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第二章 後悔はしたくない
運命の出会い
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ただいま地下内にて、アイゲルニウムと呼ばれるスライム型大量ギョロギョロ目玉モンスターと交戦中。
思っていたよりもすっぱりと斬れるアイゲルニウムを、調子よく斬り続けて約五分。
切断されて分裂したアイゲルニウムが、小さな個体となって復活しているせいで永遠に終わらなそうな戦闘が未だに続いている。
「こいつら分裂すんじゃねぇか!斬っても無理だろこれぇっ!」
流石にへばってきたのか、アルが剣を振り上げつつ悲鳴をあげた。
僕らが斬っても、アイゲルニウムは分裂して大小様々な個体へと生まれ変わって数が増えるだけだ。
どうにかして、アイゲルニウムを跡形もなく消さなければならない。
洞窟内でなければ、安全に使える技もあるが、残念ながら地下という場所とじめじめとした水溜まりのせいで、僕らまで痛手を受ける可能性が高く、断念した。
「もう少しで扉が開きますから、持ちこたえてください!」
大きな装飾が施された鉄の扉を開ける呪文も、もう終盤のようだがぞろぞろと戦闘開始時点よりモンスターが増えてきたせいもあり、アリーシャにも焦りが見える。
「ああもう仕方ねぇ!ちょっと熱いけど気を付けろよ!」
アルが腰辺りの鞄から何かを取り出すと、それをアイゲルニウムの群れへ向かって放り投げ、それを銃で撃ち抜いた。
銃まで持っていたアルもその手際も驚いたが、撃ち抜かれた物体がアイゲルニウムの群れの中心へと落ちた瞬間、辺りが真っ赤な炎で爆散した。
「よし!どうよ、この炎属性魔元素を詰め込んだ手榴弾は!」
「あれ、手榴弾だったんだ…」
「おう、爆発性質を利用したお手軽お安い爆弾だな。単純に魔元素っていう魔法の元になるもんを瓶に突っ込んだだけ」
見れば殆ど炎でアイゲルニウムが消滅し、残りは僅かとなっている。
こんな状況でも丁寧に説明してくれるアルだが、最近聞いているとこの異世界がどういうものか分からなくなってくる。
――本当にゲームみたいな仕組みだなぁ。
「とりあえずまだモンスターは沸いてやがるが、これで時間稼ぎは十分だろ!」
「はい、もう開きました!二人とも、中へ!」
アリーシャが呪文を言い終わり、扉の鍵が解除されて大きく開いた扉の空間内へ飛び込んだ。
「ここなら、結界が張ってありますからモンスターは入ってこられないかと」
「破られる心配は?」
「恐らくないでしょう、最高級の結界術ですし、王族を守るためのものでしたからね」
「それじゃあさっさと休めるとこと、避難民探そうぜ」
剣や銃をしまい、さっきとは変わって加工された内装となった地下を進む。
いくつか個室となっていて、壁には小さな石部屋が順に並んでいる。
中には長年使われていないのか、薄汚れて埃の溜まったベッドもあった。薄いマットレスで毛布などもない。
「これじゃあ十分に休めそうもねぇな…横になれるだけマシだけどよ…」
「管理も、もう随分長いことしてませんから…結界が作動していても中は廃墟そのものなんです」
「人が居れば、もう少し生活感ありそうだし…もっと奥かな」
「恐らくそうですね、そう遠くはないですよ?もっと下にも階がありますし、食堂や風呂場も一応あります」
ここから下へと向かうのは簡単なようで、螺旋階段をひたすら降りていくと、同じような造りの階が現れた。
何階か地下に向かって作られているようで、避難するには充分な規模だったが、相変わらず人が見当たらない。
「避難してる奴等、どこ行った?」
「居るとは思うんですが…」
「……あんたたち、冒険者?」
避難民を見つけるため声かけをして部屋ごとに回っていると、寝室の一室から若々しい声がした。
「言っとくけど、此処にいるのはアタシだけだよ」
真っ赤な長髪の赤髪をポニーテールでまとめ、背中に弓を背負った同い年ほどの若い女性が居た。
