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フォー・カントリー・クロスレース編
用心棒とそれにまつわる不確かな話
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あの日、事件を解決した私はそのまま振り返る事なく、王国を縦断し、ようやく帝国に辿り着く事が出来た。
最初のチェックポイントの街で両替を済ませると、後は楽だった。買い物はできるし、何よりも、帝国は諸々の事情から二つの王国よりも物価が安かった。
と、言うのも野人を彼らが奴隷のように使っているためだろうが……。私は買い物をする途中に罪悪感に苛まれたのだが、やはり、服が一着だけでは不便なのだ。ズボンに白色のシャツの更にコーヒーメーカーを購入し、店を後にした私だったのだが、やはり、罪悪感は消えない。
複雑思いを抱えながら、帝国内を走っていると、目の前に帝国内における真ん中のチェックポイントとなるサン・ペテロという街が見えた。
私が門をくぐると、他のレース参加者はまだ着いていないのか、或いはとっくの昔に街を抜けてこの先へとくぐったのか、一人も姿も見せない。
私が馬を走らせていると、白いシャツに麦わら帽子を被った中年の男が私の馬に追い縋るような形で付いてきて、
「こんにちは!!旅の人ですか!?それとも、親分の用心棒をしに来たのですか!?」
その言葉を聞いて、私は首を傾げてしまう。男の質問の意味を理解しようとしたのだが、理解できなかったために私はもう一度聞き返す事に決めた。
「用心棒をしに来た?どういうつもりなの?私はただレースのチェックポイントだから、寄っただけだけども……」
その言葉を聞くと、麦わら帽子の男は飛び上がって、
「ええーー!?あんた、用心棒の志願をしに来たんじゃあ無いんですかい?」
「だから、何の話よ。私は最近、開かれている『フォー・カントリー・クロスレース』に参加するために来ただけよ」
その言葉を聞いて、麦わら帽子を被った男の目が丸くなっている事に気が付く。
「あ、レースか。そりゃあ、失礼しやした。あっ、あっしの話は忘れてくだせぇや。何せ、他所の街にバレると外聞が良くない事なんでね……」
白いシャツに麦わら帽子の男はそう言って揉み手をして卑屈な様子で私に頭を下げると、小走りに辺りの家に向かって逃げ出す。
その姿を見て、私は再度首を傾げてしまう。ただ、この街には何か大きな陰謀なようなものが渦巻いている事だけは確かだろう。
私が改めて、この街を見渡すと、確かにこの街は蝋燭の火を消したかのように静かだ。人の声が聞こえてこない。
薄君の悪い。そんな事を考えた私は一刻も早くこの街を去ろうと考えたのだが、不意に私の喉が喉の渇きを訴えたために、街の中心部に存在する井戸へと向かい、そこから水を汲み上げて喉の渇きを潤す。
私が水を飲み終わり、この不毛の土地から去ろうと考えていた時だ。私の目の前に私と同じレースの参加者の資格である馬のバッジを胸に付けた帝立魔法学院の黒色の長いロングのコートを身に付けた端正な顔の男が現れた。
男は水を飲む私を見て、ニヤニヤと笑っている。
その顔がどこと無く不快だった私は睨み返してやったのだが、その途端に男は大きな声で笑い始めて、
「アッハッハッ、こいつは失敬。あんまりにもあんたが真剣にオレの事を睨むもんだからさッ!笑っちまったんだよ」
その言葉を聞いて私は思わずムッとしてしまう。誰だって知らない人にいきなり、ニヤニヤと笑われたら私のような反応を取るだろうし、その上、彼は異性なのだ。私の貞操を狙っているかもしれないと考え、警戒する視線を送るのは至極当然とも言えるだろう。
この男は理解していないのだろうか。私はこの男を無視して、酒場で食事を取ってから、レースに戻る事を決めた。
