転生して最強になった青年の異世界冒険

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第二章 後悔はしたくない

ノヴィグレン脱出作戦

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 翌朝、広間に集まった僕達はどうやってモンスターの群れを突っ切るか、を考えていた。

「いくらレオンが居ると言っても、体力は無限じゃねぇもんな」
「僕が最強なのは、人間の中でってだけだし…モンスターは分かんないからね」
「そもそも、どうして最強なのよ。ステータス見ても本物だけど、いきなりそうなってたのはおかしくない?」
「…考えても分からないことは時間の無駄です、作戦考えましょう」

 ラミリアには、脱出に支障が出ないように僕が居れば随分な戦力になる、そして最強ステータスだと言うことは教えてある。
 本当はむやみに教えるのはいけないとは思うが、ラミリアが『どうせ行くとこないから、無事に脱出できたら冒険者として付いてく』と言ったため、どうせ仲間になるなら教えていいのではということになった。

 そしてノヴィグレンを出来ればモンスターを全滅させて救いたいのはやまやまだが、入ってこられた時はたまたまモンスターが城に集中していたというだけで、今回は集中しているモンスターの中を進まなければ出られない。

 鉄壁のノヴィグレンを破壊し尽くした程の数が居るため、正直僕らだけで救えるとは思えないのでとりあえず脱出を優先したというわけだ。
 しかし、作戦が思い付かず難航している。

「…全員で固まって突っ込んで、蹴散らして道を作るってのはどうだ?」
「…それ、多分全滅ルートよ」
「それじゃあ皆さんの回りに結界を張るというのは?」
「…結界って、地面に固定するんだから移動は不可能じゃなかったっけ…」
「正確には空間に張るので、不可能ではないんですけど…移動するとなると、魔法を追加でかけないといけないので随分な消耗になります」
「じゃあアリーシャの身体を考えると無理だね…」

 ただでさえ、此処に来るまでに何種類か魔法を使わせてしまったアリーシャに、また頼るわけにはいかず僕は唯一思い付いた作戦を提案する。

「……じゃあ、僕が囮になる」
「はぁ!?」最強でも当然、皆は顔をポカンとさせる。
「僕が一人で出ていけば、モンスターは僕を追いかけるはずだ。それで引き連れていけば城の回りはがら空きになって余裕で皆は船まで行けるでしょ」
「いやお前は?」
「…何とか撒いて船に行くよ、すぐ出航できるように準備しておいてくれたらいいんだけど」
「…分かりました、私がしておきます。出航時にレオンさんが入れるように、結界の一部はわざと穴を開けておきますね」

これで話が纏まり、いざ出陣となると思いきや。

「ちょっと待って。私も囮になる」

唐突にラミリアが言い始め、落ち着くはずだった話も更にヒートアップした。

「お、おい!ラミリアはレオンと違って最強じゃ…」
「知ってるわよ。だからこそ行くの。レオンがモンスター全部引き寄せるなら、私だってでしょ」

 そう言えば、ラミリアの武器は『弓』だった。
これなら、僕がモンスターを引き連れつつ、遠くから弓矢で射抜けば安全かつ、モンスター退治も出来るというわけだ。

「…それなら俺も出来るだろ、銃があるんだし」
「駄目よ、銃は発射音が大きいからモンスターが此方に気を取られて来てしまう可能性も高いから。弓なら遠距離範囲も大きいし、静かに射てるわ」
「…それなら、確かに勝機はあるかも。一応、目的はノヴィグレンの救出なんだし…モンスターが消えればより安全だよね」
「決まりね。アトラスとアリーシャは船を守ってて。幾らなんでも全部のモンスターが此方にまとまるか分からないし」
「りょ、了解」

 かくして作戦は決まり、僕が特攻してラミリアが遠距離狙撃、アルとアリーシャは船の番人となった。

 各一人ずつ、何かあった時のために発煙筒を配っておいた他、様々な物資を渡して備える。

 ゆっくりと結界の中から、外を覗いてみると地下の廊下にはもう既にモンスターは居なくなっていたため、とりあえず地上近くまで全員で移動した。
 どうやらモンスターは、地下から地上への出入り口に固まっているようで、それを確認すると僕は一気に外へと飛び出した。
 同時にモンスターは血走った目を僕に向け、様々な種類のモンスター達が一気に追いかけてくる。
 それを見ながらとにかく走り、他の皆が抜け出す隙を作り出すと、アルとアリーシャは海岸方向に、ラミリアは弓での狙撃のために高い場所の物陰へと走る。

 今のところ、上手くモンスターは僕に付いてきているので向こうは安全だ。

「こっちに来い!」

 少し離れた場所のモンスターも、見つけ次第呼んで引き寄せる。
 すると、シュンと風を切るような音と共に、モンスターの頭部に矢が突き刺さって光の粉と化した。
 ラミリアの狙撃が始まったのだ。

 それを合図に、僕も体制を変える。
逃げから、攻めに変えて聖剣『カーテナ』を鞘から抜く。
 これには雷属性が付いていて、地上なら使用可能なある技がある。

「よし……」

 発煙筒を投げ、技を発動させることを知らせると僕は一気に地面に『カーテナ』を突き立てた。
 同時に力を込め、技の発動をイメージする。

 基本的な技発動方法はイメージが大事だ。特にカーテナは、そのだ。

 僕は頭の中で、この場にいるすべてのモンスターを消滅させられる技をイメージする。

 片膝を立てて剣を突き立てている僕は無防備だ。一刻も早く発動しなければならない。その間、無防備な僕をラミリアが弓でモンスターを近付けないようにしてくれていた。その間、イメージを整える。

「……貫け!!」

 叫ぶと、僕のイメージした通りに剣から雷が迸り始める。
地面に突き立てたカーテナは、徐々に発する雷の量が増え、地面の中で

 一気に地面に亀裂が入り、その亀裂からも雷が空に向かって飛び出す。
 剣から一番強く雷が送られている中心には、何やらギラギラと光る『目玉』があった。
正確には、『目玉らしきもの』だが、それはどんどん雷を吸収して巨大になっていく。

 ――巨大な雷で出来た龍がそこに居た。

 牙を剥き出して、雷のエネルギーを存分に喰らいながら、雷が落ちた時よりも凄まじい低い唸り声を上げている。
 カーテナは、『使用者がイメージした通りの現象を起こす』という性質を持っている。
 最も、雷属性のみのイメージだが、イメージが強ければ強いほど、その威力も増していく。

 雷を発しながら、その龍は地面から這い出て辺りのモンスターを焦がしながら消滅させた。
 時には尾を振って感電させながら蹴散らし、そして牙でモンスターを喰らい尽くす。

 あっという間に、大群は消滅して、『殺し尽くした』龍はすぐに空気中にエネルギーを拡散して消えていった。

 後に残るのは、影響を受けないよう隠れていた皆と、カーテナを握りしめていた僕。
 そして地面の焦げやモンスターの消滅した証拠である光の粉が、辺りを舞ってノヴィグレンを彩っているだけだった。
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