転生して最強になった青年の異世界冒険

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第一章 最強は、まだまだ帰れない

食事後の指令と大移動

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 アリアとアル、そして僕が食事をし終わると、毎回食事後に行われる集会が始まった。
個性的な冒険者や、腕の立つ冒険者が大勢居る中、冒険同盟ギルドのマスター、ヴィラン=マグガレンが姿を表した。
 キリッとした目と、背中に背負われている聖剣が目に入る。あの剣は、国が贈呈したもので、マスターのみ使える代物だ。

 長い挨拶を終えると、ヴィランは今回の本題に入った。
それは、最近起こっているモンスターの異変という話題だった。

「モンスターは元から凶暴だが、それを上回る凶暴化が起きている。目撃証言も多数あり、その中で最も多いのは、真っ黒な球体に飲まれた直後に凶暴化したという話だ」

 具体的な話だと、空から真っ黒に染まっている球体が降りてきて、そのままモンスターを飲み込んだらしい。
暫くして出てきたモンスターは、所々身体が黒く染まり、酷く興奮していたらしい。

「この事態は一刻も早く解決せねばならない。そこで、各冒険者諸君に各地に向かってもらう」

 どうやら、各地方の安全確保と様子見のために冒険者を向かわせるらしい。
もちろん、全員強制参加で、しかもその地方の依頼も怪しいものは解決してくるよう指令を受けた。
もちろん、本部のある街にも防衛のために何人か残るらしいが、僕らは遥か北にあるノヴィグレンに向かうように言われた。

「ノヴィグレンって、確か鉄壁の城塞だよね」
「鉄で出来た門や塀、頑丈な石造りの城があるぜ」
「どっちにしろ、明日出発だから寝ようよ…」

 眠気が消えなかった二人は、指令を聞いて解散してすぐにベッドへと戻った。


 翌朝、ノヴィグレンまでは随分と遠いので食べ物などの旅支度をいつもより多めにし、更に北へ向かうので防寒具も用意する。
ノヴィグレンは極寒の街でも有名だ。

「んじゃ行こうか…」

 馬の鞍に、鞄をぶら下げて乗り込むとすぐに町を出た。
街の北側へ行くには、街の南門から、ぐるっと北へ回らなければならない。
 面倒なので、北門があればいいと思ったのだが、実は作られてはいたが瓦礫で埋まっていた。
僕が異世界に来る前に、モンスターの襲撃で塞がってしまったらしい。
至急復旧を急いではいるが、最近の連続したモンスターの襲撃であまり進んではいなかった。

 暫く、街道を進むと木々が生い茂る山が見えてきた。これを越えて、ノヴィグレンへ向かうための船に乗り込む。
船は、山を越えてずっと先にある港町に停泊しているため、まずはそこまでずっと馬を走らせなければならない。
ただ動くだけなら慣れたが、モンスターが多数居るために油断が出来ないのが、少し疲れる点だ。

 山も、ちゃんと山道は作られてはいる。
領地の北側へと向かうには、この山を良く通るからだ。

 ここで異世界の構造を説明すると、大体五つの大陸に分かれている。
それぞれが別々の統治者がおり、度々衝突も起こる。
よく軍事力に任せようとする気性の荒い国は二つ。
最も北にある国、アラグエル。
そして最も東にある国、ルビエド。

 その他の国は、平和協定を結んでいるので戦争はしないらしい。
最も南にある国と、最も西にある国。
そして、その4つの国に囲まれて中央に存在するのが僕か降り立った国、唯一世界樹がそびえ立つグウェンザンド。
その五つの大陸の中も、北部や西部などに分かれているので覚えるのは大変だ。

 今回向かうのも、グウェンザンドの北部にある最も巨大な街だ。
 モンスターやその他の敵に備えられた鉄壁の城塞。
鉄でできた門に、鋼で作られた武器と防具。
特に兵士の数が多い、軍事力が巨大な国だ。

 少し物騒だが、あくまでも防衛が目的のようなので冒険同盟の者なら自由に出入り可能だ。
 僕もグウェンザンドに来てから、自宅のある街にしか入ったことがないため、少し楽しみだ。

 男子は必ず、子供の頃はそういった騎士などに憧れたと思う。
それと大体一緒。
ただ道のりだけが苦痛だ。

「よし、登るぞ。そんなに坂はきつくねぇけど、馬にあんまり慣れてねぇんだから気を付けろよ」

 アルが先頭をかって出て、ゆっくりと蛇行している山道を登り始めた。
 馬に乗っていると、かなりの振動が伝わってくるためにお尻や腰が痛くなってくるのだが、何とかそれを緩和しつつ登っていった。

途中で休憩を挟みつつ、アルと雑談を交わす。

「そういやアレンって好きなもん何?」
「好きなもんって言われても…色々あるよ」

  こういったくだらない会話でも、僕は安心できた。
なんだかんだ、僕は生まれ育った街に帰りたいのに、いまだに帰れていないのだ。
方法を一応、探してはいるものの、有力な情報もなし。
 一番効果的なのは、僕が転生したあの世界樹に、もう一度登ってみることだが…
流石にモンスターの巣窟となった世界樹には近付けない。
 昔はモンスターの嫌がる成分を作り出して街を守っていた聖樹なのに…。

 そう思いながら僕らはひたすらに上を目指した。
天辺の木々が生えていないキャンプ地に着いた頃には、辺りはオレンジ色に、そして夕日が輝いて僕らを照らしていた。
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