起こったことを思い出して、慌てた。(第六十四話 新たなちからその二 参照)
勇気も異常を察知して、魔力を送るのを止めたが、異常は収まっていなかった。
なんと、ジルバのスカートから滴り落ちるものが真っ赤になってしまった。
「なんと、いきなり生理になってしまった!」
「月のものかえ…」
「あ、あひ!お屋形さま!お屋形さま!どうしよう!病気かなあ?」
「あわてるなジルバ、それは病気ではない。アリス!アリース!」
魔力の流れが止まったのを感じて、俺はやさしくジルバを連れて、駅舎に向かった。
濡れたパンツが、歩きにくいようで、少しぐずりながら進むジルバ。
「どうされまし…、ジルバ、こちらへ。お屋形さま、すぐにお風呂を用意してくださいませ。」
「ああ、わかった、よろしく頼む。」
勇気は、茫然としているが、いきなり女性の生理を見せつけられるとは、運のない奴だ。
「勇気、しゃきっとしろ。」
勇気の背中をぱしりと叩いて、正気付かせる。
プルミエも、ショックから立ち直ったようだ。
「プルミエは、大丈夫か?」
「ああ、びっくりしたが、この前のようなことはないわな。」
「勇気はそうでもないようだぞ。」
勇気は、もっこりと隆起したズボンに気が付いて、後ろを向いた。
「ああ、気にするな、影響が出るときがあるんだ、それはただの副産物だ。」
「うう、なんなんだこの人は!」
勇気は、平均的高校生なので、自分の生理現象をあからさまに見られて、動揺しているのだ。
DTだし!
DTだし!
重要なことじゃないけど、二回言っちゃったよ。
カズマは、苦笑を洩らして、練習の終了を告げて、風呂場に向かった。
カズマの水魔法は強力なので、最近は複合化が進み、火魔法とのコラボでお湯が出せる。
すぐさま、風呂桶いっぱいにお湯が満たされた。
カズマの後を着いてきた勇気は、その無造作な魔法技術に驚愕の目を向けた。
「すごいな…」
「まあ、こんなものは、練習次第でどうにかなるものだ。魔法はイメージが大事なんだよ。」
「はあ。」
「だから、たとえば瞬間湯沸かし器が、お湯を出すところをイメージしてみろよ。」
「はい、しました。」
「その状態で、水魔法を使うと、こう、なんとなくお湯になるんだ。」
「よくわかりません。」
「まあ、実際に、魔法を使えるようにならないとな。」
アリスティアに付き添われて、ジルバは風呂場に消えた。
駅舎を大型に作っておいて正解だな。
最近は、土魔法に慣れた子供たちのおかげで、駅舎の数が増えるのだ。
カズマにすれば、一棟で十分広いものができるのだが、子供たちの練習に付き合って、何棟も建ってしまう。
そのうちの一棟を、丸々風呂場にしてしまい、みんなが喜んでいる。
まあ、後続の連中が使うこともあって、増える分には心配がない。
駅舎がしっかりしていると、獣に襲われた時に逃げ込めるし。
子供たちの作る建物も、壁の厚みはひところの倍になっている。
「よし、マリウス、勇気の剣を見てやってくれ。」
「御意。」
「今日は、かなり元気だから、ぶっ倒れるまでやっていい。」
「うえー!」
「なるほど、いきり立っておりますな。」
おっさんがおっさんなことを言って、からからと笑う。
「だろ?」
「ユリウス!お主も手伝え。」
「おお?ああ、これはこれは、やる気じゃのう。」
マリウス=ロフノールに呼ばれて、ユリウス=ゴルテスがやってきた。
その後ろから、ゲオルグ=ベルンも着いてくる。
「おやおや、若いってのはいいねえ。」
「お主だって、若いもんじゃないか。まあいい、お主もやるか?」
「いま、ヒマですから。」
カズマの配下で、技巧派のゴルテスとロフノール、パワーファイターのゲオルグと、そろってしまった。
「まずは、ワシからじゃのう。」
勇気に有無を言わせず、木剣を放り投げて、するすると近寄るロフノール。
ひょうひょうとした雰囲気に似ず、マリウス=ロフノールは剣の上手である。
「うわ!」
かきいん!
