王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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賞金稼ぎ部(ハンティング・クラブ)編

炙り出し作戦 始動編

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「会長、確かに、私も悪いとは思います。けれど、先に挑発をして来たのはあの二人の方でーー」
「そんな事はどうでもいいの」
相変わらずの調子の狂うあっけからんとした口調だ。
自分自身の主張をしようとしたその口を私はすっかりつぐんでしまう。
すると、長いオレンジ色の髪をした会長は可愛らしくクスクスとした声を上げて笑う。
「アッハッハ、ごめんなさいね。あまりにも、あなたの顔が必死すぎたものだから、私はそんなくだらない事であなたをここに呼んだりしたのじゃあ無いの。本題は別にあるんだよー」
その言葉に私は二の句が継げなくなってしまう。何と言えば良いか言葉が思い浮かばなかったからだ。
すると、困った私を見兼ねたのか、会長はふと机の上に載っているサンドイッチを指差す。
そして、優しい声で、
「食べて良いわよ。あなたお昼ご飯まだなんでしょ?」
私は否定しようとしたものの、腹の虫がそれを邪魔し、生徒会室の長机の上に置かれたサンドイッチを頬張っていく。
サンドイッチの中に詰められた食材はハムに、卵、胡瓜と言ったありふれた食材であったが、一つだけそのどれとも違う味があった事に気が付く。
それは噛めば噛む程、口の中に甘い香りが広がり、甘い味が舌の上で溶けていく、そんな味のサンドイッチ。
私がその美味さに言葉を失っていると、会長は頭上から先程と同じ様な優しい声で、
「美味しいでしょ?それ、私が作ったんだー。ブルーベリーとブルーベリーのシロップをかけたクリームを混ぜて作った、サンドイッチで、世界で二番目に食べたのはあなただよ!」
その言葉を聞き、私は思わず顔を上げて、呆れた様な顔を浮かべて尋ねる。
「じゃあ、世界で一番目に食べたのは誰なんですか?」
「決まってるじゃん!私だよ!その次に食べさせたのはあ・な・た、感謝してよ。この私がわざわざ〈杖無し〉なんかに貴重なサンドイッチを食べさせてあげたんだから」
恩着せがましい言い方と〈杖無し〉という明らかな侮蔑の言葉を意図的に使うこの生徒会長に憤りを感じたものの、私はなんとかその感情を押し殺し、会長の前に向き直る。
「あら、どうかしたの?」
「会長、もうこの辺で良いでしょう?どうして、私を呼んだのかを聞かせて欲しいのですが……」
会長は人差し指を顎に置いて、考え込む素振りを見せてから、とびきりの恐らく、私が教師だったら満点の点数を与える様な笑顔で、
「いいよ!教えてあげる!あなたを呼んだ目的はスパイをしてもらうため!それだけ!」
「スパイ?」
聞き間違いかもしれない。私はもう一度聞き返すが、今度も会長は同じ回答を返すばかりであった。
「そう、スパイ。あなたにはそれをして欲しいの。あなた達、落第生に唯一親身になって教えてくれる射撃の教師のね」
会長は無邪気な笑顔を浮かべながら言った。











やはり、本人を目の前にすると、スパイをしているという罪の十字架が私の背に纏わりついてならないような気がする。
特に、射撃の教師は私たち〈非マジシャンガンマン〉になって親身になってくれる教師という事もあり、あの笑顔で丁寧に他の生徒に銃の射撃の特訓をしている様子を見ていると、ますます気が引けてしまう。
だが、生徒会会長が命じた以上は遂行しなくてはならないだろう。
会長曰く彼女は“私設警察隊”のリーダーの可能性があるのだから。
会長は窓の外の景色を眺め終えてから、私に向かって相変わらずの柔和な顔で、射撃の教師が私設警察隊のリーダーである可能性を述べていく。
第一の点としては彼がかつては流浪の最強の賞金稼ぎであったという点、次点として彼が犯罪者や悪党に賞金稼ぎの時代から容赦が無かった事。
実際に、彼の手で殺された無法者や反政府主義者の数は片手では数えきれない程に存在していたらしい。
だが、彼の容赦の無い銃と魔法の杖の先端が一度は政府に向いた事があったらしい。
南部のクライス・オーリング帝国における先住民族とされる〈野人〉を酷く扱った監視官を衝動的に射殺してしまったらしい。虐待を受けていた野人はその場で逃げ出し、事なき事を得たものの、彼は帝国にて反政府主義者として指名手配され、賞金稼ぎが逆に手配される羽目になったらしい。
だが、現国王である私の父が彼を保護し、教師の職を与えた事により、帝国は彼に手が出せなくなったらしい。
以後はこの学校で射撃教師として過ごしている事を知った。
私はそれと同時に、彼が出来損ないと称される私達を丁寧に指導してくれる事を知った。
彼という人間は心底から優しい人間なのだ。優しく、人を重んじて困った人を助けてあげる、そんな御伽話の中にしか現れない様なヒーローである。そう言っても過言では無いかもしれない。
そんな事を考えた瞬間に、私の心の中に温かい気持ちが湧き上がってくる事に気が付く。
彼に対する、信頼、敬愛の念が活動時の火山の溶岩のように湧き上がり、抑えきれなくなっていく。
ふと、横を見てみると、授業も終わって解散を呼び掛けていたので、私は迷う事なく両眼を瞑ってその考えを頭の中から払っていく。
あの教師は凶悪極まりない凶悪犯罪者の集団である私設警察隊の一員かもしれないのだ。
私が頭を抱えていた時だ。例の教師は私の肩に優しく手を置いて、
「どうしたのかな?悩み事があるのなら聞くよ」
と、丁寧な様子と優しく太陽の様に輝く笑顔で言う。
私が強く否定して、その場を離れようとするも、先生は離してくれない。
彼は優しい笑顔を顔に浮かべたまま、
「それともここで言いにくいんだったら、酒場でもいいよ。丁度、ぼくもお酒が飲みたかったしね……」
もう一度顔に満面の笑顔を浮かべて、手を振って去っていく彼の様子を眺めていると、背後から無数の嫉妬に塗れた視線が突き刺さっている事に気が付く。
どうやら、クラスの女子と一部の男子生徒があの射撃の教師と対面する事を羨望しているらしい。
「ずるいよ!ウェンディばっかり!あの教師と会うなんて!」
「そうだよ!あたしだって悩み事を聞いてもらいたいのにィィィィ~」
そのあまりの嫉妬の多さに私の口から思わず苦笑が漏れてしまう。
すると、一部の男子生徒と全女子生徒が私のその溜息を聞き逃さなかったらしい。先程の溜息を聞いて私に詰め寄って来る。
私は中庭の真ん中で、宙を眺めながら、何処かの誰かにこの状況からの助けを求めた。何と言って説得しよう。
私は苦笑しながら、私に迫る生徒達を見た。
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