王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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賞金稼ぎ部(ハンティング・クラブ)編

学院奪還戦ーその④

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私が旧校舎に突入すると、既に戦闘は終わった後だったらしい。
目の前には保安委員の制服を着た男達の死体と僅かばかりの生徒の死体が校舎の中に転がっていた。
生徒の死体は恐らく、立て籠もっていた際に、要求が通らない際に奴らが撃ち殺した生徒の死体に違いない。
何処までも卑劣な連中だ。死んだ下衆どもの死体に唾を吐き掛けたい衝動を心のギリギリの箇所で抑えて、校舎の中を歩いていく。
所々に保安委員の制服を着た男の死体がある限りはいつもの校舎と変わらない。
この横に存在する部活棟には被害が無いだろう。
恐らく、私設警察隊が突入した際には座学の授業中であっただろうから。
私は死んだ生徒の冥福を祈りながら、歩いていくと、目の前に長いオレンジの髪の生徒会長が左手で保安委員の制服を着た私設警察隊員の死体を引き摺り、右手を振って私の前に現れた。
「お疲れ様ァァ~それとも、お疲れちゃーんって言った方がいいかな?」
会長は悪気の無さそうな声で呟く。
「お疲れ様なんてレベルじゃあないですよ!外に逃げ出したゲスの始末にどれ程、苦労したか……」
「ふーん、そうなんだ。まぁ、そんな事はどうでもいいとしてさ、この死体についてどう思うのか、あなたの意見を聞きたいな、なんて」
会長は私の目の前に死体を放り投げて、野鳥を観察するために用意されたオペラグラスでたまたま鹿を見付けた子供のように無邪気な笑顔で死体を指差す。
「この死体がどうかしましか?」
「いやあねぇ、少し前に私設警察隊が動き始めた最初の事件で悪徳役人の乗る馬車が何者のかに道の逸れた場所で、殺されたっていうニュースがあったでしょう?」
その会長の言葉で先程、ゴードンの吐いた言葉を思い出す。
証拠が無いから捕まらないと豪語していた悪徳役人を殺したと確かに彼は言っていた。
私が過去を思い出していると、会長は自分の思惑が読まれて嬉しかったのか、クスクスと笑って、
「あのトリックが分かったって胸を張って言えるよ!ほら、この制服を見てご覧なさい!」
「制服がどうかしたんですか?」
「クスッ、まだ分からないのぉ?こいつらは保安委員の制服を着て、役人様を外れた場所に誘導して、撃ち殺したって訳よ!」
会長はそう言って指鉄砲を作って私に向かって撃つ真似をしてから、私の前を通り過ぎようとしたが、彼女は私の前を通り過ぎる前に一言呟く。
「チャールズに逃げられた。あいつは多分、この学校の何処かに隠れている筈だから、気を付けて……」
すれ違い様に見えた会長の顔、あれは真剣な目だ。私をからかおうという気持ちはあの表情からは欠片も見えない。
私は気を引き締めて、チャールズを探しに向かう。
この広い校舎の中の何処かにチャールズは居るのだと思うのだが、それにしても奴が隠れられそうな場所は何処なのだろう。
彼はもう学校の外に逃げ出しているのではないのか。
一瞬でも、そんな思いに囚われ掛けたその時だ。私が普段、通っているGクラスの方から悲鳴が上がる。
私は銃を構えて、慌てて自分の教室へと向かって行く。
Gクラスの教室の扉を勢い良く開けると、そこにはカレンを人質にチャールズが立て籠もっていた。
「大人しくしろ!お前達ッ!ここで死にたくは無いだろう!?」
男の言葉から察するに、どうやら、生徒会と賞金稼ぎ部との戦いに敗れた後に、このクラスにまで逃亡したらしい。
カレンは瞳から透明の液体を滲ませながら、助けを求めて叫ぶ。
しかも、無我夢中で助けを求めている様子から、私が教室に入って来た事には気が付いて居なかったらしい。
その証拠に教室の仲間、ひいては立て籠もっていたチャールズまで私の方を向いたのに対し、彼女は私を見ても何も言わずにひたすら助けを求めていたからだ。
私はカレンの名前を呼ぶ。応答は無い。
もう一度、今度は大きな声で呼ぶ。
すると、彼女はようやく私の声に気が付いたらしい。
大粒の真珠のように綺麗な涙を流しながら、私を見つめていた。
それから、喉を震わせて助けを求める。
「お願い!あたしを助けて!あたしをこの男から解放してェェェェ~!!!」
私は首肯する。それから、銃を空中に向かって勢い良く放つ。
チャールズはどうやら、間近で拳銃の音を聞いた事は無かったらしい。
彼はすっかり凝縮し、銃声に怯えて腰を抜かしてしまう。
その隙を逃す事なく、カレンはチャールズの腹に回し蹴りを喰らわせて、仲間達の元へと向かう。
私はカレンと入れ替わる形で、男の元へと向かう。
すっかり怯える男の目の前で銃口を向けて、
「悪魔の代表保安委員もこうなってしまえば、形無しね。今まであなたに殺された被害者達の心境を思えば、今のあなたの心境でもまだ生温いと思うでしょうね」
私はそう言って、拳銃のハンマーを鳴らす。
回転式拳銃の弾倉が回る音が今のこの男には死神の足音に聞こえるに違いない。
「どう、このまま生徒会の元に向かって自首する?少なくとも、この場で殺される事だけは防げるわよ」
「ふ、ふざけるなッ!」
男は激昂し、拳銃を突き付けようとしたが、私は彼よりも先に銃口を額に突き付けて、銃の腕に圧倒的な差がある事を教えてやる。
「絞首台を選ぶか、銃を選ぶかはあなたに任せるわ.好きな方を選択しなさいな」
チャールズは悔しそうにギリギリと歯を鳴らしていたのだが、次の瞬間には先程までとは打って変わった様子で満面の笑みを浮かべて、
「私は負けたよ。さぁ、勇ましいお嬢さん、その銃で私の頭を撃ち抜いてくれ」
私はその言葉に誘われて、彼の額に向かって引き金を引こうとしたのだが、男は咄嗟に私の腕を掴み、自分に向かう筈だった銃弾を天井へと向かわせる。
凄まじい音が響いたかと思うと、男は私の頬を思いっきり殴り付けて、私を転ばせて、慌てて教室を飛び出していく。
男は教室から飛び出ると、教室に向かって、左手の掌を大きく広げて、そこから光の粒子で構成された槍を作り出し、私に向かって放り投げていく。
どうやら、光の粒子で槍もしくは物質を構成するのがあの男の魔法らしい。
系統としては自然系統に位置する魔法なのかもしれない。
そんな事を考えていると、白い光の槍は私に向かって行く。
クラスメイト達が悲鳴を上げたのだが、私は怯む事なく、自分の左手を使ってその魔法を吸収し、コピーしていく。
それから、私はチャールズを追い掛けていく。
あの男に相応しい引導を渡すために。
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