と言う乾いた音でわかるように、軽い打ち込みで勇気でも受け止めることができる。
この辺は、剣術レベル5の恩恵だろう。
剣術は、レベルがだいたい十段階あって、レベル5ならかなりやる程度の腕である。
冒険者で言うと、Dの上、Cの下くらいなものか。
ただし、勇気には経験がなさすぎるため、へっぴり腰である。
だいたい、体育の授業で習った剣道の程度なので、平正眼が基準である。
ただし、チャンバラの域を出ない。
体育の剣道など、まじめにやる奴が居ないからだ。
横で見ていたカズマが、むっとした。
「ああ!やめだやめだ!ユリウス、悪いがちょっと待て。」
「は、お屋形さま。」
「勇気!お前、体育の剣道でサボってたろう。」
「は?そりゃまあ。」
「しかも、高校では帰宅部で、カラオケ三昧だな。」
「なんでわかるんですか?」
「いいか、剣を構えると言うことは、相手の命を奪うと言うことだ。お前は、ここに来て日が浅いが、その覚悟がまるでない。」
まあ、当たり前と言えば当たり前だろう。
お気楽で、安全な日本に住んでいたんだから。
余程のことがないかぎり、暴力沙汰とは無縁の世の中だ。
「はあ、そりゃまあそうですね。」
「なんでかって言うと、お前は命の危機にめぐりあって居ないからだ。」
まあ、幸運にもこの世界にやってきて、最初に出会ったのがカズマのキャラバンだから。
「相手を殺して、喰うところまで行かないと、剣術なんてやっても無意味かもしれん。」
「ええ~?」
「とりあえず、平正眼はこう構えろ。」
カズマがして見せた姿勢を真似してみる。
「ここはこう、ここはこうだ。」
それを、少しずつ修正して、構えを取らせると、そこから振りかぶって面打ちをさせる。
「この状態で、剣先がブレないように素振りしろ。」
カズマの指示は、基本中の基本である。
「なんかいくらいですか?」
「そうだな、はじめだし一〇〇〇本くらいかな。」
「ええ~!」
「文句言わずにやれ!お前ら、手を抜かないように見張ってろ。」
「「「御意!」」」
三人に囲まれて、勇気は渋々素振りを始めた。
勇気は、勇者に似せず普段は猫背で、顎が出ているような歩き方をしている。
これでは、体幹がゆれて、何をしてもまともに攻撃できない。
カズマは、そこから矯正することにしたのだ。
まったくもって嘆かわしい。
とりあえず、剣が使えるようにだけはしておこうと思っているカズマだった。
「だいたいなー、たまたま授かった力が強かったからと言って、見ず知らずの人を助けるために、命なんかかけられるか?」
「俺は嫌だね。身内を守るだけで精一杯だよ。魔王退治なんてごめんだね。」
「だから俺は、勇者なんかにゃならない、なれない。」
「俺のなかの正義なんてものは、狭いもんなんだよ。」
「俺にはなあ、仮面ライダーが人類のために戦う気持ちが理解できないんだ。」
「たまたまだぞ、ショッカーの改造人間にされて、たまたま対抗できる力があるだけじゃん。」
「それのどこに、世界平和を守るなんて、義務が生じるわけ?」
「気に入らねえ、むかつくってんなら、ショッカーぶんなぐるのに反対はしねえ。」
「人類のためなんてぇお題目を上げた時点で、偽物だよその正義は。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
変更のお知らせ。
いろいろご指摘いただいたところや、話の抜けのあったところを修正しました。
抜けていたところには追加をしました。
追加の仕方がよくわかってなくて、苦労していましたが、なんとかなりました。
うまくつながっていると思いますので、引き続きお楽しみいただけましたらさいわいです。
「なんじゃ、藪から棒に。」
手綱をにぎるカズマの横で、プルミエは木の実をぽりぽり食べながら聞いた。
「ああうん、どこまで行っても樹海・樹海だな。」
「仕方なかろう、ここ一万年はだれも踏み入ったことのない土地じゃぞ。」
峡谷の向こうは、簡単に言って、オーストラリア丸ごと入っちゃう規模の樹海ですな。
「まあ、そうなんだが…」
「むしろ、木の太さが意外と細いと感じるのは、ワシの考えすぎかのう?」
確かに、木と木の隙間はかなり広い。
太い木と木の間は一〇メートルも離れている。
その隙間に、灌木や草が茂っている。
我々の山の植生から見ると、倍以上離れているのだ。
「まあ、あれだけ大きなマンモスがいるんだ、木だって折れるし、新陳代謝もするだろう。」
