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フォー・カントリー・クロスレース編
目標と現実と
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大陸の東端に位置する最大の港町、ボストラム。
この海に面した港町にある一室で五人の男女が顔を見合わせて互いの顔を見合わせていた。
集まった男女の中で一番の美男子と思われる男性が落ち着き無さそうにホテルの中を動き回るのを、窓の側のソファーに座る藍色の髪の女性が注意する。
「やめなさい。クリストファー。まだ計画が失敗だと決まったわけではないわ」
だが、それを聞いても〈革命派の貴公子〉クリストファー・サンフォードは落ち着きなく親指の爪を噛む。
「だがな、エリィ。あそこまで警備を増やされたのだったら、馬車を破壊するのなんて不可能だッ!ましてや、あんな厳重の体制が敷かれた状態の鉄道網を爆破するなんて……」
エリィと呼ばれた爪を噛む美男子を鋭い視線で睨み、彼が口にしようとしていた言葉を強制的に引っ込ませていく。
クリストファーは恋人の恐ろしい顔に引き下がった方が得策だと感じたのだろう。
大人しく部屋の左側に座る大きなベッドの上に腰を掛ける。
「問題は……あの体制派の奴らをどうやって殺すか……という所ですな。現段階での我々の戦力はたったの五人、勝負になるとでも?」
口元に小さな髭を残した壮年の男が懐から取り出したと思われる高価な絹のハンカチで流れ出た冷や汗を拭う。
エリィと呼ばれた女性は同志である筈のこの男を見て、酷い軽蔑の感情を抱いてしまう。
太った体からみっともなく汗を流し、息巻く姿は豚のそれと酷似していた。
あまりにも醜い姿。だが、彼女は自分が感じた感情を表には出さない。
それこそが、自分達、過激派の目的を達成するまでの同志の団結心を繋ぎ止める秘策であったとも言えるだろう。
「その通りです。同志エリアーナ!あなたが読んできた本にはどのように書かれていたのかは分かりませんが、現段階での戦力は枯渇して来ています……体制側の人間を殺す前に、我々が死んでしまえば終わりです」
彼女のファーストネームの下に同志という敬称を用いた緑の眼鏡を掛けた男性の顔は若かった。殆ど彼女や彼女の恋人のクリストファーと同い年と言っても良いかもしれない。
だが、同い年の同志の発言にも、エリアーナは蓋をする。
「黙りなさい。それで、次に私が意見を聞きたいのは同志アレクセイよ」
アレクセイと呼ばれた男はそれまで座っていたベッドの上から立ち上がる。
エリアーナは彼の青い色の瞳を見つめるために、その青い瞳に吸い込まれてしまわないのかを危惧してしまう。
それ程、アラン・アレクセイは魅力的であったし、警察や賞金稼ぎに追われた時は何度もエリアーナを庇い、警察やら保安委員やら賞金稼ぎの命を容赦なく奪っていった彼女個人の騎士と呼んでも良い存在だろう。
彼は彼女の心の内に要望に応えて、あの青く美しい瞳でマジマジと彼女を見つめると、
「同志エリアーナ。私にご提案があります」
と、彼はまるで姫に忠誠を誓う騎士のように丁寧に頭を下げ、彼女の手の甲を取り、軽い口付けを交わしてから、自らの案を語っていく。
彼の提案というのは実にシンプルな提案であり、自分達の手で五人の生徒を殺して入れ替わり、レースの終着点で各国の首脳を殺せば良いというものであった。
王国随一の過激派のリーダーであるエリアーナは自分の騎士が自分の期待に沿う素晴らしい提案を行った事に、素直な称賛の言葉を浴びせていく。
「素晴らしいわ!このレースで一位にさえなり、表彰台に登りさえすればーー」
「必ず、カップを渡しに来た王室や帝室、もしくは共和国政府の重要な誰かを射殺できます。加えて、五人で向かう訳ですし、道中でダイナマイトや火炎瓶の類を仕入れる事も可能でしょう。ですので、表彰台に上がった人間が表彰しに来た要人を殺すのを引き金に、残った仲間達が会場でテロを起こし、体制側の重要人物を殺す訳です」
エリアーナは口元を緩めて、顔に勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「よくやったわ。同志。そうなれば、早速入れ替わる予定の相手を見つけに行きましょうか?レースの開催は二日後、もう何処かの乗馬部がエントリーしている筈だわ」