言葉遣いは女性らしいが、語気が鋭く、目も緋色の綺麗な瞳だが、警戒しているようで眼光が鋭い。
ふっくらとした唇に、ほっそりとした体型で可憐だが、どうやら強気な少女のようで堂々と表へ出てきた。
「ここに逃げてきたのか、何なのかは知らないけど。元々街の大半の人が外に働きに出てるから、大して避難した人は居ないよ。大抵殺されちゃったし、私だって城に忍び込んで遊んでただけ」
面倒そうに言う少女に僕らは何があったのか問いかけた。
「ただの襲撃だよ、男が少なくなってたから守りきれなかった。あ、私はラミリア。家名はないよ、孤児だから」
「…ラミリアね、僕はレオン=エルサレム。このツンツン頭がアトラス=ヴァレンチノ」
「ツンツンじゃねぇよっ!」
「…私はアリーシャ=ミネルバ」
「宜しく。まあ長い付き合いにはならないと思うけどさ、私を助けに来たんでしょう?この後の計画とかあるの?」
「えっと…僕達、そういえば入る事しか考えてなかったね」
「まあレオン居ればモンスターはどうにかなっけど…まずは休憩しねぇ?俺、ラミリアと話してぇ!」
いつも以上に目を輝かせているアルに、小声で注意を促す。
「…何、どうかしたの?いきなり…」
「だってドストライクだから…ラミリア、俺の好みにピッタリなんだって!」
「つまり…?」
「俺、あの子に一目惚れ?しちまった」
「………ああ、悪い癖が…」
変な態度を取り始めたので何となく察してはいたが、やっぱり出てしまったようだ。
アルはどうやら、女好きというか…一目惚れというものが極端に多い。性格からなのか、それとも趣味なのか分からないが、しょっちゅう女性を見てドストライクだと言うことがある。
「これは絶対に運命の出会いだって!俺、絶対ラミリア振り向かせるっ!」
ぐっと拳を握るアルを何とか宥め、不審そうに見てくる女性二人を連れて休憩できる寝室へと移動した。
アルは身勝手にラミリアと同室がいいと言い出したので、別室に隔離して鳩尾を一発殴ると、すぐに大人しくなった。
―つまりは、そういうことである。ごめん、アル。
心で合掌し、とりあえず謝っておいた。
思っていたよりもすっぱりと斬れるアイゲルニウムを、調子よく斬り続けて約五分。
切断されて分裂したアイゲルニウムが、小さな個体となって復活しているせいで永遠に終わらなそうな戦闘が未だに続いている。
「こいつら分裂すんじゃねぇか!斬っても無理だろこれぇっ!」
流石にへばってきたのか、アルが剣を振り上げつつ悲鳴をあげた。
僕らが斬っても、アイゲルニウムは分裂して大小様々な個体へと生まれ変わって数が増えるだけだ。
どうにかして、アイゲルニウムを跡形もなく消さなければならない。
洞窟内でなければ、安全に使える技もあるが、残念ながら地下という場所とじめじめとした水溜まりのせいで、僕らまで痛手を受ける可能性が高く、断念した。
「もう少しで扉が開きますから、持ちこたえてください!」
大きな装飾が施された鉄の扉を開ける呪文も、もう終盤のようだがぞろぞろと戦闘開始時点よりモンスターが増えてきたせいもあり、アリーシャにも焦りが見える。
「ああもう仕方ねぇ!ちょっと熱いけど気を付けろよ!」
アルが腰辺りの鞄から何かを取り出すと、それをアイゲルニウムの群れへ向かって放り投げ、それを銃で撃ち抜いた。
銃まで持っていたアルもその手際も驚いたが、撃ち抜かれた物体がアイゲルニウムの群れの中心へと落ちた瞬間、辺りが真っ赤な炎で爆散した。
「よし!どうよ、この炎属性魔元素を詰め込んだ手榴弾は!」
「あれ、手榴弾だったんだ…」
「おう、爆発性質を利用したお手軽お安い爆弾だな。単純に魔元素っていう魔法の元になるもんを瓶に突っ込んだだけ」
見れば殆ど炎でアイゲルニウムが消滅し、残りは僅かとなっている。
こんな状況でも丁寧に説明してくれるアルだが、最近聞いているとこの異世界がどういうものか分からなくなってくる。
――本当にゲームみたいな仕組みだなぁ。