「そうだのう。」
あのマンモスが通れば、木々は簡単になぎ倒されて、横幅五メートル以上の道になる。
もはやけもの道とは言えまい。
馬車を止めて、森の入り口を眺めたカズマは、御者台から降りた。
話しながら、昨日作った道の反対側を開くことにした。
精霊が集まって、カズマの周りを虹色に染める。
膨大な塊となった精霊は、同時にその精霊力を集結して膨れ上がる。
それこそ直径三〇メートルのドーム型に精霊の塊が広がっている。
中心は、ぎゅうぎゅう詰めの状態だ。
「精霊よ、道を開け。樹木移動。」
静かな声と共に、道が進んで行く。
ドームから放たれた精霊たちが、まっすぐに前へ向けて飛び出すとともに、木々が横に移動して行く。
ピクミンがわちゃわちゃ走って行くところを想像してほしい。
それは、徐々にスピードを増して、はるか視点が消えても進んで行った。
ここは、峡谷の一番入り口で、向こうの端までは五〇キロメートルはある。
カズマの魔力と、精霊の魔力がシンクロした結果、最長六〇キロメートルは開設できるようになった。
たぶん峡谷の、向こうの端まで届いているのだろう。
めきめきと、樹木の根が顔を出し、ニョロニョロのように体をゆすりながら進んで行くさまは、一種気持ち悪いな。
しかも、場所によっては自分の根を埋めるところがなく、自然と森の奥に向かって進んで行く。
結果として、整地されたような、まっ平らな状態で道路が出来上がって行くのだ。
(一部、でかい木が抜けたところはクレーター状に穴があいているが。)
「見るのは二回目だけど、まるで十戒のようだよな。」
勇気が横に来てつぶやいた。
「なんだよ、見たことあるのか?」
一九五六年のアメリカ映画で、主演のモーセは、チャールトン=ヘストンである。
後のアニメシーンに、多大な影響をもたらした作品として、つとに有名。
「いや、あのシーンだけYOUTUBEで。」
「なるほど、モーセの出エジプト記だな。ラメセスに追い詰められたヘブライ人を神が助けて、紅海を割って脱出をさせる。」
「良く知ってますね。」
「あの映画は何度も見たからな。」
「それがイメージの素ですか。」
「まあな、ただあの神様は信用できないけどな。」
「どうして?」
「自分の信者以外に対する扱いが、過酷なんだよ。」
「そうなんですか~。」
「ま、ウチの神様も、たいがいだけどなあ。」
(ポンコツの度合いが、ほぼ差がないくらい。)
「?」
「まあいい。さて、これでいつもの三倍の道ができた。」
「名古屋の百メートル道路みたいですね。」
「そうか?お前、中京圏の人間か?」
「中村の生まれです。」
「なんとまあ、俺は飛騨高山だ。正確には、清見村だが。」
「ほえ~。」
そこへ、プルミエがやってきた。
「どれ、馬車道を作ろうかね。」
「プルミエさま、どうするんですか?」
「なに、このままでは道が柔らかくて、馬車が進めんのじゃ。見ておるがいい。」
プルミエの背中から、虹色のオーラが立ち上がり、精霊が集まってくる。
じょじょに、その色が濃くなり、精霊光が膨れ上がって行く。
「ビルド=ロード!」
にょにょにょという、妙な音が勇気の耳に聞こえて来て、その足元から一気に舗装が進んで行く。
「うわ!コンクリート舗装みたいだ。」
しかも、つるつるでは馬車の車輪がすすまないので、ある程度ざらざらしているのが、芸が細かい。
「うわ~、ボンネビルの最高速テストコースみてえ。」
カズマの声に、勇気は首を折った。
「ボンネビル?」
「なんだよ、いまどきの高校生は、ボンネビルも知らないのかよ。情報は生きもんだぞ。」
「そのボンネビルってのは?」
「アメリカのボンネビルだ。塩の湖があって、そこが一番平らなので、車やバイクの最高速テストが行われる。」
「ほえ~、なるほどお~。」
こいつバカだ。
カズマは思ったが、いやいや、いまどきの高校生なんて、こんなもんですよ。
貪欲に集めなくても、スマホですぐに情報が手に入るので、自分から覚えようとはしないんです。
「まあいい、しかしこうなると、ゴムのタイヤが欲しくなるな。」
「そうですね、どっかにゴムノキとかないですかね?」
「あっても、モノにするのに時間がかかる。」
カーボンや硫黄を混ぜないと、製品化できないんですよね。
その塩梅も知らないし。
「ま、落ち着いたら考えよう。」