エリアーナは思いだったが吉日とばかりにベッドの上から立ち上がり、適当な相手を殺しに向かおうとしたが、アランはそれを右手で静止して、
「心配は要りません。同志……既に私が参加資格のある人物を適当に殺し、奪っておきました」
男はそう言って胸ポケットから取り出した五人分のバッジをベッドの上に放り投げる。
「こ、これを何処で手に入れた!?」
太った中年の男の問いに、アランはニヤリと笑い、
「帝国に存在する乗馬部のメンバーです。この港町に入って来た時にたまたま目に入りましてね。彼らの体からバッジを毟り取った後に彼らの死体を廃棄物を放棄する樽に石と一緒に詰めて海に沈めましたよ」
アランの言葉に部屋の中のメンバー全員の歓声が轟く。
加えて、彼が目を付けた学生乗馬部のメンバーという人物も気に入っていた。
彼ら学生は他の町から来ているという点から、地元の住人には気付かれにくい。
加えて、親とは離れていて、最後の街で待ち合わせるという計画なのだろう。
そのため、彼らが化けるのには最適な存在であったとと言えるだろう。
加えて、学生に扮し、各国の代表から、優勝の証明を渡される時。
そのタイミングでテロを起こして、各国の要人を皆殺しにしていく計画。
何処を取っても完璧な計画に違いない。エリアーナは確信した。
彼女は計画を共に遂げる同志の前に右手を突き出して、
「いいッ!私たちの目標は国王制の打倒、そして魔法なんて不便なものを撤廃し、全ての人々が医療を無料で受けられるような世界にする事よ!」
「その通りだッ!」
クリストファーがエリアーナの右手の上に手を重ねる。
「無論、国王の泥棒一家を排除してこそ、真の平等がもたらされるッ!」
太った手がクリストファーの上に乗せられる。
「いざ、行かん!真の平等の世界を目指すために!」
アレクセイは意気揚々と男の手の上に自分の手を置く。
「戦いましょう。真の平等のために、真の自由のために、圧政に苦しむ市民達を解放してあげるために」
こうして、ここに王国内一の過激派は再度の結束を誓い合い、二日後のレースに死亡した学生と入れ替わる形で参加する事を決めた。
この海に面した港町にある一室で五人の男女が顔を見合わせて互いの顔を見合わせていた。
集まった男女の中で一番の美男子と思われる男性が落ち着き無さそうにホテルの中を動き回るのを、窓の側のソファーに座る藍色の髪の女性が注意する。
「やめなさい。クリストファー。まだ計画が失敗だと決まったわけではないわ」
だが、それを聞いても〈革命派の貴公子〉クリストファー・サンフォードは落ち着きなく親指の爪を噛む。
「だがな、エリィ。あそこまで警備を増やされたのだったら、馬車を破壊するのなんて不可能だッ!ましてや、あんな厳重の体制が敷かれた状態の鉄道網を爆破するなんて……」
エリィと呼ばれた爪を噛む美男子を鋭い視線で睨み、彼が口にしようとしていた言葉を強制的に引っ込ませていく。
クリストファーは恋人の恐ろしい顔に引き下がった方が得策だと感じたのだろう。
大人しく部屋の左側に座る大きなベッドの上に腰を掛ける。
「問題は……あの体制派の奴らをどうやって殺すか……という所ですな。現段階での我々の戦力はたったの五人、勝負になるとでも?」
口元に小さな髭を残した壮年の男が懐から取り出したと思われる高価な絹のハンカチで流れ出た冷や汗を拭う。
エリィと呼ばれた女性は同志である筈のこの男を見て、酷い軽蔑の感情を抱いてしまう。
太った体からみっともなく汗を流し、息巻く姿は豚のそれと酷似していた。
あまりにも醜い姿。だが、彼女は自分が感じた感情を表には出さない。
それこそが、自分達、過激派の目的を達成するまでの同志の団結心を繋ぎ止める秘策であったとも言えるだろう。
「その通りです。同志エリアーナ!あなたが読んできた本にはどのように書かれていたのかは分かりませんが、現段階での戦力は枯渇して来ています……体制側の人間を殺す前に、我々が死んでしまえば終わりです」
彼女のファーストネームの下に同志という敬称を用いた緑の眼鏡を掛けた男性の顔は若かった。殆ど彼女や彼女の恋人のクリストファーと同い年と言っても良いかもしれない。
