太刀に宿る守護霊とその上位の神々に認められたので、弟と妹を殺された兄ちゃんは仇の相手である妖鬼に復讐を誓います!

アンジェロ岩井

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新しい時代の守護者編

赤ん坊の襲来

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「ふふ、素晴らしい眺めだ。やはり、奴らがやられそうになっている場面を見るのは気持ちが良いな」
戦雲玄竜は腕を組みながら、東京の街の真ん中で十人と巨大な赤ん坊とが戦う場面を目撃する。
それから、自分に貸し出された玉藻の配下に向き直って本当の主人であるかの様な尊大な調子で言った。
「おい、お前の主人に感謝すると伝えよ。今後は我々の組織と妖鬼とが協力して理想の社会をつくる事になるだろうからな。彼がそう言ってタバコを吸おうとした時だ。
彼が口に咥えていたタバコはサーベルによって弾きと落とされてしまう。
彼がその方向を振り向くと、そこには日本に似つかわしくない西洋の鎧を纏った男たちが五、六人。
本来の彼らの特徴である馬に乗っていないのはここが市街地だからだろうか。
そんな事を考えていると、騎士が腰に下げていた直剣を抜いて戦雲玄竜と向き合っていく。
「戦雲玄竜だな!?我々は警視庁、闇祓い課または天道騎士団のものだッ!大人しく来てもらおうか……」
「フフ、大人しく来いと言われても来る人なんていませんよ。あなた方は馬鹿なんですか?」
彼が嘲ると、一人が誇りを感じたと思ったのか大きく剣を振り上げて玄竜を襲っていく。
だが、玄竜は何故か刀を避けようとしない。と、言うのもその騎士が放った剣はたった一人の時代外れの侍の刀によって防がれてしまう。
彼は巨大な鉈の様に太くて硬い巨大な槍の先端を突き出すと、そのまま男の持っていた剣をあろう事か、槍で受け流し、恐らく今までに見た事がないであろう、鎧の隙間を瞬時に見抜いて西洋の甲冑を纏った兵士を血に染めていく。
西洋の甲冑を身に纏った兵士は大きな叫び声を上げるのと同時に大きな声を上げて地面の上に大の字になって倒れていく。
「ふん、笑止千万!少しの間でこの国の兵の質も、量も落ちたものよのう」
男はそう言うと地面の上に倒れた男の兜を取ってその顔を確かめる。
「なんと、まだ若造ではないか!よもや、この国では若い人間もこの様な格好をしなければ飯が食えぬとは情けない世の中じゃ……なぁ、そうは思わぬか?」
彼は破魔式を使おうとしていた四人の西洋の鎧を着た男たちの耳元で尋ねる。あまりにも小さな声。あまりにも低い声であったが、男たちの気を引くのには十分過ぎた。
男は一斉に四人の人間の鎧兜の隙間を突いて殺していく。
「立派なのは格好だけなのか、あまりにも脆弱よ……」
彼はそう言うと、槍を振り回して肩の上に担ぐ。
すると、背後から拍手の音が聞こえる。彼が振り向くと、そこには戦雲玄竜が手を叩いていた。
「素晴らしい。流石は私の用心棒だ。槍を持たせたら、天下無双という所かな?」
その言葉を聞いて武者は残念そうに首を横に振る。
「いいや、槍の腕前ならば徳川の本多の方が上じゃった。儂の腕がもう少しあれば、憎き徳川の首を取れたのじゃが……」
彼はどうでも良いという意思を示した後に、戦国の世界へと既に意識を旅立たせた男を見つめる。
どうやら、男の頭は既に関ヶ原、大坂の陣、天草の乱辺りを漂っているのだろう。
全く亡霊というのは過去ばかり見返して困る。
彼は手元から煙草を取り出し、胸ポケットからライターを取り出して手で火元を隠しながらタバコに火をつけていく。
タバコを吸い、近くの家の壁にもたれながら、その向こうで繰り広げられている十人の男女の戦いに目を向けていく。
やはり、彼ら彼女らはたった一体の赤ん坊に手も足も出ずにやられているらしい。
赤ん坊は不機嫌そうな涙声を上げながら、風太郎一行を襲っていく。
この様な巨大な赤ん坊が自分たちに向かって牙を向けるとは思いもしなかった。
だが、今度こそやるしかあるまい。彼は風の破魔式を利用して赤ん坊の懐に突っ込もうと目論む。
だが、赤ん坊は本当の風の様に素早く迫る風太郎の力を持ったとしても、その動きは見抜かれて地面へと叩き落とされてしまう。
「クソッタレ、この赤ん坊正気じゃあねぇや!赤ん坊じゃあなくて、ゴジラでも相手にしているかの様だッ!」
「……ゴジラの方がなんぼかマシだよ。ゴジラは怪獣だけれども、こいつは一応、元は人間だからね」
同時に叩き落とされた海崎の突っ込みに、彼は地面に体をぶつける寸前だというのに吹いてしまう。
地面にぶつかり、直接の怒りが彼を襲った時も彼は先程の海崎の冗談が忘れられない様に思われた。
風太郎は地面から体を起こすと、また太刀を構えて、今度は氷の破魔式を使用して赤ん坊の元へと向かう。
「氷結牢!オレの氷の牢獄に入って永遠に大人しくしてろォォォォォ~!!」
風太郎はそう叫んで氷の牢を作り出したが、赤ん坊にはまるで効果がない。
彼は易々と氷の牢獄を破壊して十人の仲間の元へと向かっていく。
「クソッタレ、オレを食べるつもりか!?」
赤ん坊の魔の手は部長へと伸びたらしい。日下部暁人部長は巨大な赤ん坊の魔の手に落ちて食べられそうになっていく。
だが、彼は自身の体を発温させて赤ん坊が持てない温度にして自身を放り投げさせていく。
日下部暁人部長は地面の上に放り投げられたが、同時に赤ん坊の不興を買ってしまったらしい。
赤ん坊は悲鳴を上げながら、日下部暁人部長へと向かっていく。
どうやら、先程掴み上げた時に赤ん坊でもてない熱さだった事が癪に触ったらしい。
日下部暁人は大きな声で迫り来る赤ん坊を迎え撃つ。
「いくら強く立って、所詮は赤ん坊。それに怪獣映画だったら、怪獣っていうのは最後は倒れなけりゃあいけねーんだぞ」
そう言うと、彼は刀を構えて赤ん坊に向かって斬りかかっていく。
今度は高温に上がった刀で斬りつけていく。
これも効果はてき面だったらしい。赤ん坊は悲鳴を上げて地面の上をのたうち回っていく。
そうして、彼がトドメを刺そうと赤ん坊の顔の上に乗った時だ。
突如、彼の目の前に得体の知れない黒い物体が浮いていく。
黒い物体は突如、日下部暁人に向かって攻撃を繰り出していく。
日下部暁人は咄嗟に丸くて黒い物体を斬り刻んだが、また別の黒い物体が迫った事により、彼はその黒い物体が何なのかを知った。
黒い物体は炎を吹きながら、暁人や他の仲間たちの元に向かっていく。
どうやら、この火炎を放つ黒い物体こそがこの赤ん坊の攻撃手段であるらしい。
風太郎たちは気を引き締め直して、巨大な赤ん坊に向かって斬りかかっていく。
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