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第二章 後悔はしたくない
秘密を明かしたその後は
しおりを挟むレオンは、嘘をついたことを謝った後で真実を話し始めていた。
「……僕は、本当は旅してたんじゃなくて…気が付いたら、世界樹の天辺にいたんだよ」
「世界樹って…悪魔の樹だぞ、あそこ…モンスターがうじゃうじゃいるだろ」
レオンは真実だということを語るが、俺には到底あんな地獄から街まで来れたとは思えなかった。
そもそも、レオンと初めて会ったときには食べ物も、武器も何も、所持品はなかったのだ。
ただ一つ、布にくるめた荷物を除いては。
それがどうやってモンスターの大群をくぐり抜けてきたのか。
「…僕はまず、気が付いたら世界樹にいて…世界樹の天辺は小さな切り株のようになってたんだ。天井は世界樹の葉っぱで隠れてたけどね」
「その空間で目が覚めて、んで降りてきたってことか?でもモンスターやばいだろ、生み出してる元凶なんだから」
「だから、乗り切るためにこれを使ったんだよ」
レオンは俺が見た包みを取り出した。今までこれは街の自室に置いてあったはずだが、今回は長旅になるはずだったので持ってきていたらしい。
俺も、まだ中身は知らない。聞いても今まで流されていた。
レオンがゆっくりと布を取り外す。
中には柄と先端が金、そして鞘の部分が赤色で不思議な模様が描かれた二本の剣が横たわっていた。
「これが、世界樹で見つけた剣だよ。これのおかげで街まで来れた。名前は、カーテナ」
「カーテナ?…聞いたことねーけど…こんなのが世界樹にあったのかよ」
「伝説に、昔の世界樹は世界を闇から守る聖樹で、その内部には沢山の財宝と、聖剣が眠ると言われていますが…」
「僕はこれを、彼から貰ったんだ。僕は、その彼を探すのと、帰る方法を探すために冒険者になったんだ」
そういってレオンがカーテナを鞘から抜く。
カーテナの刀身は新品のように銀に輝き、刀身にも不思議な模様が金で刻まれていた。
言葉のようにも見えるが、俺達には全く意味はわからない。
「カーテナを渡してくれたのも、何か意味があると思うんだ」
「その彼ってのが知ってるんだな?それと、お前が何処かに帰る方法も?」
「帰る方法と言いましたが、具体的には何処にでしょうか?」
「その説明が難しいんだよ…なんていうんだろ、こことは全く違う世界かな」
モンスターも居らず、剣だって争いだってない所だよ、とレオンは説明するが、そんな世界があるのか俺達には疑問しか残らなかった。
ただ、そういうのだから信じるしかない。
「…それじゃあそれを探すのと、まずはノヴィグレンを助けねぇとな。作戦はどうする?」
「そうですね…モンスターの大軍は昼間の明かりを嫌いますから、昼間に上陸を…」
「ううん、時間は関係無いよ。僕が突っ込む」
「はぁ!?」
至って真面目な顔で唐突に言い始めたレオンが、納得させるために説明をまた始める。
「まずこの剣はSSクラスでしょ」
カーテナの剣を軽く指先で二度叩くと、軽い音とともに小さな画面が浮き出てきた。
物なら何でもこうやってステータスが見れる。
レオン(僕は、ゲームそっくりで凄くビックリしたけど、アルやアリーシャ、この世界の人は普通らしい)
画面にはこう記載されていた。
【名称】慈悲の剣:カーテナ
【ランク】SS:神剣
【武器効果】雷属性、アタック+300%、ガード+300%(以下も全ステータス+300%が続く。この剣まじで化け物だ)
【武器装備可能ランク】現在レオン=エルサレムのみ可能
【備考】自動戦闘ナビオート起動(これは初めて持ったとき剣術がまるで分からなかった場合、この剣が剣術を無理矢理覚えさせる機能らしい。いわゆる強制記憶装置だそうだ。俺には全く分からねぇ)
以降もレオン以外は理解できない言語が続き、途中で見るのは断念した。
「…それで僕のステータスは…」
右手を空中を二度軽く振ると、これで今度は自分自身のステータスが浮き出てくる。
俺達はレオンに見るように促され、覗き込んだ。
【名称】レオン=エルサレム
【年齢】17歳
【ステータス一覧】
・雷耐性Lv.MAX
・炎耐性Lv.MAX
・水耐性Lv.MAX
・木耐性Lv.MAX
・HP数値限界突破、測定不能
・MP数値限界突破、測定不能
・アタック数値限界突破、測定不能
・ガード数値限界突破、測定不能
以下も続き、全て限界突破。及び測定不能で最強だった。
俺達はそのステータスを見て信じられず、驚愕し続けた。
「…その、ここにきてから…最初からこれなんだ。いわゆる最強ステータス…」
「ま、まじでか…見たことねぇよ…」
「…以前に英雄に会ったときにはステータスを見せて貰いましたけど…比べ物にならないくらい凄いです…」
「これなら、僕は殆ど死なないから…突っ込んでも平気でしょ」
にこっと先程まで見せなかった笑顔を見せたレオンが、新しく見せてきた剣と、今まで使っていた低ランクの剣を交換して、カーテナを背中にしまった。
二本の剣が背中で光り、妙な頼もしさがあった。
「とりあえず安全そうな場所に上陸しよう、二人は僕の周りからあまり離れないでね」
そういうと一足先にレオンが船へと戻る。
アリーシャも頷いて船をまた魔法で包み込む呪文を唱え始めたので、俺も慌てて乗り込んだ。
レオンの最強ぶりはよく分かった。
これなら、ノヴィグレンを助けられるはずだ。
少しだけ頼るのが情けないが、俺も出来るだけ助けられればと思った。
静かに舵を取って、モンスターの姿が見えない海岸へと向かう。
城まではずいぶんな距離がある。
最強のレオンが居ても、城に着くまでは大量のモンスターが居るので骨が折れそうだ…。
◯後書き
今回登場した慈悲の剣、カーテナは実在しているそうです。見た目もそのままですので、イメージが知りたい方は検索をしてみてください。
金色がとても綺麗で魅力的な剣です。
なお、剣の歴史とは特に関係はないです。
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