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第一章 最強は、まだまだ帰れない
ヒトリからの依頼
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※今回は少しグロテスクな場面がありますので、苦手な方や想像力豊かな方々、覚悟をお決めください。
ヒトリの興奮をとりあえず宥めて、僕らは遺跡の外へと出た。
神聖な遺跡で話は出来ないので、(騒いだ時点で話もなにもないとは思うけど)ヒトリの家へお邪魔することにした。
「好きに座ってくれ、レオンは勿論、私の隣じゃぞ?」
僕の腕を引っ張り、強引に椅子へと座らせたヒトリは、うって変わって真面目に話し始める。
「それで、何の用で此所に来たんじゃ?あ、勿論何もなくても来て構わぬがな」
「…冒険同盟の依頼で来たんだよ、ヒピの森でモンスターが好き放題してるって」
「ああ、それは私が依頼したんじゃ。実は村の塀の一部が破壊されて、そこからモンスターが侵入しとる」
ヒトリは僕らに必死に、助けて欲しいと訴えかけた。
勿論、僕らは依頼を受けるし、そもそもモンスター退治のために此所に来たのだ。
「それじゃあ、その壊れた塀から入ってくるモンスターをぶった斬ればいいんだよな?」
「アトラスの馬鹿者、それだけじゃ止められん。モンスターを動かしている親玉を止めんとな」
「それって、書かれてるサンダーウータンのこと?」
「そう、ソイツじゃ。昔は森の食べ物だけで十分じゃったから、乱暴しなかったのじゃが…大きく成長してからは沢山食べるようになっての、村の食べ物まで奪うようになった」
怪我したそのモンスターを治してやったこともあったのにのう…と、言うヒトリの目は、とても悲しそうで、涙が溜まっているのが見えた。どうやらそのサンダーウータンに相当思い入れがあるらしい。
「昔はの、あやつも幼くて可愛かったんじゃ。オババから、大きくなったら凶暴になると教えられてはいたが、当時はそうは思わなかった。…今になって思い知らされたがな」
ヒトリのお祖母さんは、モンスターと仲良くするのは反対だったのか。
もう既に無くなった祖母が居る、とは聞いていたが、具体的な話をしてくれたのは始めてだった。
今思えば、ヒトリが幼い子供の口調ではなく、年配のような話し方なのは、お祖母さんの影響かもしれない。
「私も出来れば、討伐なんてしたくはないんじゃ。でも、村長という立場もあって、皆を守らねばならぬ」
たった14歳で村長と巫女を引き継いだヒトリの決断は相当重いようだ。
涙を必死に我慢して、僕らに頭を下げた。
「どうか、村を守ってはくれんか?」
そう頼まれた僕らは、言われる前から決意は決まっていた。
「「勿論、勤めさせてもらうよ(ぜ)」」
こうして、村に攻め込むモンスターと、親玉のサンダーウータンを退治することになった僕とアルは、破壊された塀へ向かう。
木材で出来ている塀は簡単に破壊され、粉々になっていた。
「派手にやられてんなぁ…ここの木、木材っていっても特別だから石みてぇに固いのに」
「やっぱり力が強いのかな…」
村の見張りや、戦える男性たちが外でモンスターを食い止めているらしいと聞いて、僕らはすぐ助けに向かう。
背中に差してある剣を抜き、慎重に塀の外へ。
僕は何でも扱えるが、片手剣と弓。
アルは両手剣と投げナイフを持っている。
戦闘中なのは少し村から外れた森林の中で、樹木に隠れつつ近づいていくと、村人達と黒い身体のモンスターの姿が見えた。
四足歩行の動物型のモンスターで、犬に似ているが、目が4つあり、口も大きく、鋭い牙が生えている。
一目見て悪寒が走る容姿のモンスターが、素早く走り回って村人に飛びかかり、牙を向いている。
そこに入り込み、モンスターの後ろ足の付け根から、首まで斜め上に斬り付けると、唸り声をあげたまま地面に倒れ、肉片と化した。
