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第一章 最強は、まだまだ帰れない
モンスターの異変
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※今回は、私の苦手なアクションです。おかしいところがあるかもしれませんが、指摘していただければと思います。お楽しみください。
唸りながら牙を剥き出す巨大な猿が、今…目の前にいる。
僕らはそれぞれ剣を構えて、相手の動きを伺った。
ただ少し気になったのは、その後にサンダーウータンが苦しみ始めたことだった。
サンダーウータンがいきなり、悲鳴のような鳴き声をあげて、頭を抱えながら苦しんでいるのだ。
「なんだ?攻撃してこねぇぞ?」
「……何かおかしくない?」
僕らはそこで異変に気付いた。
瞳の色が、真っ赤に染まっていることに。
ヒトリから聞いた容姿は、確か瞳の色は澄んだ水色だったはずだ。
暫く苦しんだ後に、サンダーウータンは再び此方を睨んで飛び上がった。
両手を組み、拳を作った状態で、真上から叩きつけるように飛んできたのだ。
「っ…」
それを横に転がり、避けて立ち上がる。
変わらずの力の強さで、サンダーウータンの叩きつけを食らった地面は抉れている。
あれを食らったら、体力なんてもたない。
僕ならまだ大丈夫だが、アルはレベルがたったの30しかない。一発ならまだしも、二発は耐えられないだろう。
「なんだよあの威力!B級モンスターなら楽勝のはずだろ!」
「分かんないけど、何かが力を上げてるんだよ!普通じゃないから気をつけて!」
腕を振り回して暴れるサンダーウータンに、僕らはむやみに近付けない。
攻撃力は低いが、遠距離武器の弓を構えた。
アルは、先程のデビルドッグとの戦いでも有効だった投げナイフを構えている。
あれだけの大型モンスターなら、当てるのはさほど難しくはない。
弓を引き、狙いを定めて弓矢を一気に頭部へと放った。
だが、軽く矢じりの先が刺さっただけで、すぐに抜けて地面へと落ちてしまう。
力だけでなく、どうやら防御も堅いようだ。
遠距離武器ではどうしようもならない。
剣で、怪我を覚悟で突っ込むしかない。
…それに、恐らくサンダーウータンを凶暴化させた犯人も近くにいるはず。
弓をしまってすぐに片手剣を二本取り出した。
普段使うのは一本のみだが、一応破損した時のための予備として、必ず二本背中に差してある。
僕の最強のステータスは、武器がなければ成り立たない。
ただ、普段は力を弱めるためにレア度の低いものしかもっていないため、唐突に強敵にあった場合に対処できないのだ。
だから二本、武器がいる。
――元々僕は、二刀流だからね。
持ち前のスピードで一気にサンダーウータンの懐へと入り込むと、それに気づいたサンダーウータンが、僕の身体を鷲掴みにしようと手を伸ばしてくる。
それを、身体を捻って半回転することでかわした僕は、そのまま腕目掛けて剣を振り下ろした。
一度だけなら浅い傷しかつかないサンダーウータンの腕を、二刀流における二度の攻撃でぶった斬る。
真っ赤な血液が傷口から噴き出し、これに驚いたのかサンダーウータンの動きが止まった。
今のうちに、アルと二人で連撃を叩き込む。
「っ…うりゃあぁっ!」
アルが叫びながら、サンダーウータンの左から首筋へ大剣を食い込ませると、僕が右側から二本の剣を同時に入れる。
二人で力を込めて斬り付けると、僕の最強の筋力でどんどん刃が入っていく。
斬り付けた所から血が噴き出し、僕らの服を真っ赤に染めた。
その頃には、既にサンダーウータンの首が宙を舞い、巨大な身体が地面へと横たわる。
「お、終わった…」
「キツかった…ちょっと擦っちまった」
腕や頬に軽い怪我をした僕らは、簡単に止血を済ました後に、動かなくなったサンダーウータンに近づく。
もちろん、回りも見てみたが、結局凶暴化の理由は分からず、村へと帰ることにした。