だが、同い年の同志の発言にも、エリアーナは蓋をする。
「黙りなさい。それで、次に私が意見を聞きたいのは同志アレクセイよ」
アレクセイと呼ばれた男はそれまで座っていたベッドの上から立ち上がる。
エリアーナは彼の青い色の瞳を見つめるために、その青い瞳に吸い込まれてしまわないのかを危惧してしまう。
それ程、アラン・アレクセイは魅力的であったし、警察や賞金稼ぎに追われた時は何度もエリアーナを庇い、警察やら保安委員やら賞金稼ぎの命を容赦なく奪っていった彼女個人の騎士と呼んでも良い存在だろう。
彼は彼女の心の内に要望に応えて、あの青く美しい瞳でマジマジと彼女を見つめると、
「同志エリアーナ。私にご提案があります」
と、彼はまるで姫に忠誠を誓う騎士のように丁寧に頭を下げ、彼女の手の甲を取り、軽い口付けを交わしてから、自らの案を語っていく。
彼の提案というのは実にシンプルな提案であり、自分達の手で五人の生徒を殺して入れ替わり、レースの終着点で各国の首脳を殺せば良いというものであった。
王国随一の過激派のリーダーであるエリアーナは自分の騎士が自分の期待に沿う素晴らしい提案を行った事に、素直な称賛の言葉を浴びせていく。
「素晴らしいわ!このレースで一位にさえなり、表彰台に登りさえすればーー」
「必ず、カップを渡しに来た王室や帝室、もしくは共和国政府の重要な誰かを射殺できます。加えて、五人で向かう訳ですし、道中でダイナマイトや火炎瓶の類を仕入れる事も可能でしょう。ですので、表彰台に上がった人間が表彰しに来た要人を殺すのを引き金に、残った仲間達が会場でテロを起こし、体制側の重要人物を殺す訳です」
エリアーナは口元を緩めて、顔に勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「よくやったわ。同志。そうなれば、早速入れ替わる予定の相手を見つけに行きましょうか?レースの開催は二日後、もう何処かの乗馬部がエントリーしている筈だわ」
エリアーナは思いだったが吉日とばかりにベッドの上から立ち上がり、適当な相手を殺しに向かおうとしたが、アランはそれを右手で静止して、
「心配は要りません。同志……既に私が参加資格のある人物を適当に殺し、奪っておきました」
男はそう言って胸ポケットから取り出した五人分のバッジをベッドの上に放り投げる。
「こ、これを何処で手に入れた!?」
太った中年の男の問いに、アランはニヤリと笑い、
「帝国に存在する乗馬部のメンバーです。この港町に入って来た時にたまたま目に入りましてね。彼らの体からバッジを毟り取った後に彼らの死体を廃棄物を放棄する樽に石と一緒に詰めて海に沈めましたよ」
アランの言葉に部屋の中のメンバー全員の歓声が轟く。
加えて、彼が目を付けた学生乗馬部のメンバーという人物も気に入っていた。
彼ら学生は他の町から来ているという点から、地元の住人には気付かれにくい。
加えて、親とは離れていて、最後の街で待ち合わせるという計画なのだろう。
そのため、彼らが化けるのには最適な存在であったとと言えるだろう。
加えて、学生に扮し、各国の代表から、優勝の証明を渡される時。
そのタイミングでテロを起こして、各国の要人を皆殺しにしていく計画。
何処を取っても完璧な計画に違いない。エリアーナは確信した。
彼女は計画を共に遂げる同志の前に右手を突き出して、
「いいッ!私たちの目標は国王制の打倒、そして魔法なんて不便なものを撤廃し、全ての人々が医療を無料で受けられるような世界にする事よ!」
「その通りだッ!」
クリストファーがエリアーナの右手の上に手を重ねる。
「無論、国王の泥棒一家を排除してこそ、真の平等がもたらされるッ!」
太った手がクリストファーの上に乗せられる。
「いざ、行かん!真の平等の世界を目指すために!」
アレクセイは意気揚々と男の手の上に自分の手を置く。
「戦いましょう。真の平等のために、真の自由のために、圧政に苦しむ市民達を解放してあげるために」
こうして、ここに王国内一の過激派は再度の結束を誓い合い、二日後のレースに死亡した学生と入れ替わる形で参加する事を決めた。
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