初日に出たマンモスのおかげで、獲物を獲る必要もなく、一行は一日の休息を取って、すぐに出発することにした。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「ちくしょう!こいつめ!」
ホルスト=ヒターチは、何度も襲い来る森オオカミに辟易としていた。
この旅は、できるかぎり安全に進めなければならない。
親兄弟とは、水杯を交わしてきた。
幼馴染は、この旅に着いてきた。
また、ヘルムじいさんや、ベスおばさんマリアさんなども、この旅には着いてきた。
同僚の、マルノ=マキタも同様だ。
親から縁を切られた。
当たり前だ、レジオ男爵の新領地は、広大と言えば聞こえはいいが未開のジャングルだ。
生きて二度と会えないかもしれない。
しかも、レジオ男爵は政治的にも、難しい立場にある。
マキタ男爵は、泣いて馬謖を切った。
(三国志より。
諸葛亮の弟子の馬謖が街亭の戦いで諸葛の指示に従わず敗戦を喫した。この責任により、馬謖は処刑される。
愛弟子に対して過酷な処置であるが、あえて軍律に照らして馬謖を処断する。)
ブロワの町までは、馬車に乗って快適に進んでいたし、シェルブール伯爵領を出る時も、特にトラブルはなかった。
しかし、森の中に一直線に伸びている道を見つけた時は、ホルストも呆れかえったものだ。
道幅は三〇メートルもあって、真ん中は完全に舗装されている。
水たまり一つない。
そのうえ、轍もへこんでない。
この道も、そこそこ安全に通れるくらいに、魔物・獣が減らされていて、道中を心配したカズマの気遣いがわかった。
だが、森の道に入って三日目、思いもよらず森オオカミに跡をつけられたようだ。
ホルストが、駅舎を見つけて休息に入ると同時に、仕掛けて来た。
森オオカミの数は、少なく見積もっても三〇匹。
かえって一人の方がありがたいくらいだ。
ヘルム爺さんの機転で、一行は駅舎の中に避難した。
だが、馬は中には入れなかったし、子供が一人、用足しに出ていて出遅れた。
「ちくしょう、どこだ!」
『うわー!』
木の陰で声がする。
ホルストが駆けだすと、オオカミも同時に飛びかかって来る。
畜生のあさましさ、空中で方向が変えられる訳もなく、ホルストの剣に真っ向から切り裂かれる。
「ぎゃん!」
「ばかやろうが。」
二度三度、切り込んでやっと止めを刺した。
なかなかしぶとい奴だ。
森オオカミ五匹に囲まれて、子供は動けない。
「のやろう!」
後ろを振り返った一匹の首に切りつけて、輪の中に入り込む。
「大丈夫か!」
「はい!」
見れば、足を噛まれたのか、血を流して引きずっている。
このままでは、連れて帰れないので、オオカミをせん滅する方がいい。
変なバイキン持ってなければいいが。
振りかえって、もう一匹の頭を狙う、が、少しずらされて、鼻づらを浅く切り裂く。
まあ、痛みで動けなくはなるが、まだ三匹残っている。
うずくまっているオオカミの上から、縦に剣を刺すと、オオカミの動きが止まった。
「おおおお~~~!!!」
雄叫びと共に、飛びかかってきたもう一匹の腹を切り裂く。
ぐしゃりと、目の前に落ちた。
こいつも、二度三度切りつけて、後ろから攻撃されないようにした。
「ホルスト!」
マルノが、声をかけるが、向こうもすぐには動けない。
その間に、二人は同時に一匹ずつを切り伏せた。
剣がナマクラなのか、腕が悪いのか、一刀のもとに切り伏せることができない。
二度三度ときりつけて、刺して、やっと命脈を絶つことができる。
「マルノ、キャラバンはどうした。」
「向こうにはもう、オオカミはいない。」
「了解。じゃあ、残りはこいつだけだな。」
「おう!」
余裕の出た二人は、一気に距離をつめると、森狼を切り伏せた。
「ふう、助かったよ。」
「ああ、予想外に多かったな。」
「まったくだ。」
二人は、子供をつれて戻った。
子供は泣きじゃくっていて、なかなか骨が折れる。
「ヘルム爺さん、助かったぞ。」
「おお、ホルスト殿、マルノ殿、ご無事でなにより。」
「じいさんもおつかれ。みんな怪我はないか?」
「おお!マロ!良かったのう。」
「うう!じいちゃん!」
「なんだよ、爺さんとこの子か?」
「いや、ウチの地区の子供ですじゃ。みんな、家族みたいなもんです。」
「そりゃあ、確かにそうだな。」
避難していたキャラバンは、だいたい百人単位で移動している。