今晩は野宿になるだろうが、こんな街にいるよりはマシだ。
男が何か後ろで叫んでいたのだが、私は聞こえないフリをして街を巡っていく。
本当に人が死んだのかと思う程の静かな街であったのだが、時たまに木の板を打ち付けられた窓の隙間から視線を感じたので、生きてはいるに違いない。
すると、酒場と思われる店を見つけたのだが、この店も入口以外の所は木の板で打ち付けられており、誰も姿を見せない。
加えて、扉も他の街とは異なり、いつでも入れるようなスライドドアではなく、ちゃんとした木の造りの扉であった。
やむを得ずに私がノックをすると、木の造りの扉の上半分が開き、そこに一人のお爺さんが姿を見せた。
お爺さんは私の姿をマジマジと眺めると、急いで扉を開いて、私の腕を乱暴に引っ張り、半ば強引に私を酒場の中へと連れ込む。
お爺さんは私をバーカウンターの前に立たせると、慌てて扉の鍵を閉めて、バーカウンターの向こう側へと回る。
それから、二つの眼球で私を睨み付けながら、
「さてと、あんたは何者かね?誰の用心棒になりたくてこの街にやって来た?モーティーマーの野郎の手下にか?それとも、モンコ兄弟にか?」
お爺さんは真剣な顔で私を見つめて、その瞳で私を射抜いたのだが、生憎と私は何も分からないので、返す言葉もなく、ただ言葉を濁して誤魔化すしかない。
それを見たお爺さんは業を煮やしたのか、強い力でバーカウンターを叩いて、
「どっちなんだ!?モーティーマーか!?モンコなのか!?白状しろ!」
「だから、知らないわよ!一体何なの!?モーティーマーだの、モンコだの、私はレースに参加するためにここに来ただけよ!」
その言葉を聞いたお爺さんは拍子抜けした表情を見せた後にヘナヘナと座り込む。
お爺さんはその後にゆっくりと立ち上がり、顔に安堵の表情を見せたものの、次はもう一度、先程のようなムスッとした、無愛想な表情を浮かべて、
「あんた、モーティーマーとも、モンコとも関係無いんだったら、さっさとこの街から出て行きな」
「私はここで食事がしたくてーー」
「食事?なら、それが済んだら、さっさと出て行きな。飯代はいらねぇから」
お爺さんがバーカウンターを通り過ぎ、店の奥の調理場で私のために食事を作ってくれようとしたのだが、それは店の扉を強引に叩く音で中断されてしまう。
強引に扉を叩く音だけではなく、罵声さえも店の中へと飛んで来る。
恐らく、暴力団の類だろう。私はバーカウンターの前から入り口の近くに行き、奴らを追い返そうとした時だ。
お爺さんはバーカウンターの下から取り出したと思われるショットガンを取り出し、わざと扉の前で弾を込める音を聞かせてから、目の前に集まった男達へ罵声を飛ばす。
「やかましいッ!テメェら、下っ端なんぞこいつで相手にしてやるわ!どうしても、儂をここから追い出したきゃあ、テメェらの親分を連れて来いってんだッ!」
お爺さんの剣幕にどちらに所属しているのかは分からなかったのだが、彼らは急に静かになり、捨て台詞を吐いて逃げ出していく。
私はその姿を見て、ようやく理解した。
この街が二つの暴力団に支配されている事、そして、人々がその支配に対抗するために、武装している事。
そして、余所者をいやに警戒する事も。
彼らは恐れていたのだ。この街に流れる旅人が彼らの手下になる事を。
私が真剣な顔でこの街に生きるお爺さんの顔を眺めていると、お爺さんは“ようやく理解したか”と言わんばかりにブスッとした表情で立ち上がって、
「さてと、随分と待たせてしまったな。ここらで飯にするとするか」
と、立ち上がり、バーカウンターへと戻っていく。
私はその姿を見て、もう暫くこの街に滞在する事を決めた。この街の二つのギャングは手配されていないのであろうが、やっている事はそこらの犯罪者よりも悪質だ。