「レオン、アトラス帰ったか!だ、大丈夫なのか!?」
村ではヒトリが出迎えてくれたが、血塗れの僕らを見て慌て始める。
「あ、大丈夫だから。これ、返り血で僕らはあまり怪我してないし」
「そうそう、あんなのに手こずるなんてねーから」
さっきまでキツイって言ってたくせに。
そう思いつつ、ヒトリに連れられてまた家へとお邪魔した。
早くお風呂に入りたかった僕は、ヒトリに許可をもらって湯船へと入る。その間、服は洗濯してもらえることになった。
身体を念入りに洗って、代わりに貰った洋服に着替える。これも伝統的な村衣装で、男性はワンピースのような上半身の下に、ズボンを履いた昔ながらの洋服だった。
ただ、縫い付けてある装飾品が派手なのは変わらない。
「二人ともご苦労であった、お礼はこれじゃ」
そう言ってヒトリは、麻袋に入った金貨の山を見せた。
「おっ、すっげ…これだけあれば当分困らねぇ!」
「えっと…これは受け取れないよ」
喜んでいるアルを見ていると少々やりにくいが、僕は金貨をヒトリに返した。
「え…な、何故じゃ?報酬だぞ?」
「僕は依頼じゃなくて、人助けでやったから」
「え、貰おうぜ?」
「アルは黙ってて」
他の依頼さえこなせば、暮らしていけるし、多分村からかき集めたお金なら、僕らには必要ない。
そう説明してアルを落ち着かせ、そろそろ他の街へ移動することを告げた。
乾かした洋服に着替えてから、荷物を持って馬に飛び乗る。
「居てもいいんじゃぞ?依頼よりも、ここで農業してた方が楽じゃ」
「僕にはやりたいことがあるんだ。やらなきゃいけないことも沢山ある。また今度、会いに来るから」
「んじゃな~」
別れるのが辛そうなヒトリにお礼を言って、僕らは馬で村を出る。
すでに村では、塀の修理が行われていた。
モンスターの件が解決したことで、村は活気に包まれ、僕はその光景が懐かしく思えた。
東京にいた頃、こんな光景を見たことあったっけ。
そう思いながら、僕らは自宅のある街まで、また馬を走らせた。
時刻は夕方、着くのは夜ごろだ。
ヘトヘトになったのは久しぶりだが、とても心地いい疲労感が全身へと広がっていた。
唸りながら牙を剥き出す巨大な猿が、今…目の前にいる。
僕らはそれぞれ剣を構えて、相手の動きを伺った。
ただ少し気になったのは、その後にサンダーウータンが苦しみ始めたことだった。
サンダーウータンがいきなり、悲鳴のような鳴き声をあげて、頭を抱えながら苦しんでいるのだ。
「なんだ?攻撃してこねぇぞ?」
「……何かおかしくない?」
僕らはそこで異変に気付いた。
瞳の色が、真っ赤に染まっていることに。
ヒトリから聞いた容姿は、確か瞳の色は澄んだ水色だったはずだ。
暫く苦しんだ後に、サンダーウータンは再び此方を睨んで飛び上がった。
両手を組み、拳を作った状態で、真上から叩きつけるように飛んできたのだ。
「っ…」
それを横に転がり、避けて立ち上がる。
変わらずの力の強さで、サンダーウータンの叩きつけを食らった地面は抉れている。
あれを食らったら、体力なんてもたない。
僕ならまだ大丈夫だが、アルはレベルがたったの30しかない。一発ならまだしも、二発は耐えられないだろう。
「なんだよあの威力!B級モンスターなら楽勝のはずだろ!」
「分かんないけど、何かが力を上げてるんだよ!普通じゃないから気をつけて!」
腕を振り回して暴れるサンダーウータンに、僕らはむやみに近付けない。
攻撃力は低いが、遠距離武器の弓を構えた。
アルは、先程のデビルドッグとの戦いでも有効だった投げナイフを構えている。
あれだけの大型モンスターなら、当てるのはさほど難しくはない。
弓を引き、狙いを定めて弓矢を一気に頭部へと放った。
だが、軽く矢じりの先が刺さっただけで、すぐに抜けて地面へと落ちてしまう。
力だけでなく、どうやら防御も堅いようだ。
遠距離武器ではどうしようもならない。
剣で、怪我を覚悟で突っ込むしかない。
