王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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賞金稼ぎ部(ハンティング・クラブ)編

学院奪還戦ーその②

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ケネスの言った事は本当だったらしい。大量の数の生徒が無理矢理一つの教室に詰め込まれ、十五人程の保安委員の制服を着た男達に銃口を突き付けられていた。
勿論、いくら、無理矢理詰め込んだと言ってもたった一つの教室にこの校舎に居る全ての生徒並びに教師を収容するのは無理があるだろう。
そこで、座っても押し込んでも入らない生徒や教職員の面々を廊下に並べているらしい。
詰め込み過ぎて溢れ出た教室から大雨の後の波乱した川のように多くの生徒が廊下に並べられて両手を上げて彼らに降伏の意思を示していた。
幾ら何でも無茶苦茶なやり口だとは思うが、魔法を優位に使用できる彼らの動きを制限するという手ならば最高の手段かもしれない。
と、ここで一人の保安委員の男が天井に向かって銃を放ったかと思うと、大きな声で、
「貴様らよく聞け!我々は真に国の治安を愛する者の集団!私設警察隊である!我々の目的はたった一つ!貴様らがこの学園に匿っている射撃の教師を帝国に引き渡す事!その真の正義が遂行出来ない場合、我々は即座に貴様の頭を撃ち抜くぞ!」
男は今、話したネタが脅しではないという事を証明するためか、もう一度銃を天井に向けて放つ。
高価な天井に穴が空くのとと同時に、廊下や一番奥の教室に詰め込まれたエリート達は心の底から震え上がったらしく、誰も魔法を使うまでもなく、情けない声で降伏の声を漏らしていく。
私は物陰でそのやり取りを見ながら、いざという時に役に立たないこの学校のエリートが情けなくなってしまう。
彼ら彼女らは何のために私達よりも優遇され、『マジシャンガンマン』だの〈杖有り〉だのともてはやれているのだろう。
あの腰にホルスターに下げている拳銃は何のためにあるのだろう。
私はエリート様の授業など知らないが、どうやら、私達と違って射撃の授業などは受けていない事は確からしい。
私は舌打ちをしてから、側に隠れていたケネスに目配せをする。
計画としては私とケネスの二人で飛び出し、奴らを一斉に撃っていくというのものだ。
やれるだろう。あのウィリアム・ウィルソンの拿捕の件で、互いに肩を寄せて戦った仲だ。
私が先に教室の正面に飾ってあった銅像から飛び出し、廊下で銃をエリート達に突き付けていた保安委員の男達に向かって放っていく。
保安委員の男達は私の銃の前に次々と頭を撃ち抜かれて、体のバランスを崩していき、地面の上に倒れていく。
残っていた九人の敵が銃口を向ける。私はそれを見届けると即座に頭を下げて、後ろに構えていたケネスが銃を撃つのを助けてやる。
どうやら、ケネスは私の期待を裏切らなかったらしい。彼は何の躊躇いもなく、また一発も撃ちそびらせる事はなく、次々とテロリスト達を撃ち殺していく。
ケネスが奴らの相手をしている間に銃への装填を終了させた私は新たに詰め込んだ弾で残りの三人を撃ち抜いていく。
それが終了すると、廊下で呆然としているエリート達の前でわざと銃を人差し指で回して、ホルスターに仕舞う。
すると、たまたま廊下に出されていたと思われるオレンジの髪をした会長の妹とその取り巻きの赤い髪のそばかすの少女が現れて、
「ふざけんなよ!どうして……どうして、〈杖無し〉のお前が銃を持った男をあんなにも早く撃ち殺せたんだよッ!」
「そうだよ!テメェ、どんな手を使いやがった!」
二人は先程までこの廊下の上で倒れている保安委員の服を着た男に脅され、仲間を殺されていたというのに、随分と余裕のある事だ。
最も、こんな奴らのひがみなど相手にする価値もない。私が澄ました顔で二人の主張を聞き流していると、間にケネスが割って入り、
「おっと、そこまでにしてもらおうか。キミらはバッジに杖を付けていたというのに、そこで震えていた臆病者なのだからな。キミらにウェンディの文句を言う権利なんて無い。覚えておけ」
ケネスは怒りの炎を瞳に宿してから、彼らに向かって嫌味を吐き捨てて戻ろうとして私の腕を掴む。