私はこの街に巣食う悪党を一掃する覚悟を顔に浮かべていると、バーカウンターで用意をしていた筈のお爺さんが初めて微笑を浮かべて、
「良い目だ」
と、褒めた。
最初のチェックポイントの街で両替を済ませると、後は楽だった。買い物はできるし、何よりも、帝国は諸々の事情から二つの王国よりも物価が安かった。
と、言うのも野人を彼らが奴隷のように使っているためだろうが……。私は買い物をする途中に罪悪感に苛まれたのだが、やはり、服が一着だけでは不便なのだ。ズボンに白色のシャツの更にコーヒーメーカーを購入し、店を後にした私だったのだが、やはり、罪悪感は消えない。
複雑思いを抱えながら、帝国内を走っていると、目の前に帝国内における真ん中のチェックポイントとなるサン・ペテロという街が見えた。
私が門をくぐると、他のレース参加者はまだ着いていないのか、或いはとっくの昔に街を抜けてこの先へとくぐったのか、一人も姿も見せない。
私が馬を走らせていると、白いシャツに麦わら帽子を被った中年の男が私の馬に追い縋るような形で付いてきて、
「こんにちは!!旅の人ですか!?それとも、親分の用心棒をしに来たのですか!?」
その言葉を聞いて、私は首を傾げてしまう。男の質問の意味を理解しようとしたのだが、理解できなかったために私はもう一度聞き返す事に決めた。
「用心棒をしに来た?どういうつもりなの?私はただレースのチェックポイントだから、寄っただけだけども……」
その言葉を聞くと、麦わら帽子の男は飛び上がって、
「ええーー!?あんた、用心棒の志願をしに来たんじゃあ無いんですかい?」
「だから、何の話よ。私は最近、開かれている『フォー・カントリー・クロスレース』に参加するために来ただけよ」
その言葉を聞いて、麦わら帽子を被った男の目が丸くなっている事に気が付く。
「あ、レースか。そりゃあ、失礼しやした。あっ、あっしの話は忘れてくだせぇや。何せ、他所の街にバレると外聞が良くない事なんでね……」
白いシャツに麦わら帽子の男はそう言って揉み手をして卑屈な様子で私に頭を下げると、小走りに辺りの家に向かって逃げ出す。
その姿を見て、私は再度首を傾げてしまう。ただ、この街には何か大きな陰謀なようなものが渦巻いている事だけは確かだろう。
私が改めて、この街を見渡すと、確かにこの街は蝋燭の火を消したかのように静かだ。人の声が聞こえてこない。
薄君の悪い。そんな事を考えた私は一刻も早くこの街を去ろうと考えたのだが、不意に私の喉が喉の渇きを訴えたために、街の中心部に存在する井戸へと向かい、そこから水を汲み上げて喉の渇きを潤す。
私が水を飲み終わり、この不毛の土地から去ろうと考えていた時だ。私の目の前に私と同じレースの参加者の資格である馬のバッジを胸に付けた帝立魔法学院の黒色の長いロングのコートを身に付けた端正な顔の男が現れた。
男は水を飲む私を見て、ニヤニヤと笑っている。
その顔がどこと無く不快だった私は睨み返してやったのだが、その途端に男は大きな声で笑い始めて、
「アッハッハッ、こいつは失敬。あんまりにもあんたが真剣にオレの事を睨むもんだからさッ!笑っちまったんだよ」
その言葉を聞いて私は思わずムッとしてしまう。誰だって知らない人にいきなり、ニヤニヤと笑われたら私のような反応を取るだろうし、その上、彼は異性なのだ。私の貞操を狙っているかもしれないと考え、警戒する視線を送るのは至極当然とも言えるだろう。
この男は理解していないのだろうか。私はこの男を無視して、酒場で食事を取ってから、レースに戻る事を決めた。
今晩は野宿になるだろうが、こんな街にいるよりはマシだ。
男が何か後ろで叫んでいたのだが、私は聞こえないフリをして街を巡っていく。
本当に人が死んだのかと思う程の静かな街であったのだが、時たまに木の板を打ち付けられた窓の隙間から視線を感じたので、生きてはいるに違いない。