「こいつらデビルドッグだな、雑魚の雑魚だけど動き早いから気を付けろっ!」
こんな状況でもモンスターの解説をしてくれたアルは、両手剣なんて大剣では戦いにくいのか、小さな投げナイフを取り出した。
接近戦ではダガーとしても扱えるし、遠距離なら投げることが出来るので使い勝手がいい武器だ。
それを指で挟むと、思いっきり飛びかかっているデビルドッグの頭部目掛けて投げ付ける。
横のこめかみ部分から刃が食い込み、口から大量の黒い血液を撒き散らしながら地面へと落ちていく。
こうして何度も斬って投げを繰り返し、数多く居たモンスターを倒していく。
倒れたモンスターは、白い光の粉と化して消えていき、後はアイテムだけ残っていた。
アイテムには構わず、近くに居るはずの親玉サンダーウータンを探す。
暫く探し回って見つけたのは、大きな洞穴のような場所だった。
草木で入り口が隠れて分かりにくく、中もある程度の長さがあるのか真っ暗で分からない。
「普通に考えたらこの中だよな…」
「じゃあこれ、置こうか」
サンダーウータンは常に腹を空かせていると聞き、ヒトリから好物のバナナ?のような物を貰ってきていた。
正確にはバナナではないのだろうが形はそっくりだ。
――色が青でなければ僕も味わってみたい。とりあえずバナナモドキと命名しよう。
バナナモドキを洞穴の入り口に置いて十分な距離を取ると、洞穴から振動が伝わってきた。
大きな生物が洞穴を踏み鳴らしているような…いや、走っているのかも。
じっと隠れ、待っていると人間を鷲掴み出来そうな巨大な腕が、洞穴から伸びてバナナモドキを掴んで持っていく。
「たぶん今のだよな?」
「そうだね。あ、顔が…」
洞穴から外の様子を伺うように猿の顔が出てくる。
ただ大きさが尋常ではなく、古傷だらけの顔と鋭い目をしていた。
ゆっくりと顔から身体全体を洞穴から出してくると、胸を拳で叩いて一声吠えた。
ここからが本番だ。
僕も乗り気ではないが、依頼を受けたからにはやらなければならない。
僕らはそれぞれ剣を構え、それを見たサンダーウータンは明らかな敵意を剥き出しにして、僕らに襲いかかった。
ヒトリの興奮をとりあえず宥めて、僕らは遺跡の外へと出た。
神聖な遺跡で話は出来ないので、(騒いだ時点で話もなにもないとは思うけど)ヒトリの家へお邪魔することにした。
「好きに座ってくれ、レオンは勿論、私の隣じゃぞ?」
僕の腕を引っ張り、強引に椅子へと座らせたヒトリは、うって変わって真面目に話し始める。
「それで、何の用で此所に来たんじゃ?あ、勿論何もなくても来て構わぬがな」
「…冒険同盟の依頼で来たんだよ、ヒピの森でモンスターが好き放題してるって」
「ああ、それは私が依頼したんじゃ。実は村の塀の一部が破壊されて、そこからモンスターが侵入しとる」
ヒトリは僕らに必死に、助けて欲しいと訴えかけた。
勿論、僕らは依頼を受けるし、そもそもモンスター退治のために此所に来たのだ。
「それじゃあ、その壊れた塀から入ってくるモンスターをぶった斬ればいいんだよな?」
「アトラスの馬鹿者、それだけじゃ止められん。モンスターを動かしている親玉を止めんとな」
「それって、書かれてるサンダーウータンのこと?」
「そう、ソイツじゃ。昔は森の食べ物だけで十分じゃったから、乱暴しなかったのじゃが…大きく成長してからは沢山食べるようになっての、村の食べ物まで奪うようになった」
怪我したそのモンスターを治してやったこともあったのにのう…と、言うヒトリの目は、とても悲しそうで、涙が溜まっているのが見えた。どうやらそのサンダーウータンに相当思い入れがあるらしい。
「昔はの、あやつも幼くて可愛かったんじゃ。オババから、大きくなったら凶暴になると教えられてはいたが、当時はそうは思わなかった。…今になって思い知らされたがな」
ヒトリのお祖母さんは、モンスターと仲良くするのは反対だったのか。
もう既に無くなった祖母が居る、とは聞いていたが、具体的な話をしてくれたのは始めてだった。