先行したカズマのキャラバンは、三十人なので、どうしても駅舎の大きさが間に合わない。
必然的に、体の大きい成人男子は、駅舎に入らず、外で野営している。
「お屋形さまの作った駅舎は、かなり頑丈だから助かるな。」
ホルストは、高い屋根を見上げて言うと、ヘルム爺さんも頷いた。
「さよう、これなら向こう十年は平気で建っておりますな。」
そこかしこで簡単なカマドを作り、煮炊きが始まった。
「忘れていたが、昼飯か。」
「そうですな、オオカミはあんまりうまくないですが、毛皮が使えますな、どれ…みんなずたずたで使えません。」
「すまん、どうも一発でやれなくてな。」
「修行が足りませんな、お屋形さまならメイスで一撃ですぞ。」
ホルストは、少々むっとしながら、ヘルム爺さんを見返した。
「とは言え、群れで来たものはどうしようもありますまい、これは燃やしてしまいましょう。」
キャラバンの中から、火魔法のできるものを集めて、積み上げたオオカミを灰にする。
そのまま放置すると、アンデッド化するかもしれないし、ほかの獣を呼んでしまうかもしれない。
オオカミのゾンビなんか、見たくもないからね。
村人たちも、手に手にこん棒なんかを持って、一匹や二匹は叩き伏せたようで、全身傷だらけのオオカミも居る。
ホルストは、手の開いた男衆を集めて、自分たちの天幕を張ることにした。
「やれやれ、ほとんどが荷馬車だからな、雨が降らないのがありがたいよ。」
ホルストの声に、マルノもうなずいた。
「そうだな~、とにかくお屋形さまに追いつけるかが、問題だなあ。」
「うん、オオカミなんかに手古摺ってるようじゃ、この先おぼつかないからなあ。」
「ああ、もっと修行しなきゃな。」
近衛隊や陸軍との演習で、けっこう力をつけたと思っていたが、いざ、荒野に出て実戦すると、自分の技量に絶望した。
ぜんぜん強くなってねえ!
いやいや、なってますって。
目標が高すぎるだけで、普通の人間なら、まず太刀打ちできませんよ。
普通じゃダメなんだよ、お屋形さまのそばに居て守れるくらいじゃないと。
そりゃまあ、そうですけど。
「あ~、また、修行のやり直しだ。」
「つきあうぜ。」
マルノ=マキタはにかっと笑った。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
「恵理子さんは丈夫そうね。」
「え?奥方さまが、それを言う?」
「でも、私、けっこう苦しかったし、顔色もあまり良くなかったわよ。」
「ああ、それはですね、育ってきた栄養状態の問題です。子供の時から、しっかり栄養を取ると骨なんかが丈夫になります。」
「そうなんですか?」
「母体がしっかりしていないと、子供の育つのに差が出ますからね。」
「そう言うものですか。」
「母体に栄養が足りないと、赤ちゃんがおなかの中で育つのに必要な素材が足りなくて、不健康な子供が生まれます。」
「はい…」
「イシュタール王国の、乳児死亡率の高さは、栄養改善がなされていない、衛生管理が悪いの二点です。」
栄養と言う概念は、恵理子が加わってから、休息に領内に広げた。
なんと言っても、えい児死亡率が五〇%くらいある世界だから。
産後の肥立ちも悪くて、産褥死亡率も四〇%くらいある。
子供を産むのも命がけの時代なのだ。
そんな中で、恵理子のおなかはすくすくと育っている。
峡谷の底に降りて三日目、やっと出発できた。
特になにもなかったのですが、マンモスのこともあるので十分に偵察をしてからと言うことになった。
みなが偵察する中、カズマとプルミエは、防護壁の強化を進める。
土魔法のできる子供たちも参加して、ゾウガ踏んでも壊れないようなものを作った。
マンモスが、いつ徘徊してくるかわからないから。
今日のところは、危なそうな気配もないので、ゆっくりと出立する。
「出るぞ~。」
プルミエの舗装は、地盤がしっかりしているので、本当に揺れが少なく、妊婦の恵理子にも優しくなっている。
馬車の横を歩きながら、勇気はカズマに聞いた。
「僕は、何をすればいいんでしょうか?」
「ああ?そんなものお前の女神に聞けよ。俺ができるのは、お前の能力を上げる手伝いくらいのものだ。」
「はあ…」
勇気は困惑していた。
ま、この世代で思考を放棄していると、なにも活動しない。
教えてもらってないからできませんと言うやつだ。
自分で調べて行動すると言う、基本動作ができない。
これが思考の放棄。