「とりあえずまだモンスターは沸いてやがるが、これで時間稼ぎは十分だろ!」
「はい、もう開きました!二人とも、中へ!」
アリーシャが呪文を言い終わり、扉の鍵が解除されて大きく開いた扉の空間内へ飛び込んだ。
「ここなら、結界が張ってありますからモンスターは入ってこられないかと」
「破られる心配は?」
「恐らくないでしょう、最高級の結界術ですし、王族を守るためのものでしたからね」
「それじゃあさっさと休めるとこと、避難民探そうぜ」
剣や銃をしまい、さっきとは変わって加工された内装となった地下を進む。
いくつか個室となっていて、壁には小さな石部屋が順に並んでいる。
中には長年使われていないのか、薄汚れて埃の溜まったベッドもあった。薄いマットレスで毛布などもない。
「これじゃあ十分に休めそうもねぇな…横になれるだけマシだけどよ…」
「管理も、もう随分長いことしてませんから…結界が作動していても中は廃墟そのものなんです」
「人が居れば、もう少し生活感ありそうだし…もっと奥かな」
「恐らくそうですね、そう遠くはないですよ?もっと下にも階がありますし、食堂や風呂場も一応あります」
ここから下へと向かうのは簡単なようで、螺旋階段をひたすら降りていくと、同じような造りの階が現れた。
何階か地下に向かって作られているようで、避難するには充分な規模だったが、相変わらず人が見当たらない。
「避難してる奴等、どこ行った?」
「居るとは思うんですが…」
「……あんたたち、冒険者?」
避難民を見つけるため声かけをして部屋ごとに回っていると、寝室の一室から若々しい声がした。
「言っとくけど、此処にいるのはアタシだけだよ」
真っ赤な長髪の赤髪をポニーテールでまとめ、背中に弓を背負った同い年ほどの若い女性が居た。
言葉遣いは女性らしいが、語気が鋭く、目も緋色の綺麗な瞳だが、警戒しているようで眼光が鋭い。
ふっくらとした唇に、ほっそりとした体型で可憐だが、どうやら強気な少女のようで堂々と表へ出てきた。
「ここに逃げてきたのか、何なのかは知らないけど。元々街の大半の人が外に働きに出てるから、大して避難した人は居ないよ。大抵殺されちゃったし、私だって城に忍び込んで遊んでただけ」
面倒そうに言う少女に僕らは何があったのか問いかけた。
「ただの襲撃だよ、男が少なくなってたから守りきれなかった。あ、私はラミリア。家名はないよ、孤児だから」
「…ラミリアね、僕はレオン=エルサレム。このツンツン頭がアトラス=ヴァレンチノ」
「ツンツンじゃねぇよっ!」
「…私はアリーシャ=ミネルバ」
「宜しく。まあ長い付き合いにはならないと思うけどさ、私を助けに来たんでしょう?この後の計画とかあるの?」
「えっと…僕達、そういえば入る事しか考えてなかったね」
「まあレオン居ればモンスターはどうにかなっけど…まずは休憩しねぇ?俺、ラミリアと話してぇ!」
いつも以上に目を輝かせているアルに、小声で注意を促す。
「…何、どうかしたの?いきなり…」
「だってドストライクだから…ラミリア、俺の好みにピッタリなんだって!」
「つまり…?」
「俺、あの子に一目惚れ?しちまった」
「………ああ、悪い癖が…」
変な態度を取り始めたので何となく察してはいたが、やっぱり出てしまったようだ。
アルはどうやら、女好きというか…一目惚れというものが極端に多い。性格からなのか、それとも趣味なのか分からないが、しょっちゅう女性を見てドストライクだと言うことがある。
「これは絶対に運命の出会いだって!俺、絶対ラミリア振り向かせるっ!」
ぐっと拳を握るアルを何とか宥め、不審そうに見てくる女性二人を連れて休憩できる寝室へと移動した。
アルは身勝手にラミリアと同室がいいと言い出したので、別室に隔離して鳩尾を一発殴ると、すぐに大人しくなった。
―つまりは、そういうことである。ごめん、アル。
心で合掌し、とりあえず謝っておいた。
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