いじめられ勇者が世界を救う!?〜双子のいじめられっ子が転生した先で亡国の女王を助け、世界を救うと言うありふれた話〜

アンジェロ岩井

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第一部 第三章 ドラゴンを従えし王

王家の山 パート5

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ディリオニスはもう一度攻撃を繰り返す。だが、当たらない。彼女の持つ剣によって攻撃を流されてしまう。
もう一度剣を振るう。だが、彼の放った剣劇はエヴァの剣によって防がれてしまう。ディリオニス山頂近くの山道で剣を構えていると、エヴァが剣を構えて、こちらに向かって微笑む。
毒が塗られているだけにエヴァが剣先を向けると、ディリオニスは無意識に体を震わせてしまう。
勿論、ユーノに頼めば解毒の魔法にあたらせてもらえるだろうが、それでも毒に当たらないに越した事はないだろう。
ディリオニスが自分の口で魔法が呟けないかと考えていると、エヴァがそれを見透かしかしたかのように魔法を詠唱して毒の液体を飛ばす。
ディリオニスはその場から飛び上がりる事によって、毒を受ける事を回避したのだが、今度も上手くいくとは限らない。
エヴァは剣を軽く手で振りながら、ディリオニスに向かって温かそうな笑みを向けていた。最も、あの笑みの裏に隠されているのは恐怖の感情のみだろうが。
ディリオニスは歯を噛み締めて、エヴァの攻撃に備えた。
もう一度毒の液体を飛ばす可能性もあったからだ。だが、いくら身構えても麗しき王女は攻撃を仕掛けてこない。
何事だろうかと身構えていると、突如、彼女は誰もいない背後の空間に向かって剣を振るっていた。
何もない空間で空気が振動していくのを女王に付き従う勇敢なる騎士は見届けていた。すると、何もない空間からユーノ・キルケが足をよろめかせて現れた。
ユーノは顔を引きつらせつつも、人差し指を舐めて、落ち着いた声で異世界の女王に尋ねた。
「成る程、私の透明魔法を見破ったのですね?流石……と言うべきでしょうかね」
「ええ、あなたは先程まで、私と戦っていましたが、突然姿を消した。透明になる魔法を使ったのでしょう?その際に身を隠して、私に近付いた……見事言うべき手腕だわ」
と、エヴァは透き通るような綺麗な声で言った。天使のような声というべき比喩表現が最も似合う声なのかもしれない。
きっと、こんな声でこの世界の人々の支持を集めたのだろう、とディリオニスが考えていると、エヴァは先程と同様の声で話を続けていく。
「けれど、その後がいけなかったのね。この男のピンチを知り、あなたは突如として私に近付き、背後から攻撃をしようとした……そうなのでしょう?」
エヴァの言葉をユーノは首肯する。だが、ユーノはその後に少しだけ語気を強めてせめてもの反論を試みた。
「そうよ。でも、一つだけ違う所がありましてよ?」
「何なのかしら?」
「それは、あの時に助けるためだけではなく、事よォォォ~!!」
ユーノは小さな杖を振り上げて、緑色の弾を作り出し、エヴァに向かって発射した。緑色の弾と恐ろしい程の薄味の悪い色の液体が空中でぶつかり合う。
最終的に緑色の弾はエヴァの放った毒を打ち消したが、結果として、毒を蒸発させるための一瞬の時間を利用し、エヴァは悠々とユーノの放った弾を避けていた。ユーノの放った弾が岩盤に当たっていた事から、エヴァに当たっていない事は明白であった。
エヴァは嘲笑の色を浮かべて、
「あらあら、こんなものなの?弱々しい攻撃なのね。そちらの世界の偉大なる魔道士とやらも弱いのね」
「いいえ、私はまだ本気を出していませんわ。それに魔道士相手に魔法でマウントを取ろうなんて、いい度胸ですわね」
ディリオニスはユーノが使える魔法を全ては知らない。恐らく、戦闘に使用している魔法は彼女の使える魔法のごく一部に過ぎないのだろう。
ディリオニスはユーノの恐ろしさの片鱗を味わったような気がした。
ユーノは岩盤に向かって杖を振るうと、山頂の岩盤を動かして、岩の魔人を作り出した。
「このような岩に覆われた環境でなければ発動しない私の魔法の一つですわ。岩の魔人を作り出し、使役する魔法忠実なる岩の臣下ミッドーナ・ロックですわ。あなた様のお相手は今から、この方々が務めさせていただきます。では、ごゆりるとおくつろぎくださいませ」
エヴァは一瞬だけ色を失ったらしかったが、直ぐに気を取り戻して、山頂にかけて自身に向かってくる岩の魔人に向かって剣先を向けた。
エヴァは詠唱を始めて、剣先から大きな衝撃波を放つ。
衝撃波によって岩の魔人たちは本来の力を見せるよりも前に、粉々に打ち砕かれてしまう。
一瞬の出来事にユーノは呆然としてしまい、杖を地面に落としてしまう。
エヴァは山道の真ん中、自身の目の前で肩を落とすユーノの姿を見て、好機と感じたのだろう。毒が塗られた剣を掲げてユーノの元へと向かう。
地面でへこたれているユーノに向かって剣を振り下ろそうとしたが、即座に背後を振り向くと、背後から放たれた剣に向かって自身の剣劇を凪させる。
鮮やかな剣舞が弧を描いて、ディリオニスの剣撃を弾く。
再び剣を振ろうとしたディリオニスをエヴァは首元に剣を突きつける事によって防ぐ。
「やめておきなさい、私の首はガラドリエルの首一つだけ……これ以上邪魔をしなければ、私はあなたもあなたのお友達の命も奪いませんわ。どうぞ、お引き取りを」
細い目で自身を見下ろすエヴァを少年は真っ黒なオパールのような瞳に怒りの炎を浮かべて睨み付けた。
「ふざけるなッ!ぼくは絶対にあの人を見捨てたりはしないッ!ぼくは……」
「分かりました。あの女のために死ぬ事があなたの望み……そうなのね?」
エヴァがディリオニスの首を跳ねるために剣を横に構えた時だ、勇敢なるジークフリードは少年の体を動かして、エヴァの腹を強く蹴り上げた。
エヴァは鎧越しでありながらも、人地を超えた力の蹴りに隙を生ませてしまう。
ディリオニスはこの好機を逃さなかった。大きく唸り声を上げて、ジークフリードと自分の体をシンクロさせて、体と剣に黄金の光を放たせて、エヴァの鎧を破壊した。丸腰となったエヴァにディリオニスはもう一度剣を突き付けた。
「形勢逆転だな」
ディリオニスの一言にエヴァは言葉を失ってしまう。彼女は両手を上げて降伏の意思を示した。
「これ以上、逆らうつもりは毛頭ありませんわ、私をあなた方の女王陛下と我々の神々の元へと連れて行きなさい。その場で全てを譲るように話させていただきますわ」
エヴァは大きな溜息を吐いて、ユーノとディリオニスの両名に連れられて、山頂へと戻って行く。
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