王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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賞金稼ぎ部(ハンティング・クラブ)編

学院奪還戦ーその③

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「親子共々!テメェらは何処までも腐っていやがるぜ!取ってはいいが、腐って食えねーカボチャみてーになッ!」
ケネスは銃を突きつけて叫んだのだが、端正な顔立ちの男は嫌がるジャックに向かって銃を突き付けながら叫び返す。
「バカめがッ!貴様らに同情なんてされるものかッ!お父さんはあの戦いからは行方が知れないがなッ!オレは違う!帝国に亡命した暁には必ず、私設警察隊を再建してやるぜ!」
男の目は本気だ。鋭く射抜くような瞳が私とケネスの二人を突き刺す。
二人とも、焦った表情を浮かべていたためだろうか、彼はニヤニヤと口元を緩めて、
「そうか、そうか、ようやく、お前らみてーな落ちこぼれの脳味噌でも飲み込めたらしーな。結構、結構、なら、感心ついでに良いものを見せてあげますよ!」
ゴードンは銃を地面に構えて引き金を引く。何の事は無いただ銃弾が地面に発射されるように思えたのだが、直後に私は気が付く。
「こ、この銃弾……まだ地面を進んでいるわ!まるで、意志を持っているかのように!」
その言葉を聞いたゴードンは得意そうな顔で、
「いいや、意志を持っているのとはちと違うんだなぁ~正確に言えば、オレの手でこいつに意志をと言うべきですかね。最も、本当に弾が意志を持った訳じゃあないんですがねぇ~」
私は彼の様子からこの後に続く筈の言葉を予想していく。
恐らく、彼はこう言いたかったのだろう。弾に何かしらの能力を付属させ、その付属させた銃弾をこちらに放ったのだと。
私が思わず冷や汗を垂らしていると、ゴードンの奴は私の心境を把握したらしい。
彼はニヤニヤとした笑顔を浮かべて、
「お前の考えている通りさッ!オレはこの銃弾の中にある力をのさッ!最も、それが何かをテメーらに教えるつもりは毛頭ありませんが」
彼が途中からそれまでの敬語口調に戻ったのは得体のしれない魔法を見せる事により、私達の動揺を誘う事で、彼の心に余裕が出来て来たという証明になると思われる。
最も、彼の余裕は私達の焦りに繋がっていく。
武器に込められた力とやらは何なのかが気になって仕方がない。
最も、気になる事を全て教えてくれたのだとしたら、入学試験などは存在しない訳なのだが……。
まぁ、愚痴を呟いても仕方が無いだろう。私は意を決して、彼の使用する魔法を盗む事に決めた。
後は彼が能力を込めた銃弾を放つタイミングを見極めるばかり……。
だが、目の前の男はヘラヘラと笑うばかりで、行動に移そうとはしない。
睨み合いを続け、気力も落ち掛けようしている中で、私はもう一つの案として部長や生徒会長と言った強力な助っ人が来る事を願ったのだが、未だに校舎の方で銃撃戦と思われる銃声が響いている事から、それも難しいだろう。
それに、いくら部長や生徒会長と言った強力な人間が現れた所で、目の前で人質を取っている人間が居たとすれば、銃や魔法の使用を躊躇うに違いない。
痺れを切らすかもしれない自分のために、私は先程、閃いた案でもなければ、強力な生徒が助けてに来てくれるという選択肢でもない第三の選択肢を思案していく。
第三の選択肢というのが、これはまた試験の問題に書いて教師に提出したとすれば、即座に赤点が貰えるほどの酷い回答であるのだが、やって見る機会はあるのかもしれない。
そう、人質を取っているゴードンの頭を問答無用に吹き飛ばすという選択肢だ。
だが、毒婦メアリーの時のように私の体の中に武器は無い。
今、持っている武器は右手で構えている回転式拳銃一丁のみ。
この武器は現段階で、彼の前に突き付けており、彼もその銃の動きには常に注意を払っているのは間違いようのない事実だろう。