「お前には、一応、勇者補正で全属性魔法の適性があるんだろう?そう言うのは、基礎をしっかり練習することと、魔力の上昇をはかるんだ。」
「具体的には?」
だから勇気は、なんでも聞く。
自分で考えないからだ。
「ぶっ倒れるまで魔法を使う。」
「ほえ~?」
「魔力なんてものは、枯渇するまで使うと、その分伸びるんだ。
「しかし、魔力なんてどうしたらわかるんですか?」
「むずかしいな、どう説明したもんだか?プルミエに聞いてみろ。あいつはハイエルフだから何百年も生きてる。」
「へ?ネコ耳宇宙人にしか見えませんが。」
「アホ、そんなこと言ったら、ぶんなぐられるぞ。」
勇気は、しきりに首をひねっている。
「まあ、運動がてら、剣の訓練でもするか?勇者補正で、剣の要素もあるんだろう。」
ナイア女神の加護があるので、かなり高性能です。
「みろ、片手剣のレベルが5になってる。絶対防御 不屈 獲得経験値倍加なんてものがあるから、すぐレベルが上がる。」
勇気には、実感として良くわかっていないようだ。
「女神の加護って言うのはな、勇者にしかない。だから、毒なんかにやられることはないし、デスなんか受け付けない。」
勇気は、自分の両手のひらを見つめて、ぼそりと言った。
「そりゃすごい。」
「絶対防御があるから、魔法攻撃は通常の半分しかダメージがこないし、物理攻撃はほぼ防がれる。」
「ほいえ~。」
「不屈なんて言うのは、HPがゼロになっても、残り1で踏ん張って、気絶しないことだ。」
「どこまでチートなんだ。」
「勇者になるって言うのは、そのくらいすげえんだよ。」
「へ~、カズマさんは?勇者じゃないんですか?」
「あ?俺には、加護なんかないもんさ。」
「加護なくて、どうしてあんなに強いんですか?」
「そりゃ、努力だろう。」
まあ、カズマにはオシリス女神から、使徒認定されていますから、勇者よりは弱いけど加護補正があります。
「俺の師匠は、俺がぶったおれるまで、何度も魔法を使わせたさ。」
「うへ~~~。」
「とりあえず、お前は自分の能力に振りまわされないように、地力をつけることを考えろ。」
「はい。」
いい返事だが、どこまでやれるものだかわからない。
「まずは、魔力の流れを感じるところからだな。俺の魔力の動きを観察してみろ。」
そう言ってカズマは、土壁を立ち上げ始めた。
「ええ~まるでわかりません。」
「ばかもの、目の裏に魔力を集めるのじゃ。」
プルミエが、杖で勇気の頭を小突いた。
「いて~、だって魔力自体がよくわからないんですよ~。」
「それもそうかのう?」
プルミエが両手を出したので、カズマが止めに入った。
「だめだ、プルミエ。あんたの魔力が強すぎて、こいつでは耐えられん。」
「ほい、そうかのう?」
「ジャッキー、ジルバ。」
「「はい。」」
「悪いが、勇気の魔力循環を手伝ってくれ。」
ジャッキーは、少し顔をゆがめて言った。
「ええ~?婚約者でも恋人でもないのに、魔力交換するんですか?」
「あたしは、いいですよ。どうせ、すぐに居なくなる人ですし。」
ジルバは、気にしないようだ。
この世界では、魔力を共有するということは、多分にセクハラに近いのだ。
ジャッキーは、十一歳にしてはおませさんだし、ジルバは醒めている。
「お屋形さまとならいいですけど?」
ジャッキーは、ホンマにおませさんだな。
「悪い、じゃあジルバ、勇気の魔力を見てくれ。」
「はい。」
ジャッキーの言葉は、軽くスルーして、カズマはジルバを呼んだ。
「勇気、ジルバと両手を合わせてくれ。」
「はい。」
一〇歳の小娘と手をつなぐことに、抵抗はないようで、勇気もジルバの手を握った。
「よし、ジルバ、魔力をながしてくれ。」
「はい。」
みょみょみょみょみょ
「あう、くすぐったい。」
「我慢しろ、手を離すんじゃないぞ。」
「うひ~、背中がかゆい。」
ジルバの魔力は、ジルバの体を循環してから、右腕の先を通り勇気の体内に移動し、くるりと回って左手から戻って来る。
「あ…わかってきた、こう言うことかな?」
勇気は、感覚で読み取り、ジルバにもらった魔力を、くねくねとより合わせてみた。
「うにゃ!なんですか?」
「こう言うことなんじゃないかな…」
くねくね
「うにゃ、うにゃにゃ」
「おいおい、ジルバがトラみたいになってるぞ。」
「じゃあ、返すよジルバちゃん。」
勇気の体内で練った魔力は、左手を通してジルバに返された。