すると、酒場と思われる店を見つけたのだが、この店も入口以外の所は木の板で打ち付けられており、誰も姿を見せない。
加えて、扉も他の街とは異なり、いつでも入れるようなスライドドアではなく、ちゃんとした木の造りの扉であった。
やむを得ずに私がノックをすると、木の造りの扉の上半分が開き、そこに一人のお爺さんが姿を見せた。
お爺さんは私の姿をマジマジと眺めると、急いで扉を開いて、私の腕を乱暴に引っ張り、半ば強引に私を酒場の中へと連れ込む。
お爺さんは私をバーカウンターの前に立たせると、慌てて扉の鍵を閉めて、バーカウンターの向こう側へと回る。
それから、二つの眼球で私を睨み付けながら、
「さてと、あんたは何者かね?誰の用心棒になりたくてこの街にやって来た?モーティーマーの野郎の手下にか?それとも、モンコ兄弟にか?」
お爺さんは真剣な顔で私を見つめて、その瞳で私を射抜いたのだが、生憎と私は何も分からないので、返す言葉もなく、ただ言葉を濁して誤魔化すしかない。
それを見たお爺さんは業を煮やしたのか、強い力でバーカウンターを叩いて、
「どっちなんだ!?モーティーマーか!?モンコなのか!?白状しろ!」
「だから、知らないわよ!一体何なの!?モーティーマーだの、モンコだの、私はレースに参加するためにここに来ただけよ!」
その言葉を聞いたお爺さんは拍子抜けした表情を見せた後にヘナヘナと座り込む。
お爺さんはその後にゆっくりと立ち上がり、顔に安堵の表情を見せたものの、次はもう一度、先程のようなムスッとした、無愛想な表情を浮かべて、
「あんた、モーティーマーとも、モンコとも関係無いんだったら、さっさとこの街から出て行きな」
「私はここで食事がしたくてーー」
「食事?なら、それが済んだら、さっさと出て行きな。飯代はいらねぇから」
お爺さんがバーカウンターを通り過ぎ、店の奥の調理場で私のために食事を作ってくれようとしたのだが、それは店の扉を強引に叩く音で中断されてしまう。
強引に扉を叩く音だけではなく、罵声さえも店の中へと飛んで来る。
恐らく、暴力団の類だろう。私はバーカウンターの前から入り口の近くに行き、奴らを追い返そうとした時だ。
お爺さんはバーカウンターの下から取り出したと思われるショットガンを取り出し、わざと扉の前で弾を込める音を聞かせてから、目の前に集まった男達へ罵声を飛ばす。
「やかましいッ!テメェら、下っ端なんぞこいつで相手にしてやるわ!どうしても、儂をここから追い出したきゃあ、テメェらの親分を連れて来いってんだッ!」
お爺さんの剣幕にどちらに所属しているのかは分からなかったのだが、彼らは急に静かになり、捨て台詞を吐いて逃げ出していく。
私はその姿を見て、ようやく理解した。
この街が二つの暴力団に支配されている事、そして、人々がその支配に対抗するために、武装している事。
そして、余所者をいやに警戒する事も。
彼らは恐れていたのだ。この街に流れる旅人が彼らの手下になる事を。
私が真剣な顔でこの街に生きるお爺さんの顔を眺めていると、お爺さんは“ようやく理解したか”と言わんばかりにブスッとした表情で立ち上がって、
「さてと、随分と待たせてしまったな。ここらで飯にするとするか」
と、立ち上がり、バーカウンターへと戻っていく。
私はその姿を見て、もう暫くこの街に滞在する事を決めた。この街の二つのギャングは手配されていないのであろうが、やっている事はそこらの犯罪者よりも悪質だ。
私はこの街に巣食う悪党を一掃する覚悟を顔に浮かべていると、バーカウンターで用意をしていた筈のお爺さんが初めて微笑を浮かべて、
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と、褒めた。
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