…それに、恐らくサンダーウータンを凶暴化させた犯人も近くにいるはず。
弓をしまってすぐに片手剣を二本取り出した。
普段使うのは一本のみだが、一応破損した時のための予備として、必ず二本背中に差してある。
僕の最強のステータスは、武器がなければ成り立たない。
ただ、普段は力を弱めるためにレア度の低いものしかもっていないため、唐突に強敵にあった場合に対処できないのだ。
だから二本、武器がいる。
――元々僕は、二刀流だからね。
持ち前のスピードで一気にサンダーウータンの懐へと入り込むと、それに気づいたサンダーウータンが、僕の身体を鷲掴みにしようと手を伸ばしてくる。
それを、身体を捻って半回転することでかわした僕は、そのまま腕目掛けて剣を振り下ろした。
一度だけなら浅い傷しかつかないサンダーウータンの腕を、二刀流における二度の攻撃でぶった斬る。
真っ赤な血液が傷口から噴き出し、これに驚いたのかサンダーウータンの動きが止まった。
今のうちに、アルと二人で連撃を叩き込む。
「っ…うりゃあぁっ!」
アルが叫びながら、サンダーウータンの左から首筋へ大剣を食い込ませると、僕が右側から二本の剣を同時に入れる。
二人で力を込めて斬り付けると、僕の最強の筋力でどんどん刃が入っていく。
斬り付けた所から血が噴き出し、僕らの服を真っ赤に染めた。
その頃には、既にサンダーウータンの首が宙を舞い、巨大な身体が地面へと横たわる。
「お、終わった…」
「キツかった…ちょっと擦っちまった」
腕や頬に軽い怪我をした僕らは、簡単に止血を済ました後に、動かなくなったサンダーウータンに近づく。
もちろん、回りも見てみたが、結局凶暴化の理由は分からず、村へと帰ることにした。
「レオン、アトラス帰ったか!だ、大丈夫なのか!?」
村ではヒトリが出迎えてくれたが、血塗れの僕らを見て慌て始める。
「あ、大丈夫だから。これ、返り血で僕らはあまり怪我してないし」
「そうそう、あんなのに手こずるなんてねーから」
さっきまでキツイって言ってたくせに。
そう思いつつ、ヒトリに連れられてまた家へとお邪魔した。
早くお風呂に入りたかった僕は、ヒトリに許可をもらって湯船へと入る。その間、服は洗濯してもらえることになった。
身体を念入りに洗って、代わりに貰った洋服に着替える。これも伝統的な村衣装で、男性はワンピースのような上半身の下に、ズボンを履いた昔ながらの洋服だった。
ただ、縫い付けてある装飾品が派手なのは変わらない。
「二人ともご苦労であった、お礼はこれじゃ」
そう言ってヒトリは、麻袋に入った金貨の山を見せた。
「おっ、すっげ…これだけあれば当分困らねぇ!」
「えっと…これは受け取れないよ」
喜んでいるアルを見ていると少々やりにくいが、僕は金貨をヒトリに返した。
「え…な、何故じゃ?報酬だぞ?」
「僕は依頼じゃなくて、人助けでやったから」
「え、貰おうぜ?」
「アルは黙ってて」
他の依頼さえこなせば、暮らしていけるし、多分村からかき集めたお金なら、僕らには必要ない。
そう説明してアルを落ち着かせ、そろそろ他の街へ移動することを告げた。
乾かした洋服に着替えてから、荷物を持って馬に飛び乗る。
「居てもいいんじゃぞ?依頼よりも、ここで農業してた方が楽じゃ」
「僕にはやりたいことがあるんだ。やらなきゃいけないことも沢山ある。また今度、会いに来るから」
「んじゃな~」
別れるのが辛そうなヒトリにお礼を言って、僕らは馬で村を出る。
すでに村では、塀の修理が行われていた。
モンスターの件が解決したことで、村は活気に包まれ、僕はその光景が懐かしく思えた。
東京にいた頃、こんな光景を見たことあったっけ。
そう思いながら、僕らは自宅のある街まで、また馬を走らせた。
時刻は夕方、着くのは夜ごろだ。
ヘトヘトになったのは久しぶりだが、とても心地いい疲労感が全身へと広がっていた。
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