「にゃっ!」
が、ジルバの送った魔力の、数十倍の魔力が渦を巻いて帰ってきたため、ジルバの全身が脈打つように振動する。
「勇気!やりすぎだ!止めろ!」
カズマは、異常事態に慌てて、勇気の行為を止めさせた。
が、少し遅かったようで、大量の魔力を循環させたため、ジルバの顔は真っ赤になっていた。
ジルバのスカートから、ぽたぽたと粘液が滴り落ちる。
「やば!」
カズマもプルミエも、以前に起こったことを思い出して、慌てた。(第六十四話 新たなちからその二 参照)
勇気も異常を察知して、魔力を送るのを止めたが、異常は収まっていなかった。
なんと、ジルバのスカートから滴り落ちるものが真っ赤になってしまった。
「なんと、いきなり生理になってしまった!」
「月のものかえ…」
「あ、あひ!お屋形さま!お屋形さま!どうしよう!病気かなあ?」
「あわてるなジルバ、それは病気ではない。アリス!アリース!」
魔力の流れが止まったのを感じて、俺はやさしくジルバを連れて、駅舎に向かった。
濡れたパンツが、歩きにくいようで、少しぐずりながら進むジルバ。
「どうされまし…、ジルバ、こちらへ。お屋形さま、すぐにお風呂を用意してくださいませ。」
「ああ、わかった、よろしく頼む。」
勇気は、茫然としているが、いきなり女性の生理を見せつけられるとは、運のない奴だ。
「勇気、しゃきっとしろ。」
勇気の背中をぱしりと叩いて、正気付かせる。
プルミエも、ショックから立ち直ったようだ。
「プルミエは、大丈夫か?」
「ああ、びっくりしたが、この前のようなことはないわな。」
「勇気はそうでもないようだぞ。」
勇気は、もっこりと隆起したズボンに気が付いて、後ろを向いた。
「ああ、気にするな、影響が出るときがあるんだ、それはただの副産物だ。」
「うう、なんなんだこの人は!」
勇気は、平均的高校生なので、自分の生理現象をあからさまに見られて、動揺しているのだ。
DTだし!
DTだし!
重要なことじゃないけど、二回言っちゃったよ。
カズマは、苦笑を洩らして、練習の終了を告げて、風呂場に向かった。
カズマの水魔法は強力なので、最近は複合化が進み、火魔法とのコラボでお湯が出せる。
すぐさま、風呂桶いっぱいにお湯が満たされた。
カズマの後を着いてきた勇気は、その無造作な魔法技術に驚愕の目を向けた。
「すごいな…」
「まあ、こんなものは、練習次第でどうにかなるものだ。魔法はイメージが大事なんだよ。」
「はあ。」
「だから、たとえば瞬間湯沸かし器が、お湯を出すところをイメージしてみろよ。」
「はい、しました。」
「その状態で、水魔法を使うと、こう、なんとなくお湯になるんだ。」
「よくわかりません。」
「まあ、実際に、魔法を使えるようにならないとな。」
アリスティアに付き添われて、ジルバは風呂場に消えた。
駅舎を大型に作っておいて正解だな。
最近は、土魔法に慣れた子供たちのおかげで、駅舎の数が増えるのだ。
カズマにすれば、一棟で十分広いものができるのだが、子供たちの練習に付き合って、何棟も建ってしまう。
そのうちの一棟を、丸々風呂場にしてしまい、みんなが喜んでいる。
まあ、後続の連中が使うこともあって、増える分には心配がない。
駅舎がしっかりしていると、獣に襲われた時に逃げ込めるし。
子供たちの作る建物も、壁の厚みはひところの倍になっている。
「よし、マリウス、勇気の剣を見てやってくれ。」
「御意。」
「今日は、かなり元気だから、ぶっ倒れるまでやっていい。」
「うえー!」
「なるほど、いきり立っておりますな。」
おっさんがおっさんなことを言って、からからと笑う。
「だろ?」
「ユリウス!お主も手伝え。」
「おお?ああ、これはこれは、やる気じゃのう。」
マリウス=ロフノールに呼ばれて、ユリウス=ゴルテスがやってきた。
その後ろから、ゲオルグ=ベルンも着いてくる。
「おやおや、若いってのはいいねえ。」
「お主だって、若いもんじゃないか。まあいい、お主もやるか?」
「いま、ヒマですから。」
カズマの配下で、技巧派のゴルテスとロフノール、パワーファイターのゲオルグと、そろってしまった。
「まずは、ワシからじゃのう。」
勇気に有無を言わせず、木剣を放り投げて、するすると近寄るロフノール。
ひょうひょうとした雰囲気に似ず、マリウス=ロフノールは剣の上手である。
「うわ!」
かきいん!