今思えば、ヒトリが幼い子供の口調ではなく、年配のような話し方なのは、お祖母さんの影響かもしれない。
「私も出来れば、討伐なんてしたくはないんじゃ。でも、村長という立場もあって、皆を守らねばならぬ」
たった14歳で村長と巫女を引き継いだヒトリの決断は相当重いようだ。
涙を必死に我慢して、僕らに頭を下げた。
「どうか、村を守ってはくれんか?」
そう頼まれた僕らは、言われる前から決意は決まっていた。
「「勿論、勤めさせてもらうよ(ぜ)」」
こうして、村に攻め込むモンスターと、親玉のサンダーウータンを退治することになった僕とアルは、破壊された塀へ向かう。
木材で出来ている塀は簡単に破壊され、粉々になっていた。
「派手にやられてんなぁ…ここの木、木材っていっても特別だから石みてぇに固いのに」
「やっぱり力が強いのかな…」
村の見張りや、戦える男性たちが外でモンスターを食い止めているらしいと聞いて、僕らはすぐ助けに向かう。
背中に差してある剣を抜き、慎重に塀の外へ。
僕は何でも扱えるが、片手剣と弓。
アルは両手剣と投げナイフを持っている。
戦闘中なのは少し村から外れた森林の中で、樹木に隠れつつ近づいていくと、村人達と黒い身体のモンスターの姿が見えた。
四足歩行の動物型のモンスターで、犬に似ているが、目が4つあり、口も大きく、鋭い牙が生えている。
一目見て悪寒が走る容姿のモンスターが、素早く走り回って村人に飛びかかり、牙を向いている。
そこに入り込み、モンスターの後ろ足の付け根から、首まで斜め上に斬り付けると、唸り声をあげたまま地面に倒れ、肉片と化した。
「こいつらデビルドッグだな、雑魚の雑魚だけど動き早いから気を付けろっ!」
こんな状況でもモンスターの解説をしてくれたアルは、両手剣なんて大剣では戦いにくいのか、小さな投げナイフを取り出した。
接近戦ではダガーとしても扱えるし、遠距離なら投げることが出来るので使い勝手がいい武器だ。
それを指で挟むと、思いっきり飛びかかっているデビルドッグの頭部目掛けて投げ付ける。
横のこめかみ部分から刃が食い込み、口から大量の黒い血液を撒き散らしながら地面へと落ちていく。
こうして何度も斬って投げを繰り返し、数多く居たモンスターを倒していく。
倒れたモンスターは、白い光の粉と化して消えていき、後はアイテムだけ残っていた。
アイテムには構わず、近くに居るはずの親玉サンダーウータンを探す。
暫く探し回って見つけたのは、大きな洞穴のような場所だった。
草木で入り口が隠れて分かりにくく、中もある程度の長さがあるのか真っ暗で分からない。
「普通に考えたらこの中だよな…」
「じゃあこれ、置こうか」
サンダーウータンは常に腹を空かせていると聞き、ヒトリから好物のバナナ?のような物を貰ってきていた。
正確にはバナナではないのだろうが形はそっくりだ。
――色が青でなければ僕も味わってみたい。とりあえずバナナモドキと命名しよう。
バナナモドキを洞穴の入り口に置いて十分な距離を取ると、洞穴から振動が伝わってきた。
大きな生物が洞穴を踏み鳴らしているような…いや、走っているのかも。
じっと隠れ、待っていると人間を鷲掴み出来そうな巨大な腕が、洞穴から伸びてバナナモドキを掴んで持っていく。
「たぶん今のだよな?」
「そうだね。あ、顔が…」
洞穴から外の様子を伺うように猿の顔が出てくる。
ただ大きさが尋常ではなく、古傷だらけの顔と鋭い目をしていた。
ゆっくりと顔から身体全体を洞穴から出してくると、胸を拳で叩いて一声吠えた。
ここからが本番だ。
僕も乗り気ではないが、依頼を受けたからにはやらなければならない。
僕らはそれぞれ剣を構え、それを見たサンダーウータンは明らかな敵意を剥き出しにして、僕らに襲いかかった。
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