私はケネスに向かって感謝の意味も込めて、ケネスに微笑んでみせたが、ケネスはなぜか帽子を深く被って表情を隠してしまう。
なぜ、彼は帽子の中に表情を隠してしまうのだろうか。
やはり、照れた表情を見られるのは嫌なのだろうか。
そんな事を考えながらも、私とケネスの二人は校舎の外へと出て行く。
その理由と言うのもやはり、一度、外に出てジャックの安全を確認したかったからだ。無論、仲間も大切だ。
無意識のうちに私の手の拳が強く握り締められていた事がその証拠と言えるかもしれない。
すると、落第生収容のために作られた粗末な校舎の左端で銃声が響いていく。どうやら、私達がエリート様の使う校舎の右端にて戦闘を繰り広げている間に、賞金稼ぎ部や生徒会執行委員と言った本来の実行部隊が動いたらしい。
校舎の左端の方から聞こえる銃声は彼らの放つ銃声である事は間違い無いだろう。
その証拠に学校の街路樹に隠れていたと思われるジャックが大きく右手を振って、
「ウェンディさーん!ケネスさーん!もう大丈夫ですよ!既にもう学校の戦力とも呼べる皆が学校に突入して、学校を占領したテロリストどもを一網打尽にしています!これで安心ですーー」
だが、ジャックが最後の言葉を呟こうとする前に、彼は一人の男の手によって羽交い締めにされてしまう。
私はその顔を見ると、半ば反射的にホルスターから拳銃を取り出し、相手の男に向かって突き付ける。
私は冷ややかな目を向けて、
「お久し振りですね。ゴードン・レッドウッズさん……あなたがこの一連の事件を全て手引きしたんですね?」
「うるさい!黙れッ!貴様さえ、貴様さえいなければ、お父さんとオレの計画は完璧だったのに……貴様のためだッ!オレやお父さんの計画が狂い、真の正義を執行できなくなったのは貴様のせいだッ!」
全身に傷を引っ掛けた眼鏡の青年はその端正な顔を大きく歪めて、私とケネスの二人を睨む。
だが、私は涼しい顔でそれを受け流して、彼の父の経歴を語っていく。
「チャールズ・レッドウッズ。この事件を主導した私設警察隊の創立者にして王国代表保安委員の一人。けれど、その実績はお世辞にも褒められたものではない」
私は目の前の人物に向かって銃を構えながら、彼の父である男の経歴を物語っていく。
チャールズ・レッドウッズ。別名、法曹界が産んだ悪魔。
優秀ではあったが、激昂しやすい性格と思い込みの激しい性質のために、他の代表保安委員からは疎められていた聞く。
何でも、随分乱暴な手を使って有罪を勝ち取ったのだという。被害者として連行した人物には男女の区別なく拷問紛いの捜査を行い、被告に裁判が不利に進むように証言者に賄賂を渡したり、被告に有利な証言を行うとする人間の弱みを掴んだりして手柄を勝ち取ってきた正真正銘の悪魔。
だが、そんな悪魔にもヤキがまわったのか、ある日、彼が犯人としてでっち上げた少年が土壇場で証言を撤回し、彼に証言を強制されたと弁護士や傍聴人に訴えたのだ。
この時、チャールズは自分の取り調べに携わった人間を病院に送り込む事によって難を逃れたらしいが、その後は警察署内でも立場が無くなったという。
おそらくだが、私設警察隊というのは彼の個人的な欲望を満たすために設立された組織である事は間違い無いだろう。
そのために、彼らは悪人と判断された人物を部下に命じて殺してきたに違いない。
そして、それを指揮してきた人物こそ……。
「オレだよッ!オレが私設警察隊のリーダーだよッ!ハッハ、この学校でエリートだとのさばっていたガキやら証拠が無いので、逮捕されまいと息巻いていたクソッタレ役人の最後なんて、最高だったぜ!」
男はそう言って、眼鏡を外して地面へと捨てる。
どうやら、伊達眼鏡であったらしい。
彼は右手でジャックの体を拘束し、左手で彼の額に向かって銃口を突き付けており、
「いいかッ!今から、オレは逃走するッ!帝国へなッ!だが、そのためには金が必要なんだッ!だから、テメェらで逃走用の資金を用意しろ!いいな、大量の資金だッ!分かったら返事をしやがれッ!」
と、彼は怯えるジャックを盾に、逃走資金を要求している。
下衆め、私は無意識のうちに歯を軋ませている事に気が付く。
少なくとも、私の口の中いっぱいに百匹程の苦虫が潰されていく感触を味わった事は間違い無いだろう。
私はジャックを助け、尚且つレッドウッズを射殺する方法も考えていく。
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