と言う乾いた音でわかるように、軽い打ち込みで勇気でも受け止めることができる。
この辺は、剣術レベル5の恩恵だろう。
剣術は、レベルがだいたい十段階あって、レベル5ならかなりやる程度の腕である。
冒険者で言うと、Dの上、Cの下くらいなものか。
ただし、勇気には経験がなさすぎるため、へっぴり腰である。
だいたい、体育の授業で習った剣道の程度なので、平正眼が基準である。
ただし、チャンバラの域を出ない。
体育の剣道など、まじめにやる奴が居ないからだ。
横で見ていたカズマが、むっとした。
「ああ!やめだやめだ!ユリウス、悪いがちょっと待て。」
「は、お屋形さま。」
「勇気!お前、体育の剣道でサボってたろう。」
「は?そりゃまあ。」
「しかも、高校では帰宅部で、カラオケ三昧だな。」
「なんでわかるんですか?」
「いいか、剣を構えると言うことは、相手の命を奪うと言うことだ。お前は、ここに来て日が浅いが、その覚悟がまるでない。」
まあ、当たり前と言えば当たり前だろう。
お気楽で、安全な日本に住んでいたんだから。
余程のことがないかぎり、暴力沙汰とは無縁の世の中だ。
「はあ、そりゃまあそうですね。」
「なんでかって言うと、お前は命の危機にめぐりあって居ないからだ。」
まあ、幸運にもこの世界にやってきて、最初に出会ったのがカズマのキャラバンだから。
「相手を殺して、喰うところまで行かないと、剣術なんてやっても無意味かもしれん。」
「ええ~?」
「とりあえず、平正眼はこう構えろ。」
カズマがして見せた姿勢を真似してみる。
「ここはこう、ここはこうだ。」
それを、少しずつ修正して、構えを取らせると、そこから振りかぶって面打ちをさせる。
「この状態で、剣先がブレないように素振りしろ。」
カズマの指示は、基本中の基本である。
「なんかいくらいですか?」
「そうだな、はじめだし一〇〇〇本くらいかな。」
「ええ~!」
「文句言わずにやれ!お前ら、手を抜かないように見張ってろ。」
「「「御意!」」」
三人に囲まれて、勇気は渋々素振りを始めた。
勇気は、勇者に似せず普段は猫背で、顎が出ているような歩き方をしている。
これでは、体幹がゆれて、何をしてもまともに攻撃できない。
カズマは、そこから矯正することにしたのだ。
まったくもって嘆かわしい。
とりあえず、剣が使えるようにだけはしておこうと思っているカズマだった。
「だいたいなー、たまたま授かった力が強かったからと言って、見ず知らずの人を助けるために、命なんかかけられるか?」
「俺は嫌だね。身内を守るだけで精一杯だよ。魔王退治なんてごめんだね。」
「だから俺は、勇者なんかにゃならない、なれない。」
「俺のなかの正義なんてものは、狭いもんなんだよ。」
「俺にはなあ、仮面ライダーが人類のために戦う気持ちが理解できないんだ。」
「たまたまだぞ、ショッカーの改造人間にされて、たまたま対抗できる力があるだけじゃん。」
「それのどこに、世界平和を守るなんて、義務が生じるわけ?」
「気に入らねえ、むかつくってんなら、ショッカーぶんなぐるのに反対はしねえ。」
「人類のためなんてぇお題目を上げた時点で、偽物だよその正義は。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
変更のお知らせ。
いろいろご指摘いただいたところや、話の抜けのあったところを修正しました。
抜けていたところには追加をしました。
追加の仕方がよくわかってなくて、苦労していましたが、なんとかなりました。
うまくつながっていると思いますので、引き続きお楽しみいただけましたらさいわいです。
1
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