だが、試してみる価値はあるのかもしれない。私が銃を動かそうと決めた時だ。
突如、乾いた音が響く。目の前を凝らすと、そこには歪んだ笑みを浮かべる男の姿。
更に視線を追っていくと、男が私に向かって銃弾を放っている事に気が付く。
今から避けるか、間に合わない。かなり至近距離にまで銃弾が接近していて、私の心臓を貫くのが早いためだろうか。
周りの動きがスローモーションに見えてしまう。
ケネスの叫び声も、ジャックの泣き声も私の耳から耳を通って空中に流れていく。
私は死を覚悟したのだが、その時に自分の励ましが私自身の脳髄を刺激する。
「何をやっているの!ウェンディ!その銃弾を左手で掴んで、魔法を吸収しなさい!」と。
私はそれを聞いて笑ってしまう。こんな状況でも魔法を吸収しろ?と。こんな状況に陥ってもまだ目の前の男と戦えと。
だが、私の本能は理性という名の鎖を生存本能と呼ばれるハンマーで打ち砕くと、躊躇いもなく左手を左胸に迫っていた銃弾を受け止めさせた。
銃弾は本来ならば、ここで私の掌を貫く筈だったのだろう。
だが、左手は白く光り輝き、彼の銃弾に込められていた魔力を吸収していく。
私の使える一度限りのコピー魔法。
これを使用しての逆転のチャンスが巡って来たのだ。
私はゴードンの魔力を吸収すると先程の現象による弊害のためか、すっかり勢いを失った弾丸を川の中の魚でも取るかのようにあっさりと掴んで、それを地面に叩き付ける。
当たり前だが、勢いを失い単なる薬莢と化した弾丸は地面の上で虚しい音を立てて弾かれるばかりであったが、それに驚き、目を丸くしたのは人質とケネスだけではなく、目の前の男もそうだった。
「な、なぜ、貴様はあの弾丸を喰らっても無事なんだァァァァァ~!!いえェェェェ~!!!」
「あなたの相手への二人称は貴君じゃあなかったかしら?余裕が無くなると、随分、乱暴な言葉遣いになるのね、生徒会執行役員さん」
私の余裕のある態度と発射時の勢いと魔法を失って空になった弾丸が地面で弾かれた事に焦りが生じたのだろう。
彼は先程、戻した敬語口調は何処へやら、素の口調に戻ってしまっていた。
「チクショウ!ぶっ殺してやる!」
「あら、遅いわよ!私が銃を撃つ方があなたが銃を撃つよりも早いもの!」
私は先程、男から奪った魔法を自身の弾丸に込めて、男の心臓に狙いを定めて引き金を引く。
回転式の拳銃から放たれた弾丸は容赦無く、ゴードンの胸を貫く。
本来ならば、彼はここで素早く地面に倒れる筈なのだが、なぜか、彼は普通に銃を放たれて地面に落ちるよりも、早いスピードで地面に落ちていく。
まるで、地面に引っ張られているかのように。
大の字になって倒れる彼は今や、か細い息を立てるばかりだ。
ジャックは彼に向かって銃弾が放たれた隙を狙って、彼の支配下から逃れたらしい。
彼は丁度、ゴードンが倒れている横で震えていた。
私は死にかけの彼に向かって銃を突き付けながら尋ねる。
「さてと、あなたのお父様は何処にいるのかしらね?あなたは行方不明だって言ったけれども、本当は知っているんでしょ?」
「ち、チクショー。テメェ、オレの魔法を奪いやがったな。オレの魔法、空間操作系統に繋がる重力を物に込めるという魔法……それをテメェは堂々とパクリやがった!」
「質問に答えなさい。あなたのお父様は何処にいるの?」
検討違いの答えを返された私は不機嫌そうに両眉を顰めて尋ねる。
「し、知らねぇ!本当だッ!お父さんのの行方なんて!」
そう言うのと同時に、彼は意識を失って地面の上に倒れてしまう。
生徒会執行委員というものの実に呆気ない最後だと私は達観したような失望したような目で彼の最後を見守っていた。
それから、私は震えるジャックに左手を伸ばす。
彼を助け起こすと、私は怯える彼をケネスに預けて、旧校舎へと向かう。
無論、この事件の真の黒幕、チャールズ・レッドウッズをこの手で拿捕するためだ。
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